NTRゲーに転生したはずなのに寝取られる気配がない件について   作:THE TOWER XVI

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さっそく百合に挟まる男(修羅場)

 迎えた旅立ちの日。

 

 老人顔負けの早起きで馬車の御者の席を確保し、残り二人を後ろの荷台に乗せようと試みる。しかし、二人とも左右で俺を挟むように御者台に入り込み、仲良く三人で並ぶ羽目に。

 

 俺は二人で仲を深めて欲しいのに、何故二人の間に挟まっているのだろう?

 俺を挟んじゃったら、本当に百合の間に挟まる男なんだわ。

 

 ここ原作だと早速(さっそく)、俺一人御者させられてハブられるシーンだからね?そこのところ分かってる?

 

 狭いから等理由をつけて、二人に離れるよう説得を試みるも、二人の圧に敗北し、結局そのまま出発することに。

 

 どれもこれも、全て世界の強制力が働かないのが悪い(責任転嫁)

 

 ()しくも原作主人公と同じように、この先への不安を感じながら、俺の冒険が始まった。

 

 

 

 原作では、魔王を倒す前に魔王軍の幹部に相当する七大龍を倒すことになっている。

 

 それぞれが強力な龍であり、復活した魔王とともに、近隣の町や村を制圧し、圧政を敷いている。

 

 勇者パーティは各地を巡りながらこの龍を倒していくことになる。

 

 あくまでもNTRがメインであったため、原作では龍との戦いは軽く流されていた。

 

 一戦目で主人公は幼馴染と勇者の息の合ったコンビネーションを見せつけられたうえ、何の役に立てずに敗北感を覚える。その後、ほかの龍との戦いで失態を見せて、ついに幼馴染が失望し、その後宿とかでにゃんにゃんしているのを聞かされる経緯があった(はず)である。

 

 それが何かなんて分かりきっているのに──しかしそんなはずはないと自らに言い聞かせて──そのことを幼馴染に直接聞きに行き、主人公は絶望する。

 

 敵については、ゲームが現実になった今、各個撃破されずに纏まって共同戦線でも張るのでは、と思っていたが......今の段階ではそうした様子もない。

 

 懸念していたような原作からの乖離もない。状況は原作通りだ。

 ──敵は。

 

 

 龍との一戦目でエレナが離脱しかけた。パーティ空中分解の危機である。

 

 

 例の騎士団長に絡まれて、ある程度の実戦の訓練を積んでいた俺や、勇者として(おそ)らく経験を積んでいたクリスと違い、エレナに本格的な戦闘経験はなかった。

 

 原作では勇者が付きっ切りだったからこそ、問題にならなかったのだろう。だが、今回、クリスはエレナを気にする素振りもなければ、原作で問題なかったからと、俺も疎かになっていた。

 

 故に、初めての戦いで(ひる)んで、うまく戦えないのも仕方がない。

 

 クリスと二人で前線を張っていたら、敵は後ろで動けずにいたエレナに気づいたらしい。

 隙を突くように離れた位置に二つ、魔法陣が出現。

 

「ッグ! このッ!! ただでやられるわけには!!!」

 

 狙いはエレナか。

 地上に十字を刻むように、交差せんと、魔弾が放たれる。

 

 だが、俺には、あの時貰ったスキルがあった。

 

 貰った時には雑魚スキルなんて現実逃避していたが、スキルの使い方も同時に解っていた。

 

 

 《待て》は数十秒間俺以外の時間を止められるスキルだ。もちろんクールタイムはある。

 

 

 距離的にも、今、エレナを守れるのは俺だけだろう。

 龍はクリスにそのまま任せ、慌ててスキルを発動し、エレナのもとに駆け付ける。

 

 いまさら魔法陣は破壊できない。そして攻撃は二方向。

 

 一つは剣で防げるが、もう一つは......この身で受けるしかないか。

 

 まあ、元はと言えば、原作で問題なかったからと油断した俺の責任である。

 腕の一本ぐらい安いもんよ。

 

 この時間を止めている間にエレナを立ち直らせたり、移動させたり出来ればよかったが、残念ながら俺のスキルの発動中は俺以外の全てが停止する。つまり、どんな力でも移動できなくなる。

 

 といっても、身に着けている物は大丈夫だ。ここら辺の境界はご都合主義だろう。スキル様様である。

 

 制限時間と共に、時が動き出す。

 

「え?」

 

 突然目の前に現れた俺に驚く声に答える間もなく、背中でエレナを突き飛ばし、剣でブレスを上に逸らす。

 

 そして、もう一つのブレスが、申し訳程度に上着を重ねておいた左腕に直撃し、エレナの悲鳴とともに俺の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 その後、俺がおねんねしている間に、クリスが敵を倒したらしい。

 

 ただ、クリスがエレナに詰め寄り、足手纏いは帰れ的なことを言ったとか。

 

 ......この調子で勇者(クリス)幼馴染(エレナ)を寝取ってくれるとは到底思えないが、まあ、それは一旦置いておこう。

 

 ......(まった)くもって、良くないけど、置いておこう。

 

 今回ばかりはこれが効いたのか、エレナも、やっぱり私じゃアレン君の隣には立てないみたいです、と言ってお別れムード出す始末。

 

 ちょっと待て、幼馴染がパーティから離脱して勇者と俺だけの二人旅って、寝取られ(NTR)はどうなるんだよッ!! 二人っきり??!! デートじゃねぇか!!!!

 

 治療のために寝かされていた俺は左腕の激痛を無視して、跳ねるように上体を起こす。俺の夢(NTR)が目の前で崩壊しようとしている危機に、久しぶりに死ぬ気で説得した。

 

 

 エレナがいなくなったら俺の夢(NTR)はどうなるんだよ!!!

 

 エレナは俺が(前世に)夢にまで見た(NTRれて俺を捨ててくれる)最高の幼馴染なんだぞぉぉぉおお!!!

 

 釣り合う釣り合わないじゃない、俺がエレナを(最高の幼馴染NTRのために)必要としているんだ!!

 

 (極論、間男は勇者じゃなくてもいいし、)エレナが一番(俺のNTR計画において)大事なんだぁぁあああ!!!

 

 

 俺の全力の説得が功を奏したのか、エレナの暗い顔は一気に真っ赤に。何処か恥ずかしそうに、ずっと一緒にいてくれると約束してくれた。

 

 

 よかった、幼馴染NTRの夢は(つい)えなかったんやなって。

 

 

 俺は安堵して──無理した体は嘘をつかず、そのまま気を失った。また悲鳴を上げさせたのは勘弁してほしい。許せ、エレナ。

 

 

 

 

 一方、クリスとエレナの仲は明らかに悪化していた。流石の俺でもこの状況は、NTRどころではないと分かる。

 

 あの一件からクリスはエレナに嫌味を言うし、エレナも少し前までは何処か遠慮があったが、今では堂々と嫌味を受け流すようになった。むしろ若干挑発する始末。

 それが殊更(ことさら)クリスの癪に障るのか......。

 

 そんなこんなで、俺のNTR計画は、現状、かなり(かんば)しくない。

 

「ふん、貴様か勇者というのは。怠惰のベルフェゴールを倒したというが、奴は七大龍でも最弱。我は暴食のベルゼブブ!! 真の龍の力というものを見せてやろうッ!!」

「......」

「......」

 

 目の前の龍をガン無視して、黙り込む二人。

 

「じゃ、じゃあ、おれが先頭に......」

 

 俺のオスカー級の無様敗北男を見せつけてやろうと思えば、クリスが一気に駆け出し、それを邪魔するようにエレナが結界を生成。お互いに高速で技を繰り出し、砂埃と光で見えなくなった二人は、お互いに妨害しながら尾を引く彗星がごとく龍に突き進む。

 

「な、なにが......!!」

 

 龍が思わず叫ぶも、言い切る前にクリスの斬撃とエレナの結界が同時に突き刺さる。

 

 名乗りを上げて(わず)か十秒。対処する暇もなく、哀れな龍は爆散した。

 

 ちなみにエレナの結界は龍の中から生えてきた。魔術抵抗値を上回れればそこに先に物があろうが、押しのけて結界を出せるらしい。エグいね。そんな使い方、教えた記憶もなければ、いつの間に勇者に対抗できる力を付けたのかは謎である。一念発起するような覚醒イベントでもあったのか?

 

「.......なんでわざわざ前に出てくるのかしら。邪魔だし。いっとくけど、前みたいにへましたら、今度こそ許さないから」

「心配には及びません。私はアレン君について行くだけです」

「ッ......そのアレンが!」

 

 クリスがヒートアップするのを見かねて、割って入る。

 

「まあまあ、別に俺も大丈夫だし。エレナに付いて来て欲しいと言ったのは俺だし、怒るなら俺にな?」

 

 ちなみに、左腕はもう治った。あの傷が、聖女の名を冠するスキルとはいえ、魔法一つで治るのは流石にゲームの世界だなって思いました(小並)

 

 それはそうと、話している傍から、エレナが俺の左側から体を寄せてきているが、今は辞めてほしい。

 

 縮まる距離に反比例してクリスの機嫌がどんどん悪くなっている気がする。

 

「いつもいつも、そうやって......。その女に何があるっていうのよ.......」

 

 何かを(つぶや)きながら俯いたかと思うと、一睨みして走り去っていた。

 

「クリス!! ......あの、エレナさん? この手を放してもらっても?」

 

 二度目のパーティ崩壊の危機にクリスを追いかけようとするが、服の裾を摘ままれ、余儀なく止まることを強いられる。

 

「アレン君には私が必要なんですよね?」

「そうだけど、今俺の一張羅を人質に取っている行為と何の関係が......?」

「いえ、すみません。迷惑はかけたくないのに、つい手が。 ......私はアレン君のこと信じていますからね」

 

 手を放して微笑む彼女に、俺はちょっとクリスの様子を見に行くだけ、また宿でと伝えて、彼女を探しに行った。

 

 

 

 

 

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