GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
近未来。ガンプラの遊び方はプラモデルの製作やジオラマに留まらず、スキャン技術や各方面の提携などを通して仮想世界でも動かせる様になり、アバターとしても運用されることが可能となっていた。
これらの技術を用いたオンラインサービス『GUNPLA Battle Blaze Beyond Borders』は、βテスト段階でありながらも良好なゲーム性とユーザーの個性が溢れる俺ガンの展示場所として盛り上がりを見せていた。
「見てくれよ! 俺、拘束された『すーぱーふみな』パイセンを作ったんだ!」
ロビーには異形のガンプラが溢れ返っていた。美少女ガンプラとして有名なすーぱーふみなやモビルドールメイを実装したのがGBBBB最大の功績にして、最大の過ちだったといえよう。
人の想像力とは無限大であり、如何に運営が対策の為に該当ガンプラのカラーリングの変更を禁じようと、ユーザーの発想は自由であり、無法地帯であった。
「俺なんて、ふみな飛頭蛮を作ったんだぜ!」
また、パーツの大きさやXYZ軸を変えられるという細かなカスタマイズ性がふみなパイセンの尊厳破壊に一役買っていた。
例えば、意気揚々と現れたこのユーザーはふみなパイセンヘッドを極端に大きくして、ボディやアームパーツを最小化して、ボールの脚部を取り付けることで、パイセンの頭だけが浮かんでいる妖怪めいた見た目を作っていた。
他にも風雲再起の脚部からパイセンヘッドを生やしたり、ふみなタンクを作ったりと。カッコいい系の俺ガンプラが隅へと追いやられる事態に陥っていた。また、ロビーを埋め尽くしていたのは美少女魔改造系だけではなかった。
「私のスティールヘイズを見てくれ。コイツをどう思う?」
「凄く……ACです」
一部ガンダムヘッドのアンテナ部分をOFFにも出来るという自由さから、ガンダムではなく別ゲーのロボを再現しようとする輩も後を絶たなかった。特に1年位前に流行っていた別の人気ロボゲーの再現機体も数多く見られた。
「止め給え! ここは、GBBBBだぞ! 別ゲーのロボを提示するとは何事か!」
そう言って注意しているのは『トロン』と呼ばれるプレイヤーだ。彼はGBBBBでは、中堅プレイヤーとして知られておりオリジナルガンプラ『ガンダムフリューゲル』の使い手であった。
普段のメインカラーは紺色にしているが、今日はスカイブルー位の爽やかな色になっていた。4つに伸びるブレードアンテナと背面のバックパックが特徴的であり、SDガンダムの闇将軍の得物。『暗黒砲』と呼ばれる、ブラックホールを発生させる射撃武器を好んで使っている。
「そうだぞ!」
そう言っているプレイヤーもマスターガンダムの頭部を真っ赤にして、ABCマントを装着させた上でヒートホークを掲げながら糾弾していた。
スクショの右下に表示される版権元の文字が空しく映る程の無法地帯において、悲しい位に常識的な一般プレイヤータオ少年は溜息を吐いていた。
「なんでや。僕が望んだGBBBBには沢山のカッコいいガンプラがあるはずで。こんなネタの展示場じゃなかったハズや」
生粋のSDガンダム使いである彼の機体はキャプテンガンダムとコマンドガンダムのミキシング物で、何処となくヒロイックさが見られる造詣になっていた。
「気を取り直せよ。キャプテン&コマンドボーイ」
隣にいるフレンドと思しき男性は初期アバターでもある『RX-78-2』ガンダムの上半身にガンダンクの脚部を取り付けた走破性の高そうな機体だった。パイロットアバターはスキンヘッドの黒人男性と言う、態々GBBBBでやる必要があるのかという物だった。
「いや。分かるんよ? ネタとか再現機体の方がSNSでもインプレも稼げるしね。でも、僕はもっとオリジナリティが溢れる物が見たかったんよ」
「じゃあ、アレなんてどうだ!」
彼が指差した先には、真緑にカラーリングされたアッガイの頭部と凶悪な脚部だけが露出した機体だった。確かに、唯一無二な見た目をしているかもしれない。
「ビクザムの再現やん……」
「じゃあ、あっちはどうだ?」
真っ赤にカラーリングされたカプルにボールの脚部を取り付け、ビルダーズパーツの太陽炉を取り付けられるだけ取り付けた、梅干しみたいな機体がフワフワとロビーを漂っていた。
「アレは! ガンプラ! ちゃうやろ!!?」
「そんなに怒んなよ。その怒りはミッションでぶつけようぜ!」
「アラタはガンプラにあんまり思い入れが無いから、そう思えるんよ……」
タオがぶつくさ文句を垂れている傍ら、2人はミッションを受注していた。
ロビーでネタガンプラや再現機体を見るのも楽しいが、一番楽しいは自分の機体が颯爽と活躍している場面を体験することだろう。
「タオ。なんか欲しいパーツはあるか?」
「うーん。色々あるけれど、まずは一緒にミッションの解放をしていこうや。僕もあんまり進んでないしね」
チラリとタオは尊厳破壊ガンプラや再現機体を使っているユーザーのプロフィールカードを見た。いずれも超が付くほどの高ランクユーザーであり、どうしてそんな熱意をこんなベクトルで発揮するかがイマイチ理解できなかった。
「本当なら。あーいう、高ランクの人達がものごっつカッコいいMSを使っていて、僕らの憧れになる筈だったのに……」
「じゃあ、俺と一緒に皆の憧れになれるんだから、タオはラッキーボゥイだぜい☆」
一緒にやる相手も碌に見つからない中、唯一フレンドになれた相手は異様な位にテンションが高いし、あんまりガンダムも詳しくはなかった。……いや、こんなネタをするからにはニッチな知識はあるのだが。
そんでもって、アラタが言うことも強ち間違いでも無かった。彼はあまりガンダムに詳しくないし、始めたばかりなので歩調が良い感じに合わせ安いのだ。他プレイヤーの効率や趣味に振り回されること無くゲームが出来る。という点では、確かに自分はラッキーボゥイかもしれない。
「よし。じゃあ、やろか!」
「あ」
気を取り直して、ミッションに挑もうとした所でアラタから嫌な声が上がっていた。そして、理由は直ぐに分かった。敵の攻撃が滅茶苦茶に痛く、その上。硬かった。
「難易度調整。どないした?」
「HardCoreにしちまった!」
「アホ!!」
タオはGBBBBに長くはいるが、マイルーム勢である為、あまり強くはない。アラタの機体も組み立てたばかりでやはり強くはない為、上位の難易度に行けばどうなるかと言えば。そう、タコ殴りにされるだけだ。
チュートリアルミッションを除いた初期ミッションではあるが、出現した2機のガナーザクウォーリアを撃破することには成功した。
「やったか!!」
「アラタ! それフラグ!!」
次に現れたのは2機のジンを引き連れたフォースインパルスガンダムであったが、先程の戦いで死力を尽くしていた為、両者はヘロヘロだった。ジンが『MMI-M8A3 76mm重突撃機銃』を構え、引き金を引いた。
放たれた弾丸は無慈悲にもアラタのガンダムタンクを撃ち抜いた。機体の各所で爆発が起き、パーツが吹っ飛んだ。
「やられ千葉ァ!!」
「自分、絶対ガンダム詳しいやろ!!」
レスキューを求めるガンダムタンクを救助しようかと考えたが、やはりレベル的に無理がある。と言うことで、タオはギブアップを選択するのであった。
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気を取り直して、今度はタオがリーダーとなってミッションを受注し直していた。今度は難易度も下げての挑戦である。敵機を倒しながらのVCによる雑談もオンゲーの魅力である。
「アラタはなんでこのゲーム始めたん?」
「ガンダムはあんまり詳しくないけれど、面白そうだったからな。でも、こう言うのって作品に詳しくないと色々言われるかもしれないって、ちょっと不安だったけれど。タオは良い奴だから、最初に遭えたのがお前で嬉しいぜ」
面と向かって言われると面映ゆい部分はあった。ガンダムは長寿タイトルと言うだけにあって、面倒臭いファンも少なからずいる。彼らのせいで『ガンダム』という作品を敬遠してしまう人も少なくはない。
「そう言う知らん人でも楽しめるのがGBBBBのええ所なんよ。これを切っ掛けに色々なガンダムに興味を持ってくれたら嬉しいね。個人的にはSDガンダムをお勧めするわ。OVAとかで話数があんまり多くないしね」
テレビシリーズを追うとなれば、相当な労力が掛かると言うこともあったが、自分と同じくSD沼に沈めたいと思う程度にはタオもまたガンダム好きではあった。
「SDガンダムって調べたらいっぱい出て来たけれど、何見たら良いんだ?」
「どれから見ても大丈夫やで。ただ、歴史的に追っていくならSD戦国伝とナイトガンダム物語からやね。映像はちょっと古臭いけど」
「タオが使っているガンダムが出る奴は?」
「あ。コマンドガンダムは単品でのアニメ作品がないんよ。G-ARMSの話もしてくれてええと思うんやけどなぁ」
SD系のアニメで出て来ることはあるが、コマンド戦記。としてのアニメ化は1作位だろうか? こうした時に、推しを勧められないのがもどかしくもあった。
WAVE1を順当にクリアして、WAVE2に差し掛かった。すると、先に交戦音が聞こえた。2人して疑問符を浮かべた。
「アレ? ミッションでマッチングなんてあったっけかな」
「タオ。あっちで何か起きているぜ」
何事かと思って見に行った先。ロビーでうろついていた飛頭蛮ふみなやケンタウロスふみながアトミックバズーカを連射して、損傷した機体を護衛していた。
見た目は気持ち悪いがプレイヤーとしてのスキルやパーツ性能はすさまじい物があったのか、エネミーは蹴散らされていた。
「君! 大丈夫か! 初心者は俺達が守る!」
「このまま最後まで一緒に行こう!」
「いやーーーーーーーーーー!!!!!!!」
負傷して立ち直れないピンク色の機体のプレイヤーが悲鳴を上げていた。タオとアラタはお互いに顔を見合わせて、頷いた。
「見んかったことにしよか」
「OK!」
ベテランプレイヤーが勝手に敵を殲滅してくれたので、タオ達もクリア扱いになって最終WAVEへと来たのだが。
「「「あ」」」
そりゃ、最終WAVEのステージまで一緒だった上、ステージも広くなかったので、見捨てた機体と鉢合わせする羽目になった。
「……さっき、私のこと見捨てなかった?」
「いや、あの。その」
「あんな頼れるベテランプレイヤーと出会えるなんて。ラッキーガァルだぜぃ☆」
「は???」
タオがたじろいでいる間、代わりにアラタが受け答えしていたが相手プレイヤーの神経を逆撫でするだけだった。
目の前にはPGガンダムがボスとして降り立って来たが、飛頭蛮ふみなとケンタウロスふみなの2機が凄まじい勢いで超大型メイスの連続突きを繰り出し、アトミックバズーカを連射して葬っていた。
2機のふみなからエモーションが送られたが、真顔のふみなでやられるのでやはり不気味と言う外無かった。報酬を受け取り、ロビーで5人は再会したがベテランプレイヤーの2人は颯爽と去って行った。……残った3人の間には何とも言えない沈黙があった。
「ご、ごめん。本当を言うと、あの2機が不気味で入る気が起きんかったんや」
「あ、そういう……。うん、仕方ないよ」
どうやら、目の前の少女のアバターを用いるプレイヤーも同じことを思っていたらしい。そりゃ、あんなのがいる所に入りたくねーと。
「君の機体。良い感じやね」
「そう? そっちのSDガンダムも良いと思う! 後、そっちの……」
ガンダムタンクを見て少女のレビューは止まった。本当に何とも言えない造詣をしている。ネタにも振り切れないし、カッコいいとも言えない微妙な造詣だ。
「ガンダムタンクだぜぃ」
「そ、そうなんだ。あ、私の名前はリンっていうの! 2人は?」
「僕はタオ。こっちは、アラタ」
機体に関する感想を打ち切る様にして、話題を展開した。タオが自分と一緒にアラタのことも紹介したが、リンのアバターは首を傾げていた。
「アラタ??? ボビーとか。クックとかじゃなくて?」
「元グリーンベレーガンダムの俺に勝てるもんか」
実はコイツ、SDガンダム戦記についても知っているんじゃないかと、タオは疑念を抱いたが、さっきのミッション中に検索して知識を得ていたのかもしれない。
「もし、良かったらフレンドになれへん? アラタも始めたばっかりやしさ」
「そうね。……うん! 普通の人っぽいし!」
一瞬、横目でロビーを見ると、ビルダーズパーツの対艦刀を全身に突き刺したブリッツガンダムが3機並んで歩いていたので、リンは彼らを見て頷いていた。
「基準が普通かどうかて」
「良かったな! 仲間が増えたぜ!」
こうして、GBBBBの汚濁に染まっていない3人が手を組んだ。
彼らが交流を育んでいる様子を、飛頭蛮ふみな、ケンタウロスふみな、スカイブルーのガンダムフリューゲルが見守っていた。