宮本物怪録   作:ダイダゼノンド

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今回は元にした稲生物怪録よろしく特に名前の無いオリジナルを出します。
それと今回かなり時代考証に乱れがあります。自分で言うのもなんですがちょっとありえないよな・・・・・・という感じです。
屋敷の間取りのこととか・・・・・・あと礼儀とか・・・・・・
まあ合ってるかもしれない可能性もあるんですけど。
そんなところですが、完成度は高いかなと思ってはいます。
お話として。
ご注意ください。


七日目 襖の中の怪

「・・・・・・あ、来た!」

「カヤ、手土産は、この程度で良いか?」

「手土産なんて・・・・・・必要ないと思うよ?」

「いや、用意せねば失礼というものだ」

この日、伊織は所用があり現在カヤが暮らす小笠原の家を訪れていた。

「それじゃあ、兄ちゃんが来たことを伝えてくるね」

「ああ、頼む」

一足先に屋敷の奥へ行き、伊織の来訪を伝える。

伊織はその間屋敷の女中達に挨拶をし、廊下を進み屋敷の主人のもとに向かっていた。

カヤに自分が来訪を知らせにいって少ししたら自分が呼ばなくても来て大丈夫だと言われていたからだ。

「相変わらず、凝った屋敷だ」

障子と襖によって仕切られた空間。その数を見ればよほど多くの部屋があるのがわかるだろう。

襖は白一色に統一され、見たものに質素ながら高級なな印象を与える素晴らしいものだった。

「・・・・・・ん?」

そんな立派な襖の中に二つ、他と違い黒く、またところどころが黄ばんだ、屋敷の雰囲気に合わない襖を見つけた。

丁度屋敷の中間くらいの場所で見つけたこの襖は、他の部屋が四つの襖で仕切られていたにも関わらず、この二つだけで部屋になっていた。

「・・・・・・」

他と違うこの部屋にわずかばかりの好奇心が芽生えるが、如何せんここは人様の家。それに自分は今しなくてはならない事がある。

そう自分に言い聞かせ、再び屋敷の奥に向かっていった。

───所用終了───

「それじゃあ兄ちゃん、見送りするね。取り敢えず浅草までで良いかな?」

「いや、ここで良い。もう日が大分傾いているからな。最近は日の入りも早くなってきた。夜道を帰らせるわけにはいかない」

「そう?」

「ああ」

「そっか」

他愛のない話をしながら廊下を歩く。

「・・・・・・そうだ、カヤ」

「ん?なあに?」

「この部屋は、なんだ?」

「へ?」

気づけば来たときに疑念を抱いた襖の部屋の前まで来ていた。

「ああ、この部屋・・・・・・なんだろ?今まで気にしたことなかったし・・・・・・というか、こんな襖見たことないっていうか・・・・・・」

「見たことが、ない?」

「うーん・・・・・・あ、すいませーん!」

「はい?」

自分ではわからなかったカヤは近くにいた女中に声をかけた。

「あの、この部屋ってなんですか?」

「この部屋・・・・・・すいません。私は存じ上げず・・・・・・」

「・・・・・・」

カヤよりも屋敷について知っているであろう女中が知らないという部屋。それが伊織の好奇心を再び焚き付けた。

「そうですか・・・・・・」

「・・・・・・なあ、開けてみても良いか?」

「へ?」

「失礼だと承知している。だが、どうにも気になってな」

「それでしたら、私が伺ってきましょう」

そう言うと女中は小走りで屋敷の主のもとに向かった。

戻ってきた女中は主を連れてきていた。

「小笠原殿」

「いやあ、伊織君の事を信用していないわけではないが、まあ、念の為な」

「いえ、突然の頼みを快諾してくれたこと、感謝する」

そうして屋敷の主人立ち会いのもと、襖が開けられることとなった。

「いやしかし、こんな襖私も見たことが無い」

「・・・・・・というと?」

「いや、私も奥の部屋に籠もっているわけではないし、女中に大方任せているとはいえ、幾度か屋敷の中を見て回ったこともある。だが、こんな襖、部屋があった記憶がないんだ」

「・・・・・・それは、俄然気になる」

「全くだ」

そして、伊織の手で襖が開けられる。

中は薄暗く、二つの襖で仕切られた空間であり、もう夕暮れであるため光が入らず部屋の奥は完全な暗闇となっていた。

「・・・・・・」

「ああ、伊織君」

開かれた部屋に無言で入っていく伊織。静止する声はまるで聞こえていないようだった。

「・・・・・・」

手を伸ばし、襖によって隠されている壁に触れる。

壁は土壁になっており、触れた箇所から土の粒が削ぎ落とされるかのように落ちていく。

「兄ちゃん、どう?何か、ある?」

「・・・・・・うまく見えんが、奥行きは無い。せいぜい三畳といったところだ。掛け軸のようなものもある」

直接手で触れて確認する。部屋の中は小さいながらも客室と呼べるものだった。

「・・・・・・今のところ気になるのは壁だな。質感が他の部屋と違う」

「なんと?」

「まるで土そのものを積み重ねただけのような、壁として機能していないように感じる」

「他には?」

「ふむ・・・・・・?」

部屋の中央で佇む伊織は、視界の端に何かを見つけた。

開いた襖の裏側、二枚の襖が重なっている状態の、光が入らず暗闇となっている場所。

そこに、まるでカエルが襖に張り付いたような、背を向けて正座をしている人間が首を仰け反らせてこちらを見つめているような、そんな形容し難い存在が瞳を光らせていた。

「・・・・・・」

「兄ちゃん?」

「どうした?伊織君、何かあったのか?」

部屋の隅を見つめる伊織を不思議に思った二人が声をかけるが、伊織は声を返さなかった。

「・・・・・・」

この存在はなにか。

そんな考えが伊織の思考を支配する。

もはや視界の端が見えなくなるほど集中し、自分の心臓の音すらも聞こえなくなるほどに目の前の存在に全神経が向けられている。

「・・・・・・・・・・・・」

腕を伸ばし、姿勢が前に傾く。

もはや、頭の中に危惧は無くなっていた。

好奇心。いや、義務感や責任感といったものが体を動かす。

見てしまったのだから。見つけてしまったのだから、これは当然のことなのだ。

そう、決定づけられる。

「・・・・・・うおっ!?」

前傾姿勢になり、体のバランスを崩し、とっさに前に出した足の痛みに引き戻される。

「俺は・・・・・・」

「兄ちゃん?」

「ん、ああ・・・・・・」

伊織は全身から汗が流れ、息も切らしていた。

「伊織君、何があった」

「・・・・・・形容し難いものです。恐らく、知ってはならぬもの・・・・・・」

そう言う伊織は手で片目を隠し、部屋の外にいるカヤ達を真っ直ぐ向き合っていた。

「・・・・・・そうか。宮本伊織、早く出ろ」

「・・・・・・はい」

険しい表情の主人の言葉に、伊織は確りとした声を返す。

伊織が部屋から出た直後、主人は勢い良く襖を閉じた。

「・・・・・・こんな襖は、無かった」

「ええ。俺は、何も見ていない」

「・・・・・・ねえ、これ・・・・・・」

「うん?・・・・・・!」

その場にいた全員が意識を部屋から外す。

すると、いつの間にか襖は無く、他の襖と同じような襖が並んでいた。

「これは・・・・・・!」

「・・・・・・伊織君、なにか、あったか?」

「!」

伊織は理解した。

「・・・・・・いいえ」

「へ?さっきまで・・・・・・」

「カヤ」

「あ・・・・・・そう、だね。ごめんなさい、なにもないのに呼んでしまって」

「いや、主人として客人を見送ることに、なんの不思議もない。そうだろう?」

「・・・・・・は、はい!」

その場にいた女中も主人と伊織に話を合わせる。

「それでは、俺はこれで」

「ああ。またなにかあれば」

そうして伊織は浅草の長屋への帰路についた。




本当は襖が並んでるなんてことは無いと思うんですよ。
そんな広いわけではないと思っていますよ。
でもそうかもなとも思ってしまうんですよ。
江戸時代とかが舞台のアニメとか見てると襖並んでたりするじゃないですか。具体的な作品名を挙げられないフワッとした所感ですけど。
まあ今回の小笠原邸は襖で部屋を仕切っていて、だからこそ二つの襖で仕切られて壁があった部屋が不可思議に感じたってことで。
長文失礼しました。
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