GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
「この度『ビアンカ』に加入しました。シーナと申します。以後、お見知りおきを」
クランに加入するに辺り、シーナは皆に自己紹介をしていた。
このGBBBBでは珍しくネタに走らない正当なガンプラの組み方に、コウラは甚く満足していた。
「そうよね。やっぱり、ガンプラってのはこうあるべきよ」
「と言いますと?」
「あちらを見てみなさい」
コウラが指差した先。ロビーにはいつも通りトンチキな機体が闊歩していた。
ふみなの魔改造については今更言うまでもないが、一部区画では何かの催しか、大量のエイリアンが発生していた。
「きっと、アイツらエイリアンの映画見たんだな。じゃあ、俺もアンディ役で行ってこようかな」
「は????」
アラタはノリノリだったが、コウラが威嚇していた。ただ、シーナはエモーションを使って喜びを表現していた。
「ガンプラでエイリアンを再現しようというのは、正に『見立て』の文化ですね! と言うことは、プレデターもいるかもしれませんね!」
「濃いのが来たわね」
リンが顔をしかめさせながら言った。まさか、GBBBBのノリについて行けるとは……長らくソロプレイをしていると人は染まって行くのかもしれない。
「寛容なのは良いことにしておいて。シーナの機体は……レベルもそこそこね。やって行けそうね」
「やって行けそう。と言いますと、クラン戦辺りを考えておられるんですか? そもそも、クランのスタンスは?」
クランを運営していく上で方針は大事だ。いわゆる、ゆる~く楽しくプレイするエンジョイ型なのか、あるいはゲームの攻略やランキング入りを目指すガチのスタンスなのか。
「それは勿論、エンジョイ勢だぜぃ。ガチやランキング入りはあんまり考えてねぇ」
妥当な判断である。初心者の集いがガチを目指した所で空中分解するのがオチなので、無理をしないスタンスは重要だった。
「え~。でも、将来的にはマイスターとかとも戦ったりしてみたいし……」
「無理ね。拡張アビリティカートリッジの厳選は? パーツアビリティは全部Lv.MAXにしているの?」
「え……」
リンが何気なく呟いた一言に、コウラがマジレスをしていた。実際、上位クランと戦うには必要な下準備ではあるが、人のやる気と意欲を削ぐ質問ではあった。詰められた様に感じたのか、彼女は委縮していた。
「コウラ先輩。そこら辺にしておこうぜ! 何がしたいって思うのも自由なんだ。早くミッションに行こうぜ! 色々と機能を解放したいしな! 文! 付いて来てくれ!!」
「分かりました」
コウラと文とパーティを組んだアラタが先にミッションに向かった。残った3人はと言えば、何とも言えない空気が漂っていた。タオとリンが口を開こうとしなかったので、シーナが問うた。
「あの。もしかして、コウラさんとはあまり仲がよろしくない?」
「ボクらの知り合いじゃなくて、アラタの知り合いやからな。強いんは間違いないけれど……」
フリーダムフリートに所属できるだけの実力や知識、ビルダーとしての腕前があるのは事実だろう。ただ、人格が問題だった。
「ベテランプレイヤーの嫌な所が出ている感じだよね。リアルで付き合いのあるアラタはどうしているんだろう」
「案外、現実では普通の方かもしれませんよ。ほら、ネットでは豹変する人も少なくはありませんし」
ロビーではエイリアンの集団とふみな集団の寸劇が開始されているのを見て、リンは考えていた。こんなことをやっている連中が現実では、スーツを着たサラリーマンであったり真面目で大人しい人だったりするのだろうか。
「軽くホラーね」
「ネットの良い所でもあるから……。ボクもリアルじゃ冴えへんし」
タオも言う通り、リアルとは違う人間になれるというのもネットの良い所である。同時に悪い所でもあったのだが。
「リアルがどうこう関係なく人付き合いが出来るのが良い所ですよ。ネットでは大人も子供も関係なく付き合えますから」
「な、何か大人だ。実はシーナさん、私達よりもかなり年上?」
「どうでしょう?」
コウラの様に人を詰める人間もいれば、シーナの様なおおらかな人間もいる。
ロビーで駄弁っているのも悪くはないが、折角パーティを組んだのでストーリーミッションに出た。
「シーナは何でこんなゲームをプレイしているの?」
「こんな。て……」
リンには疑問だった。話をしている感じ、シーナは自分達とは住む世界が違う様な、ちょっと上品な雰囲気が漂っていた。
「あら、何か変ですか?」
「うん。だって、ロビーはセクハラ会場だし女子がプレイするゲームとしては、あまり相応しくないというか」
えらい物言いである。ただ、散々真改造ふみなやらなにやらを見せられて来た、リンにとってGBBBBはそう言った物と言う印象が根付いていた。
「だからこそです。このGBBBBは私を自由にしてくれるのです」
「自由って言うか無法だけど……」
アレが自由だとは、リンも思いたくはなかった。しかし、シーナにとっては非常に居心地のいい空間であるらしい。
「少しだけリアルの話になってしまいますが、私の家は厳格な所がありまして。嫌と言うことは無いのですが、時に疲れてしまうこともあるのです」
「(やっぱ、ええ所の人なんや)」
果たして、彼女の話が本当かどうかは判断し難い。
こんなことを言いながら、リアルではボイスチェンジャーを使っている中年かもしれないが、嘘を言っている様にも思えなかった。
「少し、ターミネーターを見たり、コマンドーを見たり、プレデターを見たりすると、お母様は物凄い勢いで怒り狂うのです。相応しくないと」
「なんかもっとこう。雅と言うかラブロマンス的な映画は……?」
「見ていたら寝ていました。あ、ホラーとかも良いですね!」
お嬢様ながら、割とファンキーな趣味をしていた。きっと、彼女のサブスク履歴を見たら、お母様は卒倒するんじゃないかと思った。
「GBBBBをプレイするってことはガンダムとかも見たりはしているん?」
「はい。GガンダムやWも大好きです。本当は機体もGガンで組もうか迷いましたが、組んでみたら必殺技を叫びがちになってしまうので泣く泣く止めました」
上品ながらも根はかなりぶっ飛んでいるらしい。正にGBBBBに降り立つべくして、降り立った人材と言った所だろうか。
「聞いている限りだとリアルでもかなり自由な気がするんだけれど……」
「そんなことはありません。基本はおしとやかに、相手と話題を合わせて、学業も疎かにせず、習い事もして……。加えて、SNSも邪気を呼ぶと言うことで禁じられているのです」
「言うほど間違ってはおらへんな」
タオもSNSはよく見るし、GBBBB等で作られたカッコいい系のガンプラからネタガンプラまで色々な画像も流れて来るが、時にはロクでもない物も流れて来る場合がある。
「そんな抑圧を解放できるGBBBBは大変素晴らしい場所なのです。むしろ、解放した時の快感たるや、普段の抑圧が心地良くすら感じる様になりまして……」
「し、シーナ?」
「なんか変な空気になってきたな……」
なんか話が変な方向に飛んで行きそうだった。とりあえず、ストーリーミッションはクリアしたが、なんか変な方向に飛んでいきそうな雰囲気だった。
「ありがとうございます。今日のミッション、楽しかったです」
多少、不穏な空気を感じたがシーナは普通の調子に戻っていた。アラタ達もミッションを終えていた様だし、皆も時間があるので今日はストーリーミッションを進めて行くことにした。
「見ろよ。ロビーに大量のエイリアン祭りになってやがるぜ!」
アラタが指差した先、フェイスハガーを製作した奴もいたのか、態々ふみなの顔に貼り付けてから来る奴もいた。
また、ここに来てプレデターも出現して、恐怖の三すくみが出来上がっていた。こんな光景を見たコウラは溜息を漏らしていた。
「そんなにやりたければ、最初から洋ゲーとか別のゲームでやればいいのに」
態々、GBBBBで再現する意味が分からないと言った様子だった。そんな集団をシーナはジィっと眺めていた。
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今日は3:3で別れたこと。クラン結成記念でやる気があったことも含めて、ストーリーミッションが大幅に進んだ。良い具合に進んだので一旦解散したが、タオは手に入れたパーツを整理する為に、ログインし直していた。
「(アレは。シーナ?)」
遠目で見たら、シーナがマイルームに入って行く様子が見えた。通知欄を見ても彼女の名前が光っていない所を見るに、本人ではないかあるいはログインしたことを隠す設定にしていあるのかもしれない。
気になったので、タオもデフォルトのRX-78-2にして通知欄の諸々を切って様子を見ることにした。何をしようとしているのだろうか?
ロビーではエイリアン周回も賑わいを見せており、そのままバトルに突入しており、映像内ではエイリアン陣営とプレデター陣営とふみな陣営が分かれていた。そんな様子をレコが実況していた。
『おーっと! ふみな陣営! 今日はプレデターとエイリアンと戦わされているぞ! GBBBBは皆さんの想像力を受け止めてくれるゲームです!』
そろそろ可哀想になって来た。と思っていたら、マイルームから誰かが出て来た。見れば、すーぱーふみなであったが手にしている武器がミサイルランチャーであったり、ボディには迷彩ペイントが施されていたりした。
人が集まったことにより自主的なイベントが開催された為、勝手に受付担当等もする人物がいる中、コマンドーふみなも受付を済ませていた。
「こちら、受付。ビルダーズパーツモリモリマッチョウーマンの変態が1人。そっちに向かうぞ」
かくして、彼女も戦場へと向かって行った。果たして、あのコマンドーふみなを使っているのは誰だろうか。タオには確認する勇気もなく、タオSDガンダムを弄るのを明日に回して、ログアウトした。