宮本物怪録   作:ダイダゼノンド

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塵塚怪王という名前のインパクト。
この名前に引っ張られて結構書くのに難儀しました。

各話のタイトルを修正しました。
今まで妖怪名だけだったんですが、その妖怪名の前に時系列をわかりやすくするために経過日数(話数)を加えました。
遅くなりましたがこの話は一話目から連続しています。


十四日目 塵塚怪王

ごみ。

基本的に必要がなくなったもの、使用済みのものなどを廃棄したものを指す言葉である。

現代では不法投棄や分別など問題として取り上げられることが多く、たびたび江戸時代の壊れたものを直して使い続ける習慣がメディアで紹介されることは珍しくない。

「全く・・・・・・誰がこんなところに・・・・・・」

浅草。伊織の住む長屋の外壁に、この日、割れた茶碗や破れた笠、折れた障子と言ったゴミが大量に放棄されていた。

「こりゃひどいのお。一体誰が・・・・・・?」

「・・・・・・食べ残しまである。悪質なものだ」

「これは・・・・・・見るものによっては憤慨してもおかしくなかろうに」

「・・・・・・」

ふと紅玉の書が漏らした言葉に、セイバーの声が頭をよぎる。

「そうだな。"いらないのなら私が"などと言いそうなものだ」

「うーむ。しかしどうしたものか。このまま放置はできんしのお」

「そうだな・・・・・・助之進に相談してみよう。今日どうにかはできずとも、片付ける見通しはできるだろう」

「うむ・・・・・・同心であるならば、良い引き取り先を知っているかもしれんな。それが良かろう」

「そうとなれば、取り敢えずゴミを分けておくか。まあ、食残しの類は埋めておけばよいか?」

「それが良かろう。このまま腐らせても厄介じゃろうしな」

そう言うと伊織は捨てられている笠などの物品に手を伸ばした。

「あぁ・・・・・・」

「うん?」

「どうした?伊織?」

「いや、何か聞こえなかったか?」

「いや?なにも聞こえなかったが・・・・・・」

「あぁ・・・・・・ぁ・・・・・・」

「確かに何か聞こえるんだが・・・・・・」

「う〜む。確かに何か、呻くような声が・・・・・・」

「ぁ・・・・・・ぁぁ・・・・・・」

「・・・・・・ここからだ」

乱雑に積み重なった家財道具を一つ一つどかしていく。

「ぁあぁぁあ・・・・・・」

「・・・・・・」

ゴミの山の中には、浮世絵や屏風、絵巻物に描かれるような鬼が体育座りしていた。

「あああ・・・・・・」

「・・・・・・なんだこいつは?」

伊織は思わず困惑の声を漏らした。

「う~む・・・・・・いわゆる小鬼の類かとは思うが・・・・・・何故こんなところに?」

「ウゥ・・・・・・」

ポロン♪

「うん?」

「ウゥウ・・・・・・」

ベン♪

「爺さん、何か、音が・・・・・・」

「ウウウ・・・・・・」

ドン♪ザラ♪ベン♪

「これは、楽器か?いや、ただ物を叩いた音にも・・・・・・」

「ウゥ・・・・・・アーヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ!」

「!?」

突如笑い出した小鬼の声に応えるように、ごみの中から琴に三味線、太鼓といった楽器がひとりでに音を奏で、箪笥や傘などの道具が出しては戻し開いては閉じを繰り返して音を出し始めた。

「ヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ!」

「な、なんだ一体・・・・・・?」

「ヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ!」

「これは・・・・・・うるさくて堪らん!不協和音にも程があるわい!」

「ヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ!」

「くぅ・・・・・・頭に響く・・・・・・」

「ヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ!」

「伊織よ!」

「ヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ!」

「うん!?なんと!?」

「ヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ!」

「耳を塞いで聞こえとらんか!?ええい、こうなれば!」

そう言うと紅玉の書は笑い続ける小鬼の顔に体当たりを食らわせた。

「ヒャッヒャッ・・・・・・アアアア・・・・・・」

「・・・・・・音が止んだ?」

小鬼は顔を手で覆う。すると、ひとりでに動いていたごみ達は静かになっていた。

「ヒャッヒャッ・・・・・・耐えられたろうな」

「は?」

「ヒャーヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ!」

一言呟いた小鬼は立ち上がり、手足の生えたごみ達とどこかへ走り去った。

「あれは・・・・・・」

「おそらく付喪神というものじゃろうな。しかし一体どうしてここに来たのやら・・・・・・」

「・・・・・・」

伊織はこの後、耳に雑音が残ってしまったのか頭痛のような感覚が夜まで続いた。

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