あべこべ世界でゲームを作ろう!   作:蓮太郎

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38.影響を受ける者

 

「やあスライ、元気そうだね」

 

「そういう貴女は元気がなさそうね」

 

 マール・キリシア、スウェンの母であるスライの友人であり企業的提携をしている仲である。

 

 最近はスライの館に遊びに行ってスウェンに病院送り(意味深)にされた為しばらく会うことはなかった。

 

「まあ、こっちでも色々あったからね。どこかの誰かさんがとんでもないのを開発したお陰でうちの商品は飛ぶように売れて品薄状態になったんだから」

 

 少し疲れたようなマールはそう言った。

 

 マールが取締役代表を務めるキリシア株式会社は主に電子機器を扱う世界的企業である。

 

 そこで発売されているパソコンは高性能であり、経営だけでなく高度なゲームをする際に購入するものと言われたら真っ先に上がるほどである。

 

 その高性能なパソコンがある時を境に飛ぶように売れて一時的に欠品になるという珍事が起きたのだ。

 

 他の工場も稼働させ何とか供給を安定させたが、その尻拭いにマールはつい最近まで奔走していたのだ。

 

「全く、下が使えないから私が各地を回るなんて事二度としたくないわ」

 

「そう、で?」

 

「ねえ、あの子ってまたゲーム作ってたりする?」

 

 純粋な疑問、ただしマールにとっては高性能なパソコンがまた必要になるくらい画質や動作が求められるものを作られていないかの確認であった。

 

 スウェンという男の子が特別なのは身をもって知っている。

 

 激しく、とても刺激的で見たことがないタイプの男の子だったのは当然として、間違いなくあの時の経験をゲームに落とし込んでいるからこそ恐ろしく思えた。

 

 自分は実験に使われたのか?そう思うが、プロトタイプな演技を一番先に堪能できたと考えたら悪くもない。

 

 あの部屋で起こった事は自分とあの子しか知らないのだから。

 

「…………ねえ、そのお腹をさすってるのは無意識?それとも、まさか、そうとは言わないわよね?」

 

 何を思い出したのかマールが楽しげに微笑んでいるのを見てスライは一つの予感を思い出す。

 

 そう、あれはメイドが検査キットを用意して妊娠報告をしてきた時のーーー

 

「察しがいいわね、あの子の種は私の中で芽吹いたから」

 

がたんっ!

 

 スライが勢いよく椅子から転げ落ちた。

 

 可能性は普通にあったが、面と向かって言われたら驚きしか出てこない。

 

「…………い、いえ、貴女、よく男遊びしてるじゃない?そっちの線は無いの?」

 

「妊娠が確定した時期を逆算したらその可能性はあるけど、あの日のことを思えばそうとしか言いようがないのよ」

 

 柄に無く、この世界ではなよなよしいと言われるくねくねとした動きを見せるマールにドン引きしてしまうスライ。

 

 昔は互いに肉食獣であったことは古い記憶として覚えている。

 

 金に物を言わせて男を買いあさり、何度も妊娠してきた。そしてスライが産んだ子が4人、マールが6人となっているのだから。

 

 そして7人目、それが息子であるスウェンの子であると言い張るのだ。

 

「…………いえ、よく考えたら大して関係ないんじゃない?」

 

「…………まあ、確かに関係ないわね」

 

 事実、そこまで関係ない。

 

 確かに血縁者にはなる可能性はあっても付き合いは変わらない。

 

 スライは確実に孫である子は出来ており、対してマールは実際のところ分からない。

 

 よって、この場はただの妊娠報告なだけであった。

 

「ま、まあ私の孫であるかどうかは分からないし、ひとまずおめでとうだけは言っておくわ」

 

「そ、そうね。ちょっと浮かれていたわ。お祝いだけは盛大にしてほしいわね」

 

「どの口が言ってるのよ」

 

 本来であるなら既に殴り合いの喧嘩に発展していたが、マールの胎内に子が居るため妙に冷静になってしまい、なあなあとなっていた。

 

 ある意味助かったともいえるが、微妙な空気には変わりない。

 

「ところで、今日は男を連れてきていたりしないの?」

 

「もちろん連れてきてる…………けどスウェン君に引き取られちゃったのよね」

 

「スウェンが?ああ、そういえばゲームすると言っていたわね」

 

「ゲーム?今時オンラインではしないの?」

 

「レトロゲームなのよ。ほら、うちで結構前に発売した『クリスタルロボ』の」

 

「アレか!懐かしいわね、暇な時に1作目をやりこんだわ」

 

「2作目のものも20年前の物よ。あの子も物好きね」

 

「…………………20年前?」

 

「マール?どうしたの?」

 

「嘘よ、私を騙そうとしたってそうはいかないわ…………」

 

「ちょっと何勝手にショック受けてるのよ」

 

 青春、と言っても20代の頃に結構やりこんだゲームがレトロ扱いされて無駄に傷ついたマールであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

 

 

 

「やばい爆弾蜘蛛来たって!」

 

「こっちに来ないでくれ!金鉱石をたくさん持ってるんだ!」

 

「んふんふふ」

 

「よし、サバゲット。燃料の油にしよう」

 

「「鉱石集めしようっていってたでしょ!?」」

 

「んふんふ」

 

 一方そのころ、男4人はゲームをしていた。

 

 ゲームタイトルは『クリスタルロボ・洞窟王国2』、20年前にケイ・ゲームズで作られた『クリスタルロボ』シリーズの続編である。

 

 前作と違う点はマルチプレイできる事である。

 

 本来なら1人で黙々と洞窟王国を自分好みに作り上げるものであったが、今作では初の試みとして友人とプレイできるようにしたのだ。

 

 ただし、システム面で言えば前作とほとんど変わらず、オンラインプレイは当時ほとんど流行しておらず、オフラインでしかマルチプレイできないということがさらに評判が悪くなった原因でもある。

 

 今、彼らがこのように集まらなければプレイできないように、当時の人はこうして集まらない限りマルチプレイ出来なかったのだ。

 

「時間が限られてるからどこまでやれるかタイムアタックってのに、みんなもう時間ないよ!」

 

 スウェンが他の男に発破をかけてカチャカチャとコントローラーを必死に操作しているのに同調して彼らもいそいそとキャラクターを操作する。

 

 忘れてるかもしれないが、本来彼らは女に抱かれて子を成すために連れてこられた人員である。

 

 あれ、私たちここで何するんだっけ?となるのは1時間後の話である。

 




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