今日はついに『クリスタルロボ・洞窟王国の再生記』の発売日!
色々協議して内容もしっかりと固まって、ダウンロード専用として発売だ!
…………前から思ってたけどダウンロード専用しか発売できないのって結構問題あるんじゃない?
ディスクとして売るならオマケで人形だったり設定資料集を作って値段を吊り上げながら売ることが出来るけど、それが出来ないのは大変だと思う。
まあ、僕のせいなんですが。
皆、男性に飢えてるから男が出演しているだけでも売り上げがかなり伸びる。つまり、取り合いになる。
生産側としては嬉しい悲鳴ではあっても、小売店とかで売る店によっては相当な苦労を掛けることになる。
そこら辺は畑違いだから口を出すことは出来ない。そもそも僕はプログラマーであり声優だ、はっきり言って商売の細かいところは分からない。
なので全身全霊を持ってゲームを作ります。手を抜くことは許しません。
では、僕とお姉ちゃん3人でソファーに座りながら『クリスタルロボ・洞窟王国の再生記』の売れ行きを見てみよう。
「…………うわ」
「予想はしてたが、やっぱり怖くなるなこれ」
「前のアレと比べたら勢いは…………いえ、普通のゲームの売れ行きと比べるのも烏滸がましい伸び方ですわ」
「みんな楽しんでくれるかな」
「スウェンのゲームを楽しめない人いる?」
「ホラゲー鬱ゲーは人を選びますわよ」
それはそう、僕は全く反論できなかった。
わかってる、僕の作るゲームは尖ってるって。でも止められない、だって好きだから。
クリスタルロボも作るのは楽しかったけど、一応昔のゲームという土台があって現代の技術をふんだんに使って進化させたから自分が作ったという感覚は薄いんだよね。
だから、隙を見て新しいゲームを作る予定だ。
まだテーマもプロットも何も決まっていないけど、クリスタルロボが発売されたから自由時間が増えるんだ。
制限されているとはいえ、絶対に作りたいという意思はある。
これをどう通すか、それはまた考えよう。
「販売開始1時間で200万本、えぐい伸び方してる」
「スウェンだからな。これくらい当然だろ」
「いえ、スウェンだからって普通ではありませんわよ?」
「僕も驚いてるもん」
「「「スウェンは驚かす方でしょ!」」」
そんなー、僕だってずっとこんな売れ行きになると思っていないもん!
だけど、男性の仕事って実際あまり表に出ないし、テレビにも出るには出るかと遠い存在で物語の一部のような存在だ。
僕のようなプレイヤーという消費者に直接語りかける声優みたいな職は本当に無い。
だから男声として女性が頑張ったりしている。
…………やりたい事とは言え、声も全部僕がやるんだけどね。
「どうせ大ヒット間違いなしだ、よっぽどのバグが見つからない限り苦情もないだろ」
ダウンロード数を見るのは面倒になったのか、ロウル姉さんが立ち上がり、どこかへ行こうとする。
「ロウル、どこへ行くのですわ?」
「ピザの宅配頼んでんだ。こういう時は、うちのメイドが作ったのより宅配ピザが美味いんだよ」
「ピザ…………どこの?」
「ジェンガピザだ」
「賛成、スウェンも食べよう」
知らぬ間にロウル姉さんが宅配ピザを注文していたようだ。
うちの食事は基本的にメイド達が作ってくれている。なんか資格もあるから栄養とかカロリーとかバランスが取れてるのだとか。
定期的に運動していても、食べ過ぎたら太るし頭が上がらない存在でもある。
そんな関係なのに堂々とジャンクフードを頼むロウル姉さんは心がとても強いと思うの。
だってほら、いつでも動けるメイドさんがずっと待機してるのに自分から取りに行こうとしてるし、意義を潰すようなものではと思われてるんじゃないか?
あ、チラッとメイドさんの顔を見たらクシャってなってる。見ちゃいけないような怒りと悔しさがごちゃ混ぜになった顔をしてる。
見なかったことにしよう。
そう言えば外食系のご飯は食べた事がなかった気がする。お菓子類は気になるから小遣いで買ってみんなで食べたことはあるけど、ご飯だけは絶対にメイドさんの料理だったな。
「どんなの?」
「とにかく油だ。ギトギトで背徳感のある…………夜に食べると最高の一品だ」
「貴女、まさか」
「おっと、これ以上はいけない。スウェンにもこの味を覚えさせて引き入れるんだからな」
「よし、ロウル姉さん表出て。殴り合い」
「ルゥ如きが私に勝てると思うのか?」
何で喧嘩になるの?しかも珍しくルゥ姉さんが前に出て積極的だし。
ロウル姉さんも3人の中では一番弱いのに調子に乗っちゃって…………
もうアレは放置するしかない。次帰ってる時はロウル姉さんの顔がボコボコに腫れてそう。
まあ、喧嘩はともかくピザを食べるのは久しぶりかもしれないな。
前世では大学サークルの打ち上げで食べるくらいだったから、その時の味は全く覚えていない。
記憶の味を思い出せないなんて、相当歳をとったのかなぁ?
いや、普通に高いの食べてたせいでジャンクな味を思い出せなくなっただけか。
「ぼっちゃま、ピザなら私達が作りますので」
「手塩にかけて育てた肢体を汚すわけにはいきませんので」
「僕、何として育てられてたの?」
つくづく思うけど、やっぱり飢えが尋常じゃないというか、とてもいいハングリー精神だと思いますよ僕は、はい。
ともかく、しばらくは『スリップ工房』としてもお休みだ。
次のゲーム作りのために、しっかり休むぞー。
こうして『クリスタルロボ・洞窟王国の再生記』は世界中に広まった。
売れた決め手はやはり男性声のNPCが登場することであった。
ただし、このゲームの制作に関わっているのが悪名高き『スリップ工房』である故に警戒はされていた。
確かに本編では登場する妖精やロボット達が傷つき倒れる場面があるものの、のちに復活できるのをあらかじめ知っているため実際の場面での雄叫びや悲鳴のダメージはプレイヤーが思うよりも少なかった。
主人公のクリスタルロボが喋らないのが残念という声もあるが、それはのちに隠し要素のメモで破壊されることになる。
そういう物を用意するのが『スリップ工房』らしいのだが、プレイヤー達は『スリップ工房』を意識すると物足りなさを感じてしまっていた。
その物足りなさが一体何なのか、ひとまず男性NPCの声を堪能してから彼女達は考えるのであった。
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