NTRゲーに転生したはずなのに寝取られる気配がない件について   作:THE TOWER XVI

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そんな、俺の大事な勇者(竿役)が......

 大聖堂には数百人の子供が集まっていた。

 

 孤児院だと同年代は俺と幼馴染ことエレナだけだが、町全体だと当然、それなりの数になる。

 

 既に一人づつ前に出ては、司祭からお告げを貰っている。司祭自身のスキルを降臨させる力、それ自体もスキルらしいが......そこはどうでもいいか。

 

 ちなみに見た目はよくあるキリスト教式な教会。

 異世界独特なんてこともなく、割とそのままである。どうなってんだと思うが、エロゲだしね。わざわざ独自宗教とその建築様式まで考えていたら世話ないよね。

 

 どうでもいいことに思索を巡らせていると、俺の番がくる。

 チート持ち主人公が触ってぶっ壊してそうな水晶球らしき透明な球が前にあった。

 

 ククク、ここから俺の転落人生が始まる......。ここから俺はスキルなしの無能としてレッテルを張られるのだ!! いざ、真のNTRスペシャリストとなるべく脳破壊ゲットへの偉大なる一歩を踏み出すぜ。

 

 思えば、前世では世界から寝取られを寝取られて絶望したが、結婚の約束はしていなくても、今や原作ヒロインの仲のいい幼馴染がいる。全世界5000兆人のNTR好きの想いを背負って......。

 

 

「ほ、ほれ、君、大丈夫かの? 後ろがつっかえておるから早く触れておくれ......」

「あ、ハイ」

 

 

 今までの旅路を振り返って感極まり、天を仰ぎながら一筋の涙と共に目を閉じていると、困り顔の司祭にせかされる。

 

 仕方なく、感慨に(ふけ)るのを辞めて、水晶に手を載せると──白。白白白。

 

 一瞬で世界が真っ白に塗りつぶされ、俺は何もない空間に突っ立っていた。

 

「は?」

 

 理解できぬ。原作だと何も起きずに、あれれ~おかしいなぁ、となっていたら、スキルなし!(悪い意味で)前代未聞!!となるはずなのに。

 

「おいおいおいおい、由々しき事態だぞ、これは。冷凍庫を開けっぱなしにして家を出るぐらいの由々しき事態だ」

 

 不思議とこの空間だと思ったことが声に出てしまう、そう思っていると、何の光ィ!

 

 光の玉が目の前に浮かんでいた。

 

「この度は連絡が遅れましたこと、初めに謝罪させていただきます。

 あなたは転生しました。おめでとうございます」

 

「神って、いたのか。人間が因果推論を好むばかりに、世界の事象のすべてに理由を求めて作った虚像かと思っていたわ」

 

「転生特典としてこの世界に合わせてスキルを与えましょう」

 

「あ、神ではない感じかな? てか、ちょっと待て。待て待て待て」

 

「オーダーを受領。リソースを計算中......対応スキルの探索を終了。スキルは世界に戻ってから自動的に付与されます。ではよい異世界ライフを」

 

「話を、聞けぇぇぇぇえ!!!! AIでもおkグー〇ルとか頭に言わないと認識しないが!! 何を受領した、今。確認画面ないのはダメだろぉぉぉあああああ!!」

 

 そのまま俺は内臓から引っ張られるような不快感とともに、暗転。

 

「あああああぁぁぁ......」

 

 瞼を開けば、やばいものを見るかのような司祭の顔。

 

「......」

「......」

「だ、大丈夫かの? お、お主のスキルは《待て》じゃ」

「......」

「スキルですべてが決まるわけではないからの、あまり気にすることはないぞ」

 

 気遣う司祭に、背を優しく叩かれ、呆然と俺は出口へ向かった。

 

 

 次のエレナの番が来て、彼女が原作通り聖女のスキルをもらい、大騒ぎになるのを背に考え込む。

 

 一時はどうなることかと、我を失い恥ずかしい姿を見せてしまった。

 取り乱し過ぎて、前世での純愛派(異教徒)との攻防を思い出し、奴ら、哀れな純愛過激派の陰謀とすら疑ってしまった。

 

 しかし、冷静になって考えれば、別に伝説のスキルではなかったので、何の問題もないか。

 

 原作と違いスキルがあったとしても、雑魚スキルってことにすれば、問題なく幼馴染は愛想を尽かし、勇者が寝取ってくれる(はず)である。

 

 そして、この大騒ぎと共に、勇者が現れ、パーティに誘うはずだが......。

 

 出口で立ち止まり、大聖堂の扉を見る。

 

 ──遅れてきた子供がちらほらやってくるだけだ。

 

「あ、アレン君、ど、どうしましょう」

「ああ」

「聖女、なんて、おかしいですよね」

「ああ」

 

 あれ、勇者は? 俺の勇者(竿役)は遅れているのか?

 

 心配になってきたが......原作の強制力が何とかしてくれる筈だよな?

 

「言い伝えのように勇者様と共にいかなければならないのでしょうか......」

「心配ないはずだ......」

 

 勇者来るよね?

 

「ふふ、アレン君が、そういうなら、大丈夫ですよね。むしろ、このスキルがあれば私も隣に......「そこにいたのね! アレン!!」んな?!」

 

 耳に響く大声に我を取り戻す。

 いつの間にか、エレナが俺のすぐ隣にいた。

 そして、またしても爆速で突っ込んでくるクリス。

 

 君は銀髪違いだわ。待ちに待った俺の素敵な勇者様(マジカルチンポ竿役)はどこ? ここ?

 

「やっと出てきたわね! スキルは貰ったかしら!」

「ああ、うん。雑魚スキルをね」

 

 誰が何と言おうが雑魚スキルだ。俺がそう決めた。

 

「雑魚スキル? でも、スキルがなくてもアレンが強いことは知っているから問題ないわ!」

「ん?」

 

 何の話? いや、ちょうどいいか。

 

 現時点で俺が勇者のことを知っているのは不自然だが、NTRルートへの修正は早ければ早いほどいい。兎にも角にも、今は情報がない。

 

「あーその、それはよくて。実は、俺は、勇者を待って......」

「なーんだ、やっぱりアレンもそうじゃない! 私が勇者よ!」

 

 ゑ???

 

 思考が完全に止まる。

 

「どうやって誘おうかちょっと悩んだけど、アレンにも導きがあったのね!!」

「んん??????」

「やっぱり私たちは運命なのよ! ......守ってくれたあの日のこと、ずっと覚えているから。さあ、私と一緒に......!」

 

 勇者?だれが?クリスが?え?クリスは女?

 でも寝取るのは男で?

 いや、女でもいい?そもそもクリスは女と見せかけて男?

 

 予期しない事態に直面し、俺のNTRIQ180の脳はブルースクリーン。もはや外界の音には応答停止状態である。

 

「......そこまでです」

「あら?エリス、だったかしら?」

「エレナです! さっきから聞いていれば運命とかなんだの、あなた一体何なんですかッ!!」

「勇者よ!」

「......アレン君とどうとか言っていましたが、私は《聖女》のスキルをもらったので」

「だったら「つまり、私もあなたに同行する義務があるわけですね」......それは」

「それと、さっき話を聞きましたが、幼い時にちょっと会っただけの知り合いなんでしょう?」

「わ、私は、あなたなんかよりずっと前に出会って......」

「ふーん、私はアレン君と一緒に寝たことがありますが」

「ちょ、ちょっと! 何言ってるのよ!

 あ、アレン!!! こいつと寝たの?!!!!」

「クリス、お前は男か?」

「は、はぁ?!」

 

 暫く茫然と立っていたが、(ようや)く現実に引き戻され、俺の今の想いがそのまま出る。

 

「何言ってるのよ! 信じらんない!! 男なわけないでしょこのばかぁ!!」

「あ、アレン君!!」

 

 すさまじい衝撃が俺の頬を貫き、俺は我を取り戻す。

 

 間男が女で何の問題が? これは百合ですね。わかります。

 むしろ百合の間に挟まる男は死ね。

 

 真理にたどり着き、総てが何一つ問題ないことを悟った俺は、頬に真っ赤な紅葉を付けたまま微笑む。

 

 俺の眼差しに何故か狼狽(うろた)える二人。

 

「話を戻そう。クリスは女の子な勇者で、聖女のエレナと旅に出る。そして俺もついて行くって話だよね」

 

 旅の中でいがみ合っていたお互いの距離は、やがてロッシュ限界へ.....。糞雑魚無能男である俺は幼馴染に捨てられてハッピーエンドだ。

 完璧な計画だな。どこに問題があろうか、いや問題ない。

 

 

「ふ、ふん! わかったならいいわ。あと、そこのエリスじゃなくて、誘ったのはアレン、あなただから! 絶対来るのよ!! わかった?!」

「エリスじゃなくてエレナです」

 

 菩薩のような微笑みを浮かべたまま俺は(うなず)く。

 それを確認したクリスは満足そうに笑顔を浮かべ、背を向けると急加速して去っていった。

 

 クリスとエレナはまだ初対面だから仲良くは見えないが、旅をするうちに俺の無能さが露呈し、後方雑用係の俺には失望、そして激闘を繰り返す中で自然と二人は惹かれていき......用済みになった俺は、ウヘヘ。

 

「今日は本当に災難でしたね。アレン君。あんなキチガイ暴走女の言うことなんて聞く必要はありません。一緒に孤児院に戻りましょう」

「でも、聖女だからね、さすがに......無理なんじゃない?」

 

 如何にも騎士然とした人たちが、話しかけるタイミングを探しているのか、こちらを伺っていた。

 

「そう、ですよね......」

「まあ、俺はいつでもエレナについて行くし、心配するな」

 

 絶対に俺を連れてけ。そして勇者と幸せになって俺を捨てろ。

 

「私と一緒にいてくれるのですか?」

「もちろん。(寝取られて俺を捨てるまで)無理にでも着いて行くさ。エレナは俺が守るよ☆」

 

 そう言っておいて、初戦で目の前で敗北かまして百年の恋も冷めるギャップ、みせつけてやるぜ☆

 

「ふふ、なんですかそれ。......あのキチガイ暴走女のためではなくて、私のためですよね。私はわかっていますから」

 

 (うつむ)き、小さく笑うエレナ。俺もただ微笑む。

 

 スキルを問答無用で渡されたときは、どうなることかと思ったが、無事俺と幼馴染と勇者のパーティー組めたし、完璧だな!!

 

 さすがは世界の強制力さん!! この調子で頼むぜ!!!

 

 嗚呼、未来は明るいな。無事、NTRの夜明けは迎えられそうだ。

 

 

 

 

 

 

 その後、勇者に同行してほしいと正式な話が騎士っぽい人からされた。連れていかれた先で、彼らのトップっぽい人と会ったら、まさかの俺の師匠であり、騎士団長(本物)であることが発覚。

 

 ついでにクリスにいろいろ報告していたのは師匠らしい。

 

 幼いころしか知らないはずのクリスが、俺が強いとか言ってたのは師匠のせいかよ。あとやたら絡んできたのも。

 

 悪いな坊主、あいつの家の秘蔵の酒で買われちまったわけだ、ガハハハで終わったが。

 そのおかげでいろいろ教えてくれたわけだし、まあいいけど。

 

 その後、師匠と王城に向かい、王に謁見した。ゲーム通りに魔王の説明を受け、俺とクリスとエレナは勇者パーティになった。

 

 しかし、魔王が生まれるとき、勇者パーティとなる伝説のスキルの保持者が現れて、討伐に向かうという言い伝えがあるとはいえ......。

 

 勇者なんていらねぇ!魔王なんて我が軍と文明の力で滅ぼしてくれるわ!!みたいなムーブをよくしないものである。

 

 スキルなんて超常的なものが一般にある世界だし、そんなものなのだろうか。

 

 

 謁見後はスキルの把握を含め、数ヶ月ほど訓練を挟んだ。

 

 原作では、旅に出る前に訓練を経て勇者と幼馴染の距離が近づいており、それに疎外感と不安を覚える主人公が(えが)かれるが......。

 

 クリスはエレナに興味がなさげで、未だに名前を憶えていなければ、エレナはクリスへの敵愾心を隠す素振りもない。

 

 俺は俺で、元から師匠(騎士団長)に指導してもらっていたので、やることは大して変わらない。

 

 手とり足取り幼馴染を指導する勇者のイベントは何処へ......それを遠くから眺めながら鍛錬で痛めつけられる糞雑魚主人公イベントは何処へ......。

 

 ん? これってもしかしなくても俺は体を鍛えるべきではなかった──いや考えるのは()そう。

 

 しかし、たとえ糞雑魚主人公イベントを潰した責任が俺にあったとしても、俺がエレナを指導するイベントが発生するのは俺の責任ではないだろ!!

 

 クリスは勝手気ままに何処かに行くせいで、俺が原作知識を若干使いながらエレナを手伝う羽目になっているのだが!!

 

 エレナに死んで欲しくないから、そりゃ知っていることは教えるが、これ、元はと言えば、原作勇者の役目だからな!

 

 原作の強制力、どこ?ここ??

 

 働かない世界の強制力を恨みながら、俺は旅立ちの日を迎えた。

 

 

 

 

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