GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
かくして、クラバトのメンバーが決まったのは良い物の。全員が全員、普段から交流のある人間と組めている訳ではなかった。
「サーヤちゃんはガンダムの作品だと何が好き?」
普段は猪突猛進なので誤解されがちだが、リンはコミュ力が高い訳ではない。なので、ガノタにとっては定番でありながらも禁忌に近い質問をしていた。コレにはロビーで闊歩している一般GBBBBユーザーも生暖かい目で見ていた。
「特に好きなタイトルはありませんね」
これはどういう意味で言っているのだろうか? どれかなんて選べないよ~! という意味か、どの作品も気に入る程の内容ではなかったのか。そして、もう一つ。ある可能性が思い浮かんだ。
「(きっと、SEEDとか宇宙世紀好きってことを言ったら馬鹿にされた経験とかあるのかも)」
ガンダム好きというのはとても面倒臭い人種である。ヤレ、GガンダムやSEEDはガンダムじゃないだの。ヤレ、いつまで宇宙世紀を擦っているんだの。
作品群は好きでもファンということを公表しないのは界隈に渦巻いている特殊な空気が深く関与しているというのは、リンも知っていた。
「大丈夫だよ。サーヤちゃん、私はSEEDとかアナザーガンダムから入ったけれど、宇宙世紀も履修中だし!」
「そうじゃなくて。そもそも、ガンダムを通しで見たことがありません」
「(お姉ちゃん!!!!)」
あまりにサラッと言ってのけた爆弾発言であるが、一般プレイヤー達の視線は優しい物だった。それ所かネタ機体を引っ込めて、作品を代表する名機に独自解釈を加えた俺ガンプラに変えてコチラにチラチラと視線をやって来た。『見ろよ、見ろよ』という、正に先程まで思い浮かべていた『面倒臭い』ファン仕草を披露していた。
「えっと、じゃあ。どうして、GBBBB。いや、そもそもガンプラバトルを?」
ここでリンは気を取り直して可能性を考えた。自分のクランでも『セリト』という前例があるのだ。ゲーム性から入って来てガンダム沼にハマるという可能性もある以上、新規をぞんざいに扱うことは許されない。
「ゲームセンターでプレイして面白かったから。ガンダムって名前は広告とかテレビで見たことがある位です」
「それでチームに所属するレベルで強く?」
少なくともミサが勧誘を掛けるレベルであるなら、相当に強いハズだ。
大なり小なりガンプラバトルやガンダムに思い入れがあったであろう新規達が次々と弾かれて行ったと言うのに。
「はい。面白いからというだけでやっています。なので、皆さんが仰っているクラバトもよく分かっていません」
「ここまでガンダムに興味ないプレイヤーを始めて見た!」
だから、俺達が興味を引き出すんだろう! と言わんばかりに近くに凄い数のガンプラが集まっていた。アバターの動きだけでは何とも言えないが、サーヤはどう思っているのか。
「それにしても。凄い数のガンプラが集まっていますね。リンさんが何か宣伝でもしたんですか?」
「え、いや別に。勝手に集まって来たとしか。で、でも! 皆、個性があって良いよね! サーヤちゃんはどれが良い感じだと思う?」
よくぞ話題を振ってくれたと言わんばかりに全員がエモーションを繰り広げている中、サーヤがポツリと呟いた。
「あのデュナメスのカスタムされた奴はカッコいいですね。凄くスタイリッシュでクールな感じがします」
きっと、該当プレイヤーは内心小躍りしていることだろう。一方で、リンは小首をかしげていた。
「アレ? あんまりガンダム詳しくないのにデュナメスは分かるんだ」
「はい。デザイナーの『柳瀬敬之』さんが好きなので」
ガンダムの作品や機体は知っているが、メカデザイナーの方面からアプローチを掛けて来る。というタイプは、リンとしても初めてだった。
PCで調べてみたら、他にも00系や水星の魔女など。幾つかのデザインに携わっていることが分かった。
「だったら、サーヤちゃんもデュナメスとかケルディムみたいな機体を使わないの?」
現在、サーヤのアバターにもなっている『ヴェール・ブランシュ』は細身とは程遠い見た目をしている。
「いや、最初は組んでみようと思ったんですけれどね。その、操作感が……」
「操作感?」
「ゲームスピードがですね。どうにも、私の思っている程では無かったので。普段の感覚だと意識と動きがズレてしまうので、戒めの為に重量級の機体にしてあるんです」
GBBBBのゲームスピードはあまり早くない。これは既に稼働しているハイスピードアクションのガンダムゲーと差別化を図る為というのもあるが、誰でもプレイし易いゲームスピードにして多くのプレイヤーを囲いたいということもあるのだろう。
「普段って。もしかして、サーヤちゃんって。VSシリーズをプレイしていたとか?」
「いえ、そう言う訳では無いんです。そもそも、VSシリーズのコーナーにはあまり近寄りたくないというか……」
あそこは特別インフォちゃんの監視もキツイコーナーになっている。対戦ゲーで民度を保つのが如何に難しいかということを物語っていた。
とりあえず、彼女がゲーム慣れしている故に強いということは理解できた。となれば、やはり彼女の実力も確かめてみたいと思うのは道理だ。
「私、サーヤちゃんの腕前がどれだけの物かを知りたいから、ちょっと対戦して貰ってもいいかな?」
「タイイチで良いですか?」
「うん。サーヤちゃんのパーツレベルは……私と一緒だし。このまま行こっか」
直ぐに部屋を立てて、最もシンプルな月面基地のステージが選ばれた。フィールドに降り立つと同時にリンは直ぐにドラグーンを射出した。
「(相手がどれだけ強いか分からないから、一切油断はしないで行く!)」
敬愛する自分の姉が態々連れて来るほどなのだから弱い訳がない。
一体、どんな戦法を取って来るのかと観察していると。『ヴェール・ブランジュ』からも大量のファンネルが放たれた。
「(まぁ、見た目完全にキュベレイのバリエーションだしね!)」
GBBBBのファンネルは性能が高いので、結構まとわりついて来る。距離を取りながらリンが射撃戦をしようとしていたが、ヴェール・ブランジュは多少のダメージも気にしないで突っ込んで来た。
「(うわ。早っ!?)」
クロスファイトを得意とするプレイヤーならリンも散々に見て来たが、ここまで一気呵成に間合いを詰めて来る相手は始めて見た。
普段、そう言った相手にはドラグーンで牽制したりしていたのだが、どういう訳か。サーヤはドラグーンの挙動をある程度、捉えることが出来る位には動体視力と反応速度が良かった。
「スタッガー貰った!!」
一気に接近して来て『90㎜サブマシンガン』を至近距離で叩きこまれた。パーツが飛んで、怯んでしまった。その一瞬の間に、ヴェール・ブランジュがビーム・ナギナタを取り出して、その場で激しく回転させ始めた。
いわゆる『旋風切り』と呼ばれる長押しコマンドなのだが、基本的に対人戦で使われることは少ない。まずチーム戦ならば足を止めてしまうので、他の相手から射撃をバカスカ打たれてしまうし、個人相手にやるにしても相手を拘束出来て、ヒット数は稼げてもダメージは大きくない為、魅せ技という印象が強い。
「ちょ、逃げられないって!」
予め放っていたファンネルが拘束されているリン・カーネーションにバカスカ攻撃を加えていた。
拘束から抜け出せるような緊急脱出コマンドがある訳もなく、グルグルとツインビームソードを振り回している2人の近くをファンネルが打ち合っている間に、リン・カーネーションの耐久力が先に尽きるという。盛り上がりも遣り取りもクソも無い塩試合で〆られた。
「これに近いことをですね。ゲーセンで『タイガー』って人にやったら、もう二度とやらねぇよ! って言われたんですよね」
「うん。私にもやらないでほしかったな!!」
タイイチでは強いが、チーム戦ではあまり使用する機会の無さそうな技だった。どうにも自分の周りには塩女子が集まり易いのか。最近は砂糖を撒き散らしている姉がいる反動なのかもしれないと、リンは考えていた。