パチパチと炭が焼ける音が聞こえる。
広い庭、やや暑くなってきた季節にやることは一つ。
バーベキューである。
もちろんだが、僕や母さん、姉さん達が肉や野菜を焼いているのではない。
専属の料理人やメイドさん達がテキパキといい感じに焼いて、それを僕たちに配ってるのを食べると言った完全に金持ちスタイル。
めっちゃでかい肉を丸々焼いて、焼けた部分から削いでいく豪快スタイル、嫌いじゃないよ。
本来なら自分で焼くのが筋というものだが、僕たちは金持ちなので自分で焼くことはない。
むしろ、家族の中で誰が料理できるのだろうか分からないまである。
世の中の女性は自炊してるのはSNSで見たりするが、そういえば男性の食事事情はどうなってるんだろうか。
「坊ちゃま。あーん」
「あーん」
「あっ!ずるいですわ!食べさせてあげる権利を与えて無いはずですわ!」
「これでも将来の旦那様ですので、これくらい当然です」
「もぐもぐ、でもみんな真似するからこれっきりね」
がーん…………という幻聴が聞こえた。
それも1人だけでなく僕以外の全員から…………いや、何で料理人の面々までその幻聴を頭の上に浮かばせてるの?調理の間に食べさせるつもりだったの?
ただ面倒というわけじゃなくて、みんながこぞって僕に肉や野菜を食べさせようと集まってきて、それを受け入れないと差が出ちゃうし普通に食べきれない量になるから禁じただけだもん。
いくら身長が伸びなかったり体格が良くならなくても胃の容量は決まってるから。
「後で減給」
「そんなぁ!皆さんだってやろうとしてたでしょう!?ねえ!?」
「いや?」
「まさかお坊ちゃまに『あーん』だなんてそんなそんな」
「そうそう、せめて奥様とお嬢様方がしてからでないと」
母さんからの冷徹な言葉に僕にあーんしたメイドさんが同意を求めるが、同僚に悉く裏切られて灰になっていた。
僕は知ってるぞ、視線を逸らしてるけどやる気満々だったでしょ。運ぶついでに僕に食べさせるつもりだったでしょ。
流石の僕も太るという概念には触れたことは無かったけど、流石に太るのは嫌だ。
喉に肉がつけば出せる声に制限ができちゃうからね。
「お坊ちゃま、どうぞ」
「こちらもどうぞ」
「野菜はまだまだありますよ」
「肉ですよ、お坊ちゃま」
「だからと言ってみんな持ってこられても食べきれないんだけど?」
それでも、自分が持ってきたものを僕に食べさせたいという欲を出して僕の前にこんがり焼かれた大量の肉や野菜が置かれる。
僕、ハワイアンな椅子に座ってのんびりしてる横に大量の料理…………
どう見てもセレブだ。ただし、一度も家の敷地から出たことは無いが、完全に旅行気分を味わえる。
ま、恐らく一生外に出るようなことは無さそうだけどね。
下手に外へ出るよりも家の中が安全。見慣れた人が一番いいし、何よりもゲームが作れる!
とは言っても、こうして偶に庭に出てみんなで団らんするのも悪くない。
だけど、まあ…………なんでこうやってバーベキューしているのかは、特別な日になったからだ。
「うふふ、まさか、ねえ?」
「こうして皆、同じ星の元になるとは」
「あれもこれも、全部スウェンが頑張ったからだろ」
「色々と変わるものね。私も、あなた達も」
今、ここにいる女性達全員妊娠した記念でバーベキューしているからだ。
…………言いたい事は分かる。でもいずれそうなるのは予感してて何もしなかったから僕が何か言うこともない。
むしろ、ここからだとも言える。
産まれるのはほとんど女の子だろうけど、もし男の子が産まれたら一大事だ。
そして、その子が僕のように囲われて似たような生活を送るのは何となく理解している。
そして僕のように精通したら毎日性夜漬けになるのは目に見えている。
そこで心が折られないか心配になる。
僕のように子作りが割とどうでもいい人種なんて少ないだろう。むしろ飽きがくるくらいに子作りしてても飽きない僕がおかしいのか。
そういった意味でも僕は考えなきゃいけない。
「名前をどうしましょうか?」
「スウェンに決めてもらうってのは野暮か」
「スウェンが先立でも、後に続くようにしないといけない。少し名前をずらすくらいにしよう」
「名案ね、何十通りは考えてるわ」
「紛らわしくならない?」
もう産まれる前提で話してるけど、まあうわついてるから何も言わない。
だって、みんな幸せそうだもん。
僕だってゲーム作るのは楽しいし、みんなにも楽しんでもらいたいから作ってるんだ。
え?内容がアレだって?
ははは、趣味だもの。
「皆様、写真を取りましょう。こことない記念です」
メイドさんの一人がカメラを持ち出して母さんに提案した。
しれっと高給取りなのでいいカメラを買うこともできるのだろう。何で職場に私物持ち込んでるの?
まあ…………僕との子作りでいろんな道具や衣装を持ってきてるから今更か。
「いいわね、みんなで集まりましょう。丁度いい記念よ」
「スウェン、行くぞ」
「おおー」
ひょいとロウル姉さんに抱きかかえられ、僕はみんなの元へと向かわされる。
中心は母さん、その両脇と後ろに姉さん達、僕はいつもどおり母さんの膝上に座る。
そして周囲にメイドさん達が集まり、いつ用意されたか分からない三脚にカメラを載せて、タイマー設定してくれたメイドさんが戻ってくる。
記念すべき全員妊娠確定日。わが家の歴史に今、刻まれる。
「いきますよー、さん、に、いち…………」
カシャリ
〜●〜●〜●〜●〜
「よしよし、撮れた撮れた…………」
遠く、遠く離れた場所。ギリギリではあるがケイ家の敷地から辛うじて外れた場所に彼女はいた。
いずれ有名になると豪語しておきながら、うだつが上がらない状況にヤキモキしていた彼女は記者という立場から一発逆転のネタを掴もうとしていた。
たまたま何か情報がないか調べていたところ、ケイ・カンパニーを率いるケイ家が何やら怪しい動きをしていたという話を聞きつけた。
金に物を言わせた男遊びが激しかったケイ家が、ある日を境に男を施設から引きずり出すのがピタリと止まっていたのだ。
男性を保護するための施設は内部は基本男性が動かしているが、外の事情は女性が管理しているのだ。
これは怪しいと思った記者はその施設の外回りで働く友人から情報を得つつ独自に調査を進めていった。
ケイ家で家事をするメイドも厳しい審査ではあるが一度大量に雇ったという歴もあり、今再び雇い直しが起こっていることも掴んだ。
かつてケイ家が雇っていたというメイドに突撃取材をしたが口が堅くて情報を得られなかった。
否、妊娠したから一時的に職を離れていることだけは得られた。
流石に大企業相手に不法侵入をかますほど命が惜しくない訳ではないのでギリギリ言い訳がつくラインで張り込みを行って待ち続けていた。
そして今日、最高のスクープを激写することができたのだ!
「これは高くつくぞ…………まさか男の子があそこに居たなんて」
男遊びが急に止んだのも納得だ。家で飼えば、わざわざ買う必要がなくなったからだ。
「全員、あの子で遊びつくして妊娠したって訳か。いいなぁ…………でも中古でもあるんだよなぁ」
それを言ったら施設に居る男性は幼い子供以外は全員が中古ではあるのだが、男を買う余裕すらない記者は明日の糧と遊ぶ金のためにケイ家の人間とメイド達が集まっているところを激写する。
「へへっ、後は面白おかしくネタにしてやるぜ…………」
もはや用は無いと言わんばかりに撤退する記者。
文章の内容を考えるのにも時間は必要だ。
高いカメラで遠くもキレイに写るようにしたのだから、写真の状態も入念にチェックしないといけない。
彼女の記事が大売れするまで、あと1週間。
『クリスタルロボ・洞窟王国の再生記』の発売日とかぶってしまうのである。
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