「改めて悪いな、伊織さん。伝えるのが遅くなって。急だったろ?」
「いや、人の死というのは、急なものだと心得ている」
この日、伊織は助之進と共に葬式に参列していた。
「にしても、残念なもんだね。ちょっと前まであんなにピンピンしてたっていうのにさ」
「そうだな。あの主人には、俺もどれ程世話になったかわからん」
浅草で食い物屋を営んでいた男は、盈月の儀が行われていた頃、伊織やセイバーがよく利用していた店の店主だった。
「それでは皆様、主人を運びましょう」
喪主である妻の呼びかけにより、近くにいた数名が遺体が入った棺桶を持ち上げて外に出る。伊織と助之進もそれに続いた。
「親父さんの飯には俺達同心もよく世話になってたもんだよ。浅草には似たような店があるって言っても、寂しいもんだよな」
「そうだな」
通りを列になって歩き、葬送を続ける。
「ん?」
「どうしたんだい?伊織さん?」
「いや、あれは・・・・・・」
「あれ?」
伊織の視線の先は家屋の屋根。
「なんだい伊織さん、こんなときにさ」
「なにか、通り過ぎたような・・・・・・」
「鳥かなんかじゃ・・・・・・?」
「いや、それなりに大きくてな・・・・・・と」
伊織と助之進は話していたが、他の参列者の視線に気づき口を噤んだ。
「ケケケー・・・・・・」
「?」
「ケケケー!」
「あれは・・・・・・!」
微かに耳に入っていた猿叫は、炎を纏った狒狒のような姿で棺桶に飛びついた。
「キャーッ!」
「なんだっ!こいつ!?」
突然の化性の襲来に参列者達は混乱し、動揺が広がり収拾がつかない程の騒ぎになろうとしていた。
「・・・・・・助之進ッ!」
「あ、ああ!避難させる!」
鞘から刀を抜き、臨戦態勢の伊織から放たれた声に応え、助之進は他の参列者をなだめ、説得し、化性と伊織からできるだけ遠ざける。
「キーッキーッ!」
化性は棺桶にしがみつき、壊して開けようと爪を立てて引っ掻いている。
「水の型・・・・・・!」
「キケッ!?」
二振りを構え、高速で化性を斬りつける。
しかし既のところで避けられたが、棺桶から引き離すことは成功した。
「ケケケ・・・・・・」
「・・・・・・」
瞳に敵意を宿した化性と睨み合い、伊織は刃を一振り鞘に納めた。
「地の型」
「クケケーッ!」
「ッ・・・・・・ハアッ!」
「ケェッ!?」
振り下ろされた腕を一振りの刃で撫でるように斬りながら受け流し、そのまま立ち位置を変え睨み合う。
「キ、ギィ・・・・・・!」
斬られた腕を押さえ、化性は息を切らしている。
「・・・・・・」
「クゥ・・・・・・クゲァッ!」
「んなっ!?」
化性は突如地面を叩き、砂煙を起こして伊織の視界を遮った。
「く・・・・・・あ!」
目を離した隙に化性は棺桶の中の遺体を肩に担ぎ、近くの家屋の屋根の上に立っていた。
「ケーッケッケッケ!」
「・・・・・・」
「ケキキキキ・・・・・・キキャアッ!」
「!」
化性はまるで挑発するように立っている屋根から向かいの屋根に飛び移ろうと跳んだ。
「そこだっ!」
伊織は懐から貴石を取り出し、炎の魔術を行使。
飛び移ろうと空中にいた化性に命中し、遺体共々地面に落ちた。
「お父さん!」
「!」
落ちた衝撃で遺体と化性の距離が離れ、そこに抑えきれなくなった喪主である妻が駆け寄る。
「クー・・・・・・クキャア!」
「うぅ・・・・・・」
起き上がった化性は再び狙いを定め、故人の妻は地面に遺体を抱えうずくまる。
「キキャアッ!」
「空の型」
刀を鞘に納め、喪主の前に立ち居合の構えを取った。
「クキケケケケケキャア!」
「・・・・・・」
化性は伊織と喪主を通り過ぎ、腕の中に収まっている感覚を噛みしめる。
首の痛みに気づくのは、その直後だった。
「グゲアッアッアッアッ・・・・・・」
自らの腕に自らの首を収めた化性は、黒い灰のように崩れ、そのまま消滅した。
「伊織さん!」
「・・・・・・ああ。もう心配無いだろう」
その後、故人の遺体を棺桶に戻し、葬儀は滞り無く終えられた。
火車のキャラクターはあれで良かったのだろうか。
戦闘描写は難しいですね。