GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】   作:ゼフィガルド

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EX2:正式サービス開始! 13 ※ジークアクスのネタバレを含みます。

『カルパッチョさん。このクラバトに参加している面々の一部は『覚醒』が使えるようですが、レギュレーションでは禁止にされているんですね』

『使える奴らが固まっているしね。それに、このバトルはジークアクスのクラバト再現だから、あんまりガンプラバトルの面を強調したくないのよね』

 

 元々、このイベントはジークアクス劇中で行われていたクラバトの再現ということで始まっている。ガンプラバトルではあるが、ホビーに傾倒し過ぎないように。

 また、2on2という形式を取っている以上、覚醒が与えるアドバンテージは従来よりも大きくなると想定され、使用が禁じられていた。

 

『勿体ないですね。一種の特技でもあるのに』

『それはバトルトーナメントの方で発揮して貰いましょう』

 

 何故、今更になってユーキがこの様な確認をして来たのか? というのには、カルパッチョも心当たりがあった。

 第2回戦、2組目の組み合わせに理由がある。優勝候補に対する対抗馬とも言える『マシマ・クロカンテ』ペアに対するは『リン・サーヤ』ペア。正直に言えば、経験も実力もあまりに開きがある。

 

「(確か。サーヤって子は覚醒を使えるんだっけ?)」

 

 これは、カルパッチョも準備期間中に確認していた。カオス曰く、覚醒のバフは『ガーディアン覚醒』を除いて、ゲームバランスを著しく崩す程ではないという。

 だったら、この実力差を埋めるために覚醒の使用を許可しても良いか? と考えたが、彼女は首を横に振った。

 

「(それって。あの子達の実力が下駄履かせてやらないとマトモに戦えないって言っているも同然じゃない)」

 

 普段は奇声やネタに走りがちな彼女であるが、ことGBBBBにおいてはコウラと同じ位にシビアで真摯である。故に、彼女は実況を続けた。

 

『このクラバトにダークホース出現なるか! はたまた、下馬評通りに行ってしまうのか! 注目の一戦が、今始まります!』

 

 フィールドに4機のMSが降り立った。すると、直ぐに担当が分かれた。リンはマシマの方へと向かい、サーヤはクロカンテへと向かった。

 

「(予想通りだな)」

 

 クロカンテからのアクションは無かったが、マシマと同じことを思っているだろう。

 総合力でこちらが勝っている以上、固まって行動した所で磨り潰されると向こうは判断するだろう。すると、どうするべきかという対処法は決まって来る。

 

「(ドムというヒットボックスの大きな機体であること。そして、先の対戦でミサ君に撃破されている以上、サーヤ君が私を撃破しに回るだろう)」

 

 ドムと言う機体は1年戦争の機体の中では図体がかなり大きい。故に、当り判定も大きく、耐久力などに調整が入っている物の釣り合っているかどうかは日夜議論されている所でもある。

 実際、サーヤはクロカンテの撃破に動いていた。手にした射撃武器をばら撒きながら、しかし、クロスファイトの距離には近づかれない様に絶妙な距離感を保っていた。

 

「(GBBBBでは見ない独特な間合いの取り方だ。他のロボゲーから来たそうだが、このゲームの歴は私の方が長い)」

 

クロカンテもジャイアント・バズをばら撒きながら、相手のリロード間隔を図っている。当然、サーヤも弾幕が途切れない様に残弾管理には気を遣っている。

 

「(数字じゃなくて、ゲージなのが少し分かり辛いですが)」

 

 天性のゲーム感覚と言えるのだろうか、多少の違和感を覚えつつも彼女はGBBBBのUIに適応していた。少しでも均衡を崩せば、一瞬で勝負が付くギリギリの状態で2機の攻防が繰り広げられていた。

 

――

 

 一方、マシマとリンの攻防はもっと苛烈な物だった。ハイリスクハイリターンの近接戦へと持ち込んで来たのは、リンの方からだった。

 

「とんでもねぇ、根性だ!」

「(違う。射撃戦では勝ち目がない!)」

 

 これはリン・カーネーションという機体性能に頼っていた弊害だった。

 基本的に遠距離はドラグーンの自動操縦に頼りっぱなしだった為、リンは射撃戦が得意ではない。撃ち合いになれば、自分の方が追い込まれるのは分かっていた。

 マシマも以前のバトルで武器を取られたことを反省していたのか、今回はシンプルにビームサーベルだけにしていた。

 

「それじゃあ、嬢ちゃんの成長。見せて貰おうか!」

 

 リンのニャアッガイが牽制として頭部バルカンを放ったが、マシマの軽キャノンは身を捻るという最低限の動作だけで避けていた。避けた方向に合わせて、アイアンクローを展開した腕を突き出すが、ビームサーベルで弾かれた。

 だが、軽キャノンの挙動は止まらない。そのまま、するりとニャアッガイの背面へと回り込んで、逆手に持ち替えたビームサーベルで胴体を貫こうとしていた。

 

「(この動き! 知っている!)」

 

 サブスクでしか配信されていない『復讐のレクエイム』と呼ばれる作品に出て来たガンダムが取っていた挙動で、知っている人から言えば『パリィ』と呼ばれるカウンターアクションであるらしい。

 

「でぇえい!」

 

 振り向いても間に合わないと判断して、ニャアッガイは思いっきり後方へと頭を振った。通常のMSならば意味をなさない動作だが、アッガイという特殊なフォルムを持つ機体がコレをやれば、背面に張り付いていた軽キャノンに頭突きを食らわせていた。

 

「よぅく、勉強しているな!!」

 

だが、直ぐに態勢を立て直したマシマは肩部のビーム・キャノンを放った。

リンは五体を投げ出して、地面に這うことでギリギリ避けたが、目の前には軽キャノンの爪先が迫っていた。

 

「まだぁ!」

 

 ここで、リンは先程見た試合を思い出していた。カオスのドラッガイがやっていたダウン状態から繰り出す技。そう、ブレイクダンスアタックだ。

 丸みを帯びた頭部と両腕を軸にして高速回転を行い、速度を纏った足部を武器にして叩き付ける、公式外伝でも行われた由緒正しき技である。

 

「ノルトか! いいねぇ。多分、さっきのバトルで見たのを真似ただけだろうけれどな!」

 

 こうなっては距離を取る外ない。だが、ニャアッガイは軽キャノンに食らい付いて離れない。何としてでも仕留めるつもりでいる。

 

『カルパッチョさん。これって、ニャアンちゃん再現でやっているってことは、今頃。彼女の頭頂部が禿げ上がっていますよ。大丈夫ですかね?』

『なんてこというの』

 

 ユーキが抑揚のない声で言うモンだから、カルパッチョも素の反応が出てしまった。ドラッガイがやるなら笑えるし、ニャアッガイでも絵面的には可愛いのだが、本当に彼女がやった場合は頭皮のダメージが懸念される。

 そんな外野のヤジは兎も角として、勝負自体は確実に進んでいた。マシマとリンが拮抗している中、もう片方は崩れようとしていた。

 

「くっ……」

「ここまでストイックな残弾管理はお見事という外ない。リツキ君と言い、ミサ君の指導力の高さが分かる。ただ、悲しきかなは実戦の少なさか」

 

 練習や稽古。あるいはシングルプレイで上手く行っていたとしても、真剣勝負はまた違う。緊張状態に曝され続け、なおも状況を見据えて適宜対応していく冷静さと平常心が求められる。

 一般的なGBBBBプレイヤーに比べて、サーヤは高水準で持ち合わせている。というのも、彼女がプレイしていた別のロボゲーことAC6は高難易度ゲームを多数輩出しているゲーム会社から出されたソフトと言うこともあり、集中力は相当に鍛えられている。だが、これはガンプラバトルだ。

 

「あ」

 

 マシンガンの容量ゲージがオレンジ色へと変わった。リロードタイムに入った。残弾管理をミスったのだ。クロカンテが見逃す訳も無かった。

 

「貰った!!」

 

 マシンガンの弾幕が切れたのを見計らって、一気にドムが接近して来た。サーヤも応戦する様にジャイアント・バズを放つが、見当違いの方へと飛んで行った。

 

「サーヤ君! 君もフリーダムフリートに来たまえ! 私達と一緒にGBBBBの何たるかを学ぼう!!」

「いえ、先んじて貴方達から学ばせて貰いましたので」

 

 一瞬、意味が理解できなかったが、数瞬後。クロカンテの僚機にジャイアント・バズの砲弾が直撃していた。

 

――

 

「(慌てるな。ブーストが切れるまで鬼ごっこすりゃあ良い!)」

 

 ブレイクダンスアタックを繰り広げるニャアッガイはマシマの機体を追尾していた。無理にブーストを吹かして距離を取ろうとして、ゲージ管理をミスればあの蹴撃の餌食になる。

 隙を見て軸となっている頭部を狙おうにも、足を大きく広げて回転しているので接地部分に狙いをつけにくい。正に攻防一体の構えだった。

 

「(どうしよう。なんか、私もわけわからないんだけれど!)」

 

 ちなみに、やっている本人が一番混乱していた。ブースト容量は見る見る内に減って行き、このまま残量が0になれば終わりだ。機体は撃破されるだろう。

 この挙動に慌てて、無理に距離を取ろうとしたり、あるいは迎撃を試みたのであれば始末できたが、マシマは冷静だった。一番やって欲しくない、適切な距離を保ち続けるという対応をして来た。

 

「(助けて!!)」

 

 リンが胸中で上げた悲鳴を汲み取ったが如く、明日の方向から砲弾が飛来した。

ニャアッガイに炸裂するかと思った一撃は、今もなお繰り広げられているブレイクダンスで振るわれている脚部へと当たり、マシマへと向かった。

 

「は!?!?」

 

 彼がしていた対応は、間違いなくこの状況においては正しい物だった。確実に勝負を詰める為に保っていた一定の距離を伝って、無意識からの砲弾が軽キャノンに直撃した。ラッキーヒット? いや、違う。

 

「見事だ!!」

 

 クロカンテの称賛と共に爆発音が響いた。リンの僚機の反応が無くなった。動くべきは今しかない! 残り少ないブースト容量を吹かして、軽キャノンへと肉薄した。

 

「これで!!」

 

 ブレイクダンスで帯びた速度を用いての蹴撃がマシマに襲い掛かる。

 だが、彼も諦めては居なかった。自分に襲い掛かる脚部を切り落とさんと、タイミングを合わせてビームサーベルを振り下ろした。軽キャノンの頭部が吹き飛んだ、胴体が拉げた、腕部が折れた。脚部がねじ飛んだ。昨日が停止に追い込まれる一瞬、マシマは勝負を捨ててはいなかった。

 

「クロカンテェ!!」

「委細承知!!」

 

 最後に肩部のビーム・キャノンを放った。ニャアッガイの頭部が一部弾け飛んだ。形を崩してしまった以上、先程の様なブレイクダンスアタックは出来ないだろう。

 こちらに迫り来るクロカンテのドムにダメージは少ない様に見えた。彼の背後では機能停止したサーヤの機体があった。

 

「(来る!!)」

 

 こちらは頭部が半壊していることもあり、相手に照準が定まらない。故に射撃戦は諦めて、接近戦に賭ける。

 

『クロカンテさん。ここで、射撃戦を挑めば勝てそうなんですがね』

『ユーキ。あそこを見なさい』

 

 カルパッチョが指差した先には、砲身が曲がったジャイアント・バズが二つと原型をとどめていないザク・マシンガンの残骸があった。

 

『アレは。サーヤさんとクロカンテさんの?』

『多分、最後の力を振り絞って射撃武器まで潰したんでしょうね。だから、このクロスファイトは必然よ』

 

 ドムの巨体が迫り来る。近接戦に強く設計されているドムに勝てるかどうかは微妙だがやるしかない。と考えていると、リンの画面が光に覆われた。

 これは別画面で見れば分かるが、クロカンテが放った拡散ビーム砲により、視界を奪われていた。適当に動いた所で避けられる訳が無い。

 

「(勝った!)」

 

 クロカンテがヒート・サーベルを振り下ろそうとした矢先、ニャアッガイが跳んでいた。アラタのマチュッガイがやった様に相手を蹴り飛ばす為ではなく、高みを目指す様な跳躍だ。

 

「リン!!!! いっけぇえええ!!」

 

 今は観戦者となっている姉の声が、下の階から響いて来た。リンはここから繰り出せる技を知っている。敬愛する姉が愛用する、ゴッドガンダムの兄弟機が得意としている必殺技。

 ニャアッガイの全身にスラスターが取り付けられている訳ではないので、背面のブーストを一気に噴かした。

 

「PlaZma! アタァアアック!!」

 

 アイアンクローを展開した両腕を突き出して、クロカンテのドムに目掛けて突っ込んだ。既にヒート・サーベルを振るっている以上、回避挙動を取ることはできない。ならばと、突っ込んで来るニャアッガイを見据えた。

 

「来い!! 三枚下ろしにしてやる!!」

 

 振り下ろしたヒート・サーベルとニャアッガイのプラズマアタックがぶつかり合う。ドムも背面のスラスターを吹かして拮抗し、ニャアッガイも同じ様に対抗する。

 アイアンクローが溶け出し、ヒート・サーベルにもヒビが入る。バキリと音が響いた。ニャアッガイの爪が欠けた、だが腕は2本ある。

 

「いっけぇええええええええ!!」

 

 残されたアイアンクローの先端がヒート・サーベルを突き破った。そのまま破砕し、クロカンテのドムを貫き、引き裂いた。

 

「君達、姉妹に敗れるとは、な」

『勝負あり!! まさかの番狂わせです! 勝ったのは『リン・サーヤ』ペアです!』

 

 もしも、自分の前にアラタ達の試合が行われていなかったら。もしも、マシマがガン逃げ戦法を取っていたら、もしもサーヤが機転を利かしてこちらにジャイアント・バズを撃ってくれなかったら、それが上手く弾けていなかったら。

 あまりに偶然と幸運が重なった勝利だった。勝った、とは思えなかった。状況と幸運が辛うじて繋げてくれた結果に、リンは時間を置いた後。歓喜の声を上げていた。

 

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