GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
ガンブレ学園。ジークアクスの先行上映が公開されてから、学内は一色に染まっていた。
シミュレーターにおいての使用率はシャア専用ガンダムやザクなどの一年戦争に使用された機体の使用率が跳ね上がり、ガンダムの方のジークアクスもランキングに名を連ねていた。
「3回目の入場特典はメカフィルム。4回目の入場特典はキャラフィルム。また、見に行こうかな……」
部室『サイド0』にて。既に2回の視聴を終えて、設定資料集まで手に入れているアラタは悩んでいた。それだけ、新作のガンダムは衝撃的だったのだ。
「ガンダムも言っているよ! 思い立ったが吉日ってね!」
ガンブレ学園においては有名奇人に列挙されているユイが、流行物のセリフに飛びついては雑にパロディするという、ネットであればギリギリ許されるが、リアルでやればギーク憤慨物の所業を繰り広げていた。
いつもは部員一同から総スルーされる所だが、今日は珍しく、丹生以外に賛同してくれる人がいた。
「良いと思う。でも、1人で行くのはちょっと寂しいと思わない?」
コウラである。彼女も、どうしても見たい物がある時は1人でも映画を見に行くことはあるが、基本的には避けたいと考えていた。故に、この機会を利用してアラタと一緒に……と考えていたが。
「って、カオスさんから誘われているんだ。2回戦に向けての景気づけってことで」
「F〇ck」
アラタも鈍感では無いので、彼女の意図は理解しているが、こう言った時は先約の方を優先するタイプだった。
「えー! 凄いじゃん! カオスさんって、フリーダムフリートのでしょ? 何時の間に、そんなに仲良くなったの?」
「色々とあってね。普通にチャットもしているし」
スッとスマホのチャットアプリのログを見せたら、ユイが楽しそうに閲覧していた。以前まで、ギクシャクしていた2人の関係も大分改善されている。
一方、この状況を面白く思わない者達がいた。奇しくも、話題となっているジークアクスのクランバトルに託けたイベントでも、コンビともなっている者達。そう、コウラと丹生である。
「ねぇ、丹生。アンタの彼女、アラタにちょっかい掛けている様に見えるんだけれど?」
「自意識過剰過ぎでしょ。ユイ姉ェは優しいし、ちょっとミーハーだから構っているだけだよ」
とか言いつつ、頻繁にスマホから視線を外してアラタ達を見ている様子からは余裕は感じられない。
結構忘れがちだが、GBBBBにおけるカオスはトッププレイヤーの1人でもあり、大規模クランのリーダーをも務める有名人である。特に、ユイの様なミーハーが根掘り葉掘り聞いて来るのは無理からぬことだった。
「アラタ君は年上の人に好かれやすいんだね!」
「ここは年上の人にも好かれやすいって言って下さいよ。ねぇ、皆?」
褒められて気をよくしたのか、アラタらしからぬ尊大な態度で部員達に振ってみた所、彼らは満面の笑顔で答えた。
「図に乗るな」
「態度がね……」
彼らの素直な感想を聞いて、アラタの表情はマチュのジト目めいたものになっていた。だが、ここで丹生は思い返していた。
「GBBBBでも年下の子達とも仲良いけれど、同級生の友人居ないよね。アラタ君。普段、クラスでは誰と一緒にいるの?」
「スマホ」
人じゃない。という、指摘は避けた。ただ、部室内での反応を見るに、同級生から悪く思われている訳ではなさそうなのだが。
「なんで?」
「丹生君。それ、理由に詰まっている子に一番やっちゃいけない質問だから。でも、何となくわかる気はするかなぁ」
若干、思いやりに掛ける丹生を抑えたユイには、心当たりがあったらしい。
本人的にも思い当る節はあるのか、ちょっと目を逸らしていた。一方、コウラは首を傾げていた。
「アラタは人当たりも良いとは思うし、友達も多そうだけれど」
「今はね。ここに来たばかりの頃は結構、尖がっていたし」
あの頃の自分は、アラタ的に考えても黒歴史であるらしい。評価される為の作品を作っては、自分の中に在る理想とのギャップと乖離し続けフラストレーションばかりが溜まり続けていた。
そんな、彼のイラつきは同級生にも伝わっていたらしく、自然と距離を取られていた。現状は大分改善されたにせよ、一度生まれた距離は詰め辛い。
「もう直ぐ、クラス替えもあるし。今更、距離を詰めてもなぁ。それに学内だとコウラ先輩達もいるし」
「そうね。何かあれば『サイド0』に来ればいいのよ」
クラスで孤立気味でも、学校単位で孤立しなければ問題はないと判断したのか、コウラも早々に解決を放棄していた。だが、これを良しとしない物が居た。やはり、ユイである。
「駄目だよ。クラスとかで修学旅行ともあるかもしれないし、やっぱり同級生に友達がいないと困ることも多いと思うよ? プリント紛失したり、提出物の機嫌を忘れたり、宿題を忘れたりすると大変だし」
「なんで、そんなにサクッと事例が出て来るんですか?」
「パーフェクトコンプリートしたからね!」
「リョウコ先輩も苦労していたし、結構愚痴も聞いたよ」
丹生からの追撃にユイは苦笑いしていた。甲斐甲斐しく見えて、本人は結構だらしなかった。人の世話を焼くより、まず自分のことを心配して欲しいという言葉は呑み込んだ。というか、そろそろ反応するのが面倒臭くなっていた。
「じゃあ、俺。カオスさんと3回目のジークアクス行って来るので。ここら辺で」
「あ! 絶対、面倒臭くて切り上げた奴でしょコレ!?」
割とだらしなくて、天然な所もあるが。あまり察しは悪くないので、アラタの考えはある程度、気付いていたらしい。口に出す所は配慮が足りないが。これ以上、何かを言われる前にアラタは小走りに去って行った。
「……は!? 私、放って行かれたんだけれど!?」
「追いかける?」
一緒に見に行くつもりだったコウラに丹生が聞いてみたが、彼女は首を横に振った。百合に挟まる男が風雲再起に蹴られて始末されるのは道理だが、昨今はジークアクスのイケオジの影響からか、薔薇にダイブしようとする女も許されないとガンダムは言っていた。
「いや、遠慮しておくわ。というか、最近のアラタは私に構うことが少なくなっている気がするんだけれど」
「そりゃ、気も合うし包容力のある同性の年上男性がいればね。可愛い系は、あのピンク髪の子もいるだろうし」
配慮もクソも無い発言だった。つまり、自分は選択肢が無かった末に選ばれたというのか。カオスほど面白さも、ビルド力も経済力も無いかもしれないし、リンほど可愛らしくもないかもしれないが……。
「ビアンカ内で一番アラタと付き合いが古いのは私なのよ。それを新参者達がズカズカと!!」
「いや、でも。最初は、イオリにアカウントを晒さない位に距離取られていなかったっけ?」
「丹生君、ちょっとこっちに」
流石に見かねたのか、ユイがインターセプトに入った。モガモガと口をふさがれている手前、コウラは自らの所業を思い出していた。
効率厨と化していた自分、不機嫌さで相手をコントロールしようとしていた自分、皆が盛り上がる中に正論をぶち込んでいた自分。その癖、大会とかイベントになるとあんまりいい所が無かった自分。
「うぉおおおおおお!!!」
「コウラちゃん!?」
後輩の成長に対して、お前は何だ? と、言わんばかりに自分の良識が自分を責めているのを感じていたのか、コウラは荒れていた。勿論、このヒステリーは周囲に多大な迷惑をかけていたので、仕方なく丹生が納めていた。
「コウラ。無理に変わろうとしたり、成長を気にしたりする必要なんてないよ。ソロモンの魔女(笑)とか、バトル中に痛々しい発言をしてでも、とりあえず強かったら許されるんだから。今度のクラバトもその方向で行こう?」
「もしかして、アンタも私のこと嫌いなタイプ?」
見る見る内に不機嫌になって行く彼女は、生徒会が横暴を利かしていた頃から変わらない所か酷くなっているし、理由も分かっているユイとしてはずっと苦笑いをするしかなかった。