カードファイト!! ヴァンガード BraveBeyond   作:バビロン@VG

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♯X Extreme Holiday/Ⅲ

 

灰色の分厚い雲が空を覆い、太陽の光を遮った。

 

重苦しく沈み込んでいく空気。雨の予感。

遠くの空より、雷の低い音がゴロゴロと鳴り響く。

 

息を切らしながら――

 

「ゴールまで後どんくらいだァ!?」

 

イチが、後ろを走る2人に向かってそう叫んだ。

腕をふり、全速力で公園を駆け抜けているイチ。

 

汗を流しながら、ただひたすらに前に進んでいく。

 

「もうちょいだ!!」

 

「このままぶっちぎろうぜェ!!」

 

追いかけるように走っているニィとサン。

互いに鼓舞するよう、大きな声を出す。

 

イチがにやりと笑みを浮かべた。

 

「よっしゃ!! このまま、俺達が優勝――!!」

 

言いかけた瞬間。

3人のスマホが一斉に通知を受け取って――

 

ボーンという低い鐘の音が、スマホから鳴り響いた。

 

「あぁん!?」

 

驚いたように視線を落とすイチ。

足を止め、スマホの画面に表示された文字を眺める。

 

――運命戦のお知らせ。

 

「運命戦!?」

 

「別のチームと戦うって事かぁ!?」

 

驚いているニィとサン。

チッと、イチが大きく舌打ちした。

 

「しょうがねぇな、さっさと終わらせようぜ!」

 

威勢よく言うイチ。

キョロキョロと、辺りを見回す。

 

少し向こう、ゴール付近に立つ人影を見つけて――

 

「げっ!」

 

思わず、イチが顔をしかめた。

視線の先に立つ人物。黒髪のすらりとした青年。

 

プロファイターの白山トウザの姿を、イチが見つける。

 

「よりにもよってプロファイターが相手かよ!!」

 

同じくトウザに気付いたニィが嘆くように言う。

「フン!」とサンが指の骨をポキポキと鳴らした。

 

「んだよ、お前らビビッてんのか!? 上等な相手じゃねぇか、あいつの首をソロの兄貴に持ってってやろうぜ!!」

 

闘志を燃やしているサン。

その言葉を聞き、イチとニィが頷いた。

 

「そうだな、やってやろうぜ!!」

 

「爪痕残したらァ!!」

 

覚悟を決める2人。

そのまま、トウザ達の方へと近づいていく。

 

辺りに雷の音が轟き、そして――

 

「……うぅ」

 

苦しそうな声を残して。

どさりと、3人の前でトウザがその場に崩れ落ちた。

 

ぱらぱらと、その手からカードが落ちていく。

 

「……はっ?」

 

ぽかんとしているイチ。

呆然と、目の前に倒れたトウザの姿を見下ろす。

 

「お、おい、見ろ!」

 

悲鳴のような声をあげるニィ。

辺りに広がる草原を見渡して――

 

そこかしこに倒れる、数多のファイター達が目に入った。

 

「うぅ……!!」

 

うめき声をあげているファイター達。

老若男女。様々な人々が力なく倒れている。

 

「こ、こいつは……!?」

 

絶句しているサン。

異様な光景を前に、思考が止まる。

 

草を踏む足音が近づいて――

 

「――おや、次のチームかな?」

 

穏やかな声色。

不良達の前に、黒髪の少年が現れた。

 

爽やかな笑顔を浮かべた少年。どこかの高校の制服。

 

きらんと、耳元に付けたハート形のピアスが輝く。

 

「お、お前……!?」

 

不気味な何かを感じながら訊ねるイチ。

くすりと、少年が微笑んでその手を広げた。

 

「そう身構えないでよ。ねぇ、君達。戦う前に、一つだけ質問したいんだ」

 

穏やかな声色。

爽やかな表情を崩さずに喋っている少年。

 

その目を細めながら――

 

「君達――願いの叶うコインを持ってないかな?」

 

ピアスの少年が、おもむろにそう尋ねた。

「は?」とイチが顔をしかめる。

 

「願いの叶うコインだぁ……?」

 

混乱したように呟くイチ。

ニィとサンもまた、訳が分からなさそうな顔になる。

 

その反応を見て、少年がため息をついた。

 

「やっぱり知らないかぁ。まっ、期待してなかったよ」

 

一人納得している黒髪の少年。

やれやれと言わんばかりに肩をすくめる。

 

「そもそも、本当にこんなイベントにコインの所有者が参加してるのかな? ヴァル様の指示、いまいち当てにならないんだよね」

 

どこか不満そうな口調の少年。

その後ろから足音が近づいて――

 

「ちょっと〜。気持ちは分かるけどさ~、そういう言い方はよくないよぉ~」

 

たしなめるような口調と共に。

長い金髪で小麦色の肌のギャルが姿を現した。

 

着崩された制服。腰に巻かれたカーディガン。

 

どこかダルそうな雰囲気を、ギャルは漂わせている。

 

「あっ、あいつは……!!」

 

反応するサン。

開始直前、ナヅキと一緒にいた姿が思い返される。

 

ギャルがピアスの少年と向き合った。

 

「ヴァル様は確かにちょ~っとばかり変で分かりにくいけど、あれであの叡智は本物だし~。てか、キャラで言えばエデン様の方がアレじゃ~ん」

 

軽い口調で話しているギャル。

ピアスの少年が微笑んだ。

 

「それは、否定できないね」

 

考えながら頷いている少年。

ギャルが「でしょ~」と手をひらひらとさせる。

 

うめき声が渦巻く中に、2人の笑い声が響いていった。

 

「な、なんなんだよ、こいつら……!!」

 

笑っている2人を見ながら、慄いた様子で言うニィ。

イチがごくりと唾を飲み込む。

 

「分からねぇ。だけど、すげぇ嫌な予感がする。くそっ、こんな感覚はあの時以来だぞ……!!」

 

青ざめた顔で話しているイチ。

以前の光景が、その脳裏に蘇る。

 

蜘蛛の描かれたデッキケースを持つ、少女の嗤う姿が。

 

小さな足音が近づいて――

 

「2人とも、遊びすぎ。使命、果たす」

 

短く区切った独特の口調と共に。

薄緑色の髪をした、小柄な女子高生が姿を現した。

 

白い無線式のイヤホンを付けた少女。静かな雰囲気。

 

どこか不満そうな表情を、少女は浮かべている。

 

「あぁ、ごめんごめん。そうだったね」

 

軽く謝るピアスの少年。

微笑んだまま、不良達の方へと向き直る。

 

その背後から、邪悪な気配が這い上がって――

 

「それじゃ、ほら。遊んであげるよ」

 

ピアスの少年の貌に、歪んだ笑みが現れた。

異様な気配。辺りの空気が一気に張り詰めていく。

 

その瞳の中で、神秘的な光が不気味な輝きを見せた。

 

「うっ……!!」

 

気圧されたように身体をのけぞらすイチ。

ニィとサンもまた、緊張したように身構える。

 

対峙する3人。遠くで雷の音が轟いていく。

 

空を覆い尽くした灰色の雲。

辺りに暗い雰囲気が流れ、そして――

 

「ダメージチェック、ノートリガー……!!」

 

震える指でカードをめくって。

最後の1枚が、盤面上で表になった。

 

 

イチ ダメージ5→6

 

 

並び置かれたカード。敗北の印。

イチが力尽きたようにその場で膝をついた。

 

「く、くそっ……!!」

 

悔しさに打ち震えているイチ。

ピアスの少年が意外そうな表情を浮かべる。

 

「あれ? なんだ、もう終わりなの?」

 

驚いたような顔で訊ねる少年。

イチが「ぐっ!」と言葉を詰まらせる。

 

その横で、ニィとサンもまた同様に崩れ落ちていた。

 

「つ、強すぎる……!!」

 

「手も足もでねぇ……!!」

 

青ざめた顔で呟く2人。

冷たい地面の感触が、その手を通して伝わってくる。

 

イヤホンを付けた少女が息を吐いた。

 

「勝ち。だけど、無感動」

 

短く区切ったような喋り方。

イヤホンの少女が、無表情のままそう告げる。

 

「あたしも~。う~ん、退屈だなぁ~」

 

手をひらひらとさせているギャル。

いかにもつまらなさそうに、遠くを見つめる。

 

ピアスの少年が「アハハ」と笑い声をあげた。

 

「仕方ないさ。僕達は選ばれし者だ。ここにいるような、愚かで下らない連中とは違うんだよ」

 

笑顔で話している少年。

ぴくりと、イチがその言葉に反応する。

 

「下らないだと……!?」

 

拳を握り固めるイチ。

ピアスの少年が「おや」とわざとらしい声を出す。

 

「なにか不満かい? 髪のない不良君」

 

にっこりと微笑みながらイチを見下ろす少年。

イチがキッとその顔を睨みつけた。

 

「あぁ、不満だね!!」

 

気力を振り絞るように、イチが叫ぶ。

 

「てめぇらは確かに化け物みたいに強い!! だけどよ、今日ここに参加してるのは皆このイベントを楽しみにしてた善良なファイター達だ!! そんな奴らの想いを踏みにじりやがって、下らないのはてめぇらだろ!!」

 

怒りに燃えた表情。

必死な様子で喋っているイチ。

 

ニィとサンもまた、倒れながら頷く。

 

「イチの言う通りだぜぇ!!」

 

「てめぇら人間じゃねぇ!!」

 

声を張り上げる2人。

敵意に満ちた目を、相手へと向ける。

 

ピアスの少年が不服そうに目を閉じた。

 

「やれやれ、酷い言われようだなぁ」

 

まるで気に留めていない声色で話す少年。

フッと、小馬鹿にした笑みが口元に浮かぶ。

 

「まぁ、偶然とはいえ少しだけ当たってるけどね。それにしても、君達を見てると本当に反吐が出るよ。惨めで弱い、醜い害虫」

 

不良達を見下ろしているピアスの少年。

その瞳の中で神秘的な光が躍って――

 

「ほら、僕らに負けた罰だ。楽しんできなよ」

 

冷たい笑みを浮かべながら、少年が手をかざした。

瞬間、冷たい大地より邪悪な深淵が溢れ出て――

 

イチ達の脳裏で、凄まじい記憶の嵐が巻き起こった。

 

「うぎゃぁぁぁぁ!?」

 

頭を抱えて悲鳴をあげる3人。

今までの人生が、走馬灯のように追体験されていく。

 

――最も忌まわしく感じる、恐怖と挫折の記憶だけが。

 

くすくすと、ピアスの少年が笑った。

 

「ほら、がんばりなよ。さっきまでの威勢はどうしたの?」

 

煽るように話しかける少年。

だがもはや、その言葉すらも不良達には届いていない。

 

壮絶なる記憶の暴力。悲鳴さえもとぎれ、そして――

 

「あっ、がはっ……!!」

 

果てしない挫折と恐怖の果てに。

イチ達がぐったりと、地面に沈み込んだ。

 

つうっと、その目から涙が流れて――

 

「ち、くしょう……!」

 

心が折れたように。

イチの口から、力ない言葉が漏れた。

 

「そ、ソロの兄貴……!」

 

「ごめんよ、ナヅキちゃん……!」

 

同じく倒れ込んでいるニィとサン。

身を縮こませ、敗北感に押し潰されていく。

 

辺りのうめき声が大きくなり、そして――

 

「本当――惨めで、弱い連中だ」

 

ピアスの少年が、楽しそうな笑みを浮かべた。

侮蔑と憐れみが入り混じった声。心を抉る響き。

 

ピアスの少年の身体から、邪悪な気配が溢れていく。

 

「もういいんじゃない~? ゴールしちゃおうよ~」

 

退屈そうに言うギャル。

イヤホンの少女もまたこくりと頷く。

 

「時間の無駄。私、帰りたい」

 

不満そうな様子を隠さないでいる少女。

ピアスの少年が肩をすくめた。

 

「そうだね、終わりにしようか。ここにいるのはどうしようもないクズみたいな連中ばっかり。まったく下らない存在だよ、人間は」

 

辺りに倒れた人々を見ながら喋る少年。

邪悪な笑みを浮かべて――

 

「結局、僕らに勝てるファイターはここにはいない。誰も敵いはしないのさ。選ばれし使徒である僕達には、ね」

 

ピアスの少年が、そう結論づけた。

傲慢な雰囲気。瞳の中で神秘的な光が揺らいでいく。

 

深淵が溢れ出て、辺りが漆黒に飲み込まれていった。

 

絶望と怨嗟。闇の中に失われていく光。

世界が静かに、その幕を閉じようとしていく。

 

少年の笑う声がひと際大きく響き、そして――

 

「おい、聞いたか? 誰も敵わないんだってよ」

 

剃刀のような鋭い声。

暗闇を切り裂いて――

 

「だったら――俺達とも戦ってもらおうじゃねぇか」

 

静かな怒りを宿した声で。

御導ソロがその姿を現し、ピアスの少年を睨みつけた。

 

ぴたりと、少年の笑い声が止まる。

 

「あれ、まだいたんだ?」

 

余裕そうに微笑む少年。

イチ達がハッとなって顔をあげる。

 

「そ、ソロの兄貴……!!」

 

息も絶え絶えに声を出すイチ。

ちらりと、ソロが不良達の方に視線を向けた。

 

「なんだてめぇら、随分な格好じゃねぇか」

 

ぶっきらぼうに言うソロ。

不良達が「っ……!」と言葉を詰まらせる。

 

ピアスの少年に視線を戻しながら――

 

「まぁ、話しは後だ。とりあえず、この勘違い最強野郎をぶっ倒せばいいんだろ?」

 

漆黒の威圧感と共に、ソロがそう訊ねた。

溢れ出る鋭い殺気。深く燃えているソロ。

 

低い鐘の音が、重々しく辺りに鳴り響いた。

 

ソロの手の中で握りしめられたスマホ、

その画面上に金色の文字が浮かび上がる。

 

――運命戦のお知らせ。

 

「アハハ。面白そうな人だねぇ、君は」

 

爽やかな笑顔を浮かべているピアスの少年。

ソロが「けっ!」と声を荒げる。

 

「心にもない事を! おい、ナルシスト野郎! うちの連中が世話になったみたいだな。借りはきっちりと返させてもらうぜ!」

 

指を突き付けるソロ。

ピアスの少年が微笑んだまま前髪をかきあげた。

 

「さっきから口が悪いね。僕は御劔(みつるぎ)シュウって言うんだ。ほら、仲良くしようよ?」

 

ふざけながら話すピアスの少年――シュウ。

ソロがぎろりと鋭い目でシュウを睨んだ。

 

2人の間、空気がいびつに歪んでいく。

 

「なによ、この有様は」

 

ソロの後ろから現れるミコト。

倒れているファイター達を静かに眺めていく。

 

その姿を見て、イヤホンを付けた少女が反応した。

 

「むっ!!」

 

鋭い声をあげる少女。

じっと、食い入るようにミコトを見つめる。

 

「?」

 

不思議そうに首をかしげるミコト。

足早に、イヤホンの少女が近づいていく。

 

ミコトを見上げながら――

 

「お前、セレネシスの先導者!!」

 

イヤホンの少女が、声を張り上げた。

明らかな敵意。少女の身体から殺気が溢れる。

 

ミコトが「は?」と冷たい声を出した。

 

「あなた、初対面よね? どこの誰かしら?」

 

氷のような目を向けているミコト。

イヤホンの少女がばっと、身構える。

 

「私、甲斐(かい)ミズキ!! カリオペイア使い!!」

 

短く区切るように話している少女――ミズキ。

ミコトが目を細めた。

 

「そう。あいにく、別に興味ないの」

 

ばっさりと言い切るミコト。

ミズキが「むきー!!」と腕を振る。

 

怒りに燃えた目を向けて――

 

「セレネシス、私達の裏切り者!! 裏切り者、倒す!!」

 

ミズキが、デッキホルダーを構えた。

顔をしかめるミコト。いかにも面倒そうな目。

 

ため息をついて――

 

「あなたが何を言っているか分からないけど」

 

諦めたように言うミコト。

眼鏡の縁を指ではさむと、ゆっくりと外す。

 

黒い長髪が風でなびいて――

 

「私、無礼な人は嫌いなのよ」

 

冷たい声と共に、ミコトがミズキを睨みつけた。

入り混じる殺気。辺りの空気が凍えていく。

 

きゅむきゅむという気の抜けた音が響いて――

 

「おー、サンく~ん。そんな所で砂遊びボバ~?」

 

着ぐるみを着たナヅキが、サンの顔を覗き込んだ。

「いや、その……」と口ごもるサン。視線を伏せる。

 

ギャルが驚いたように口元に手を当てた。

 

「え~、ボバルマインちゃんが相手なの~? 倒しちゃうの、気が進まないなぁ~」

 

ゆるゆると話しているギャル。

残念そうな表情で、ナヅキの姿を見つめる。

 

着ぐるみ姿のナヅキが、手を頬に当てた。

 

「ボバァ~?」

 

不思議そうに首をかしげているナヅキ。

ギャルとサン、交互に視線を送る。

 

やがて、ポンとその手を叩いて――

 

「あぁ、どこかで感じた事のある気配だと思ったら! 君達、ギーゼの使徒ボバかぁ~! まだいたのボバねぇ~!」

 

納得したように、ナヅキがそう呟いた。

「へ~」とギャルが感心したように目を見張る。

 

「案外鋭いね~。てか、そんなこと知ってるだなんて、ボバルマインちゃん何者~? ほんとにブラントゲートから来てたりする~?」

 

のほほんと訊ねるギャル。

ナヅキがえっへんと胸を張った。

 

「あいにく、私の出身はドラゴンエンパイアボバ~。おまけに前世の話しだから、今は正真正銘、ちゃんと人間ボバよぉ~!」

 

「へぇ~、そうなんだねぇ~」

 

あっさりとナヅキの話しを受け入れるギャル。

サンの頭の中にいくつもの?が浮かぶ。

 

ナヅキがにこやかな笑みを浮かべた。

 

「なるほど、なるほど。ギーゼの使徒ボバかぁ~」

 

頷いているナヅキ。

もぞもぞと、その身体を動かしていく。

 

「前の時も何かと悪だくみしてたみたいだけど、今もそうなのボバねぇ~。つまり、サン君達をこうしたのも、君達の仕業ボバね~?」

 

淡々とした声で訊ねるナヅキ。

ギャルが「そうだよ~」とどこまでも軽く答える。

 

にやりと、ナヅキが微笑んで――

 

「そういうことなら――」

 

どこまでも愉しそうな声。

ナヅキが着ぐるみの背中にあるファスナーを開いて――

 

「ちゃーんと、相手してあげないとね☆」

 

ばさりと、桃色の髪を広げながら。

ナヅキがボバルマインの着ぐるみを脱ぎ捨てた。

 

ラフな格好のナヅキ。熱気が流れていく。

 

「お~、やった~。そっちの方が倒しやすいや~」

 

平坦な口調で喜んでいるギャル。

ごそごそと、デッキホルダーを取り出す。

 

「あたしは五條宮(ごじょうぐう)イトハ~。よろしくね、元ボバルマインちゃん~」

 

ゆるゆると手を振っているギャル――イトハ。

ナヅキが嬉しそうに微笑んだ。

 

灰色の雲の下、それぞれの組み合わせが向かい立つ。

 

睨み合う目、冷静な目、嬉しそうな目。

様々な感情が入り乱れ、空気が重苦しく沈んでいく。

 

目の前にカードを置いて――

 

「それじゃ、始めましょうか?」

 

どこまでも穏やかに訊ねるシュウ。

ソロが「あぁ」と冷たく答え、カードに指を置く。

 

鋭く相手を睨みながら――

 

「いくぜサジッタ」

 

ソロが、低い声でそう呼びかけた。

集中した表情。殺気を纏っているソロ。

 

心の中、鳥がはばたく音が静かに響き渡った。

 

空気が冷たく張り詰め、そして――

 

「スタンドアップ!!」

 

響き渡る6つの声。

それぞれの指がカードを掴む。

 

瞳の中、神秘的な光が渦巻いて――

 

「Z!!」

 

禍々しい気配と共に放たれる言葉。

邪悪な闇が不気味に蠢いていく。

 

めくるめく運命の螺旋の中で――

 

「ヴァンガード!!」

 

定められた掛け声と共に。

それぞれの前で、カードが表になった。

 

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