あべこべ世界でゲームを作ろう!   作:蓮太郎

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⑤ ここまでくると

 

「アンリエッタ!最近ドールを買いすぎて素寒貧になった貴女に仕事ですわよ!」

 

『ははー!ウェイル様何なりとお申し付けください!』

 

「もう、無駄にかしこまる必要ないというのに」

 

『お仕事を恵んでくれるだけでありがたい…………へへへ』

 

「その品のない笑い方もやめなさい!」

 

 ウェイル・ケイはある人物に電話していた。

 

 今は社会人だが御嬢様学校に通っていた彼女の人脈は多岐にわたる。

 

 次期社長という肩書を常に背負っていたウェイルは相応のプレッシャーを背負いながらビジネスライクな友人を選定することもあった。

 

 その中の一人がアンリエッタ・シュバリエである。

 

 どこかの三女を思い出させるような陰気さはあるものの美術家として相応の実力を持つ彼女を必要に応じてデザイナーの仕事を与えている。

 

 だが、アンリエッタはオタクであった。

 

 ある程度自立して生活しているとはいえ自分の給料のみで生活を成り立たせようとしていたのだ。

 

 これは彼女がドールやコスプレ等に散財しているため、アンリエッタの実家がまともな金銭感覚を付けさせようと金銭援助を断ったことが全ての始まりだった。

 

 それから思うままに金を使っていた彼女はギリギリの生活を強いられることとなる。

 

 それでもオタク活動をやめられなかった彼女はこうして仕事を得るために細々と仕事を請け負っている。

 

「早速ですけれど、今から送るサンプルを美しく、とっっっっても美化してほしいのですわ」

 

『それってどういう?まあいいや、とにかく送って』

 

 アンリエッタの仕事用メールアドレスに画像を送る。

 

 その画像は子供が描いたものだった。ただし、出来る限り高画質で取り込んで色鉛筆の質感すらモニターで再現されているのではないかと疑ってしまうほどだった。

 

『え、なにこれ?四人の勇者パーティーってこと?』

 

「そうですわ、それを貴女のような絵師に清書して頂き素材にするのですわ」

 

『へー?ちなみにだけど何に使うの?』

 

「フリーゲームの立ち絵としてですわ」

 

『えぇー?天下のケイ・カンパニーの次期社長がフリーゲームの立ち絵依頼ぃ?』

 

「弟がどうしてもとねだっていますの」

 

『秒速で始める』

 

「なら手を動かしなさい。あと依頼料はいつもの3倍出しますわ」

 

『女神様、弟様、ありがとうございます!!!』

 

 電話越しにでも平伏しているのが分かる友人に頼む相手を間違えたかと思うウェイル。

 

 それでも腕は確かなので大事な仕事を任せるには適している人間なのは理解している。

 

 行動がキショいことをあえて棚に上げなければならない事を加味してプラスといったところ。

 

 利用する者は利用せよ。愛する者は過剰に愛せよ。

 

 弟が居るからこそ叶えてあげたいことを出来る限りする。

 

 ウェイル・ケイは経営者である。末っ子の弟を溺愛するとともに才能を見込んだ投資をする冷静な部分を持つ経営者である。

 

「全く、私も悪い女ですわ」

 

『何か言った?』

 

「いいえ?さっさと仕事終わらせなさい」

 

『急に人使いが荒くなったな…………仕事はしっかりするよ』

 

 電話越しの友人には聞かれていなかった小言は誰も知らぬ間に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

 

 

 どうも、スウェン・ケイです。

 

 ひとまず動作用のプログラムを組んでみてみたのはいいが、『悪霊の館』と同じものになってしまった。

 

 いや、2DのRPGだから動作は同じでいいんだ。

 

 特定の場所以外を歩けばモンスターにエンカウントするようにしたのはいいが、やはり何か物足りない。

 

 所詮は一個人が作るようなゲーム。大層なつくりをしようというなら何年もかけなければいけない。

 

 『悪霊の館』も配信まで何年もかけたから当然だが、ここからどう固有性を見出すか。

 

 個人製作だから王道の魔王を倒すストーリーにしたい気持ちはある。

 

 だが世界は男性よりも女性の方が多い。そのせいかヒーロー関連の創作物もメインが女性で男性を助ける作品が非常に多くなっている。

 

 ある種突っ切って全員男に…………いや、もうイラストを作ってもらい始めてる手前、急なキャラ変はだめだ。

 

 そもそも主人公チームが女性しかいないから僕の声を入れられないという欠点がある。

 

 結局は個人製作だからあまり気にしない方向で行くけど、僕のSNS宣伝用アカウント『スリップ工房』は僕の声で売れたようなところはある。

 

 悔しいが『悪霊の館』は僕の声で売れた。ストーリーやゲーム性よりも声を重視されているからこそ話題となったんだ。

 

 隠し要素として用意した悪霊の正体が何なのかというメモも内部データを探って見つけたという声ばかりで実際のプレイで探し当てられてる人は少ないし、若干高難易度として造ってしまった感はある。

 

 それに、僕の声を目当てにわざと悪霊に突っ込んでゲームオーバーになりに行くことがメインになってる…………

 

 悲しいよ僕は、予想の範囲内だけど盛り上がりの勢いが違う。

 

 母さんの会社との連携で既にグッズの先行予約が始まってるけど、そっちもあっという間に売り切れになっちゃってるし。

 

 もっとストーリーの深堀りをしないのかってルゥ姉さんも急かしてくるし、とりあえずは一旦このまま置いておこう。

 

 多分だけど、このまま作っても『悪霊の館』を超えられる気がしない。

 

 …………これがプレッシャーか。変にこれ以上の作品が作れなくて潰れてしまった、なんて業界ではよく聞く話ではあるんだ。

 

 僕だって、もしかしたらこのまま潰れて引退…………なんて可能性も。

 

 あーやだやだ!未来の事なんて今は考えられない!

 

 とにかく!今は『悪霊の館』の対応だ!

 

 グッズ関連で取材したいってダイレクトメール(DM)で送られてきているし、勝手に受けるわけにもいかない。

 

 だって製作者の僕は貴重な男性で、実母とはいえど大富豪に囲われていると言っても過言じゃない。

 

 下手な手は打てないなぁ。メディア進出は10歳の子供に重すぎるよ。

 

 ここも母さんと姉さんたちの助力が必要だ。

 

 ちょっと見通しが甘かった、そう後悔するが後悔はない。

 

 だって、これからもゲームを作り続けるからね。

 

 





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