「なんだこれ?」
「んふんふ」
「預かった?ケイ家の御曹司に?」
「なんの羅列?意味が分からないんだけど」
ライン、セイ、モクがキリシアの女帝に連れていかれたが、結局遊んで帰って来ただけという珍事を経て一つの紙が届けられた。
その紙には英数字と記号の羅列。男だけで住む施設で暮らす彼等にはあまり縁がないもの。
「パソコンの上のやつに打ち込めって言ってた」
「どういうこと?」
「さあ?とにかく入れてみるか?」
「…………また後でいいでしょ。今はお疲れってことで」
しかし興味はあまり持たれなかった。
残念なことに、金持ちに飼われた人間は施設で住む人間にとってあまり歓迎されない存在であったようだ。
ひとまず皆が共有する箱に渡された紙を入れて、また今度みようという話になる。
ただし、密かに1人だけその文字列ことURLを覚えていた人間がいた。
「んふんふ」
色々あって個人のパソコンを入手しているんふんふことモクがカタカタとキーボードを叩いてURLを入力していた。
あの天才が意味もなく自分達に何かを託すようなことをするはずがない。
妙な信頼感を持つ彼はURLを入力し終わり、跳ねるようにエンターキーを押す。
打ち間違いはなかったようで正しく読み込みが始まり、そして一つのサイトが表示される。
『理想アンケート。ゲーム作りに協力をお願いします』
「んふ…………」
天才は天才でも何かと紙一重ってほんとなんだなぁ、とモクは思った。
〜●〜●〜●〜●〜
さて、僕だ。スウェンだ。
早速だけど僕にはやる事がある。
『クリスタルロボ・洞窟王国』を新しく作る事だ。
従来の見下ろし方アドベンチャーであるのは変えず、開拓要素やストーリーを新規に作らないといけない作業が待っている。
ここをどう作るのか、と思ってるそこの貴女。
これ20年前の作品なんですよ。
なんか何年前のゲームはこれって自分から言い出して勝手に傷つく風潮あるよね。僕もそうです、はい。
たまにブッ刺さることはさておき、技術は日々進歩しているので一新する要素は2Dから3Dに変わることだ。
確かに2Dで売れてるゲームはたくさんある。だけど現代は基本3D、時代の波に乗っていくのも重要だ。
それに3Dならではの作業の動きや高低差の移動など2Dに比べて表現がわかりやすくなる利点がある。
もちろんプログラムを組むにあたってめちゃくちゃ作業が多くなるのは仕方ない。僕と他のプログラマー達が頑張るのだ。
流石に3Dモデルは専門外なので外注することになる。
これも母さんか姉さん達の誰かのコネを頼ろうか?
全部、家族のコネに頼ってきていて今更ためらうつもりは無いから存分に使ってやろう。
今回のシナリオに関しては『デッド・セレクション(略)』みたいに複数のシナリオが必要じゃないから僕一人でかき上げる予定だ。
そのシナリオの下地作りを今から始めるところ。
カチャカチャとパソコンの文書ソフトに文字を打ち込み始める。
筋書きはこうだ。
『かつて繁栄を極めていた洞窟王国は、突然の天変地異によって崩壊した。
見るも無残に地に沈み、滅んだと歴史に残り長い年月が経った。
滅んだかに見えた国、地中深く埋まったはずの地に一つのロボが動き出す。
その名はクリスタルロボ、1人動き始めたロボットは救世主になりえるか。
地中を掘り進み、開拓を続けて新たな友に出会おう。
彼らと協力して国を発展させ、洞窟王国を再生させましょう。
クリスタルロボ・洞窟王国再生記』
といった風にのほほんとした空気で行われる開拓ゲームだ。
実際のところは滅んでしまった国を一人ぼっちで再興する物語であるため明るいとは言えないんだけどね。
だけど一人で開拓していくうちに何らかの仲間を得て絆を深めるという要素で新たな時代を切り開こうということなのでずっと後ろ向きなわけではない。
まあ、ちょっと物足りないけど一旦はこの路線で進めていく。
どうせ過激な内容を入れても規制はされるんだけど裏設定は残しておこうかと考えている
だってもったいないじゃん。僕が全力で考えたものが全て表に出ないのは分かっていても、もしかしたら設定集が出たりするかもしれないじゃん。
実際のところ、『デッド・セレクション(略)』の内容を多少まとめた雑誌が爆売れして凄いことになってたとSNSのトレンド入りしていたこともあった。
案外、設定というのは売れる物であることを知ってしまった。
だったら残しておいて損はないよね、とメモと同じくらいの気楽さで書き込んでいく。
どんどん書いて、どんどん道筋を立てて、どんどんキャラクターの設定を練りこんで…………
「お坊ちゃま、ご飯の時間でございます」
「んぁ?」
「もう、こんな時間までパソコンとにらめっこですか。流石に奥様から何か言われますよ」
「はーい」
ちょっと乗ってきたところだったのに、思っていたよりも時間の進みが早い。
やっぱり物事に夢中になると時間が経ってしまう。前世でも夢中になりすぎて気づいたら朝ということなんてザラだった。
何とも難しい話だ、やりたいことをぶっつづけでやったら倒れるなんて!
いや、それで死んだんだろってツッコミが飛んできた気がする。
夜の作業はほとんどメイドさん達や姉さん達、そして母さんに阻まれてるから何もできないんだけどね。
今日もどうせ何もさせてくれないんだろうな、と僕は思いつつ僕はみんなが待つ食卓へ向かう。
明日は何をしようかな。裏設定を練りまくって未来への爆弾を作ろう。
きっといい楽しみになる。それまで決して死ねないね!
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