カードファイト!! ヴァンガード BraveBeyond   作:バビロン@VG

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♯X Extreme Holiday/Ⅰ

 

冷たい風が吹き抜けて、その場を通り過ぎて行った。

 

ざわめいている空気。ひしめきあった人々。

色とりどりの装飾が辺りの雰囲気を賑やかに彩っていく。

 

がやがやとした人混みの中に――

 

『ようこそおいで下さいました、ファイターの皆々様方!! ウェルカム・トゥ・ヴァンガフェスティバルー!!』

 

拡声器による運営スタッフの声が、高らかに響き渡った。

あちこちから巻き起こる拍手。大きな盛り上がり。

 

熱気に満ちた雰囲気が、付近を取り巻いていく。

 

『今回のイベントはヴァンガード普及協会主催による一大エンタメイベント!! 様々なアトラクションや企画、イベントが用意されています!! 皆様、心ゆくまでお楽しみ下さいー!!』

 

はきはきと喋っている運営スタッフ。

老若男女、あらゆる人々が列を作り会場に入場していく。

 

広々とした自然公園。明るい音楽が流れていく。

 

『ティーチングイベントいかがでしょうかー?』

 

『コスプレ用の着替えブースはこちらとなってますー』

 

あちこちから上がっている呼び込みの声。

楽しそうな賑わいの声が、会場内に広がっていく。

 

そんな中でも、ひと際大きな人の流れの先で――

 

『トリオイベントの参加受付はこちらでーす!!』

 

会員証を首から下げたスタッフが、

大きくそう呼びかけて両腕を振っていた。

 

『こちらのイベントは3人一組でのエントリーとなりまーす! なお、参加された方々には漏れなく限定PRカードを配布しておりまーす!! 皆様、奮ってご参加下さいー!!』

 

会場内に響き渡る声。

数多のファイターがぞくぞくと集まっていく。

 

期待と不安、緊張と緩和。

 

あらゆる表情を見せているファイター達。

様々な思いを胸に、彼らが受付へと集合していく。

 

――そんな盛り上がりを見せている、会場の端で。

 

『――そういう訳で、電車が動かないんだ』

 

一人の少年が、スマホからの声に耳を澄ませていた。

顔をしかめている少年。苦虫を噛み潰したような表情。

 

ボサボサとした黒い髪をかきながら――

 

「マジか……どーにかなんねぇのか、カケル?」

 

黒髪の少年――御導ソロが、そう訊ねた。

細身の身体に、黒い髪に混じった2本の赤いメッシュ。

 

どこか鋭い雰囲気を携えた少年が、静かに佇む。

 

『うーん……ちょっと、無理そう』

 

携帯から届く気弱そうな声。

ソロの眉が困ったように下がった。

 

「おいおい、マジかよ……」

 

かすれたような声で話すソロ。

がさがさとした音がスマホの向こうから響いた。

 

『ごめーん、ソロ君ー!!』

 

先程とは打って変わった溌剌とした声。

明るい少女の声が、ソロの耳へと届いた。

 

『なんか強風の影響と線路内の立ち入りと車両内の急病人の救護があるとかで……この電車、1ミリも動かないんだよー!! うわーん、本当にごめんー!!』

 

泣き言のような言葉。

ソロが目を閉じ、ゆっくり首を振った。

 

「そんな謝んなって。カケルもサナも悪くねぇだろ? 電車が動かねぇんじゃ、仕方ねぇよ」

 

『そうだけど……ソロ君は、もう会場にいるんでしょ?』

 

「おぉ。ウォーミングアップがてら、歩いたからな」

 

当然のことのように答えるソロ。

『嘘でしょ……あの距離を?』とカケルが呟く声がする。

 

すっと、複数の影がソロに近づいて――

 

「自分らもいるぜぇ!!」

 

唐突に、3人組の不良達が声を張り上げた。

ソロがうっとうしそうにスマホから耳を離す。

 

「おい、そんな騒ぐな! 電話中だぞ!」

 

ぴしゃりと言い放つソロ。

3人組の不良が気圧されたように黙り込む。

 

『あー!! イッ君とニィ君とサン君も到着してるの!?』

 

電話の向こう、どこか悔しそうに訊ねるサナエ。

3人組の不良達が得意そうに頷いた。

 

「俺達、今日という日に賭けてたんで!!」

 

「普通に楽しみ過ぎて3時間前からいたぜェ!!」

 

「イェー!!」

 

それぞれスマホに向かって話す3人。

ソロが呆れたような目を向ける。

 

サナエが嘆くような声を出した。

 

『もー、よりにもよってこんな日に交通トラブルだなんてー!! 私、3人でイベントに出るって、すっごい楽しみだったんだよ!!』

 

ぷりぷりとした口調のサナエ。

ソロが同意するように軽く頷いた。

 

「分かるぜ。俺もサジッタも、今日に備えてばっちり準備してきたからな」

 

『本当だよねー! あー、でも今からじゃワープでもしない限り受付に間に合わないかぁ……。うーん、参加賞、欲しかったなぁ……』

 

残念そうに話しているサナエ。

いかにも物悲し気な雰囲気がスマホから伝わってくる。

 

フッと、ソロが目を閉じて微笑んだ。

 

「心配すんなって、サナ! 俺一人で残り2人のメンバー見つけて、参加するからよ! そしたら参加賞貰えるだろ?」

 

優しい声色で言うソロ。

サナエが『えっ?』と驚きの声を出す。

 

『それはそうだけど……ソロ君、大丈夫?』

 

『そうだよ、ソロ。というか、そんな都合よくメンバー見つかるかな……?』

 

疑問を投げかけるカケル。

ソロがポンと自分の胸を叩く。

 

「安心しろって!! 見た所、似たような事情でチームメンバーが来てないような奴らがちらほらいるんだよ!! 声かけりゃ楽勝だ!!」

 

大きく言い放つソロ。

スマホからの『そうかなぁ……』という声がハモる。

 

ソロがぐっと拳を握った。

 

「そういう訳だから、2人は慌てないでゆっくり会場にこいよ!! また後で合流しようぜ!!」

 

『うーん……わかった。じゃあよろしくね、ソロ』

 

『ホント、ごめんねー!!』

 

2人から投げかけられる言葉。

弾むような音と共に、通話が切れる。

 

通話の切れたスマホの画面を見下ろしながら――

 

「……はぁぁぁ」

 

大きなため息を、ソロが吐き出した。

座り込むソロ。目に見えて落ち込んだ雰囲気。

 

「ソロの兄貴、大丈夫ですかッ!?」

 

3人組の不良達が駆け寄る。

不機嫌そうに、ソロがゆらりと顔をあげた。

 

「……これが大丈夫に見えるか?」

 

ジトッとした目で不良達を睨んでいるソロ。

鋭い眼光に晒され、3人が黙り込んだ。

 

ソロがぴしゃりと額に手をあてる。

 

「あー、ちくしょう。ああは言ったが、今から2人もチームメンバーを見つけねぇといけねぇのか。どうしたもんかなぁ……」

 

腕を組み、ぶつぶつと呟いているソロ。

いかにも悩ましそうに髪をかく。

 

スキンヘッドの少年が背筋を伸ばした。

 

「ソロの兄貴、ここは自分が引きます!! どうかニィとサンと組んでやって下さい!!」

 

「……あん?」

 

顔をあげるソロ。

近くに立つモヒカンとリーゼントの少年達も頷く。

 

「そうですよ兄貴!! 自分らの内誰かが抜ければそれで3人組です!! 余裕で参加賞ゲットできますよ!!」

 

「俺らは兄貴の魂の舎弟です!! 遠慮せず、自分らに命令して下せぇ!!」

 

次々とソロに申し出る不良達。

真剣な表情を浮かべ、ソロからの返事を待つ。

 

ソロがかすかに、その目を細めた。

 

「……お前ら」

 

ぼそりと呟くソロ。

ゆっくりと、その場で立ち上がる。

 

3人組の不良達を見据え、そして――

 

「――馬鹿野郎共がッ!!」

 

思い切り、ソロが3人組を怒鳴りつけた。

「ウェッ!?」とびっくりする3人。驚愕の表情。

 

ぎろりと、ソロがスキンヘッドの少年を睨んだ。

 

「おい、イチ。お前、どうしてニィやサンと組んでこの大会に出るって決めたんだ? 言ってみろ」

 

「そ、それはッ、その……!!」

 

しどろもどろになっているスキンヘッドの少年。

ソロが視線をリーゼントの少年に移す。

 

「ニィ。お前はどうだ? 毎晩遅くまで、ファイトの練習してたんじゃねぇのか?」

 

「あっ、えっとですね……」

 

口ごもるリーゼントの少年。

ソロの鋭い目が、モヒカンの少年の姿を捉えた。

 

「サン。お前が一番熱心だったな。今日の為にバイトまでして、カード買ってデッキを強化したんだろ?」

 

「あ、兄貴……!!」

 

目を丸くしているモヒカンの少年。

ソロの前、3人組が凍りついたように固まった。

 

ソロが不良達を見渡して――

 

「お前ら――俺のチームを倒すって、その目標のためにイベントに出るんだろうがッ!! だったらそれを曲げようとするんじゃねぇッ!!」

 

ソロが、大きくそう一喝した。

衝撃を受ける3人組。目を見開き、ソロを見つめる。

 

ばっと、ソロが腕を伸ばした。

 

「今日は俺とお前らは仲良しの友達じゃねぇ!! れっきとしたライバルだ!! いいか、俺は必ずチームメンバーを見つけてこのイベントに参加する!! そんでもって――」

 

言葉を切るソロ。

にやりと、不敵な笑みを浮かべて――

 

「まだまだ、お前らじゃ俺には敵わねぇって事を、たっぷりと思い知らせてやるよ」

 

ソロの身体から、鋭い殺気が放たれた。

剃刀のような威圧感。辺りの空気が歪んでいく。

 

ゾクゾクと、3人組の背筋に寒気が走った。

 

「……失礼しました、兄貴」

 

神妙な顔で頭を下げるスキンヘッドの少年。

残りの2人も同じように頭を下げる。

 

「俺達が間違ってました!!」

 

「兄貴……今日は思う存分、やらせてもらいやす!!」

 

さめざめとした口調。

まるで任侠映画の一場面のような光景が繰り広げられる。

 

ソロが満足そうに頷き、3人組に背を向けた。

 

「わかったなら、お前らはさっさとエントリーしてきな。中で会おうぜ」

 

「はいッ!! 失礼しますッ!!」

 

重なる3つの声。

不良達が脱兎のごとく、受付に向かって駆けだす。

 

賑やかな人の海の中に、ソロが一人取り残された。

 

「…………」

 

涼しい表情を浮かべているソロ。

ちらりと、横目で3人の姿がいなくなった事を確かめる。

 

爽やかな青い空を仰ぎ、そして――

 

「……やっちまった」

 

がっくりと、ソロがその場で大きく肩を落とした。

再び、その場に座り込むソロ。沸き上がる後悔の念。

 

翼のはためく音がして――

 

『かっこつけすぎ。バカ』

 

心の中に、白い雪のような声が響いた。

ソロが困ったように頬をかく。

 

「そうは言ってもよ、あそこはああするしかないだろ」

 

言い訳じみた口調。

先程までの威厳はすっかり消え去っている。

 

ため息と共に、再び翼がはばたく音が響いた。

 

『なんでもいいけど、ちゃんと仲間見つけなよ。あそこまで言って参加できなかったら、いよいよダサさ極まっちゃうから』

 

わずかに心配するような声色。

ソロが両手をあげながら軽く頷いた。

 

「わーってるって。そう心配すんなよ、絶対になんとかしてやるから!」

 

根拠のない自信。

心の中の声はそれ以上は何も言わず、黙り込む。

 

ソロが立ち上がり、自分の頬を叩いた。

 

「よし! そんじゃ、早速誰かに声かけを――」

 

そう、ソロが言いかけた瞬間。

 

「ねぇ、そこのあなた」

 

唐突に響く鋭い声。

ソロが「ん?」と呟き、振り返る。

 

黒の長い髪がかすかに風になびいて――

 

「あなた、チームメイトを探してる訳?」

 

眼鏡をかけた長身の少女が、静かにそう訊ねた。

すらりとした体型。ブレザー型の高校制服。

 

どこか冷たい雰囲気を、少女は漂わせている。

 

「お、おう。そうだけどよ……?」

 

少女の顔を見つめながら口ごもるソロ。

じっと、少女は値踏みするような視線を向けている。

 

少女が目を閉じ、ハァと小さく息を吐いた。

 

「いいわ。組んであげる」

 

「は?」

 

聞き返すソロ。

少女が不機嫌そうに腕を組んだ。

 

「聞こえなかったの? 私があなたと組んで、チームメンバーになってあげるって言ってるの。光栄に思いなさい」

 

「そんなことも分からないの?」と言わんばかりに。

子供に言い聞かせるように、少女がそう言い放った。

 

たっぷりと、その場に沈黙が流れる。

 

「――ハァッ!?」

 

再び、困惑の声をあげるソロ。

「何言ってんだこいつ」と、その目が語る。

 

少女が凍りつくような瞳を向けた。

 

「なによ、不満なの?」

 

「い、いや! そういう意味じゃなくてよ! てか、そもそも、お前いったいどこの誰だよ!?」

 

混乱したように疑問を投げかけるソロ。

少女が「あら」と声に出す。

 

「名乗ってなかったかしら。まぁ、いいわ」

 

どうでもよさそうな口調。

少女が真っすぐに、ソロの顔を見つめる。

 

眼鏡の奥、鋭い眼光を讃えながら――

 

「私はミコト。氷川(ひかわ)ミコトよ。よろしく頼むわね、赤髪まじりの不良さん」

 

黒髪の少女――ミコトが、冷たくそう答えた。

 

「氷川、ミコト……?」

 

目を細めているソロ。

頬をかきながら、困ったように眉を下げる。

 

「……俺はソロ。それはそれとして、なんだって、急に俺と組むなんて話になるんだ?」

 

説明を求めているソロ。

ミコトが腕を組み、視線をそらした。

 

「あなたの声が大きいから聞こえていたのだけど……私も、チームメイトが急遽来れなくなってしまったのよ」

 

「えっ、あんたもなのか!?」

 

ソロの大声に眉をしかめるミコト。

渋い表情のまま、小さく頷く。

 

「そうよ。だから、私も参加のためにチームメイトが必要になった。私とあなたの目的は合致しているのよ」

 

淡々と話しているミコト。

ソロの全身を眺めながら、息を吐く。

 

「まぁ、本当ならあなたのような不良と組むのは怖いのだけど、この際仕方ないわ。今回だけ我慢してあげる」

 

「おい!? 今のところお前の方が100倍怖いぞ!?」

 

不満そうに言うソロ。

ミコトはその言葉を完璧に無視する。

 

冷ややかな目を向けて――

 

「それで、どうするの? 組むの、組まないの?」

 

壮絶な圧を漂わせながら。

脅迫するような口調で、ミコトがソロにそう問いつめた。

 

一瞬、ソロがげんなりとした表情を浮かべる。

 

(なんだよこいつ……アヤメとかとは別ベクトルでヤベー女だぞ……。正直、あんまり関わりたくねぇけど……)

 

正直な感想を抱くソロ。

とはいえ、現状を考えればえり好みはしていられない。

 

諦めたように視線を伏せて――

 

「わかったよ、組むって!! よろしくな、お嬢!!」

 

半ばやけくそになりながら。

ソロがそう言って、大きく手を振り上げた。

 

ミコトが目を細める。

 

「……お嬢?」

 

怪訝そうな表情のミコト。

何か言いたげに、ソロの姿を見つめる。

 

軽やかな鐘の音が、辺りに大きく響いた。

 

『トリオイベント、間もなく受付終了となりまーす!! エントリーされていないチームは、受付までお越しくださいー!!』

 

会場内に響き渡るアナウンス。

がやがやと、辺りがにわかに騒がしくなる。

 

「……まぁ、いいわ。あまり時間もないし、もう一人を早く探すわよ」

 

冷静に話すミコト。

ソロが真剣な表情で頷いた。

 

「おう、そうだな。ここまできたら、組めそうな奴ならこの際どこの誰でも――」

 

そう、ソロが言いかけた瞬間。

 

「――力が欲しいボバ?」

 

2人の後ろから唐突に投げかけられた声。

「ん?」という声を出し、2人が振り返る。

 

眩いばかりの逆光を背にして――

 

「なら――この朔導ナヅキちゃんが、君達の力になってあげるボバーッ!!」

 

奇妙な着ぐるみの少女が、両腕を振り上げた。

手作り感溢れる見た目。お腹の辺りから覗く少女の顔。

 

その姿は――

 

 

発破怪獣 ボバルマイン

ノーマルユニット 〈1〉 (ブースト)

ブラントゲート - エイリアン 

パワー8000 / シールド5000 / ☆1

【自】【(R)】:このユニットのブーストしたバトル終了時、あなたのオーダーゾーンにセットオーダーがあるなら、【コスト】[このユニットをソウルに置く]ことで、【カウンターチャージ】(1)。

― 爆発の衝撃を有益に活用する技術が研究されている。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

無言になるソロとミコト。

着ぐるみの少女――ナヅキがきゅむきゅむと近づく。

 

「話は聞かせてもらったボバ!! チームメイトを探してるボバね? なら、この私が組んであげるボバよ~!! よかったボバねぇ~!!」

 

きゃぴきゃぴとした声でアピールしているナヅキ。

キラキラとしながら、ソロとミコトの事を見つめる。

 

わずかな沈黙が流れ、そして――

 

「あっ、大丈夫っす……」

 

「却下よ。私達、人間と組みたいの」

 

2人が、全く同時にナヅキの申し出を断った。

ガーンと、ナヅキがショックを受ける。

 

「ボバァー!? なぜボバー!?」

 

心の底から驚いているナヅキ。

もこもことした腕を頬に当てる。

 

ソロが顔をそらした。

 

「いや、なんでって……なぁ?」

 

同意を求めるソロ。

ミコトが「えぇ」と短く応える。

 

ナヅキがガルルルと威嚇するような声を出す。

 

「どうしてボバ!? 見ての通り、私はとーっても凄いファイターボバ!! 可愛くて強い、まさに最高の優良物件ボバよー!!」

 

納得できず騒ぎ立てているナヅキ。

周囲からの視線が突き刺すように集まっていく。

 

ソロがこそこそと耳打ちする。

 

「おい、どうする? どう見ても飛んでる女だぞ……」

 

「そうね。ただ、時間がないのも事実だわ」

 

考えるように目を閉じているミコト。

ナヅキはボバボバとその場で横に揺らいでいる。

 

辺りに、軽やかなアナウンスの音が流れた。

 

『トリオイベント、間もなく最終受付時間となります。繰り返します。トリオイベントは間もなく最終受付と――』

 

無情にも告げられるタイムリミット。

ソロが「ぐっ!」と顔をしかめた。

 

その隙を、ナヅキは見逃さない。

 

「おやおやぁ~? もうすぐ時間ボバねぇ~?」

 

ねっとりとした口調で語り掛けるナヅキ。

その顔に邪悪な笑みが浮かぶ。

 

「いいのかなぁ~? ここで私を逃したら、君達は0回戦負けになるボバねぇ~! 決断するなら、今しかないボバよぉ~?」

 

2人を追い詰めるように言うナヅキ。

きゅむきゅむという足音と共に、2人へ迫る。

 

ソロの脳内に、仲間達の顔が浮かんだ。

 

『ソロの兄貴ッ!!』

 

『ソロ君!』

 

交わした男の約束。深い友情の契り。

今までの記憶が走馬灯のようにソロの中に流れていった。

 

「……仕方ないわね」

 

不服そうに呟くミコト。

もはや、2人に選択肢は残されていなかった。

 

柔らかな風が辺りを通り過ぎて――

 

『――はい、受付完了しました』

 

笑いをかみ殺したスタッフの声を、

ソロが死んだような顔で受け止めた。

 

ナヅキが嬉しそうに、その腕を天へと伸ばす。

 

「イエーイ、無事にエントリー完了ボバー!! これで私達は見事にメイト――運命共同体となったボバね~!! これからよろしくボバ~!!」

 

ボバボバと騒いでいるナヅキ。

周囲からの視線が降り注いでいく。

 

「ちょっと、あまり騒がないで。言うこと聞かないなら今すぐブラントゲートに帰すわよ」

 

冷ややかに告げるミコト。

ナヅキが「ボバァ!?」と驚愕した。

 

そのまま、2人がぎゃあぎゃあと会話を続けていく。

 

「………」

 

やや離れた場所に立っているソロ。

その頭上には、澄み渡るような青い空が広がっている。

 

美しい晴天。透き通るような空模様。

 

ソロが天を仰いで――

 

「……どうして、こうなった」

 

心の底から後悔したように。

その声が辺りに溶けて、消えていった。

 

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