カードファイト!! ヴァンガード BraveBeyond   作:バビロン@VG

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♯2 Under Fighters/Ⅰ

 

穏やかな日差しが降り注ぎ、辺りを明るく照らした。

 

喧騒にまみれた雑踏。日常の風景。

天に浮かぶ太陽が、人々を見守っている。

 

コツコツと、靴音をたてて――

 

「……うん、ここだね」

 

一人の少女が、道の途中で立ち止まった。

オシャレな看板。シックな雰囲気のバー店の前。

 

黒いショートカットの髪の少女が、にこやかに微笑む。

 

リボンのついた高校の制服に、地味なメイク。

おっとりとした雰囲気に、たれ気味な目。

 

どこにでもいるような風貌の少女が、ガラスに映る。

 

「お昼の時間ぴったり。中で気配もする。順調、順調」

 

確認するかのように呟く少女。

スマホをしまうと、手を使って前髪を整える。

 

準備中の札がかけられた扉のノブを掴んで――

 

カランカランという鈴の音と共に、扉が開いた。

 

「んっ?」

 

訝し気な声。

店内にたむろするスーツ姿の青年達の視線が集まる。

 

黒髪の少女が後ろ手に、扉を閉めた。

 

「こんにちは」

 

穏やかな口調。微笑んでいる少女。

店内がかすかにざわめき、どよめいた。

 

すっくと、一人の青年が立ち上がる。

 

「よぅ。悪いが今は準備中なんだ。営業時間は夜からでね」

 

営業用の笑顔を浮かべ、そう告げる青年。

どこかうっとうしそうに、少女の姿を見つめる。

 

黒髪の少女が微笑んだまま、店内へと足を進めた。

 

「おいおい……」

 

呆れたような声。

店内のざわめきがさらに大きくなる。

 

カウンター席に、黒髪の少女がちょこんと座った。

 

にこにこと、笑みを浮かべ続けている少女。

先程の青年が近づき、ため息をついた。

 

「お嬢ちゃん、もう一度言うが今は営業前なんだ。その制服、近くの高校のだろ? サボるんだったら別の店に行きな」

 

イラつきの滲み出た声。

どこか凄むような口調で、青年が諭す。

 

少女が、くすりと笑って――

 

「いいえ。用事があるのは、ここなんです」

 

唄うような声色で、そう告げた。

ゆっくりと、少女が鞄の中に手を入れる。

 

困惑する雰囲気の中、少女がデッキケースを取り出した。

 

「私と、ファイトしてくれませんか?」

 

静かにそう訊ねる黒髪の少女。

ざわめく空気。ひそひそとした囁き声。

 

青年が気だるそうに、首を鳴らした。

 

「……お前、何者だ?」

 

殺気を放ちながら口を開く青年。

険しい表情を浮かべ、少女の事を睨みつける。

 

黒髪の少女が青年に向き直った。

 

「大した者ではありません。とある人に依頼されて来たんです。私自身は、どこにでもいるような存在です」

 

自らの胸に手を当てる少女。

青年を見上げながら、和やかに喋り続ける。

 

うっすらと、その目を細めながら――

 

「そう、普通の人なんですよ。私は」

 

黒髪の少女が、不敵に微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

VANGUARD

BraveBeyond

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チャイムの音が、高らかに響き渡った。

 

お昼休みの教室。騒がしい雰囲気。

他愛もないお喋りの声が、青春を彩っていく。

 

訪れたしばしの憩いの時間、その最中で――

 

「はぁぁぁー……」

 

暗黒に満ちた息を、天神宮ミユキが吐き出した。

疲れ切った表情。ぐったりとしているミユキ。

 

クラスメイトが、不思議そうな目を向ける。

 

「ミユキちゃん、元気ないねー。ホームシック?」

 

「どうなんだろうね~、朝からこんな調子だし。ギャグだとしたら、めっちゃキレいいけど」

 

のんびりと話すクラスメイト。

がばっと、ミユキが勢いよく顔をあげた。

 

「ボケちゃうわーッ!!」

 

泣きそうになりながら答えるミユキ。

クラスメイトが「きゃー!」と手を握り合わせた。

 

「やば、本場のツッコミだ! 私初めてだよ~!」

 

はしゃいでいる2人。

きゃぴきゃぴとした空気が辺りに流れる。

 

こてんと、ミユキが机に突っ伏した。

 

「あぁ、もう、どうでもええわ……。うち、これから死ぬから……」

 

悲愴な声色。暗いオーラを纏っているミユキ。

クラスメイト2人が不思議そうにその姿を見つめた。

 

「ちょ、ミユキちゃん、やば。どうしたの急に。昨日と比べて面白すぎるんだけど」

 

「今日はまだ滑ってないのにね~。それとも、これが新しいギャグ? ツッコミ待ちだったりする?」

 

好き放題言っているクラスメイト。

あれこれと、ミユキの思惑を想像しようとする。

 

心の中で――

 

(うち、終わったかもしらん……)

 

ミユキが嘆くようにそう呟いた。

「うぅぅ……」と唸るミユキ。両手で頭を抱える。

 

昨日の出来事が、ミユキの脳内に蘇った。

 

『ようこそ! アンダーグラウンドファイトへー!!』

 

きらきらとした満面の笑み。

嬉しそうに話すナヅキの姿が現れる。

 

『そうだねー、分かりやすく説明すると、裏世界の闘技場って感じかな~』

 

『仕切ってるのはどこかの非合法組織なんだよ~』

 

『今日、私の試合の日なんだよね~。だから、案内しちゃった☆』

 

悪びれた様子もなく言うナヅキ。

ニコニコとした笑顔。どこまでも無邪気な雰囲気。

 

気まぐれな妖精のような振る舞いを思い返して――

 

(ほんま、なにしてくれてんねんあのド天然女ァーッ!!)

 

ミユキの心に、怒りの炎が燃え上がった。

突如として放り込まれた裏世界。暗闇の空間。

 

ぐっと、ミユキが拳を握りしめる。

 

(うちはもっと、地味で平凡な女子高生として過ごす予定やったのにー!! それを、あんな訳わからん事に巻き込まれるなんてー!!)

 

激しくイラついているミユキ。

その脳内に、ナヅキの姿が再び現れた。

 

『ごめんケロ☆』

 

てへっとした様子で舌を出している想像のナヅキ。

ぶんぶんと、ミユキが首を振ってその姿を追い出した。

 

「ぐぬぬぬ……!!」

 

怒り心頭な様子のミユキ。

涙目になりながら、必死に頭を働かせる。

 

(ともかく!! この状況は早くなんとかせんと!! 裏の闘技場といい、あのコインといい、このままだと話しがどんどんややこしく――!!)

 

逡巡する思考。

ミユキがそう思い至った瞬間。

 

教室の外、中庭の方から歓声が上がった。

 

「……ん?」

 

気の抜けた声を出すミユキ。

顔をあげると、声のした方へと視線を向ける。

 

「なに、昨日に続いて連続なの? 本当にバカばっかね~」

 

呆れたように話すクラスメイト。

いかにも興味なさそうに、スマホを見ている。

 

もう一人のクラスメイトが首をかしげた。

 

「あれ? でも、なんかいつもと雰囲気違くない? 盛り上がってるっていうか……どよめいてない?」

 

冷静に指摘するクラスメイト。

もう一人のクラスメイトが「うん?」と言葉を返した。

 

中庭からは、ざわめくような声が上がっている。

 

「……もぅ、今日は何事よ?」

 

席から立ち上がるミユキ。

ぶつぶつ言いながら、窓に向かって歩く。

 

窓枠に手をかけ、身を乗り出した所で――

 

「……へっ?」

 

ミユキの口から、驚きの声が漏れた。

目を見開くミユキ。下に広がる中庭へと視線を向ける。

 

どよめく生徒達、その中央で――

 

「ようやく、見つけたわよ!!」

 

気の強そうな声が、鋭く響き渡った。

金色のウェーブがかった髪に、整った顔立ち。

 

いかにも不機嫌そうな表情を浮かべて――

 

「このサヤ様から隠れられると思ったのかしら!!」

 

金髪の少女――鶴見サヤが、そう言い放った。

ミユキたちと同じ制服姿。気の強そうな雰囲気。

 

一瞬、ぽかんとした表情を浮かべて――

 

「あー、サヤちゃんだ~」

 

桃色の髪の少女――朔導ナヅキが、ぽやぽやと答えた。

ベンチに座っているナヅキ。不思議そうな表情。

 

サヤが腰に手を当て、指を伸ばした。

 

「ちょっと、ちゃん付けしないでよ! あたし、あなたの先輩なのよ!」

 

指摘するような口調。

サヤがいかにも偉そうにそう話す。

 

ナヅキがにっこりと微笑み、立ち上がった。

 

「はーい、分かりましたー。サヤちゃん先輩~」

 

ゆるゆるとした口振り。

ナヅキが可愛らしく、その手を振る。

 

ますます、サヤの表情が不機嫌になっていく。

 

「えぇ、嘘……。あれって、鶴見先輩……?」

 

ミユキの横、身体を乗り出しているクラスメイト。

別のクラスメイトがその横から顔を出す。

 

「本当だ~、噂の社長やってる先輩だ~。普段は仕事とか何とかで、学校こないのにね~」

 

「てか、どういう事。朔導さんと知り合いって事? それともまさか、朔導チャレンジ……?」

 

お喋りしている2人。

ミユキだけが、ナヅキとサヤの因縁を理解している。

 

ナヅキが小さく、首をかしげた。

 

「それで、サヤちゃん先輩どうしたんですかー? ひょっとして、先輩も私と腕相撲したいんですー?」

 

楽しそうに訊ねるナヅキ。

サヤが「はぁ?」と声を荒げた。

 

「なに訳わかんない事言ってるの? 用事なんて、そんなの決まってるでしょ!」

 

力強く言い切るサヤ。

ナヅキが不思議そうに頬に指をあてる。

 

鋭い視線を向けて――

 

「ちょっと、顔貸しなさい!」

 

サヤが、真剣な表情でそう言い放った。

 

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