GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
「アラタ君。嬉しそうだねェ?」
「番狂わせ。って言う外無いな」
通話越しでもカオスのにやけた顔が想像できるようだった。ひょっとしたら、自分も同じ様な表情をしているかもしれないとアラタは思った。
マシマ・クロカンテペアとは実力も経験も大きく差を付けられており、ジャイアント・キリングが起きることもないと考えていたが、蓋を開けてみれば順当な展開など、容易く打ち破られていた。
「何より嬉しいのはさぁ。彼女がやっていた挙動、私がやったことも含めて色々な人達の技や動きを吸収しているってことだよね」
カオスのドラッガイがやったブレイクダンスアタックは分かりやすいが、他にも相手の攻撃を利用して、ダメージを与える戦法は第1回戦でマシマがやっていた物だし、最後の突進攻撃はミサのブレイジングガンダム、あるいはアザレアブレイジングを模した物だろう。
「GBBBBが生み出した、ビルドファイターってことか?」
「一つ忘れているぞ。GBBBBと君達と過ごした時間で、だ」
既に彼女とは何度か対戦した覚えはあるが、このクラバトの形式に限って言えば、どうなるかはアラタも想像が付かなかった。
「2人共。良い話をしている所悪いけれど、次は僕達とだよ」
キュラキュラキュラと、ズゴックの胴体兼頭部にガンタンクの両腕と脚部でビルドされた、丹生のズゴ・タンクが姿を現した。
1年戦争におけるジオン・連邦の技術を満遍なく凌辱する冒涜的なデザインであったが、不思議とGBBBBではしっくりと来る物があった。
「丹生君のデザインは何時だってイキイキしていていいよね。流石、アラタ君の先輩だけにあるよ」
「は? コイツに先輩として尊敬できる所無いんですけれど?」
「色々とアドバイスをしてあげたのに酷い後輩だ」
男3人が歓談を交わす中、コウラは輪に加われずにいた。
アラタは交友の輪を広げ、自由なビルドを手に入れた。初心者だったハズのリンはマシマ達を撃破する程に成長した。丹生も蟠りを捨てて、今では軽口を叩き合う程の仲になったと言うのに、自分は何も変わっていない。
「先輩?」
「え? あぁ。良い試合にしましょう」
気の抜けた返事だった。アラタも何となく察してはいたが、なんて声を掛ければ良いか分からずにいる中、丹生が言った。
「コウラ。また、戻っている。ちょっとこっちに」
ズゴ・タンクは青軽キャノンと一緒に遠ざかり、個人宛のVCへと切り替えていた。口を開いたのはコウラからだった。
『正直に言うと。なんか、宙ぶらりんというか。楽しくないというか……』
『知っている。だって、コウラの機体からやる気が感じられないもん』
軽キャノンを作ったのは良いが、マシマの物と比べると完成度は低いし、ガンブレ学園で使っていた『ガンダム・サファイヤ』を惰性で再現した様な印象を受けていた。
『でも、ジークアクスは楽しんでたじゃん?』
『それは、そうだけれど……』
『人気者なアラタ君には構い辛いし、面倒見てやっている後輩ズはポジティブに先に進んでいるんだから、陰キャ正論マンのコウラを相手にしてくれる人が居なくなったから、GBBBBが面白くないとか?』
『は???』
図星を突かれたが、落ち込むより先に怒りが来た。いや、自分を奮い立たせる為か? という気遣いが見て取れなかったことも無いが、何より先に感情が噴き上がっていた。
『今更、分かり合おうとか。そう言う相互理解をしなくても良いでしょ? コウラの持ち味、僕はちゃんと知っているから』
『何よ。言ってみなさい』
『ソロモンの魔女(笑)』
コウラは少々の間無音になったかと思ったら、次の瞬間。丹生のスピーカーから爆音が流れた。何処から拾って来たか分からないが、汚く野太い不快感を煽る物だった。
『みみこわれる』
『そうね。アンタの言う通りよ、ちょっとセンチになっていたわ。勝負なんて相手に屈辱と敗北感を与えてこそよね』
『>幾ら何でも吹っ切れ過ぎだろ』
今まで、内側に向いていた攻撃性を外側に向けることには成功したらしい。果たして、本当に良かったかどうかはさておき。
『さぁ! 本日、第2回戦ラストの試合! 『シーナ・ドーラ』ペアを圧倒し、本日2回目の試合となる『アラタ・カオス』ペアに立ちはだかるは! リアルでも知り合いという2人! 『ニュー・コウラ』ペアです! 明日の顔合わせは気まずくならないでね!』
『勝敗次第で気まずくなる時点で、あんまり仲いいと思えないんですよね』
どうにもカルパッチョに対して厳しいというか、プロ所属とは思えない位に塩対応が目立つユーキなのだが、これが微妙に受けているんだから分からない。
コウラの青軽キャノンを除く3機はイロモノ揃いだ。かくして、試合が始まり4機がフィールドに降り立った。1試合目の様に詰め寄ってからの激しい白兵戦か、あるいは熾烈な射撃戦が始まるかと、誰もが思っている中。丹生のズゴ・タンクは青軽キャノンを担ぎ上げていた。
「ニュー! アレをやって頂戴!」
「オッケー!!」
1回戦の時に見せた、フレンド・ウェポンアタックを行うかと思いきや、ズゴ・タンクは青軽キャノンを頭上高くへと放り投げた。投擲された機体は空中で姿勢制御を取り、ブーストを吹かして更に高度を上げていく。
『ちょっと、コウラちゃん? 嘘でしょ? コレ、イベントよ?』
『なるほど、あの時は僕達に向かって投げて来ましたけど、本人が乗り気ならこう言うことも出来るんでしょうね』
何をするか察したカルパッチョは声を詰まらせ、ユーキは何が起きるかを想像でき、同じ様に試合を見ていたサーヤも言った。
「軽四ミサイラーの構えですね」
「どういうこと?」
リンが抱いた疑問は間もなく解消されることになる。フィールドの限界高度まで上がったガンキャノンは地上に向けて、手持ちの火器を兎に角ぶっ放していた。
いずれも攻撃範囲が広かったり、ある程度の誘導性を持つ武器であったりと。射撃距離の開きを埋めるようなチョイスだった。
「おいおい! 先輩、マジかよ!?」
「マジだよ。アラタ、忘れた? バトルトーナメントで皆が熱いぶつかり合いをする中、引き撃ちをするような奴とコンビを組んでいたんだよ?」
ズゴ・タンクもまるで最初から有効射程距離で戦うつもりが無いと言わんばかりにガン逃げの引き撃ち戦法を取っていた。コウラも限界高度近くに居るので、狙いに行ける訳がない。
「いやぁ! なるほど、コウラ君。アレでも遠慮していたんだね! ちょっと、コイツは予想外だ!」
カオスも笑うしかなかった。今回のクラバトというのは、そもそもイベントや催しの一環だ。当然、勝敗は気にするところではあるが楽しく、面白く遊ぶことが第一の目標だ。
熱いぶつかり合い、あるいはネタと思える挙動。正面からのバトルが重視される中、彼女達はあろうことか塩試合になりかねない戦法を取って来たのだ。
「アンタらアッガイの武装にねぇ。長距離射撃武器が無いのも知ってんのよ!」
このゲームは格闘モーションなどで制止中はスラスター容量が回復する。時折、空中で近接武器の素振りをしながらブースト管理をしつつ、青軽キャノンは延々とミサイルと砲弾をばら撒いていた。
もしも、上空にいるコウラにレティクルを定めようものなら、地上でガン逃げする丹生の機体から完全に目を逸らすことになる。あまりになりふり構わない戦法だった。
『凄いですね。単なる引き撃ちかと思いきや、お互いがお互いの狙いを外させる為に、相手に多大な負荷を掛ける戦い方をしている。行儀はよくありませんが、よく考えられた戦法だと思いますよ』
『どうやら、効率厨程度の存在だと思っていたけれど、甘かったわ。コウラちゃんは相当ロックだったみたいね』
ユーキが淡々と解説を続ける中、カルパッチョは対応に追われていた。配信のコメントがやや荒れ気味になって来たので、管理が忙しくなっていた。
「うーん。不味いねぇ。このままだと降りて来ないねぇ!!」
もしも、覚醒が使えたら。カオスはライトニング覚醒を用いて一気に接近できるのだが、そうはいかなかった。ズゴ・タンクも只管にミサイルをばら撒いては引き撃ちに専念している。
「いやぁ、思い出すなぁ。前生徒会長相手にも同じような戦法やったの。腕前のあるプレイヤーを仕様の隙を突いた方法で倒すのは楽しいよねぇ!」
「この外道がーッ!!!」
アッガイの射撃武器と言えば腕から出るメガ粒子砲位なのだが、連射性能が高くない為、射撃戦はあまり得意としていない。
片や、ズゴ・タンクはガンタンクの両腕に取り付けられたポップミサイルランチャーをガンガン撃って来るし、上空にはバズーカとミサイルランチャーを延々と垂れ流して来るガンキャノンが居る。
「アラタ! 私、分かったの! 私が求めていたのは! 勝つ為の戦い方だったのよ!!!」
「イェイ、イェイ。コウラが輝いているよ!」
ニューも楽しそうにガン逃げしていた。カオス達は思いもよらぬ苦戦を強いられていた。翻せば、それだけコウラ達の戦い方が『勝つ為』の物であるが故なのだが。
『あああああああもうやだああああああ!!!』
結構コメント欄が荒れて来たので対処していたカルパッチョがいよいよデスボイスと共に音を上げ始めていた。先の2試合目が陽だとすれば、こちらは陰とも言える戦いのギャップ故に、波乱が巻き起こっていた。