NTRゲーに転生したはずなのに寝取られる気配がない件について   作:THE TOWER XVI

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勇者パーティの奇行児と孤独の魔王

 結局、俺は考えられる限りを尽くし、そのすべてが失敗に終わった。

 

 どうしようもないキチガイを演じるべく、半裸で服を振り回しながら街を駆け回ってやったが、飲み過ぎと勘違いされ丁寧な看病を受けてむしろ悪化。

 

 欠片も気にしていないクリスと、もう、仕方がないんだから、と微笑むエレナに作戦の失敗を悟った。

 

 てか、飲み過ぎで納得するのって、俺って酔ってる時にすでにそういうことやっちゃってるの? 嘘でしょ? 記憶がないのだが??

 

 ま、まあ、いいだろう。

 

 次はセクハラオヤジを自分の身に降ろすことにした。これでもNTR漫画を前世に描いていた身、俺の頭の中にはいつだってテンプレ竿役糞教師が居る。

 

 さあ、とんでもないセクハラで好感度を一気に負数にしてやるぜ、と俺は明るい未来へと一歩を踏み出した(はず)だった。

 

「ぐへへ、いいカラダしてんねぇ。なあ、スケベしよや」

 

 クリスは少し口角を上げると逆に揶揄(やゆ)仕返してきた。

 

 あら、アレンってそういうの興味なかったと思っていたのに......そう言いながら、明らかに俺が本気ではないことを見抜いてそうな彼女は、妖艶に距離を詰めてきた。

 

 哀れ、前世から女性耐性零の俺、どんなに変態親父をその身に降ろそうとも、敗北必至、壁際に追い詰められた挙げ句、タイミングよくやってきたエレナに泣きつく羽目になった。

 

 エレナはエレナで、アレン君が望むなら......とむしろ変な雰囲気に。もちろん、俺は戦略的な判断の下、即時転進(撤退)した。

 

 

 正直、この一件以来、向こうから積極的なスキンシップが増えてる節すらあり、むしろ状況は悪化しているとしか言えない。

 

 上の本命の二作戦以外にも色々試し、当時拠点としていた街ではついに『勇者パーティの貴公子(きこうし)』から『勇者パーティの奇行児(きこうじ)』にランクアップするに至ったというのに。

 

 俺のキチガイ行為すべてを、仕方がないんだからで済ませ、むしろ嬉しそうに世話を焼いてくるエレナは、将来悪いヒモ男に騙されそうで心配である。

 

 そしてクリスは無関心というか、唯我独尊。俺がどんなにアホなことをしようが、そもそも気にする気配がない。

 

 

 すでに龍は7体目が討伐されている。物語も終盤。俺はすでに、我がNTRIQ180の頭脳の敗北を認めざるをえない状況に追い込まれていた。

 

 

 かくなる上は、頼れるのは(ただ)一人......。

 

 

 敵の敵は味方。そう、魔王に頼るしかない!!

 

 

 

 

 

 

「というわけで、なんとかならない?」

「なるわけないじゃろ、馬鹿か?」

 

 天啓を受けた俺は、場所が(わか)り次第、魔王の下に出向いた。

 

 魔王の居場所は7体目の龍が倒される間際に命乞いと共に盛大にばらしていた。勿論、その後、無慈悲にも二人によって消し飛ばされたが。

 

 龍を倒した夜、いつも通り宿に戻った俺はさっそく抜け出した。とはいえ、エレナとクリスに無言で、というのも申し訳ない。

 

 きちんと、『魔王のもとに向かいます。追わないでください』と書置き(メッセージ)を残しておいた。抜かりのない男なのだ、俺は。

 

 頼めるだけの全種類のデザートを並べて、食べ比べをおこなっている魔王(金髪赤眼ロリの姿)を(なが)める。

 

「しかし、ほんとふざけた男よ。我は何度も現界を繰り返してきたが、お茶を申し出てきたのは初めてよの。しかも頼み事も意味わからんし。変な(スキル)も使うわ。......ふむ、これは当たりじゃな」

 

 魔王が出てくるところまで見ていないから何とも言えないが、こんなヒロインみたいな見た目してるのか魔王。もっと化け物みたいなイメージだったんだけど魔王。

 

 初訪問時は問答無用で戦闘になったがスキルで攻撃を避けながら、説得した。時間停止最強!

 他人を守るには全く向かなければ、攻撃力もあくまでも自分基準のスキルなので、雑魚スキルということに変わりはないが。止めているときは自分しか動けないからね。他人も動かせたらちょっとは変わったのかもしれない。

 

 とりあえず、()びを売るのもかねて、一番近い町のレストラン(もちろん魔王の居城からはかなりの距離がある)に連れてきて今に至る。

 NTRゲーゆえに時代考証はかなりガバいのか、中身も外もよく見るチェーン的なファミレスに近い。

 うん、エロゲー世界だな。ヨシッ!

 

「あ、デザート以外も頼む? 金ならあるからどんどん食べていいぞ」

「我の配下を倒して得た金じゃろ」

「うっ」

「冗談じゃ。......もとより、我と奴らはほぼ他人みたいなものよ」

 

 自嘲(じちょう)するように笑みを浮かべる魔王に、思わず疑問が顔に出ていたらしい。

 

「クフッ、なんだその顔は。......もとより我らは古から続く舞台装置。お主でも、不思議には思わなかったのか? 勇者なんてスキルが与えられて、世界の危機なんて言いつつ、勇者とその数人の仲間だけが戦いに赴き、予定調和の勝利。しかもこれは昔から、ずーっと、その繰り返しじゃ」

 

 上部がすでに失われ、下部のゼリーとクリームのみとなったパフェをかき回し眺めながら魔王は言う。

 

 なんというか、少し寂しい話だな。

 

「それは同情か? 何、我に憎しみも怒りも、悲しみもないぞ。復活のたびに倒されようが、すでに生きている意味もとうに忘れた身、すべてがどうでもよかったゆえに、そこに感情などないわ。......いや、今のは嘘じゃ」

 

 いつの間にか手を止めていた魔王と、眼が合う。深淵のような瞳に吸い込まれるような錯覚。

 

「お主、この世界の者ではないの」

 

 おいおいおいおいおい、転生者バレしてるじゃねぇか(驚愕)

 

「な、なにを? ちゅ、厨二病かな? 転生者とかいるわけないじゃん。まだ早いよ、いや実年齢的には遅い?」

「......図星じゃな。というか、転生者......輪廻転生のことか? 呆れるほど分かりやすいの」

 

 いらん情報までセルフ開示しちゃったッ!(無能)

 魔王も心なしかジト目である。

 

「別にそれ自体はどうでもよい。早い話、本来、我とこうしてお茶している時点で異常じゃ。この世界、舞台において我は絶対悪の化身にして平和のための共通の敵。そういう設定じゃ」

 

 言葉を切ると、今度はモンブランモドキ?を一掬いして口に含む。

 ただ、ほおばる魔王を前に、俺は静かに次の言葉を待っていた。

 

「うむ、これもうまいの。クフフ、これが会話か......。つい長々と話してしまったわ」

 

 どこか高揚するように、喜悦を隠さず魔王はさっきまで咥えていたスプーンを俺に突き出した。

 

「要するに、幾千年の過去においてこの我をお茶に誘い、交渉を持ちかけた者は、お主が初めてじゃ。この世界のシナリオから逸脱できる人間など、我の思いつく可能性は、この世界の者ではないこと。お主がこの世界の者かそうでないかの話は、興味で引っ掛けてみただけだの」

「降参だ。その通り、俺からしたら可愛い女の子にしかみえないよ」

「......軽口はよせ」

「本心だけどなぁ~」

 

 さすがに、魔王に対して気楽に接しすぎたか?

 気に(さわ)ったのか、小声でぶつぶつと文句を言いながらモンブランモドキを切り崩しにかかる魔王。

 

 まあ、別に俺が転生者だとか、異分子だとか、そういう話は正直どうでもいい話なのである。NTRと関係ない話は、(にわとり)よりも早く忘れる自信があるしな。許せサスケ。

 

 そんなことよりも本題である。

 

「えーっと、で、ここから好感度下げれる方法ある?」

「はぁ、そんなのな......いや、あるぞ」

「おぉ!!」

 

「お主、我の下につけ。人類の裏切者......前代未聞の魔王の手下じゃ。世界の敵になればよいのじゃ」

 

 にっこりと微笑む魔王は、まるで聖母のようだ。

 

「おぉぉぉおお!!!!」

 

 なぁるほど!!

 魔王と普通に会話できること?が転生者特典かは知らないが、魔王側について、裏切り糞野郎になるという手があったか!!人類の敵なら勇者パーティ(クリスとエレナ)が倒すしかないもんなぁ!!!

 

 これでクリスとエレナの間に、俺という裏切り者が入る余地はなければ、裏切者への義憤(ぎふん)を胸に、共通の敵を前に二人の距離は(ゼロ)距離に......。なんてこったぁ!!

 

 もはやNTR関係ないだろという声が聞こえてきたが無視した。寝取られたと思ったらそれはNTRなのである。二人のために裏切ったと思ったら、自分は嫌われて二人でイチャイチャされているというシナリオと思えば......これはNTR。完璧だな。

 

「またアホなこと考えているじゃろ。まだ会って永くもないのに、よくわかるわ」

「でも俺は何を返せば......?」

 

 魔王って何が必要なんだ? 魔王の立場的には好き勝手し放題だと思うわけで。

 欲しいものは全て手に入れてそう。

 

 ど、どうすれば。この希望の光は絶対に掴まないといけないのに!

 

「ん? よいよい。対価は我の手下になってくれれば十分じゃ」

 

 そう言われても、俺の目的をこんな完璧に叶えてくれる以上、返さないなんて人間として(すた)る!

 

「......ふむ、では──「アレンッ!!」」

 

 特徴的な結界が砕け散る高音とともに、(きら)めく魔力残滓の只中で、剣を構えたクリスが現れる。

 

「思ったよりも早かったの」

「......これはどういうことかしら」

 

 警戒を解くことなく、クリスが(いぶか)しげに尋ねる。

 

 なんで場所が分かったのかは分からないが、まあ、裏切り表明にはちょうどいい......のか?

 いや、裏切り方とかもうちょっと丁寧に考えてからやりたいのだが!!

 

「見ての通り、デートじゃよ。クフフッ」

 

 魔王の瞳が輝くとともに周囲の魔力圧が急激に上昇する。

 

 それと同時にクリスが踏み込み──見慣れた予備動作に慌てて俺はスキルを発動し、魔王の前に割り込んだ。

 

 解除と共にテーブルが両断され、俺はクリスの剣を受け止める。

 

 重っ! さすが勇者!

 

「な、なんで!! アレン!! こいつが魔王よ!! さっきまでは妙な嫌悪感しかしなかったけど、今ならわかる!! 勇者のスキルだって強く反応しているのに!!」

 

 事態の展開が速い!!

 

 まって、裏切り作戦といっても、なんかこう、裏切り方を練りたいのに!! 時間が欲しい!!

 でも戦闘中に思考だけのためにスキル使うわけにもいかないし!! クールタイムがあるしね!

 

 って、ちょっと!!!

 

 馴れ親しんだ魔力の収束に慌てて後ろの魔王を抱き寄せると、魔王がいた場所には結界が突き刺さっていた。

 

「心配せずとも、この程度の攻撃であれば通らぬぞ」

「いや、これで龍が爆散するの何回も見てきたから。不安になって勝手に体が......」

「......しかし、これが人のぬくもりか」

「ちょっ、おまっ、どこ触ってんで......ッ!!」

 

 殺気?!

 

 気のせいではなく、クリスから放たれる圧が強まる。

 

「アレン! そいつから早く離れて!!」

「......」

 

 叫ぶクリスの隣に、静かに笑みを浮かべたエレナが後ろから現れる。

 

 やっぱりあの結界はエレナか。

 それにしても、笑っているが笑っていない。

 なんだ、俺の体が、怖がっている?

 

 しかし、今裏切りを伝えるべきか? いや、だがいくら何でもいきなり──不自然だ。

 いやしかし、タイミングはここしかない。俺が最低な奴だと納得できるような一手......。

 

「......ジャンジャ「さて、帰るかの」え、ちょっと待って?!」

 

 真っ二つになっていた机もろとも、周囲の物体、その全てが弾き飛ばされ、足元に黒い塵を(まと)う魔法陣が展開される。

 空間が捻じ曲げられ、光が回折し、景色が歪む。

 

 残念、究極のゲス顔は無慈悲にもキャンセルされた。

 孤児院時代にこんなこともあろうかと、トイレで練習していたのに。

 

「待って!! 待ってよ!! なんでなんでなん...ッ」

「はぁ」

 

 取り乱しながら突っ込んでくるクリスを正面から結界が叩く。

 すでに弱っていたのか、そのまま意識を失い倒れこむ。

 それを成したエレナはため息一つと共に、俺に微笑んだ。

 

 なるべく早く帰ってきてくださいね、その言葉と共に、俺の視界は渦を巻いて収束し、闇に消えた。

 

 

 

 

「......ふん。鼻につくわい」

 

 

 

 

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