あべこべ世界でゲームを作ろう!   作:蓮太郎

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35.シン・おしかり

 

『目を開けなさい、スウェン・ケイ』

 

 暗い暗い、闇の底。全てがまどろみ眠る闇。どこでもなく、どこにも存在しない心地よく包む闇。

 

 僕はこの闇に包み込まれて眠る。泥のように、水のように、空気のように、存在しないように。

 

『ポエムを読んでないで起きなさい。引っ叩きますよ』

 

 うるさいな…………疲れて寝てるんだから静かにしてよ…………

 

『このまま永久に眠らせることもできるんですよ、スウェン・ケイ』

 

 …………もう無視は出来ないか。

 

 意識を鮮明にする、ただし夢の中という確信だけは持ちながら。

 

 僕は疑似的に目を開けた。意識しないとできそうになかったからだ。

 

 そして、僕の視界に入ったのは黒い人形だった。

 

 顔も真っ黒、肌もっ真っ黒、しかし輪郭だけは何故か白い線で分けられていたので胸のふくらみから女性という事くらいしか分からない。

 

 しいて言うならボロ布のような黒い布を纏い全裸ではないという事も理解はした。

 

 そして、13年ほど前に『この方』に会ったことがある。

 

 やっべ…………なんか悪いことしたっけ?

 

『とんでもなく悪いことをしでかしましたね』

 

 しれっと心の中を読んできた。いや、何を思おうが『この方』の前では丸裸だ。

 

 絶対に逆らえない存在、ただそれだけは本能に染みている。

 

『下手な反論は無さそうで何よりです。まず、最初に一つ』

 

 爪先まで真っ黒な女性は人差し指を一本立てる。

 

 たったそれだけの動きなのに美麗と感じる神々しさを見せつけられる。

 

『新たに産まれた世界のことを無視しすぎです。前の世界の常識を持つのはよろしい事ですが、郷に入っては郷に従えという言葉があるように配慮も大切です』

 

 …………はい、そうですね。確かに甘ったるく襲われるべくして襲われそうな男性像ばかり抱いてるから一新したいなって思いました。

 

 実際、この世界の男性はなんやかんやと襲われる一方で暗い人たちしか居ない。

 

 そこで、こういった男性像も存在するんですよっていう一例を挙げてみてどうなるかっていう実験でもあった。

 

 男性が変わる、というか女性がドはまりして大変なことになってしまいました、はい。

 

『次に二つ、この三年で自殺者が増加しています。心当たりはありませんか?』

 

 ……………………それを言われたら、どうしようもなくないですか?

 

『貴方が始めた物語でしょう?』

 

 いや、鬱ゲーだって普通に存在するし、それで自殺するのは…………

 

『だから甘いのです。貴方の中にも甘い女性像が存在しています。彼女達は肉食ではありますがとても繊細です。キリシアという女性を攻めた時に病院送りにしたのを忘れましたか?』

 

 それは…………いや、あれは気の強いヤンキー気味な人だったからヤンキーのようにへたくそな罵倒をしながらやったら倒れちゃっただけで、あまり悪くないんじゃ…………

 

『その結果、深く懐いたキャラを自分の手で消すという行為をさせる罪深さは自覚していますか?』

 

 ゲームを進める方法としてあり触れる手法だよ。

 

 でも、確かにちょっとやり過ぎたと反省はしてる。

 

『おかげで死者の国はてんてこ舞いです。それも自殺ですから余計に罪が重くなる、これはお分かりですね?』

 

 ……………………はい。

 

『全く、これは私たちの不手際で退化してしまったことを嘆くか、いい来世の材料が出来たというべきか』

 

 流石、人間の魂を来世の為に使うのはスケールが違いますね。

 

『人の心を持ってさえいればこのような手間はありませんでしたよ。人の心を考えてくれるほどの心があれば』

 

 いえ、全くもってその通りで、はい。

 

『反省していますか?』

 

 はい、もちろん反省しています!

 

『貴方の母からも言われていたと思いますが、男性をモチーフとした作品に鬱要素は控えるように。次回、貴方が作ったモノで自殺者が増加した場合は夫と相談して然るべき罰を与えます』

 

 はい、すいませんでした……………………

 

『そして三つ目』

 

 本当にまだあるんですか?これ以上の心当たりは人間関係くらいしかないんですが。

 

『我が娘が貴方の会社のゲームの続編が欲しいようです。早急に作りなさい』

 

 すっごい私情!いえ、もちろんやらせていただきますが!

 

 とにかく心当たりあるゲームはいくつかある。多分ほのぼのする系がいいんでしょう、たぶん。

 

 『この方』の娘にも何となく心当たりがある。太陽を照らすような繊細で優しい方…………のはず。

 

『その認識で間違いないですよ。では、目覚めなさい』

 

 その一言で急速に身体が浮上するような感覚に襲われる。

 

 黒い姿の『あの方』の輪郭がどんどん遠くなっていく。

 

 次会う時は死んだ時くらいにしておきたいな、流石にまた会うのが怖い。

 

『まだ聞こえていますからね』

 

 すいませんでしたぁ!

 

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

 

 

「…………はっ!」

 

 ガバッと勢いよく、飛び起きるという言葉が似合うくらい勢いよく起きた。

 

 隣にはロウル姉さんが寝ているが、僕が飛び起きたことに気づかずスヤスヤと寝息を立てている。

 

 まさか、夢で忠告されるとは思っていなかった。

 

 言い方こそ優しいけど、割と真面目に怒っていた。

 

 こわ…………流石に『あの方』直々に抜き打ちで『話がある』って言われるのほんと怖い。

 

 あの調子だとまた喧嘩してるのかな。夫婦喧嘩は犬も食わないというけど、本当に関わりたくない。

 

 第二の人生を歩ませてもらってる身だけど、それはそれだ。

 

 命と死を司る二柱の神。長期的に喧嘩したから世界が乱れたの割と棚に上げてる気がするが…………

 

 うん、僕が悪い。今回については僕が全面的に悪い。それに『あの方』相手に反論できるわけもない。

 

 再び横になってロウル姉さんに抱きつく。

 

 お互いの肌の温度を感じながら次のゲームをどうマイルドにさせようか考えているうちに二度寝することになる。

 

 また叱られそうな気もする…………気をつけよう…………

 




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