「といった感じで動画の再生数も大きく伸びてるよ」
「本当にこれ、いえ、なんでもないわ。なんだろうこれは…………」
何故か困惑している母さんをよそに、僕は先日公開した最速クリアを目指す動画の再生数を確認していた。
先日、といっても事前に作っておいた動画を毎日投稿しているため7日ほどは再生数が爆伸びするサイクルは作っている。
最初から男性人気で伸びるというあくどい考えで作ってはいるけど、実際の動画内でキャラ同士の会話は最低限だし、何なら最初の数文字を発声した瞬間に次の台詞に移行するくらいのスピードで飛ばしているから強みを全く生かしてない動画になっている。
それでも再生数をとっているのは、まあ単純に興味を引いているだけに過ぎない。
いずれ、長期的な目線で見たら似たような動画が増えるのは間違いないからだ。
この手法の動画はとある界隈にて長く愛されてきた手法かつ競技性があるにもかかわらずカジュアルにネタとして提供できるから人気が出たものを参考にさせてもらいました。
実際、多少のミスも普通ならがっかりされたり白けるのだが、笑えるネタとしてカバーしつつ多くの感情をまき散らしてリセットすることもできるからね。
「正直、最初の出来から不安だったけど化けるものね」
「あ、あはは、あれはまあ、うん」
原形を留め過ぎてたら企業として死ぬほど叱られる案件ではあったから仕方ないね。
で、動画の内容自体は何度も言うように出来る限り最速クリアを目指す動画…………の筈でした。
製作者が神プレイを魅せられるだなんて誰が言った?
普通に何回もガバりました、ハイ。
洞窟内の鉱石生成プログラムは完全に運が絡んでて狙ったようにアイテムは取れないし、モンスターも低確率とはいえ数が多かったり面倒なモンスターが湧いたりと恵まれない部分が多かった。
それに自分で作っておきながらアイテム特性を忘れて強制的に磁石にくっつけられたり、変な敵を呼び寄せてしまったりとやらかしが多かった。
その度にルゥ姉さんの声で作った謎のキャラクター(名前はいまだに決まっていない)に絶叫させたりして、楽しかったです。なおプレイ中は普通に発狂しかけた。
ま、自分が世界で最初の走者なので世界記録ではあるんですけどね初見さん。
独自の文化はさておき、結構な関心が集まっているようで妖精たちやロボットたちの新しいボイスを求めて動き出した人たちも多くいるようだ。
コメント欄でもそれは見れる。
「やっぱり先駆者がいないと進まないものは進まないんだね」
「先駆者、というよりも独走して誰もついてきていないだけよ」
思っているよりも辛辣ではあるが、まあ前世の記憶を持ち込みやってる僕からすると至極当然と言いますか。
まあ、これでもっと開拓の幅が広がったら何よりだ。
それに自分でプレイして改めて見つけられなかったバグとかあったし、やっぱり本環境での実践が一番だなガハハ。
嘘です、めちゃくちゃビビってます。実際に最速クリアに関して意図せず起こったバグも利用してプレイしたから後でゲームバランスが壊れないか確認しつつ修正します。
なんで試走の時とテストプレイ時に見つからなかったんだよ!本当にさぁ、ヒヤヒヤしたんだからなぁ!?
こほん、クリエイターとしての発言はここまでとしよう。
動画投稿という結構重い作業も終わったことだし、しばらく自由の身である。
もちろん敷地内しか移動できないというのはご愛嬌。元々、外に出たいとかはあまり思ってないし。
むしろ外に出た方が面倒だからね。
こういう時ほど男が少ないのが厄介だと思う。
社会進出も極々少数、1人いるかいないかだし海外はむしろ
そうお前は恵まれた環境で好きに過ごせる僕は勝ち組なのだろう。
「坊ちゃま、客人です」
「客?ああ、いつものやつだね」
メイドさんに僕の客と言われてすぐに誰か思い浮かんだ。
今は休職扱いであるが、僕の子を産んでくれた元メイドさんたちである。
子育てとして離れで暮らしており、定期的に子供を連れて僕に会いに来てくれるのだ。
男性に対して非常に会い辛い現代社会にとって、隔日とはいえど非常に好待遇である事に変わりない。
父親の顔を知らずに一生を終えることはよくあるのだ、メイドさん達にとって普段は毎日会えていた頃も懐かしいが、どうやら子供と一緒に父親と過ごすという時間は得られるものではない、らしい。
母さんだけじゃなく、姉さん達も父親のことについて何も知らない。この僕だってそうだ。
だから毎日よりも家族として過ごした時間の方が貴重なのだとか。
「あうー」
「おお、よしよし、いいこいいこ」
「私にもいいこいいこしてくれませんか?」
「はい、レギュ違反」
「退場よ退場」
「ちょ、私はあの子の母親です!あの子の後にイチャイチャするんですからー!」
子供を産んだ後だとしても性欲は変わらない、むしろ悪化している気がしてならない。
わめきながらズルズルと現職メイドさんに引きはがされていく様を見て引きつつも、やっぱり今の光景が異様である事に気づくことは出来なかった。
こういう風に子供をあやす男は、今の時代はどこを探しても僕しか居ないという事実。
それを世間的に羨ましがられる事実。
そして、妙に敷地内に建物を建築したことによって探られたことで広がる波紋。
母、姉たち、メイドさんたち、そして子供たちと閉鎖的な環境で人口が増えていく不自然さから様々な邪推が呼ばれていたことにネット上でしか情報を得られない僕では知る由もなかった。
ケイ家で10年以上隠していた僕という最大の爆弾の導火線に妙な方向から火がつけられるとはこの時誰が思っていたのか。
「あ、なんか臭う。おむつ替えようか」
「おむつ替え!わ、私にもしてほし」
「はいレギュ違反」
「離してー!」
こんな赤子相手に嫉妬心を燃やして変態プレイを隙あらばねじ込む平和ボケの面子が気づくのは数日たってからである。
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