NTRゲーに転生したはずなのに寝取られる気配がない件について 作:THE TOWER XVI
それから毎日のように銀髪少女が孤児院に押しかけてくるイベントが発生しつつ、最終的に幼馴染再会ものの引っ越しイベみたいな
いわゆる騎士団長ビジュの強そうなイケオジが少女を連れて孤児院にやってきた。
保護したかなんかで、シスターとは知り合いらしい。昔の伝手を頼ってこの孤児院に連れてきた模様。
原作じゃ同じ孤児院で育った幼馴染で、主人公の世話を焼いていた、としか知らなかったが、この感じ、実は亡国の姫です!みたいなありがち展開だったりするんだろうか。
まあ、NTR的には出自とかどうでもいいけどね! というわけで、どうでもいい思考を破棄。
再会し、つもりに積もった話を交わすシスターとイケオジ。
その
人見知りか最初はほとんど話してくれなかったが、秘蔵のスポットを教えてあげて仲良くなることに成功。
一面、白い花が広がる、少し町から離れたその丘は、異世界感のある幻想的な雰囲気もあって、転生当初の不安な時は何度か来ていた。ちなみに、この世界がNTRゲーであることに気づいたのもここである。
ここ、主人公と幼馴染の結婚約束スポットだし。背比べで傷をつけていた木を見つけて、ここ原作でやったところだ!となったりした。
俺も約束だけして別れ離れになった幼馴染と同じ高校になったと思ったら別の男と歩いているのを校門に立ち尽くしながらただただ見送りてぇなぁ。
まあ、ここに高校なんてないが。これだけは至極残念である。
NTRへの一歩を踏み出した後、なぜかイケオジと戦う羽目になって強制的に剣を教えられたり、前世の物語をパクって聞かせたら、幼馴染ちゃんにすごいねだられるようになったり、順調に俺は成長していった。
いや、嘘です。順調じゃないです。
今日は運命の日、スキル発現の日。主人公(俺)の人生がNTRへと転がり落ち始める物語の始発点であり、理想のNTRへと大きく近づく山場。
チラリと横を歩く幼馴染をうかがう。腰まで伸ばした黒髪をなびかせ、静かに歩く彼女は正直言って、前世では全く縁のないようなかなりの美少女であり、さすがヒロインといったところか。
問題は、結婚の約束イベが全くなかったことである。
おかしいだろぉぉぉおおおおおおお!!
原作の強制力仕事しろぉぉぉぉおおお!!!
ハァ......ハァ......敗北者ぁ? 俺じゃダメってことかぁ......?(クリティカル)
幼い頃の、一緒に野原を駆け回るイベントが無かったな、と思ったらコレである。というか、やたら絡んできたあの騎士団長もどきも割と原因だろ(責任転嫁)
いつの間にか、お互いに成長し、無邪気に結婚の約束なんてできない雰囲気に俺はヘタレてしまった。
というか、結婚の約束ってどうやるの???言えるわけないやん、NTR一筋、俺の前世の女性経験の無さを舐めないでほしい。
もちろん告白なんてもってのほか。
まあ、でも原作でも付き合ってはなかったし、BSSも広義のNTRだし(拡大解釈)問題ないな!
でもBSSだとしても、そもそも──
「やっぱり、緊張していますか?」
何かに気づきかけていた気がするが、話しかけられて思考を中断する。
うん、やっぱエロゲのヒロインだけあって前世で言う中学生ぐらいなのにどこか色気がある。耳に髪をかけて、おずおずと
直視できずに目を
俺の心はNTRでできている、俺の心はNTRでできている......。
「......なにか、難しそうな顔をしていたので」
──まあ、結婚の約束とそのNTR人生設計への影響についてかな?
なんて、言えるわけもないので適当に
「いや、スキル、どうなるのかなって」
「ふふ、アレンくんでも気にするんですね」
「そりゃ気にするさ。スキルで人生が決まるからな」
本当は、スキルは発現しないことがわかってるので、別にどうでもいいけど。
嘘つきですまねぇ。
なんならNTRヒロインとして利用しているのも大概屑だな。今更改心するつもりもないが。
勇者が
「アレン君なら、すごいスキルがもらえそうですけどね」
「そういうエレナはどうなんだよ」
ちょっと罪悪感を感じて話を逸らす。
「わ、私は......スキルは特に......。でも......」
何故か足を止めた彼女に振り返る。
チラチラと、少し顔を赤くして俺を窺うエレナ。
雰囲気に
......ナンカァ、フンイキィ、キテルキテルゥ??
「......あ、アレンくんと「見つけたわ!!」ッ」
ちょうど十字路に立っていたらしく、横から聞こえてきた大声のほうを向く。
どこか見覚えのある銀髪少女が、猛烈な勢いで突っ込んでくる。
いや、速すぎぃ!命の危機を感じ、反射的に魔力を足に循環させ、飛び込んできた彼女の力を流して一回転、そのまま来た方向に投げ返す。
そのまま彼女は猫のように着地すると、怒ってますよと言わんばかりに、足を踏み鳴らしながら近づいてくる。
見てくれは美少女なのに何処か残念な感じがするな。幼馴染を見習ってどうぞ。
「ちょっと! ここは優しく抱きしめるところでしょ!!」
「いや、知らんがな。まず誰だよ」
「えっ」
一瞬にして目からハイライトが消える。恐怖。
流石の俺もこれには焦る。
NTR・IQ180の脳をフル回転させる。珍しい銀髪銀髪......あ、あの時のわがままゴリラ幼女?!
「じょ、冗談だよ、クリスだろ? ひ、久しぶりだな?」
「わかってるじゃない! ......今度そのつまらない冗談言ったら、ぶち殺すから」
笑顔になったと思えば、耳元に口を寄せると真顔でドスの利いた声。
冗談でもなく、忘れていたことがばれるわけにはいかない!
「スキル授与の儀に行くんでしょ? さっさと行くわよ!」
幼いころのわがままっぷりは変わっていないらしい。
そのまま一歩後ろに飛ぶと、戦々恐々と突っ立っていた俺の手を掴もうと手を伸ばし──その手が脇から弾かれる。
「誰ですかあなた。アレン君が困っています。やめてください」
聞いたことのないような冷たい声に驚く。
エレナは俺のすぐ横に陣取ってクリスと対峙した。
まだまだ春先なのにここだけ周囲の温度が一気に冬将軍。
黙って睨みつけるエレナに対し、クリスはエレナを頭からつま先まで観察するように見て口を開く。
「ふーん。弱そうね」
「......」
まず測るのは戦闘力って、戦闘民族か?
いたたまれないので、口を出すが......。
「あー、お互いはじめまして? だよな?」
「......」
「......」
「もしもーし」
無視されて途方に暮れること数秒。
先に睨み合いを辞めたのはクリスだった。
「まあいいわ! 私はクリスティーナ・リーデンブルク。よろしくはしなくていいわよ」
「......エレナです」
「興がそがれたし、先に行って待つことにするわ。じゃあ、また後でね! アレン!」
俺に向かってそう言い残すと、荒らすだけ荒らして帰っていく。
よく考えなくても、単純な魔力強化以上の速度が出ているように見えるが......そういうスキルだろうか?
そういえば、スキル授与の儀は町ごとに日が違うから、もう終わった後の可能性もあるのか。それはそれで、何故この町にいるのだろうか。そもそも、あいつ、この町の人間じゃなかった筈だよな?
思考に
「あの女、誰ですか。説明してください」
小さなころも
年を重ねるにつれ無くなっていたが......それなりに成長した今やられると、いろいろとまずい。こう、背中の感触が、ね? ナニがとは言わないけど。
結局、コアラ状態になった彼女は離れず、クリスと出会った経緯を洗いざらい吐かされる。
そのまま、スキル授与の儀が行われる大聖堂まで彼女を背中にくっつけて歩いて行った。