カタカタカタ、と僕はパソコンに向かってキーボードを連打する。
画面にはただひたすらに文字が映っていて、それらは全て僕が思いついたことを素直に書き記してくれる。
偶然、何らかの意図があったのかは知らないけど男性管理委員会という人たちがやってきて、ちょっとした会話をしてからご帰宅願うことが出来た。
直接外の人と接触したのはいつくらいだっけ?マールさんが時々会いに来てくれはするけど、他はあまりなかった気がする。
というのも、会社の人と話すときはリモートで話しているからだ。
僕の場所は社内で殆ど特定されているようなものだけど、もし漏らしたら疑いが行くのはリモートで接触してる人たちということになるので怒りを買いやすい。
割と薄氷の上で仕事をやっている訳だが、外部の人との接触はインスピレーションを与えてくれる。
さて、僕が今何をしているのかというと簡単なシナリオ製作という訳だ。
もし、何らかの間違いがあったのなら僕はどうなっていたのやら。
そう思うとちょっと怖くなるが、ちょっとしたことで恐怖に陥るということに僕は注目した。
タルラさんはもちろん、黒服の人たちは僕と合わせてみたらどうしても僕が不利だ。
メイドさん達や母さんがいたから割と堂々と出来ていた部分はある。
1人だったら?息を殺していたか堂々とエロで賄賂していたと思う。
そんな感じで立ち迎える手段は限られていて、強大な敵に立ち向かわなければならない。
これって正しく王道じゃない?
実際に僕好みのダークな世界観に合わせたら色々とアイデアが浮かんで楽しい。
群がって襲い掛かるという点で、一つ思い付いたのは無双ゲー。
確かに爽快だ、無限に戦い敵を蹴散らしていくのはさぞかし楽しいだろう。
それ、足りないんじゃないか?
もっとアドレナリンが出るような方法、それは危機的状況を脱出できる瞬間だ。
限られた武器、襲い掛かる数多くの雑魚、その合間に現れる強敵でリソースを大きく消耗して今後の雑魚敵の対応に苦戦して、それでも乗り切った時の快感!
バランス次第ではクソゲー扱いになっちゃうから扱いは非常に繊細になるけどね。
ともかく、シナリオを足踏みしながら書いていく。
骨子が無ければ肉は付かない。いびつなものはプライドに関わるし、まともなシナリオを作りたい。
徹夜明けみたいな変なものを世間にお出しするのは憚れるし。
え、前に作ってきたゲームは変なゲームだったって?
ははは、何をおっしゃるのやら。
「スウェーン、お姉ちゃんが来たぞー」
ばん、と勢いよく扉を開けるのはロウル姉さん。
加工が入ったスーツを着崩して礼儀正しく、ワイルドな風貌となった姉さんがずかずかと硬い靴を居心地悪そうにしながら近づいてくる。
「まーたパソコンの前で何かやって…………」
「まあね、思いついたらさっさとやりたくなるもん」
「いや、何をやってんだよ」
「シナリオ作成なんだけど、細部は今のところ気にしないでね」
「いや、そっちじゃなくて足の方」
ぐにぐにと足踏みをする僕の足にロウル姉さんの視線は向いていた。
「ああん…………坊ちゃまぁ…………もっとぉ」
「何のプレイだ、これ」
「ここを揉んでほしいって言われて、代わりに足で踏んでるの」
「踏んでるというか、揉んでるというか、指の間で…………うわ、すご」
実はずっと踏んでいたのは本日の御付となるメイドさん、僕がオーバーワークにならないよう監視する要因だよ。
既にこうして多少妥協したとはいえメイドさんの要望を聞いて無力化に成功し、僕はパソコンに向かえている訳である。
「まーたズルい事してんのか。母さんにバレたら怒られるぞ」
「どうせ売り上げのことで何も言えなくなるからいいもん」
「いろんな意味で悪い子に育ったなぁ」
ガシガシと僕の頭をなでてくれる姉さんであるが、これでも妊娠中である。
父親の話は僕の精神的健康上の関係で一端置いといて、身重のままで各地を回り投資家として大活躍している。
投資ってお金とかの移動が滅茶苦茶大きいくらいしか僕は知らないのでとても大変な状態じゃないのかと思っちゃうんだ。
それでも姉さん達は「平気平気」と僕に気遣ってかそんな言葉しか言ってくれない。
何でだろうね、滅茶苦茶心配してるのに表面上はケロッとしてるもん。
こっそりメイドさん達にも聞くけど平気な顔をしているというので、僕はそれ以上知りようが無い。
むしろ元気になっているような気がしてならないんだけど、まあ無理だけはしないようには言っている。
陰で何しようと、僕はここで引きこもってるような状況だから知りようがないんだけどね。
「まあ、下で喘いでる奴は一端置いといて、次はどんな奴を作るつもりだ?」
「ホラーもの、それも群衆で襲い掛かってくるやつ」
「またマニアックな…………」
「武器も出て敵を殺せるから安心安心」
「物騒が過ぎる」
また何か企んでるだろって顔をされてるけど、僕は何も企んでないよ。
ただ皆んなを楽しませながら恐怖のどん底に落としたいってだけで。
幸いにもこの前のクリスタルロボで3D世界の作り方に携わったおかげでオープンワールドまでは行かなくとも広い世界を作れるようにもなった。
視覚的効果も考えないといけないから、僕だけじゃもう難しい。
またケイ・ゲームズの皆んなに頼る事になるなぁ。
「あぁん、そこっ!もっと強く摘んでぇ」
「そろそろ黙らせないか、これ」
「もう3時間はやってるよ」
「うわ…………」
姉さんがドン引きする中、僕は淡々と指と足を動かしてシナリオを作るのであった。
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