文字数はバラバラかも。
ショキ・・・・・・ショキ・・・・・・ショキ・・・・・・
「ん・・・・・・?」
夜も更けた丑の刻、異様な音に目を覚ます。
「・・・・・・」
月明かりも頼りにならない曇りの夜。
長屋の中か、それとも外からかもわからない音。
「・・・・・・米を研いでいるのか?」
米に限らず、穀物を水で研ぐような音だと解釈した。
「こんな夜更けに・・・・・・朝餉の支度か?・・・・・・いや、こんな時間にこの音を聞いたことはないしな・・・・・・」
自分の近くから聞こえる音。
しかし、どうにも遠くから聞こえるように感じる。
ショキ・・・・・・ショキ・・・・・・ショキ・・・・・・
外に出てみても音が聞こえる。
「・・・・・・」
辺りを見回してみても、灯りが見えない。
こんな夜にはあの日を思い出すが、今はそれどころではない。
ショキ・・・・・・ショキ・・・・・・ショキ・・・・・・
まだ、聞こえる。
「誰かいるのか。からかわないでくれ」
声は夜の闇に吸い込まれ、そのまま消える。
返答は無い。
「・・・・・・いくら幽霊長屋と言われていたとしても、限度があるぞ!」
語気を強めて言い放つ。
しかし、これもまた夜闇に消える。
ショキ・・・・・・ショキ・・・・・・ショキ・・・・・・
「・・・・・・」
これ以上は不毛。
そう判断し、長屋の中に戻る。
寝転んでみるが、どうにも目が冴える。
よほど音が気になるらしい。
「・・・・・・」
ショキ・・・・・・ショキ・・・・・・ショキ・・・・・・
「・・・・・・」
ショキ・・・・・・ショキ・・・・・・ショキ・・・・・・
「・・・・・・」
ショキ・・・・・・ショキ・・・・・・ショキ・・・・・・
「!」
刀を抜き、構える。
鞘を腰に構え、納刀して居合の構えをとる。
「・・・・・・空の型・・・・・・」
周囲の音に全ての神経を向ける。
もとより今は夜。頼れるものは限られている。
「・・・・・・」
自分の心臓の音が最も大きく聞こえる。
血の流れる音が耳に流れる。
「 」
抜刀、その後納刀。
切った感触は無い。
しかし、確かに切り裂いた気がする。
「・・・・・・なにをしてるんだ俺は・・・・・・」
冷静になり、今の自分を省みる。
鞘を手で掴んで抜刀し、何かを切った気分に浸る。
それも夜更けに。
「・・・・・・」
握ったままの刀を置き、あぐらをかく。
思わずため息が出る。
ショキ・・・・・・ショキ・・・・・・ショキ・・・・・・
「まだ聞こえる・・・・・・」
どうとも言い表せない羞恥を感じる中であってなお、音が聞こえ続けている。
「・・・・・・昨日、そう疲れるような事をした覚えはないが・・・・・・」
再び寝転んでみる。
音の大きさは変わらないが、こうすれば少し楽になった気がした。
「研ぐ音・・・・・・そういえば、以前師匠に聞かされたことがあったな。水辺・・・・・・それも川の近くで小豆を研ぐような音が聞こえることがある。それは小豆洗いという妖怪が出していると。それに続いて、台詞もあると。確か・・・・・・"小豆洗おか、人取って喰おか"、たったか・・・・・・うん?」
瞬間、ピタリと音が止まった。
今まで自分の睡眠を邪魔していた雑音が無くなり、戻った静寂。
「・・・・・・由はわからないが・・・・・・まあ、いいか」
まぶたを閉じて眠りにつく。
どうせ朝には忘れていよう、そう自分に言い聞かせる。
そうして丑三つ時が過ぎていく。
実際の小豆洗いとはちょっと違う。
でも良いかな。そう思った次第です。