GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
「お? アラタにカオスじゃねぇか!」
さて、どんな奇縁が働いたのか。カオスと合流したアラタが映画館に向かった時のことである、チケット売り場には見知った顔が居た。
身なりを整えた小綺麗な男--マシマの隣には、筋骨隆々としており、コートの下にパツパツに張ったシャツを着ている堅気者とは思えないほどに剣呑な雰囲気を放つ輩--クロカンテも一緒にいた。
「おー! 2人共、次のクラバに向けてのジークアクスかい?」
「そんな所ですわ。カオスさんとアラタ君も?」
カオスは全く物怖じしていないが、アラタはやはり少しだけ怯んでいた。
彼自身が小柄なこともあり、やはり体格差が大きく、話し方に威圧感もあるクロカンテには気圧されてしまう。
「は、はい。折角、誘って貰えたので」
「ウチのリーダーは人気者だねぇ。まさか、両クランのNo.1とNo.2がこうして会するのも何かの縁だ! 席は隣同士になる様にしようぜ!」
ノリノリなマシマに先導されて、彼らは横一列になる様に席を取った。
自分よりテンションの高い3人に押されているアラタだが、不思議と悪い感じはしなかった。むしろ、コイツらには配慮なんてモンが必要ないので滅茶苦茶気楽だった。
「なぁ、皆。映画見た後は一緒にラーメンでも食わない?」
「あぁ~。良いですね~」
カオスからの提案にアラタは遠慮なく頷いていた。男同士でノリも近いので、こんな会話も出来ちゃうのだ。
「アラタ君の分はワシらが出すから遠慮なく、食いや」
「マジですか。ごちです」
「良かったな。リーダー!」
さながら、バカサーの姫めいた扱いだった。スクリーンではコマーシャルが終わり、3回目となる本編が流れていた。
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「何が嬉しいって、映画って一度見たら終わりですけれど、ジークアクスはここから続きがね。待っているってことなんですよ」
3度目のジークアクス視聴後、彼らはラーメン屋にいた。周りを見ても女性客は一切おらず、目の前では店員が大量のもやしとキャベツをどんぶりに盛り付けている。
「続きがある。ってのは、ファンとして本当に喜ばしいからね。私もSEED FREEDOMが公開された時なんて3回は見に行ったからね」
「まさか、20年越しの新作であそこまで話題を搔っ攫っていくとはな」
「ヘイ、お待ち」
アラタ、カオス、マシマの前にラーメンが置かれた。ラーメンの上にはどっさりと乗ったキャベツともやしと背脂。上からカラメが垂らされ、正に武装全乗せ。ラーメン界のパーフェクトストライクである。
2人が凄い勢いで食い始める中、アラタも真似してモソモソ食べ始めるが、2人程テンポ良くは食えていない。もう、感想を言っている暇がない。
「はい、こちらヤサイ・アブラ・ニンニク・カラメマシマシで」
ドゴンという音が聞こえそうなほどのボリューミーなラーメンがクロカンテの前に置かれた。全てが規格外。先程見た映画もあって、アクシズが押し寄せて来たんじゃないかと見紛う程の量だったが、彼はまるで臆することなく箸を付けて、マシマシヤサイを切り崩していた。
「(すげぇー。ゼクノヴァ!)」
多分、アラタの中に深い考えは無く本当に直感だけで言っている。ただ、3人とも食うスピードが早く、アラタも遅れまいとモシャモシャと食べていた。
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「悪ぃ。そりゃ、個人差はあるよな」
マシマが申し訳なさそうにしていた。3人はまるで何の問題も無くラーメンを食い切っていたが、アラタはフラフラになっていた。小柄な見た目に相応しく、胃袋もあまり大きくはなかったらしい。
「楽しくて、つい調子に乗った……」
「うーん。心配になる反面、そこまで楽しんで貰えたら嬉しい気持ちもあるよねぇ」
カオスがアラタの背中を摩っていた。散々、ラーメンを食った後にも関わらず、この思春期を満喫した中年達はファミレスに寄っていた。コーヒーとパフェを頼んだ後、彼らはようやく落ち着いた。
「いやぁ。つい、楽しくてワシも燥いでもうた」
「やっぱり、男同士ってあんまり気遣いしなくても良いから楽しいよなぁ」
クロカンテとマシマがカラカラと笑っていた。GBBBBBにおいて、この4人は所属団体でそれなりに高い地位にいる。故に、他者への気配りが必須となっているが、今の自分達には必要のない物だった。
「本当にねェ。いや、色々な人に気を掛けてコミュニケーションを取るのも交流の醍醐味って感じで良いんだけれどさ。ちょっと、疲れたりもするよね」
GBBBB内ではリーダーとして。リアルの方でも社会人として、気を配らなければならないことも多いのだろう。先程まで、楽しそうにしていたカオスが少し小さく見えた様な気がした。
「……周りのことなんて気にしない。って言えたら良いんだけれど、周囲を含めての自分って言うか。こう、ね。やっぱり外聞は気にしちゃいますよね。ちゃんと、良く見られているかなって」
言った後、アラタは少し驚いていた。自分が周囲を気にしているということを言い触らせば、周囲からも意識されるのが嫌なので殆ど口にしなかったのだが、つい。カオスの弱音に触発されて、漏らしてしまったのだろう。
「まだ若いのに、お前はよくやっているよ。ちょっと位、愚痴を吐いてもヘーキだっての。俺なら聞き流してやる」
敢えて聞き流してやる。という、マシマの心遣いをアラタは嬉しく思っていた。気にされることすら気になる自分には最適の対応だ。
デザートが運ばれて来たので、先程の様に急かされること無くチマチマ突きながら、湿っぽい話題から転換するべく、クロカンテが声を上げた。
「多分、カオスさんらは勝ち上がるとは思いますけれど、ワシらが決勝でぶつかるかどうか」
「おいおい、クロカンテさん。そっちのドーラ兄……姉さんとウチのお嬢さんを見くびって貰っちゃ困るぜ?」
マシマはこう言っているが、こと勝負に関しては冷静な面を持ち合わせる2人である。先程までの陽気さを残しつつ、アラタとカオスはほぼ同時に行った。
「「勝つさ」」
「リーダー。普段は流される癖に、ガンプラバトルの時だけえげつない位に傲慢だよな。まっ、それ位の矜持がねぇと張り合いがないけれどよ」
スン、と。マシマも目を細めていた。プロだった頃の気迫が蘇っているようだが、口周りをチョコレートクリームで汚している様では、いささか威厳が足りない。
そんな彼と睨み合っているアラタはソフトクリームを突いているし、カオスはチョコケーキを頬張って、クロカンテはコーヒーと一緒にピザを摘まんでいた。
「でも、気を付けた方が良い。とんでもないダークホースが眠っているかもよ?」
「嬢ちゃん達のことか? これが、ホビーアニメとかならよ。俺達は当て馬にされんだろうが……こういう催しだからこそ、本気でやるんだよ」
「素晴らしい。遊びだからこそ、全力で取り組む。私が最も求めていたスタンスだ」
マシマの挑戦状をカオスは称賛していた。アラタとしても興味はある。ただ、思考の端っこに引っ掛かる。いや、懸念ではなく願望にも近しい考えだが、彼女達のことが引っ掛かっていた。
「(いや、でも。リン達ではきつすぎるな……)」
決して、彼女達のことを見縊っている訳ではない。むしろ、この短期間での成長幅はクラン内でも随一だと言っても良い。
だが、積み重ねて来た物は簡単に覆せない。マシマにはプロとしての経験があり、クロカンテにはGBBBBで積み重ねて来た物がある。壁としてはあまりに高すぎるのだ。そんな彼の表情を見て、マシマはニヤニヤしていた。
「もしかして、嬢ちゃん達と決勝で戦いたい。とか思っていたりするか?」
「誰が上がって来ても、俺は全力で戦うさ。……で、なんでリンなんだ?」
アラタ以外の3人が黙っていた。今更、言う必要があるか? と言わんばかりの反応で、彼も鈍感な振りをしたが……誤魔化せる気がしなかった。
「いや、こう。何と言うかぁ……いも」
「はい! ピザ追加!」
「マカロニチーズも!」
「ディッシュサラダも追加しとくわ」
「いや、ちょっと待て続きがちゃんと」
3人から一斉に口を塞がれた。本当はここから続く話もあったのだが、強制中断された。次々と料理が運ばれて来たので、アラタはハムスターの様に詰め込んでいた。