宮本物怪録   作:ダイダゼノンド

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十二日目 オバリヨン

「いやー、助かるよ伊織さん!」

「気にするな」

この日、伊織は助之進とともに夜回りをしていた。

「にしても、伊織さんもよく手伝ってくれるよな・・・・・・この前、変質者に目をつけられたんだろう?昨日みたいな野盗退治はともかく、夜回りなんておっかないとか、二度とごめんだとか、思わなかったのかい?」

「・・・・・・まあ、あの手の輩は一度きりだろうさ。それに、俺にも稼がなくてはならない理由もある」

「へえ?・・・・・・また誰か連れ込んだのかい?」

「違う!・・・・・・壁の修理だ」

「壁?」

「俺の住んでいる長屋の壁壊れていてな。それで、直すために金がいる」

「何だそういうこと。伊織さんのことだから、てっきりまた別嬪さんと懇ろになったのかと・・・・・・」

「そんなことは一度も無い・・・・・・」

「ははは!あんなに侍らせておいてよく言うよ!」

「・・・・・・何度も言うが、そういう関係ではなかったからな」

「へいへい、そういうことにしておくよ!」

軽口を叩きながら夜の浅草を回る。

盈月の儀を通し、己が守り抜いた平穏に物足りなさを感じるが、その物足りなさもまた良いと思える。

「そういやあ伊織さん、こんな話知ってるかい?」

「なんだ?」

「近頃この江戸の町に、妙な虫が出るって話!」

「虫?」

「そう!見た人によると、蛹やらいもむしみたいな姿をしていて、塀に張り付いてたり地面を這ってたりするらしい!」

「ほう」

「そんで、この虫が大きくてな・・・・・・だいたい一尺!」

「・・・・・・そんな虫がいるわけがないだろう」

「いやいるって話だよ。なんでも八百屋の婆さんが言うには、人の背中にくっついてたってさ!」

「・・・・・・」

荒唐無稽な話に呆れるが、化生の類であるならば戦い方は心得ている。

「いやー、わかるよ?伊織さん興味無いだろうなってのはさ。でも黙って歩くのも暇だろう?」

「まあ、暇つぶしにはなるか」

「そうでしょうとも!・・・・・・とわあっ!?」

「大丈夫か?」

いきなり倒れた助之進に声を掛ける。

「なんか、急に重くなったと言うか・・・・・・」

「重くなった?」

「ああ、背中にこう、重たいものを一気に乗せられたような・・・・・・」

膝をつき脂汗を流す助之進の姿に、さすがにただ事ではないと察する。

「ああ、でも、歩けないほどじゃないか・・・・・・?」

「あまり無理は・・・・・・!?」

助之進が立ち上がろうとすると、伊織の背中にも重さが来る。

「・・・・・・伊織さんも?」

「・・・・・・ああ」

「どうしたもんか・・・・・・これでまわるってのもねえ?」

「・・・・・・やるしかあるまい」

そうして原因不明の重みを背負い、夜の浅草を歩く。

「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・」

「フゥ・・・・・・フゥ・・・・・・フゥ・・・・・・」

背に米俵程の重さを感じながら歩き続け、息も切らし足が棒になるほど疲れていた。

「もう・・・・・・だめだ・・・・・・」

「・・・・・・そうだ、昼に買ったおむすびがある・・・・・・食うか?」

「ありがてえ・・・・・・」

伊織の懐から差し出された塩むすびを受けとった。

「んぐ・・・・・・ん?」

「んあ・・・・・・?」

「ん・・・・・・軽い。軽くなった!」

「嘘みたいだな・・・・・・」

「んぐぐ・・・・・・ハァ!さ、行こうぜ!伊織さん!」

「あ、ああ。そうだな」

調子を戻した助之進に続き、夜回りを再開した。

「?」

ふと振り向くと、大きな何かが転がっていた。

「あれは・・・・・・」

「なにかあったかい?」

「・・・・・・いや、なんでもない」

再び助之進と共に歩き出した。




妖怪の姿の解釈に挑戦してみました。
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