GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
「はぁ……面白かった」
約束通り。リン達は『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』の映画鑑賞を終えた。初めてのガンダム視聴を終えたサーヤは大満足していた。
自分が製作に関わった訳でもないが、一介のファンとして誰かが満足している表情を見るには、非常に喜ばしい物だ。
「面白かったでしょ! ニャアンちゃんとかあの見た目から、あのキャラってギャップとかもね。超可愛いし!」
「はい。……って、年下に敬語って言うのもなんか、変な感じ」
どうやら、サーヤはミサの妹。ということで、リンのことを年上と思っていたらしいが、彼女が中学生だと知った時は驚いていた。故に、接し方もネットに合わせるべきかどうかを迷っていたのだが。
「もっとフランクな感じで行こうよ。私もサーヤちゃんって呼ぶから」
「分かった。じゃあ、私もリンって呼ぶ」
近隣のファストフード店に入り、注文したセットメニューを食しながら2人して感想を言い合っていた。
「ガンダムって言えば、アムロだと思っていたのに。全然出て来なくて驚いた」
「私も驚いたよ。シャアは私でも知っていたけれど、シャリアさんも同じ様にすっごい活躍していた人なのかな? って思ったけれど、アニメじゃ1話で退場した人だったって知ってびっくりしたよ」
宇宙世紀の知識は殆ど無いが、サーヤ相手だとドヤ顔で話すことが出来た。コレでも、ちょっぴり勉強したのだ。
「シャロンの薔薇って言うのは?」
「私も調べたり、お姉ちゃんに聞いたりしたけれど。どうやら、原作の方にも出ていないらしいね。本放送で多分分かると思うんだけれど……。あー、もう。4月が待ちきれないよ!」
ジークアクスの本放送も決まったとなれば、待ち遠しさに身が焦がれもするが、楽しみが確実に待っているという喜ばしさもあった。
「そのテンションは今度のクラバトでぶつけよう」
「だね。……でも、実は機体のイメージがあんまり浮かんでいないんだよね」
とりあえずアッガイを選んだのは良いとして、ここからどんな風にカスタマイズするかまでは考えていなかった。
色々なホームページを巡って、多数のカスタムアッガイを見たのだが、彼らの真似をするのも何か違うと思っていた。そもそも、リンはあまりガンプラを組み立てたことが無いので、凝ったカスタムは出来ない。
「あまりに思い浮かばないなら、オーソドックスにザクで作るとか?」
「いや、ここはアッガイで作りたいの。サーヤちゃんはもう出来ているの?」
アラタと御揃いだから。というのは、気恥ずかしくて言う気になれなかった。何かインスピレーションの参考にでもならないかと、サーヤに尋ねてみると。彼女はスマホの画面を見せてくれた。
「出来ています。カルパッチョさんに聞いた所。レギュレーションには記載されていませんが、使っても問題ないと言われましたので。私が聞いた後に追記もしてくれました」
映し出されていたのは彼女の使用機体だった。脚部はタンクだったが、これはガンタンクの物ではない。GBBBBにもう1機いるタンク機体『ザクタンク グリーン・マカク』の物だ。胴体も同様の物が使われている。
ザクⅡの両腕にモビルワーカーの頭部。手にはザク・マシンガンとジャイアント・バズを装着していることもあって、リンの中に在るMSという物の印象からは掛け離れた造詣の様に思えた。
「なんか。MSっぽくないというか」
「だろうね。イメージはAC6に出て来る『キャノンヘッド』って機体。こっちが本来のキャノンヘッド」
比較画像として表示された『キャノンヘッド』は、MS以外のメカを殆ど見たことが無いリンにとっては異様な物に見えた。
「なんて言うか。ガンダム以外のメカって全然雰囲気違うんだね」
「リンもAC6やる?」
多分だが、GBBBB以外のロボゲーをやったら沼に引きずり込まれそうな気がしたので、謹んで辞退することにした。ニュービーを引きずり込むのをミスったサーヤはションボリしていた。ふと、リンは気になったことがあったので尋ねた。
「サーヤちゃんはどうして、この機体を作ったの? 用意されたレギュレーションだと、このアセンブルがしっくり来たから?」
「それもあるけれど、やっぱり。こういうゲームでは動かしたい機体を作るのが大事だと思って。今日の映画を見て、なおのことコレで出場する気持ちは強くなった。多分、皆は二脚で来るだろうから、タンクで跳ね飛ばしてやろうと思って」
物静かに見えて、彼女が情熱的であるということは、ここ数日の間でリンもよ~く分かったことである。そして、サーヤの考えにピンと来たのだ。
「そっか。自分の動かしたい機体を作れば良いんだ」
造詣だとか評価とかじゃなくて。映画館で見た活劇の中に入り込むよう機体を作れば良いんだ。セットメニューを完食すると、リンは居ても立っても居られなかった。
「サーヤちゃん。ウチに来ない?」
「何か閃いたのね。ついて行くよ」
映画を見た感動とインスピレーションを引っ提げながら、彼女達はファストフード店を出て、彩渡商店街へと向かった。
~~~
『は~い! カルパッチョチャンネルで~す! 皆! もう『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』は見たかな? 先日、GBBBBの方でも実装が決まってビックリだよね! 今日は、私達の方でもクラバトをやって行こうと思います!』
そして、イベント当日。カルパッチョの配信にてクラバトは行われることになった。レギュレーションが述べられ、選手達が入場して来た。
『まず、1組目! フリーダムフリートの姉さんとビアンカのトンチキおっとり! サディスティックにファンキーなコンビ! ドーラとシーナペアです!』
「こういう催しも悪くないね。シーナ! 付いてきなよ!」
「仰せのままに」
ドーラの機体はザクⅡを始めとしたジオン系の物で構成されており、目を引くのは大型のヒートホークだろう。シーナの機体は従来通りのガンキャノンにバズーカなどを持たせた砲撃仕様に改造した物だった。編成からも近接とサポートの役割分担が見て取れた。
『続いて、2組目! 美プラで組まれた同盟は通常機体でも発揮できるのか! セリトとグスタフペアです!』
「……行くぞ」
「うっす」
カスタムされたドム2機という、非常に分かりやすい重量級コンビだった。宇宙世紀でコンビやトリオと言ったら、とりあえずこの機体が思い浮かぶ。というガンダム好きも少なくは無いだろう。
『そ~して~! 配信者である私も参加しちゃいます! 相方はニシワキエンジニアリングのユーキさんです! 今回の意気込みは?』
「適当に当たって流す感じで。でしたっけ?」
『当配信にヤラセはございません。全てが脚本無きドラマです』
ユーキのパーソナルカラーであるオレンジ色のガンキャノンは軽キャノンを意識しているのか、胴体をスリムに見せようという工夫が見て取れた。手には砲撃機にはあまりに合わないビームサーベル。
カルパッチョの機体はと言えば、彼女の愛機である『ドローレス』を意識しているのか、グフにデッドエンドGを持たせた物になっていた。
『気を取り直しまして、4組目はフリーダムフリートのアトミック美プラ使いのニュー氏と名前は甘そうだけれど、対応は塩のコウラちゃんでーす! お2人はリアルでも知り合いだそうですけれど、仲が良さそうですね』
「は???????」
「そうですね」
2人して番組を取り繕うこともない素の対応をしていたが、カルパッチョ的にはヨシという物だった。コウラはガンダムを使いたかったのか、制約の中で必死に再現しようとしていた様な、青色の軽キャノンだった。何処となくバランスは良くない。
一方、丹生は好き勝手に組み立てたのか。ガンタンクの脚部にズゴックの胴体兼頭部とガンタンクの腕を付けた機体を引っ張り出して来た。
「ちょっと。アンタ、その機体は何よ」
「殺戮マシーン、ズゴ・タンクです」
『皆はちゃんと水泳部の機体を格好良く使ってあげようね!』
勝つ気あるのか等、コウラの癇癪をBGMにしながらも紹介は続いて行く。奇しくも、次に現れた機体もタンクだった。
『続いてはGBBBBからガンダムに入ったニュービー2人ね! 何時だって、歴史を切り開いて来たのは新参者だ! リンとサーヤペアです!』
「よろしくお願いします」
「ど、どうも~」
サーヤの機体は『グリーン・マカク』の脚部と胴体にザクⅡの両腕を取り付け、モビルワーカーの頭部を乗せた物。リンの機体はと言えば、素組のアッガイであったがカラーリングがあまりに特徴的だった。
――
「サーヤちゃん。私ね、可愛いアッガイで参戦しようと思っていたんだよ。ベアッガイとかみたいにね。でも、これはクランバトルでジークアクスなの。作品に合わせて可愛くするなら……」
――
黒髪を彷彿とさせる様な奇妙な色分け。胴体部分もまるで衣服を再現したかのようなカラーリングで、極めつけは大腿部分までしか染めていない脚部。ついでにモノアイは黄色い。
『おーっと!? まさかのニャアンちゃん搭乗ならぬ、登場!? アンタ、そう言うネタに走るタイプだっけ!?』
「ニャアンちゃんが可愛いからやるんだよ!!」
コスプレ少女をコスプレするMSという実にトンチキな機体だった。コレには次に紹介されるフドウも笑っていた。
「あのインパクトの後じゃ、俺達の機体も霞んじゃうな。折角、サナのカプルをイメージして作ったのに」
「折角、ザクⅡをアーミー調でやったんに!」
フドウの機体は、ズゴックの胴体にアッガイの手足を取り付け、桃色に塗装したインパクト抜群の物だった。隣では正統派のザクⅡを作ったタオが嘆いている。
『霞まないから! そんな、ショッキングピンクした毒ズゴック霞まないから! さて、ネタ物が続くけれど。7組目と8組目も見てみましょうか! ビアンカのサブリーダーとフリーダムフリートのサブリーダーが手を組んだ! 優勝候補はここか。下克上コンビ! マシマとクロカンテペアです!』
「まぁ、俺はクランを乗っ取るつもりはないけれどな!」
「まさか! 大勢の人が見ている配信で、そんな愚行をする奴がいる訳無いじゃないか!」
2人して配信者をたっぷりと煽っていた。だが、両クランの手練れということもあって機体の完成度は高かった。マシマはGBBBBだけでなく、実機の方から読み込ませたのだろう、非常に完成度の高い白の軽キャノンだった。手にはガンダム・ハンマーが握られている。
クロカンテの機体は袖付き。の様に見えたが、実際はドムにビルダーズパーツなどを付け加えて、それっぽく見せた騎士風の機体にし上がっていた。
『強いと、こんな配信者を煽ることも許されるんですよ~。許さねぇからな。では、8組目。ビアンカのベテランプレイヤー! 風の噂によれば、昔は名を馳せたエースだった? そんな彼女の直弟子と共に参戦だ。ミサとリツキ君のペアです!』
「はぁい。いつもクラメンの配信を応援してくれてありがとうございます。今日はぜひ、楽しんで行ってね!」
「よ、よろしくです!!」
ここら辺の慣れた対応は流石にベテランプレイヤーと言った感じだった。一方、リツキは緊張して定型句みたいな言葉を吐き出すのがやっとだった。
ミサの機体は軽キャノンではなく、ガンキャノンとしての参加だった。バックパックもドムの物に換装しており、目立った射撃部は手にしているビームライフル位の実にシンプルな物だった。一方で、リツキはザクⅡにマゼラトップ砲と脚部にミサイルランチャーを取り付けた、目に見えて分かりやすい砲撃機になっていた。
『ミサさんありがとう~! この慣れた対応に貫禄を感じさせてくれますね! さて、最後はシード枠の2人。ビアンカとフリーダムフリートのリーダー2人です! アラタ! カオス! 〆お願いね!』
無茶振りも良い所だが、ノリの良い2人はマイルームからずんがずんがと歩いて来た。まず、前に出て来たのはカオスである。彼の機体はアッガイだった。
ただ、この機体もカラーリングが独特だった。頭部は青と白。胴体も青と白。短い手足も相まって、国民的に有名なお世話ロボットを彷彿とさせた。そして、彼は言うのだった。
「僕、ドラッガイ!!!」
『お前、それ受けなかったらえぐいことになってんぞ』
そう言うノリを配信でやるのはリスキーすぎるので本当に止めて欲しいとカルパッチョが冷や汗をかいていたが、同レベルの奴がもう一人いるのだ。
続いて、マイルームから出て来たのは同じくアッガイ。だが、これまたカラーリングが特殊だった。頭部を頭髪に見立てたのか赤く塗り、胴体部分を制服に見立てて色分けしている。モノアイは作中でも非戦闘色と識別される青っぽい色に塗装されていた。
「飛び出していけ!! マチュッガイ!!」
『コイツらが私達のクランのリーダーとかマジ?』
先程まで営業用のテンションだったカルパッチョも冷え込む勢いだった。
一応、反応は悪くなかったが、思いっきり滑りかねないことをやらかしてくれたので、彼女は内心生きた心地がしなかった。
『い、以上の9組で試合をします! さぁ、クラバトの優勝者は誰になるか! 早速1回戦から行ってみましょう!』
かくして、カルパッチョ主催の『クランバトル』は間もなく開始されようとしていた。この様子をGBBBBのVIPルームから見ている男が1人。
「私もミサと一緒に参加したかったなぁ」
『お前、このイベント終わらせるつもりか』
彼の願望が実現したら、イベントぶち壊し間違いなしという位に戦力が偏ってしまうだろう。せめてもの慰みと言わんばかりに、彼はジークアクスを使ってVIPルームを動き回っていた。