「おわったぁ…………」
やっと、やっと『クリスタルロボ・洞窟王国の再生記』のシナリオ及び細かい裏設定の打ち合わせが終わった。
メインストーリーの最終確認をリモート会議で行い(僕だけ常にボイチェンしてる)、裏設定、というより『かつて繁栄していた洞窟王国が滅んでからゲーム開始までの空白期間』の話は滅茶苦茶長引いた。
もうね、すっごい大変だった。メインストーリーで僕が妖精とクリスタルロボ以外のロボの声を担当するから出来る限り傷つかないでくれって頼み込まれたし、裏設定も双方が納得いくまで長い期間を費やした。
後者はオリジナルの設定を潰さないよう苦心したが、前者については多少の刺激がないと平坦な物語になってしまうのでは?という僕の主張を何とか通して納得してくれた。
妖精もロボットも確かに怪我したり故障して一時的に動かなくなるようなシナリオを入れたけど、最終的にみんなで大団円になるからと伝えるのが大変だった。
崩落した洞窟王国に一人残されたクリスタルロボが資材不足、前作で出口を掘り進めるための道具すら失いながら頑張ろうとしていたところを自我を一度持ったけど故障やエネルギー不足で動けなくなっていく寂しさで石板に日記として記そうとしただけなのに…………
再度大崩落が起きて埋まっていたところが逆に隆起したりと地形に大きな変動があって新たな洞窟に放りだされ、たまたま奇跡的に前作でもセーブ地点兼エネルギー補給所となる特別なクリスタルがあったということで停止したクリスタルロボは復活できたが、得たはずの自我を失い再び亡き洞窟王国を再興しろという命令のもと動き出したという感じで始まるのだ。
長かった!だって1000年間もなんでクリスタルロボが動かなくなっていたという設定作らないといけないじゃん。
そこに人間がどうしようもない災害で居なくなってしまったという話を設けないと、なんで散々お世話になったクリスタルロボが壊れても放置していたって話になっちゃうもん!
そこまで人間が怠惰な存在と書けるわけないだろ!そこは向こうの人も理解してくれた。
ただ、自我云々を持つべきなのかという話でかなり揉めてしまった。
1000年あれば思考型ロボットは自我を持つという僕の意見とロボットは所詮ロボットという大多数の意見、大きな議論が巻き起こって決着に2週間かかった。
僕、そんなにロマンがあるタイプなのだろうか?
ゲームを作るにあたってロマンは必須だと思うけど、割とそういったところを無視しないと創作は難しいのだから。
いや、彼女達も十分なロマンチストだからこそ一線がある。
僕もそうだけど、クリエイターはこだわりが強い人が多いからね。
何とか設定を練りこみまくって、ようやくストーリーは双方納得する形で完成だ。
後はデザインを向こうに一任しつつ、こっちで動作プログラムの最終確認だ。
無論、ケイ・ゲームズの人たちにも動作確認はしてもらう。原作通りの動きが出来ているかとか、ストーリーでキャラを自動で動かす際に問題なく動けるか確認は大事だからね。
さて、僕たちにとって最後の大仕事だ。
念を押して、頑張るぞ!
〜●〜●〜●〜●〜
「今年の大手会社からのゲーム発表今日だっけ!?配信時間は…………もうすぐじゃん!」
ここに、1人のゲーマーの女性が居た。
どこにでも居るような、若干芋っぽいと言われても仕方ないだらしない私生活をしている女性である。
たまたま今日が新作ゲームの発表会であることを忘れていたため、大急ぎでパソコンから動画を開く。
『どこを見ているんだ?俺を見てくれよ…………』
「ごめんねキューリュー君!一緒に見るからね!」
しれっと日常に入り込んでいるゲームキャラも視界に入るようモニターを移動させ、早速始まった新作発表の放送が始まる。
いつも登場するゲームクリエイターのおばさんがいくらか喋った後にゲーム紹介が始まるのだが、おばさんの言葉を彼女は聞き流していた。
何故なら興味があるのはゲームだけ。いつ発売されるかどう楽しませてくれるかわくわくさせてくれるのだから。
「おーおー、今回はアクションが豊富だなぁ」
縦横無尽に動くキャラや、横スクロールで見慣れたシューティング。デモプレイを見ているだけでも相当な手の込みようがあると素人でもわかる。
どんどんと見ていくと、再びゲームクリエイターのおばさんが語り掛けてくる。
『さて、皆さんはご存じでしょうか?あの暗い洞窟から明るい王国をつくるアレが、20年ぶりに帰ってきました』
画面の前に居る彼女は首をかしげる。
彼女もプレイしたことはあったが、いかんせん昔の話なので『クリスタルロボ』のことが頭に思い浮かばなかったのだ。
何のゲームかと思いながら彼女は画面を眺める。
暗い洞窟、地面が揺れて謎の鉱石が光始める。
ゆったりと光る鉱石に映し出されるのは『ケイ・ゲームズ』のロゴ、そして…………
「…………うっそぉ!?『スリップ工房』!?『スリップ工房』なんで!?」
思わずガタリと立ち上がる。
一世を風靡した『悪霊の館』、話題性抜群だった『めざましの刻』、そして今彼女を画面越しに眺めているキューリューを始めとして最後の世界的に記録に残された大ヒットゲーム『デッド・セレクション~愛するのは君だけだ~』を主導で開発した恐ろしきスタジオ。
ケイ・カンパニーお抱えの男性ということ以外一切情報が不明である謎の人物がこのゲームに関わっている。
それはつまり、そういうことである。
「うわ、まじかまじかまじか、『クリスタルロボ』!?なっつ!え、リメイク!?いや、新作だこれ!」
興奮のあまり立ちっぱなしで独り言を叫んでしまうが咎める者は誰も居ない。
壊れていたはずのクリスタルロボが動き出し、新たに開拓を始めていく。
そこで出会う仲間たちも、当然ながら映りこむ。
『ロボさん!僕もお手伝いします!えーい!』
「せ、精霊きゅん!?声当ててんの!?もしかしてフルボイス!?」
『友よ、君が居てくれて本当に良かった。共に開拓を進め未来を掴みましょう』
「きゃーっ!ロボットまで声でんの!?」
それは普段ならキューリュー以外で聞くことがない男性の声。若干エフェクト入っているもののれっきとしたそれであり、新たな興奮を得られるには十分だった。
『ちゃんと飯は食ってるか?食べないと元気は出ないぞ?元気なお前を見ていたいんだよ』
「元気元気!めっちゃ元気!」
擬似恋人のキューリューに返事しつつ即座に別の端末で『クリスタルロボ』について検索する。
『「クリスタルロボ・洞窟王国の再生記」、X月発売予定』
「マジ?数ヶ月内に出るってマジ!?情報どこ?あっ」
皆、考えることは同じである。
『クリスタルロボシリーズ』を載せている専用サイトはアクセス集中のため非常に重く、あっという間にクラッシュしてしまった。
SNSのトレンドには『クリスタルロボ』が急上昇し、そしてもう一つの単語も同じく急上昇する。
その単語は『スリップ工房』、色々と話題になっていたところの協力により新作が出ると、世界中に語られることになる。
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