「ふう、とりあえずある程度は整備できたね」
「爆弾蜘蛛がこんなに恐ろしいとは…………」
「んふんふ」
「古いゲームと思ってたけど、悪くないね」
僕たちスウェンとマールさんが連れてきた男3人は僕の部屋でゲームをしていた。
『クリスタルロボ・洞窟王国2』はもう少し事情が変われば名作と言われてもおかしくなかったと僕は思う。
だって、マルチプレイを推して売られたのにオフラインでしかプレイできないのだ。オンラインが主流になってさえいればもう少し上手くいっていただろう。
1人プレイだったら問題はないけど、内容が前作と代わり映えしなかったのが人気が出ない一番の理由だろう。
確かに『あの方』の娘と言ったらそういう感じではありそうだけど…………
「やっぱりゲームは大人数でやると楽しいな」
ポツリと漏れた言葉が妙に部屋中に響いた。
何かおかしいかと思って3人を見てみると、なぜか気まずそうな顔をしている。
「えっと、どうしたの?」
「…………すまない、ここまで楽しませてもらって何だけど。今までずっとこの屋敷にいるのかい?」
「んー…………確かに13年の間は外に出てないかな?いや、庭とかで遊んだりしたから、ってそういうことじゃないよね」
3人の中でリーダー格であるラインさんが聞き辛そうに聞いてきた。
そういえば引きこもりだったわ、僕。
その割には家の中を動き回ってはいるから全く自覚なかった。
でも母さんや姉さん達、メイドさん達と触れ回ってるから引きこもりでもない…………のか?
そういった意味では外の世界を知らない。彼らのように何かあるごとに出るわけでもないし。
「まあ、君の様子からすると大して気にしてなさそうだね」
「うん。自由にさせてもらってるよ」
「『自由』…………か」
「んふふ」
「…………どこまでも『自由』なんだね、君は」
え、なになに?なんか僕だけ仲間はずれにして暗い雰囲気出してるけど。
「私たちはね、外に出ようと思ったら女性と一緒にしか出られないんだ」
「それは当たり前じゃない?」
「…………いや、そうだけど。護衛と一緒って意味じゃなくて金持ちに抱かれるために連れ出されるってこと」
「あー…………」
精子を提供するのは義務ではあるが、抱かれるのは別だもんね。
なるほど、こうして直で聞いて理解できた。
知ってはいたけど実感とかなかったし、そもそも館のみんなを全員抱いても衰えない僕がおかしい方だった。
これは前世というものを持って向こうの常識を持ってきてしまっていたからこそズレが生じていたというわけだ。
だったら、彼らは相当地獄だったのではないか?
抱かれる事は襲われるに等しい。僕は襲う方をやるから気にならないけど常に襲われる方であったら自尊心がすり潰されていくんだろう。
それがいつから続いていた?僕と同じ歳からだったら相当長い期間のはず。
「とりあえず、その話は置いといて」
「置いとくのかい???」
「んふんふ」
「せっかく集まってるんだから楽しい事やろうよ。人の幸せは人それぞれだから、僕がどうこう言える話でもないんだもの」
他人の人生を間接的に捻じ曲げてる人間が何をアドバイスすればいいのか?
ぶっちゃけ全く分からないので適当にそれっぽいことを言って誤魔化しただけの言葉が出てしまった。
深い意味もないが、今ある人生を楽しもうという考えがあるし、多少の制限を受けたとしてもその中でどう楽しむか考えるのも娯楽の一つになっている。
「…………大物だな、君は。あれを考えた人間だって実感が湧いてくるよ」
「アレ?あ、もしかして『デッド・セレクション』のこと?プレイした?どこまで進めれた?」
『デッド・セレクション〜愛するのは君だけだ〜』の話題に食いつく僕。
身体を前へ出すようにして聞いたせいか、ラインさんは体を少し後退させた。
「い、一応どんなものかとみんなでやってみたんだ」
「どうだった?どうだった?」
「怖かった、けど何とか全員攻略したよ」
「んふ」
「乙女ゲーって聞いてたのにホラーばっかりでどうしてと思った」
「よしっ」
「何で喜ぶんだい?」
だって同性からの評価は全く分からなかったもん。
それに全員攻略だって!いまだに0.3%しか達成率が上がってないから最後まで行った感想が身内しか聞けないんだよ!
それも僕という事情を知ってるからおべっかでまともに評価を受けられてる気がしないし、逆に会話をする機械と思って延々と褒めてくれる。
嬉しいけどそうじゃない感があったりする。とっても嬉しいけど!
「他の人もやってた?何か言ってた?」
「こんな男が居るかって話はしてたよ」
「居ると思うんだけどなぁ」
確かに居ないかもしれないが、演技だけでも相当変わると思うよ。
マールさんで実践したあれこれを彼らに話してみるとドン引きはされたが、神妙に頷いて唸り始めた。
「…………うん、演技か。確かにベッド上では抱かれるだけで何もしてなかったから、声をかけるだけでも違うか」
「実践済みだからね」
「それ手馴れてただけでは?」
「んふ?」
「そうかもしれないけど、逆に言えば練習するだけで手玉にとれるってことだよ」
「そうかな…………そうかも…………」
彼らに悪魔のささやきが浸透している気がする。
これも彼らの為だ。知識は力、その輪が広まれば何も怖くない。
いずれ、身内以外でどこからか僕の正体がバレた時の保険みたいなものだ。
僕が演じるキャラクターのような振る舞いをすることで僕なのかどうかという可能性を広げ、責め勝つことで男としての地位を高める。
地道ではあるが、少しでも仲良くなった人が元気に生きて行けるように。
「あ、コツを教えるついでにこれを渡しておくね」
演技として、声優を務めた僕は彼等にちょっとしたコツを教えると共に1枚の紙を渡した。
これが何を意味するかは、彼らは後日知ることになる。
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