「うーん、前の二の舞だなぁ」
後ろからメイドさんに見守られながら僕はカタカタとパソコンでエゴサしていた。
クリスタルロボを発売したのはいいがいつまで経っても攻略が進まない。
有志の攻略サイトもズルズルと引きずったような話ばかり載せており、イチャコラタイムを楽しく過ごしているようだ。
もったいないと思うのはどうしようもない、だけど僕はあえて言おう。
「もったいない!」
「なにがもったいないんですか?」
「だってぇ、クリア率低すぎて…………」
「買ってもらえるのはいいことではないのですか?」
「そうだけどさぁ…………」
事実、滅茶苦茶売れて色々と貢献しているのは違いない。だけど納得いかない部分もある訳で。
動画を漁ってもラスボス攻略とか一切ない。上げる意味もネタバレになるから自重する人は居るんだけれど、序盤から中盤にかけてダラダラしている感じであった。
ラスボス撃破のトロフィーも0.1%以下しか取ってくれていないし、クリアする気がさらさらない。
しいて言うならほのぼの過ごしているともとらえることもできる。
だけど、やっぱり開発者としてはクリアしてほしい。
クリア条件が分からない筈はないけど、拡張性がもっと高くなるのは言うまでもないのにクリアしない。
これは困ったものだ、SNSでクリア率を告知したところで変化が起きるとはいえないし…………
こういうのって先人が進んでやればみんなも釣られてやるのかな?
動画で思い出したけど、有名配信者がゲームを攻略するだけで再生数を稼ぐみたいな事もあった。
それを模してかゲーム開発会社が進んで人を雇ってゲームの良さを教えるためにゲームをさせるみたいなのもあった気がする。
『スリップ工房』も既に一個人の域を超えてしまって企業に囲われている。
つまり、公式で人を呼んで進む楽しさを教えるべくプレイさせた動画を作ればいいのでは?
ちんたら地道に採掘して貢ぐよりも効率は良くなるし、その分だけイベントも沢山見られるようになる。
正直な所、内部の好感度もストーリーを進めないと上限が上がらない仕組みだから絶対に進めて欲しい所なんだよね。
「よし決めた」
「奥様に繋げますね」
「待って、早い早い。まだ草案だから」
「坊ちゃまは何事も早急ですので何かしそうであれば報告してほしいと言伝を頂いているので」
「あれぇ?」
僕ってそんなに信用なかったっけ?ゲームに関してはちょっと性急になっちゃう節はあるのは認めるけど。
下準備だけなら今からやっても問題ないか。
誰かにやらすより、まず自分で試走して実際のゲームプレイ動画作成はどのようなものか確かめないと。
なんたって時間はたっぷりある。
録画環境も今使っているパソコンがあれば十分。製品版ソフトも事前に持ってるからいつでもプレイは可能だ。
改めて自分のゲームを一からプレイするのって不思議な心地だ。
物は試し、やるだけやろう。やらないチャレンジよりやる失敗。
変にこけてもしかたないの精神でいこう。既に単品の売り上げだけでも相当なことになっちゃってるから多少の失敗は問題なし!
リアルタイムアタックほど上手ではないけど、開発者として出来る限り最短でクリアできるようプレイしてみせよう!
〜●〜●〜●〜●〜
「よぉし!クルィアだぁ!(巻き舌)」
「お疲れさまでした。ジュースをどうぞ」
「ありがと、んちゅー」
いつの間にか後退していたメイドさんが持って来てくれていたジュースをストローで飲み干してようやくクリアできたぞこの野郎!
自分で作っておいて最高率を最も分かってたつもりだけど、資源をレベルアップさせるための施設を作る素材を持つボスを倒すのが思っているよりも難しかった!
もしかして、普通にボス戦が難しいとかで進んでない…………?
今更ながら少し不安になってきた。
僕がやってきたのは最速クリア、ギリギリクリアできるレベルで倒そうとしてきたんだから難しいのは当たり前か。
とりあえず、動画制作として最初の段階は突破で来た。次の段階に移行しよう。
まず、動画全体の時間を確かめて…………4時間かぁ。
随分頑張って絞った方だけど、これから編集に時間を使うと考えたら何倍もかかりそうだ。
誰かが言った、数時間作業して出来た動画は7分程度。
労力の割に得られるものは極僅か。しかし、この極わずかなものが黄金となった時の成果を人々は忘れることはできない。
そのため、動画投稿者という肩書を作ってしまうくらいにはメジャーな職業になっているのだから。
ある種、エンタメと博打を備えた非常に難しい自営業と言って過言じゃないけどね。
「そろそろ本格的に休憩をとった方がよろしいかと思いますよ」
「そうかなぁ?」
「これ以上、作業をしているとお嬢様方が来ちゃいますよ」
「なにその脅し文句は」
お姉ちゃんたちが来たところで何か問題でもあるのかな?
僕は一度決めたらやり切るつもりだよ。動画制作自体は過去に作った『悪霊の館』と『めざましの刻』で
でも、これはただ流していくだけでなく言葉を付けて解説もつけなければいけない。
誰にでもわかりやすく、それこそ馬鹿でもわかるとついてもよいほど簡単に作らなければいけない。
この簡単というのがとても難しい。
操作だって前へ進む、横へ向く、横へ移動する。これだけでも三パターンあるのを簡略化するために相当な労力を必要とされる。
ゲームによって操作方法が大きく変わる、というのもこう言った事情から存在する。
カメラを右に向けるために素直に操作スティックを右に倒すものがあれば、ゲームが違うと左に倒さないといけないといけない場合があったりするからプレイヤーとして混乱しちゃうよね。
ゲーム創作の話は一旦おいといて、動画作成の話だ。
解説するって話はいいんだけど、生声を使うのはちょっと頂けないかもしれない。
男の声というだけで『デドセレ』売れてる節があるんだ。僕が製品外で喋るのはまずい。
となると誰に解説してもらおうか。悩む、悩むなぁ…………
人を雇ったとしても、男を囲ったか何とかで絶対に炎上するし。その人のためになりたいけど悪い方へ向かうかもしれない。
完全に匿名性を持った人なんていないし、うーん、どうしたものか。
「スウェン、何して遊んでるの?お姉ちゃんも混ぜて」
いきなり登場したのはルゥお姉ちゃん。ノックもせずババーンと扉を開けて登場したものだからメイドさんから向けられてる目が冷たくて泣きそう。
そういえばお姉ちゃん達の仕事が終わる時間にもなっていたんだった。大学生のルゥお姉ちゃんが帰ってくるのは他のお姉ちゃんや母さんよりももっと早い。
あ、いっそバイトがわりにルゥお姉ちゃんに解説してもらう?いや、でもちょっとした事で身バレしたら面倒かも?
「また考え込んでる。ほら、お姉ちゃんのおっぱいでぎゅーってしてあげるから」
「お嬢様」
「凄い、私、雇い主の娘なのにメイドに圧かけられてる」
いつものコントは置いといて「スウェン?いつものことって思った?」、僕以外で誰かが解説するにしても、本当に直接関わったかどうかを有耶無耶にできる方法はないだろうか?
いくら変えられるとはいえ男の声は皆に刺激が強すぎる。女の人、匿名で何も素性がわからなそうな…………
ん?待てよ、人って考えていたけど別に人じゃなくてもいいのでは?
あった筈だ、僕の前世で動画投稿者が使っていたある手法が。
「ルゥお姉ちゃん」
「なあに?抱っこの要求?」
「ちょっとアルバイトしてみない?」
「え、まさかのビジネス的要求?」
思い立ったら行動する。少し暇そうなルゥ姉さんに
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