宮本物怪録   作:ダイダゼノンド

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今回は短めです。

感想を頂きました。とても嬉しいです。


十六日目 毛羽毛現

「兄ちゃーん・・・・・・あれ?まだ寝てる」

「ん・・・・・・カヤ、か」

「どうしたの?いつもならもう起きてる頃なのに」

空一面の雲によって、なんとなく気分も沈む曇天のこの日、伊織は珍しくカヤが来るまで布団の中にいた。

「なん、だろうな・・・・・・体が重い」

「風邪かな?食欲はある?」

「それは・・・・・・まあ、普段と変わらん」

「うーん・・・・・・もしかして、今日曇りだから、それに引っ張られたとか?」

「ははは。そんなわけないだろう。おそらく夜回りの疲れだ。昨夜は帰りが遅くなったからな」

「何もないなら良いんだけど・・・・・・」

「心配するな」

「そーお?」

普段と変わらない調子で答える。

そんな伊織の声を聞き、カヤは朝餉の支度を始めた。

「ふあ~あ・・・・・・うん?なんじゃ、伊織よまだ寝ておったのか?」

「なぜだか、体が重くてな」

目覚めた紅玉の書に答える。

「怠いか?まあ日頃休みもせず動いておればそうもなろう」

「返す言葉もないな」

「あれ?」

「どうした?」

「なんか、野菜が切れなくて。刃は大丈夫だと思うんだけど・・・・・・」

「どれ、見せてみろ」

「ああ、いいよ。無理しないで」

「案ずるな」

立ち上がり土間に足を下ろす。

「む?」

すると、足に毛が触れたような、こそばゆいような感覚を覚えた。

「・・・・・・」

土間と床の間を探ってみると、長い髪の毛のような、黒い糸が何本か伸びていた。

「これは・・・・・・」

「どうしたの?・・・・・・これ・・・・・・」

「長い髪じゃな。艶もあって、まるで女人の髪のようじゃわい」

「も、ももも、もしかして兄ちゃん・・・・・・また誰か好い人が!?」

「そんなことはない。いたとしても、第一どうしてこんなところに髪の毛が挟まるんだ?」

「そ、それは・・・・・・やっぱり、そういう・・・・・・」

顔を赤らめながらカヤは言い淀んだ。

「・・・・・・全く、兄は悲しい」

「で、でも・・・・・・」

なおも頬を染めるカヤに伊織は呆れ、ため息をついた。

「とにかくだ。このままあっても良いことは無い」

挟まっている髪の毛を掴み、引き抜こうとする。

「ん、固い・・・・・・いや、なにか引っ掛かっているのか?」

力を込めて引っ張るが、髪の毛はまるで抵抗しているように抜けない。

「カヤよ、手伝ってやってはどうだ?」

「へ?あ、うん!」

紅玉の書に言われ、カヤも髪の毛を掴み、引っ張り始めた。

「ぬ、抜けない〜・・・・・・!」

「・・・・・・うおっ!?」

カヤが加勢したことで、ようやく髪の毛を引き抜くことが出来た。

「・・・・・・これは?」

引き抜いた髪の毛は、まるでかつらのような髪の毛の集合体のような見た目をしていた。

「うわあ・・・・・・なんか動いてる・・・・・・」

髪の毛は芋虫のように見るものに不快感を与える動きをしている。

「・・・・・・」

伊織は髪の毛を持ったまま立ち上がり、長屋を出て外に放り投げた。

「これで良し」

「良いのかのう?」

その後、伊織は体の重みが嘘のように治っていた。

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