僕ことスウェン・ケイは欲しいものがないかと聞かれたら『今の所はない』と答えるだろう。
だってゲーム作れる環境はあるし、ご飯も作ってくれる人がいて、家族もいる。
まだ20歳になってない、それどころか14歳なのに子供も居る。
これら全て養育費も込めて全部親が出しているという点でなければ割と快適だろう。
「坊ちゃま、そろそろお時間かと」
「もうちょっと…………もうちょっと…………」
「もう普通に寝る時間です。これ以上の作業は子作り以外禁止になります」
「もうちょっと!あとちょっとこれだけ完成させてから!」
「そう言って30分も経ってます!終了です!」
「あー!あー!モーションがまだ出来てなーい!」
あとはゲームを作る時間が欲しいくらいかな。
メイドさんに抱えられ、僕とメイドさんは共にベッドインする。
「坊ちゃまが悪いんですからね!時間を守らず仕事ばかりして!奥様もお嬢様方も割と怒ってるんですよ!?」
「だってだってぇ!アイデアが出たもん!もっと作るの!鉄は熱いうちに打たないと冷えちゃうもん!」
「動かすのは下半身だけにしてください!複眼副乳ケモ老人が性癖の私がノーマルになった責任もとってください!」
「いや、それは単純に性癖が拗れてただけ」
「急に冷静にならないでください」
下半身事情の責任を僕に押し付けないでくれ、流石に人外モノは手に負えない。
ある程度は演じることは出来ても根本的に触れることが出来ないジャンルは存在する。
僕はどうあがこうと人間なので人外になることは出来ない、絶対にない、そう信じている。
仮に神様転生といってもそこまで融通できるようなものではないはず、下手なアレが無いと信じている。
クリスタルロボで着想を得たものを形にしようとしていたけれど、どうも当てはまりそうな型が思いつかない。
オープンワールドという題材は果てしなく広いフロンティアと言える。前世でも広く自由に冒険できるゲームというのはかなりメジャーな物であった。
一本道の道筋で語られる王道物語もいいが、多岐にわたる選択肢や活動範囲によって結末が変わる物語も捨てがたい。
前者はクリスタルロボ、後者は『デッド・セレクション』でやったとはいえ作りたいものは作りたい。
今度は僕の趣味全開でダーク系なものが良い…………んだけど話の内容が思いつかない。
敵となるモンスターっぽい人型のモーションは作ったのはいいが下手するとお蔵入りになってしまいそうだ。
ううう、作る下地は出来ても肝心のものが無いジレンマ。またホラー映画でも見て着想を得る必要があるかなぁ?
「坊ちゃま、今日は台本を持ってきまして…………」
一緒に布団に潜っている中で、メイドさんはどこからか紙束を提出してきた。
ここ最近、普通に交わるだけではマンネリ化するのではないかと思ったメイドさんの1人が提案した新しいプレイ、と言ってもちょっとした劇をやるようなものだ。
僕の声、そして台本を読み込んでアドリブ大半な願望を叶えるという形だ。
僕の演技力の修行にもなるし、メイドさんの拗れて捩れた性癖をほんの少しだけ満たすことができるウィンウィンな話しだ。
僕の負担が大きい訳でもないし、皆が考えるお話を見るのも悪くないと思っている。
まあ、たまにNGなドギツ過ぎる物もあったりした。この話が提案されて最初の頃だったので今は大分なりを潜めている。
着ぐるみ同士でやるみたいな話もあったからなぁ。そういえば前にお姉ちゃんとお母さんも混ざってコスプレでした事もあったな。
「題名は『王子騎士、オークに堕つ』です」
「僕がオークに負けて凌辱されるって話だよね?僕が王子からオークになるみたいな話じゃなくて」
「はい、私がオーク役でブヒブヒ言いながら坊ちゃまを襲います」
「何でオーク?」
「人間が唯一ケモノに近づけるのが豚だと思うんですよ。でも坊ちゃまの顔にこれを付けるのは忍びなく、下手に変形させると坊ちゃまの持ち味が殺されるし、なにより私が物理的に殺されるので…………」
これまたどこから取り出したのか分からない、なんかこう、二本のフックがついたものを取りだすメイドさん。
うーん、うーん?この言い分は分からないでもない、のかなぁ?
僕にも理解できるものもあるとはいえど、全てを理解できるわけじゃないことを前提としてなおかつ僕の同意を得てするって決めている。
僕は『くっころ』してる王子を演じるだけでいいんだろうけど、本当は『ソレ』を付けたいんだろうなぁ…………
王子騎士というのは僕が前世知識で知っている姫騎士の対となる存在という認識で間違いないようだ。
王子で騎士…………普通に考えたら偉い人が何で前線で出ているんだろうね。特に襲われる可能性がある敵生成物の前に立つ形で。
そこら辺は考えても仕方ない。偉い人がひどい目に合うのが好きっていうものだから深く考えないでいっか。
でも偉い騎士が何らかの理由で堕ちる話…………これは題材にできるかも。
「では坊ちゃま、始めましょう」
「あ、うん」
なんだかんだと準備が整っているので寝る前の一戦、いや一演を済ませよう。
新たなアイディアと共にまた一晩経つ。翌日に思い付いたことを滅茶苦茶に書いて描いて抽出してゲームを作る。
しかし、まさかほんのちょっぴりだけとはいえ邪魔してこようとする存在が居るという事を翌日知るのであった。
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