GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
かくして、ビアンカ主催のクラバト1回戦の対戦は全て終えた。リスナー達からは大量のコメントが来ており、カルパッチョは幾つかピックアップしていた。
『最後のミサさん達の試合が凄かったです。とか、やっぱりマシマ達の試合は凄かったよね~。クランリーダーのアラタとしてはどう思う?』
『2人共、流石って位に強かったぜぃ。俺と当たる時が楽しみだ。そう言う盛り上がりも考えてトーナメントが組まれているんだろうがな』
アラタ・カオスのペアは最も遠い所にある。最初からミサペアかマシマペアが決勝戦での相手になる様にと想定して対戦表は作られていたのだろう。
『でも、何が起きるか分からないってドラマもあるからね。……まぁ、私達は1回戦で負けたんだけれどね!』
『コウラ・ニューチームも強かったぜぃ。第2回戦からは俺達も参戦の予定だ。どんな戦い方をするかは、次回を楽しみにして置いて欲しいんだぜぃ』
『以上。クラバト1回戦配信でした! 皆も『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』の先行上映を見に行こう!』
最後に宣伝と共に配信は〆られた。その後、2人はクランルームへと移動していた。中には、本日のクラバトに出場していた選手達がいた。
「カルパッチョさん。配信お疲れ様です」
「中々、良い司会だったよ。本当にフリーダムフリートにいた頃から、外面は良いんだね」
真っ先に彼女達を出迎えたのはシーナ達だった。元・同クランの幹部同士ということもあり、ドーラの軽口は何処か慣れたモノがあった。
「そんな貴方達に朗報よ。次の対戦相手は『アラタ・カオス』ペアだからね」
「まぁ! こんなに早くにアラタさん達と手合わせできますなんて!」
「じゃあ、初っ端から視聴者の関心は集めちまう訳だ」
カルパッチョの憎まれ口に対し、シーナは朗らかに笑い、ドーラも大口を叩いていた。ここで、ふとコウラが挙手をしていた。
「カルパッチョ。アラタ達とシーナ達が勝ち上がってきた場合、そのまま私達と連戦になるの?」
「そうね。ただし、連戦はキツいだろうから間に『リン・サーヤ』ペアと『マシマ・クロカンテ』ペアの試合は挟むけれど」
1試合ごとに多大な集中力を要するので、間に休憩を挟むにしても厳しいのではないかと思っていると。カオスが笑っていた。
「コウラ君。君の気遣いは有難く受け取るけれど、問題はないさ。何せ、私とアラタ君のコンビだからね!」
「何の説明にもなっていない」
丹生がボソッと呟いていたが、誰に受け止められることも無かった。彼らが盛り上がっている一方、緊張しているリンにミサが声を掛けていた。
「リン。固くなりすぎだって」
「だって、お姉ちゃん達に勝ったペアが次の相手だよ!?」
身内という贔屓目もあるかもしれないが、ミサも相当にガンプラバトルは強い。そんな彼女に打ち勝っても不思議でないのがマシマだ。
ビアンカのメンバーに経験を積ませるということで、彼はクラン内のメンバーを満遍なく出場させるべきだと提案していたこともあったが、裏を返せば。勝つことだけを考えた場合は『アラタ』『マシマ』『ミサ』のチームが鉄板になることを彼は理解していた位に、自分の腕前に自信を持っているのだろう。
「リツキにあんな不意打ちを食らわせる作戦をパートナーと一瞬の間で示し合う察しの良さも含めて、かなりのプレイヤーですね」
サーヤもマシマペアの実力をかなりの物だと判断していた。すると、噂をすればと言わん具合で、件の2人が姿を現した。
「おぅ。もう、作戦を立てているのか?」
「ミサさん、良い試合でした。まさか、あの一瞬でボコられて撃破されるとは、思ってもいませんでしたが」
マシマが軽口を叩き、クロカンテが先程の試合に関する挨拶を行う中、ミサが渋い顔をしていた。
「改めなくても。戦力偏り過ぎじゃない? マシマ。普段のキャラ的に考えて、女の子を誘ったりするつもりはなかったの?」
ここに居るメンバーは全員、リアルでも顔を合わせたことがある。故に、グスタフやドーラの様にアバターと性別が違う者達のことも知っているが。
「いや、今回は久々に勝ちを狙いたくなってよ。最近はマトモにバトルできていなかった中で、ジークアクスだぜ? そりゃ、お前。俺だって一介のガンダム好きとしてな。燃え滾ってんだよ」
普段は面倒見も良く、割と気遣いも出来るマシマであるが、中坊と同じ目線に立てる少年ハートの持ち主でもある。
「今回は新作を記念しての催しではある。レギュレーションも決まっていて、本来の力を出せない者もいるだろう。だが、やるからには私もトップを目指したい。マシマ君となら、狙えると踏んで力を貸している」
どうやら2人共、かなりガチで勝ちに来ているらしい。超えるべきハードルがあまりに高すぎるが、リンは気後れするつもりはなかった。
「2人がガチで勝ちに来ていることも分かったけれど、私達も負けるつもりは無いんだからね!」
「おぅ。全力で掛かって来てくれよ。このGBBBBでアラタと一緒に見て来た物。全部、俺達にぶつけてくれよな!」
この激励を吐いた上でチャラ男キャラは無理がある。と、リンが想いながら視線を彷徨わせていると、オレンジ色のガンキャノンがこっちをジトっとした視線で見ていた。『いいなぁ』と言ってそうだった。
勝者達が次の試合に向けての挑戦を考えている中、敗退した者達も当然いる訳で。初戦で敗れたセリト・グスタフペアは悔しがる……より先に、フドウの下に来ていた。
「フドウさんから見て、俺達の動き。どう思いました?」
「コンビ。って言うと聞こえはいいけれど、お互いがお互いに依存している様な。あまり、主体性の無い動きに見えたかな? 多分、2人共。誰かのサポートや指示で動くことに慣れているんじゃないかな?」
「返す言葉もない」
実質、最年少コンビとなる2人は次回に向けての改善指導を乞いに来ていた。隣ではタオが腕組みをしていた。
「な? フドウ先生ェに聞きに来て良かったやろ?」
「タオはフドウさんの何なんだよ」
何か、自分のことの様に自慢していたので、思わずセリトが突っ込んでいた。勝っても負けても話題が尽きることはなかった。
~~
『アラタ。今日は、皆。楽しそうでしたね』
「やっぱり、こういう催しは良いよな」
GBBBBを落とした後、アラタはスマホに常駐している文と話していた。
あんな事件があった手前、彼女がGBBBBに戻って来るのは危険だと言うこともあり、外から眺めているだけしか出来ない。
『不思議です。アレだけ、GBBBBの外に出たがっていたのに。離れたら、こんなに楽しそうな場所に見えるなんて』
「そう言うモンだよ。……もしも、戻ったら。文は何がしたい?」
『そうですね。今から、クランバトルに参加するという訳には行きませんから。中断されてしまったバトルトーナメントの方には参加したいですね』
まだ、バトルトーナメントが再開されていないのでこうしてクランバトルなんて盛り上がっているが、公式から通知があったらそっちに向けての調整も考えなくてはならない。
再び、カオスを始めとしたフリーダムフリートのメンバー、今回のクラバトでミサが紹介してくれた彩渡商店街のメンバー。もしくは、まだ見ぬ強敵達も待ち構えているかもしれない。そして、勝ち上がった先には彼が待っていることだろう。
「マイスター。いや、タクマさんか」
GBBBBのトッププレイヤーである青年は、クールで卓越したビルドファイターとしての腕前を持っており、同期の女性に鼻の下を伸ばしまくっている普通の男だった。今日の試合も何処からか見ていたかもしれない。
『はい。アラタ達の勝負を中断させてしまったことは、私としても心苦しく思っています』
「いや、アレは文のせいじゃない」
彼女は利用された。ただ、悪いことばかりでは無かったとも思えた。AIにしては有機的すぎる文の本心を聞けて、こうして一緒にいられるようになったのだから。ふと、アラタはミサ達が居酒屋でしてくれた話を思い出していた。
「(ミサさん達にとって。『ロボ太』って言う、存在も。こんな感じだったのかな?)」
傍にいるのが当然だと思って、ある日。突然いなくなってしまったら、お互いの距離感に戸惑ってしまって、疎遠になってしまう様な。
今では、復縁したが。あの二人が疎遠になったまま別れてしまう様なことがあるだなんて、思いたくはなかった。
『アラタ?』
「いや、何でもない。今日はもう寝るよ」
結構な時間、配信をしていたのでアラタはもう寝ることにした。文もスリープモードへと移行していた。