GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』を未視聴な方は、見てからの閲覧をお勧めいたします!!
「本日は、お越しいただきありがとうございます」
ついに試写会の日はやって来た。前回とは違い、今回は皆もおめかしをしているのか多少はお洒落になっていた。誰もがバッグや上着内にガンプラ用のプロテクターツールケースを忍ばせている。
「(ここに来るまで色々とあったなぁ……)」
アラタはこの1か月近くを思い出していた。試写会が近付くにつれ、公式からお出しされる情報が増えていく。キービジュアル、予告映像……。内容を彷彿とさせる物を幾度話題にしたことか。
他のユーザーやGBBBBをプレイしていないガンダム好きよりも先んじて、この世界に触れられる興奮たるや、バトルトーナメント本戦にも劣らない。
「(スペースコロニー。という単語だけで、宇宙世紀に限定出来る訳ではありませんが、『クランバトル』というワードは気になりますね)」
シーナも今一度、今日にいたるまでの考察を反芻していた。
アナザーかUCかは一旦置いておくにしても、MSを用いたバトルと言う物が世界観的に存在している。となれば、前作の水星の魔女内で行われた『決闘』を彷彿とさせた。つまり、戦争ではなくルールに則った戦い。
だが、どうにも行儀の良さそうな感じがしない。予告映像内でも『マトモな奴はやらない』と言われていた。
「(と考えると、恐らくコロシアム的な物だろうな。予告映像で『クランバトル』を持ちかけていた面々が堅気っぽく無かったことから、スラムとかそう言う所が舞台になる『オルフェンズ』的な物になるのか?)」
同じ様にマシマも今まで散々交わして来た考察を反芻していた。
ただ、その割には主人公と思われる赤髪の少女が小綺麗だったのが気になった。どうして、彼女がマトモな奴がやらないとまで言われる『クランバトル』に関わるのか。
「(私としては、一瞬映し出された新規のガンダム以外に出て来たMSがザクっぽかったのも気になるんだよね。スペースコロニーとザクっぽいのが出ていたから、これって宇宙世紀物じゃないかな。でも、態々宇宙世紀の傍流物を新作にするかなぁ?)」
ミサが気にしていたのは、予告映像に一瞬映し出されたザクと思しきMSの姿だった。オマージュしたということで、SEEDにもジンやシグーなどの機体も出ているから、あまり決めつけるのは良くないにしても。
だが、そうだと仮定した場合。態々、新作アニメで出すだろうか? という疑問が生じる。1年戦争や宇宙世紀物の作品は今となっては山ほど出ているのだから。まずはコミカライズなどで人気を確認してから……とはならないだろうか。
「(でも『あの人』がいるのよ? 宇宙世紀物に決まっている)」
一方、カルパッチョは確信に近い自信があった。監督では無いが、脚本に名を連ねている男があまりに有名だったからだ。
某怪獣映画をリブートし、某光の巨人をリブートし、某改造人間をリブートして来た男だ。これだけ元作品に愛着を持って製作して来た人間が、原作の『機動戦士ガンダム』の世界観に触れない訳が無い。
「あの、コウラさん。皆がちょっと怖いです……」
「ガンダム好きはこうなるのよ。諦めなさい」
物静かにしながらも、周りに漂う熱意というか熱気みたいな物に中てられたリンはビビっていた。一方、コウラは爽やかに受け流していた。すまし顔はしているが、彼女も似たような感じかもしれない。
「これが俺の初ガンダムになると思うと、少しドキドキする」
「気軽に見てや」
一方、タオは笑顔を浮かべていた。GBBBBを通じて出来た友人と一緒に最新作のガンダムを見る。ガンダム好きとしては至上の瞬間だった。
「(思い悩むミサの横顔……。最新作のガンダムも見られる。今日は最高の日だな……)」
すまし顔の下には、だらけ切った性根が潜んでいる。気を緩めたら顔に出そうなので、若干ムッツリ顔になっていた。司会の挨拶もそこそこに、いよいよ上映が始まった。
――
「(嘘だろ……)」
アラタは驚愕していた。今まで、自分達がして来た予想を一笑に付すような始まりだった。そして、同時にガンダム好きなら非常に馴染みのあるシーンだった。
サイド7に赤いザクが降り立った。それだけで、全く違うストーリーが展開されるという予感がした。
「(マジかよ。これって)」
マシマも息を呑んだ。宇宙世紀という舞台を揺るがしかねない程のスタート。サイド7に住まうメカ好きの少年が『ガンダム』に乗らず、彼のライバルになる筈だった男が乗り込んだ。
彼は正規の軍人だ。スマートにガンダムを動かし、次々と事を進めていく。もはや、原作の味方キャラクター達が出て来ることは無いだろうという位に前提が崩壊していく。
「(一体、何が起きてしまうんですか?)」
シーナも前のめりになっていた。ガンダムという作品を語る上で、一番目(ファースト)に放映された『機動戦士ガンダム』の世界観はファンや公式から言及され続けている。
よく言われるのが、本編の主人公がいなかったとしてもジオンは負けていたと言う物だ。これは国力の差や諸々が関わって来る話で、たった一人のエースが戦局を変える程の物ではないという話でもあるのだが。
「(バタフライエフェクトが起きているじゃん!?)」
ミサも見入っていた。たった、1つの前提が変わっただけで、全く知らない1年戦争が展開されていた。こうなると、宇宙世紀でありながら宇宙世紀という舞台の前提すら変わってしまう。
「(うぉ、すっげぇイケオジ。って、この人。1話限りで退場したあの人なの!?)」
最早、自分達が何を見に来たのか? という疑問すら浮かばない程、カルパッチョ達は映画に見入っていた。自分達がまるで知らない宇宙世紀の『Beginning』を見ている。
そして、まるで予想の付かない、宇宙世紀0079の先で『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』が始まった。
「(羨ましい……)」
GBBBBをプレイしているが、リンは『機動戦士ガンダム』を視聴したことが無い。
なので、序盤の展開は『こう言う物だと』すんなりと入って来たのだが、他の面々が目を丸くしていることから、きっと初代を知っていたらまるで違った物が見えていたのだろう。この感想ばかりは、自分が参加できそうになかった。
「(『彼』の立ち位置が全く違う。こんなに彼が活躍しているってことは『小説版』の要素を取り入れているのかしら?)」
コウラが記憶の中から引っ張って来た要素はやはり朧気で殆ど覚えていなかった。始まった世界は戦勝国でありながら順風満喫とは言い難い雰囲気が繰り広げられていた。
戦争に勝ったからと言って何もかもが良くなる訳ではない。むしろ、払った代償が大きすぎて、歪が生まれている有様だった。
「(ジト目可愛い)」
歪ながらも成り立っている世界の中で1人の少女が運命的な出会いを交わす。
キービジュアルと予告映像のミステリアスな雰囲気からは想像も出来ない位のアグレッシブさで立ち回る主人公に、セリトは思わず微笑んでいた。
ストーリーは進む。事態に巻き込まれながらも前向きに爆走する主人公がついに、ガンダムと会合する。あまりにスピーディな展開は、退屈と言う物が介在する隙間が無かった。
「(ま、待て。コレで終わりか!?)」
「(マイスターさん。メッチャ驚いてるやん)」
上映するまでは隣の席にいるミサをチラチラと見ていたタクマだったが、映画が始まってからはスクリーンに釘付けだった。
81分の放送が本当に一瞬で終わる程に情報量が詰め込まれていたので、これだけでは物足りないと思っていたのはタオも同じだった。――そして、試写会は終わった。……全員が無言だった。
「とりあえず。飯、食いに行かないか?」
誰も口を開かなかったので、マシマが予定していたスケジュール通りに事を進めることにした。
本来なら、新作のガンダムを和気藹々と語りながら店へと行くつもりだったのだが、あまりに衝撃的な内容だったので皆が自分の中で内容を噛み締めて、反芻していた。面白い、ツマラナイではなく。お出しされた情報量を咀嚼するのに忙しく、店に着くまで誰もが無言だった。