カードファイト!! ヴァンガード BraveBeyond   作:バビロン@VG

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♯3 Cray Encounter/Ⅰ

 

紅葉が咲き乱れ、赤い色が散らばっていった。

 

風に吹かれ落ちていく赤い葉。雅な雰囲気。

冷たい水のような静けさが、辺りを漂っていく。

 

――ドラゴンエンパイア。

 

惑星クレイにおける巨大国家の1つ。

偉大なる竜の帝王が統べる、紅の軍事国家。

 

果てなき闘争が渦巻く、苛酷な大地。

 

燃え上がる赤い炎が生命を彩り、

数多の雄叫びが戦場を彩っていく。

 

焔が舞い上がり、視界が真っ赤に染まって――

 

巨大な爆発音が炸裂し、地面が大きく揺れた。

 

「かかれーッ!!」

 

鎧を着た竜人が、剣を片手に叫び声をあげる。

怒号のような轟音と共に、空を竜の影が埋め尽くした。

 

竜の群れが突き進む先、厳かな古城の中で――

 

「…………」

 

一人の悪魔が、退屈そうな目を眼下に向けた。

青白い美しい肌。露出の多いドレス。

 

蝙蝠のような翼が、その背中からは伸びている。

 

「……はぁ」

 

ため息のような声。

凄まじい怒声と殺気が、悪魔の方へと迫りくる。

 

すっと、悪魔がその手を伸ばして――

 

再び、凄まじい爆発音が辺りに響き渡った。

壮絶なる魔力の衝撃。辺りが一瞬、白く塗り潰される。

 

悲鳴が上がり、竜の群れが墜落する中で――

 

「警告したはずだけど」

 

凍りつくような響き。

古城の中より、ゆっくりとその姿を現す悪魔。

 

漆黒の殺意をその身に纏いながら――

 

「私と戦う気なら、殺すって」

 

悪魔が、冷たい瞳を竜達へと向けた。

凄まじいまでの迫力。尋常ならざる気配。

 

凄惨たる死の気配が、色濃く戦場を覆っていく。

 

「うっ……!!」

 

陣頭指揮を取っていた竜人が、

怯んだように僅かに身じろいだ。

 

竜と悪魔が互いに睨み合い、そして――

 

「い、いけーッ!! 我らが王立直属部隊の実力を、見せつけるのだーッ!!」

 

竜人が、振り絞るようにそう叫び声をあげた。

雄叫びと共に、竜の群れが再び突撃を始めていく。

 

灰色の大地が震動するのを感じながら――

 

「……ウザいのよ、トカゲ共が」

 

心底、軽蔑したように。

悪魔がそう呟いて、その腕を宙にかざした。

 

紅葉が落ちて、赤い色が空気を染め上げていく。

 

沈みゆく太陽。暗い夜が地平線の向こうから現れる。

時が流れ、そして――

 

「がはッ!!」

 

一人の竜人が、石造りの床に勢いよく叩きつけられた。

砕け散った鎧に、傷ついた身体。薄汚れた顔。

 

その目にありありと、絶望の色が浮かんだ。

 

「そ、そんな……バカな……ッ!!」

 

床に這いつくばっている竜人。

ぜいぜいと荒く息を切らす。

 

「わ、我が部隊が……ッ!! 来るべき破壊の竜神との戦いにおいて、軍の一翼を担うであろうと評価された精鋭が……ッ!! 全滅……ッ!?」

 

うわごとのように話す竜人。

暗闇の向こうより、コツコツという足音が響く。

 

漆黒の殺気を纏いながら――

 

「あんたで最後?」

 

そっけなく、何の感情もこもっていない声で。

悪魔が静かに現れ、竜人を見下ろした。

 

無慈悲な瞳が、闇に浮かぶ。

 

「あっ、あぁぁ……!!」

 

その口から溢れる情けない声。

竜人が震えながらその身を縮め、すくみあがった。

 

震える指を伸ばして――

 

「ま、"魔王"……ッ!!」

 

悪魔を見上げ、竜人がそう口にした。

刹那、魔力が凝縮する鋭い音がして――

 

小さな破裂音が、古城の中に響き渡った。

 

「…………」

 

不機嫌そうな表情の青白い肌の悪魔。

目の前の床に染み付いた"焦げ"を睨みつける。

 

「……その呼ばれ方、好きじゃないの」

 

怒りを滲ませながらそう口にする悪魔。

一人きりの古城に、その言葉が消えていく。

 

妖しげな月夜を、静寂だけが彩っていった。

 

「……はぁ」

 

果てしなく広がる漆黒の空。星々の祈り。

寂れた古城のバルコニーで、悪魔が一人佇む。

 

冷たい風が吹き、そして――

 

「……燃えないなぁ」

 

桃色の髪を揺らしながら、悪魔が小さくそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

VANGUARD

BraveBeyond

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爽やかな青い空に、チャイムの音が響いていった。

 

がやがやとした騒がしい雰囲気。賑やかな光景。

制服を着た生徒達が、お喋りしながら廊下を歩いていく。

 

太陽の光が優しく降り注ぎ、そして――

 

「ユージンでアタック!」

 

「ぎゃーッ!?」

 

情けない悲鳴が、辺りの喧騒を切り裂いた。

戦場を駆ける赤い炎。熱風が吹き荒れる。

 

黒い獣が悲鳴のような声をあげて――

 

1枚のカードがめくられ、表になった。

 

 

惨烈の獣魔王 オセラジェスト

ノーマルユニット 〈3〉

(ツインドライブ!!) (ペルソナライド)

ダークステイツ - デーモン 

パワー13000 / シールドなし / ☆1

【起】【(V)】【ターン1回】:【コスト】[【カウンターブラスト】(1)]することで、あなたの山札から、このユニットと同名のカードを1枚まで探し、公開して手札に加え、山札をシャッフルし、そのターン中、このユニットのパワー+10000。

【自】【(V)】:このユニットがヴァンガードにアタックした時、【コスト】[【エネルギーブラスト】(4)]することで、あなたのソウルからグレード3以下を1枚選び、(R)にコールし、そのターン中、このユニットのパワー+10000。(【エネルギーブラスト】はエネルギーを4つ消費することで払える!)

― その影から闇が生まれ、拭い去れぬ絶望を招く。

 

 

ミユキ ダメージ5→6

 

 

「あああ!? オセラちゃんがぁぁぁ!?」

 

涙を流しながら頭を抱えるミユキ。

しくしくと、悲しそうに盤面を眺める。

 

可愛らしくピースをしながら――

 

「イェーイ! 大勝利ー☆」

 

桃色の髪の少女――朔導ナヅキが、

きゃぴきゃぴとした喜びの声をあげた。

 

輝く笑顔。煌めく雰囲気のナヅキ。

 

嬉しそうな雰囲気が、その全身から放たれている。

 

「あぅぅぅ……」

 

落ち込んだように肩を落とすミユキ。

目を潤ませながら、カードを片付ける。

 

柔らかな笑みを浮かべて――

 

「今のはちょっとだけ、燃えそうな雰囲気の欠片がありましたね~! それじゃあミユキちゃん、もう一戦お願いします~!」

 

ナヅキが、無邪気にそう言い放った。

涙目のミユキが勢いよく顔をあげる。

 

「ま、またぁ!? もう私、これで15連敗目で……!」

 

「大丈夫ですよ~。まだまだ、ミユキちゃんにはやれる余地があると思うんです~。一緒に燃えましょうよ~!」

 

ゆるゆるとした口調で話すナヅキ。

ファイトテーブルの前、ミユキが絶望した。

 

「そ、そんな……!!」

 

青くなっているミユキ。

テーブル席の方へと顔を向けて――

 

「さ、サヤちゃん先輩~! なんとかして下さい~!」

 

救けを求める情けない声が、その場に響いた。

屋上に設置された、白のテーブル席。

 

頬づえをつきながら――

 

「……まったく、うるさいわねぇ」

 

ウェーブがかった金髪を揺らして。

鶴見サヤが、不機嫌そうな視線を向けた。

 

ミユキがサヤに迫る。

 

「サヤちゃん先輩、助けて下さい! このままじゃ、私のオセラちゃんが顔面フルボッコに……!」

 

悲愴な表情で話すミユキ。イメージ上、

オセラジェストも「そうだそうだ!」と声をあげる。

 

にっこりと、ナヅキが微笑んだ。

 

「あー、そうですねぇ。サヤちゃん先輩でも私はいいですよ~。むしろ大歓迎です~!」

 

のほほんと話しているナヅキ。

ほんのかすかに、その身体から異様な気配が漏れ出る。

 

辺りの空気が張り詰め、そして――

 

「やらないわよ」

 

目を閉じながら、あっさりとサヤがそう答えた。

ナヅキがきょとんとする。

 

「えー? なんでですかぁー?」

 

どこか不満そうな声色。

サヤが肩をすくめた。

 

「やるわけないでしょ。あたし、目的のないファイトはしない主義なの。それに、まだあんたに勝つ算段がついた訳でもないからね」

 

手をひらひらとさせるサヤ。

その言葉を聞いて、ナヅキが顔を煌かせた。

 

「わぁ、嬉しい~! サヤちゃん先輩、まだ私を倒す気でいてくれたんですね~。そういうことなら、私いつまでも待ってますよ~!」

 

手を握り合わせているナヅキ。

サヤがチッと舌を鳴らす。

 

「言ってなさい。そのうち後悔させてあげるから」

 

冷たく燃える闘争心。

2人の少女が互いに睨み合った。

 

空気が張り詰める中、風が通り過ぎていく。

 

「……にしても」

 

視線を逸らすサヤ。

呆れたように眉をひそめながら――

 

「あんた、そこの凡人と戦いまくってるのはあれかしら? アンダーグラウンドファイトの対戦に選ばれない憂さ晴らしって訳?」

 

そう、問いかけた。

「ぼ、凡人!?」とショックを受けるミユキ。

 

ナヅキが、目を糸のように細める。

 

「やだなぁ、そんな訳ないじゃないですか~」

 

手を振っているナヅキ。

ニコニコと笑いながら――

 

「ただ、ほんのちょっと、向こうで戦えてないだけですよ~。そんな、不満だなんて~。私そういうの全然、気にしてませんから~☆」

 

ほんの少しだけ低い声で、ナヅキがそう答えた。

漏れ出る威圧的なオーラ。鋭い殺気。

 

明らかに不満そうな雰囲気を、ナヅキが漂わせる。

 

「め、めちゃくちゃ怒ってるじゃないですか……!」

 

怯えながら呟くミユキ。

サヤが指おり数える。

 

「最後に戦ったのが"普通の少女"だっけ。なら、2週間くらい前か」

 

「正確には16日前ですよ~」

 

即答するナヅキ。

サヤがため息をついた。

 

「根に持ちすぎ。あんた新参だから知らないんだろうけど、そもそもアンダーグラウンドファイトにはたくさんファイターがいるの。1ヵ月に1回しか対戦が組まれないなんて別に珍しくないわよ?」

 

あっさりと言い放つサヤ。

ナヅキがかすかに目を見開いた。

 

「1ヵ月……」

 

噛みしめるように口にするナヅキ。

口元に手をあてながら、真剣に考え込む。

 

「となると、待ってる間に軽く50回くらいはミユキちゃんと戦えるのかな……。うーん、それまでに燃えられるかなー……」

 

ぶつぶつと小声で計算しているナヅキ。

ミユキが「ひぃ!?」と怯えて真っ青になった。

 

フッと、サヤが鼻で笑う。

 

「まぁ、そんな待たされないと思うけどね。あんた、例のコイン持ちだし。おまけに10連勝中なんだから、心配しなくても逃がしてくれないわよ」

 

くすくすと笑っているサヤ。

ナヅキが「そうかなぁ……」と不安そうに呟く。

 

復活したミユキが、上目遣いにサヤを見つめた。

 

「あ、あのー。朔導さんの10連勝って、やっぱり凄い記録なんですよね……?」

 

おずおずと手をあげて質問するミユキ。

サヤが不服そうに頷いた。

 

「まぁ、そうね。一応、記録的には初じゃない?」

 

「ということは、今の朔導さんってアンダーグラウンドファイトでもトップの実力って事なんですか!?」

 

ぴくりとその言葉に反応するサヤ。

イラついたように、テーブルを指で叩く。

 

「可能性として否定はしない。でも、あたしの見立てだと今のアンダーグラウンドファイトで一番強いのはこいつじゃない。"雷鳴の帝王"よ」

 

「あぁ、この前も話に出ていた、"雷鳴の帝王"さん」

 

ぼんやりと言うナヅキ。

不思議そうに首をかしげる。

 

「私、まだ見た事がないんですよねー。どんな方なんですか~?」

 

「どんなって、そりゃ……」

 

口ごもるサヤ。

言葉を詰まらせる。

 

顔を逸らして――

 

「……強くて、いけすかない野郎よ」

 

吐き捨てるように、サヤがそう言い切った。

苦々しい表情。不満そうな様子のサヤ。

 

「えっ? サヤちゃん先輩、ひょっとして知り合いなんですか?」

 

何気なく訊ねるミユキ。

サヤがキッと鋭い視線を向けた。

 

「知る訳ないでしょ!! あんな奴!!」

 

怒り散らした声のサヤ。

ミユキが「ひー!」と悲鳴をあげた。

 

チャリンと、コインの音が響く。

 

「"雷鳴の帝王"さんですか。戦い続けてれば、いつかファイトできますかね~」

 

ぼんやりとした様子のナヅキ。

テーブルの上、赤のコインを指で弄ぶ。

 

サヤが呆れたように息を吐いた。

 

「あんたさぁ、願いの叶う伝説のコインを、おはじきみたいに扱わないでよ……」

 

ジト目を向けながら注意するサヤ。

ナヅキが「んー?」と生返事をする。

 

ミユキがその身を乗り出した。

 

「あ、あの、朔導さん! コインの事なんだけどさ!? 前も聞いたけど、どこで見つけたの!?」

 

唐突に、そう投げかけるミユキ。

サヤが腕を組んだ。

 

「それ、あたしも興味あるわね。この前はなんか、自宅で拾ったとか訳分かんない事言ってたけど」

 

疑わしそうな目を向けるサヤ。

ミユキが「えっ!? 自宅!?」と驚く。

 

ナヅキが頷いた。

 

「そうですよー。私のお家で、お友達が落としていったのを拾ったのが最初です~」

 

あっさり答えるナヅキ。

サヤが頬に手をあてた。

 

「何回聞いても意味分かんないのよ。自宅で落とし物ってのも引っかかるし。おまけにその友達は死んだんでしょ?」

 

「そうですよ~」

 

軽く話すナヅキ。

ますます、サヤの表情が険しくなった。

 

おそるおそる、ミユキが手を挙げる。

 

「あ、あの、その。朔導さんは、そのお友達とは親しかったんですか……?」

 

ナヅキの表情をうかがいながら、

慎重に言葉を選ぶミユキ。

 

ナヅキが首を振った。

 

「いいえ~。そもそも、その時は初対面だったのでー」

 

「はぁ?」

 

顔をしかめるサヤ。

ミユキもまた「えっ!?」と驚く。

 

ナヅキがその目を輝かせた。

 

「でもでもー、会ってから3日間くらいぶっ続けで戦ったんですよ~。今までで一番、心が熱く燃えた戦いで~。それで私としては、戦いを通してお友達になれたのかな~って思ってるんですー」

 

心の底から嬉しそうに話すナヅキ。

ぱぁっと、その顔が明るく煌いていく。

 

サヤとミユキが、揃って顔をひきつらせた。

 

「……サイコ?」

 

率直な感想を述べるサヤ。

ミユキが顔色悪くささやいた。

 

「あの、この話題やめませんか……?」

 

「同感ね。頭がおかしくなりそうだわ……」

 

合意に至る2人。

ナヅキはニコニコと笑顔を浮かべ続けている。

 

気まずい沈黙が流れ、そして――

 

唐突に、メッセージの着信音が響き渡った。

 

「あら?」

 

声をあげるナヅキ。

サヤとミユキがスマホを取り出した。

 

「あっ、アンダーグラウンドファイトからです!」

 

画面を見て声をあげるミユキ。

ナヅキがムスッとし、ふくれっ面になる。

 

「今度の対戦組み合わせの発表ですかぁ? まぁでもどうせ、今回も私の出番は――」

 

投げやりに言うナヅキ。

だがすぐに、ミユキがスマホを掲げて――

 

「朔導さん!! 選ばれてますよ!!」

 

そう、ナヅキの言葉を遮った。

一瞬の間。ナヅキが目を見開く。

 

「ふぇっ!?」

 

「ほら、ここ!!」

 

メール画面を指差すミユキ。

簡素な文章の中、書かれた単語が視界に映る。

 

――"紅蓮の太陽姫"。

 

ナヅキが息を呑み、そして――

 

「わーい、やったーッ!!」

 

歓喜の叫びを、その場に轟かせた。

活力を取り戻したナヅキが、大はしゃぎする。

 

「なんでこんなのが強いのかしら……」

 

げんなりとしながら呟くサヤ。

ミユキが「あはは……」と苦笑する。

 

スマホに視線を落として――

 

「それにしても……」

 

メール画面をおもむろに眺めるサヤ。

訝しそうな表情を浮かべて――

 

「この対戦相手……聞いたことないわね」

 

サヤがわずかに、その目を細めた。

そこに書かれた単語。ファイターを現す二つ名。

 

今回の対戦相手に選ばれた者。その名は――

 

――"白銀の邂逅者"。

 

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