GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】   作:ゼフィガルド

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EX2:正式サービス開始! 17 ※ジークアクスのネタバレを含みます。

『勿論、見に行く! こういう映像は大体本編に繋がる物で……』

『私も。今度ドーラさんと一緒に見に行く約束をしましてね』

 

 アラタやシーナを始めとして、ビアンカ内でも追加映像の件は話題になっていた。今や、ガンダム好き達の話題と言えば、ジークアクスおよびビギニングだ。

 

『クラバトの方も次回は決勝戦やしね。日程は何時になるんですか?』

『まず、追加映像公開日は避ける。絶対に話題がそっちに傾倒して、ウチが目立たなくなるから』

 

 タオからの質問に答えつつ、もしも、案件を飲んだ場合。試合の日程は運営側の方で決められるとは考えていた。

 では、蹴った場合はどうするか? ジークアクスのネタバレが解禁された時の様に2週間後か。流石に長すぎる。

 

『少なくとも、公開してから数日は避けた方が良いよな。コメントでもネタバレする奴は居るだろうし』

『数日は開けたいけれど、問題はどれ位にするかよね』

 

 マシマの意見は配信者として頭が痛い物だ。幾らネタバレ厳禁と言っても、リスナーの1人か2人が漏らしてしまえば、我慢できずに触発されて……と言うことも考えられる。

 

『じゃあ、公開日前に行うのは?』

『それは駄目よ、コウラちゃん。間が空いてなさすぎる』

 

 本音を言うと、案件を呑んだパターンというのも考えて、直ぐに決めることは避けたかった。あまりに色々なタイミングが重なり過ぎている。

 

『無難に行くと。追加映像が公開されてから1週間後とか? 公式からの通達があるかどうかわからないけれど、本編と違って追加映像位なら1週間で大丈夫じゃない?』

 

 最も妥当な意見を出して来たのはミサだった。程よく、公式から投下されたネタの熱量も残っており、配信間隔としても申し分ない。自分がやるとすれば、それ位になるだろう。

 

『もう少しだけ考えさせて。追加映像次第だってことで一つ』

 

 実際は案件をどうするか次第なので、カルパッチョはお茶を濁すことにした。

 さて、話題を出しても問題無さそうな空気は作れた。ここで彼女は自身の考えを整理することにした。

 

「(まず、GBBBBから依頼が来ているって話はしちゃ駄目なのよね。案件は漏らしちゃ駄目だし、仮に話したら茶番感が出ちゃうし)」

 

 サプライズを目的としているのだから、事前に教えてしまっては意味が無い。

 何よりも、この事を発表してクラバトの決勝戦に身が入らなくなるという事態はもっと避けたい。

 

「(かと言って、勝手に私だけで話を進めたら、クラン内で顰蹙を買う可能性があるしね。……今の時点で、かなりやらかしているけれど)」

 

 運営が自分に話しを持ちかけて来たのは、そう言うことだろう。

 正直に話した所で、今回のサプライズが受け入れられるとは考え辛い。というのは、このクラバトにおける彼らの勝負を見ていれば分かることだ。これだけ熱量の入ったバトルに横槍を入れるのは無粋が過ぎる。

 そこで、彼らは今回の企画を立てた自分と交渉することにしたのだろう。蹴られたとしても、カルパッチョが口外することが無ければクランメンバーから顰蹙を買うこともないし、万が一飲み込むことがあったとすれば、それは案件を呑んだ自分の責任になる。

 

「(それに、現状は蹴った所で損は無いのよね)」

 

 飲むつもりが無ければ丁寧に断るだけで良い。別に彼らが悪評を広めることも無ければ、GBBBBで何かしらの制限が課せられることもない。

 だが、呑み込んだ際のメリットはある。まず、第一にGBBBBで真っ先にジークアクスという最新タイトルの実装機体を動かしている動画が流せる。確実に再生数は伸びるだろうし、収入も増える。

 そして、関連企業への就職。一日中家で動画を編集したり、台本を書いたり……それが実を結ぶかどうかも分からない。という不安定な状態から抜け出すことが出来る。家族からの視線も変わる。

 

「(真っ当に稼げるようになったら、他にも色々と出来るだろうし、柄に無くお洒落とかにお金を使ったりもして……。いずれ、GBBBBもやらなくなって)」

 

 スーツを着て、同僚と一緒にランチを取って、他愛のない話で盛り上がって。やがて気の合う相手を見つけて、お付き合いとかを始めたりして、結婚とかを考えたりして……。

 企業から持ち掛けられた交渉が魅力的に思えるのは、翻せば現在と将来への不安があるからに他ならない。

 

『でも、カルパッチョさんがこんなに沢山のことを考えて動画配信をしているって、ちょっと意外だったかも』

 

 悩んでいる内にリンがメッセージを打ち込んでいた。決勝戦の主役となり得るかもしれない少女だが、どうにもガンプラバトル以外には疎い所が多い様だ。

 

『あのね。映像を垂れ流すだけじゃ、動画なんて面白くならないのよ。トークや編集、出演者との打ち合わせも重要になって来るし、コメントがあれない様に管理したり、SNSでの広報とかもあってね……』

『メッチャ早口で喋ってそうっすね』

 

 セリトから冷やかされようが、ここら辺はカルパッチョにも拘りがある所だ。

 ヤレ、可愛いアバターを使えば良いだの。ヤレ、女だからって再生数が稼げると考えているだとか。そう言う、嘗めた真似して挑んで来る奴は彼女が最も許せない物だった。

 

『それだけ考えはあったのに。どうして、カオスさんに謀反を起こしたの?』

 

 リンのみならず、皆も疑問に思った。カルパッチョはアホなこともするが、実際のスタンスはコウラを更に突き詰めた物になっている……ハズなのに、どうして公の配信で謀反劇なんか起こしたのか。

 

『いや、何かノリでフリーダムフリートを転覆したら、面白いやろうなぁって』

『急にIQを下げるな』

 

 事件に巻き込まれ、共犯者となってしまったアラタからの言葉が重かった。

 だが、あの動画は自分が撮って来た動画の中でも最多再生数を記録している。この上なくGBBBBにフィットしていたのだろう。

 

『一部では、ビアンカへの移籍に託けたイベントだった。という話があるそうですが、どうなのでしょうか?』

 

 今まで、口を閉じていた文まで聞いて来る始末だった。これに関しては、断言できることがあった。

 

『いいえ。打ち合わせも何も無い。全部、事の成り行きで拾われたわ』

『よく、これを拾う気になったわね』

『結果的に、こういう催しも開いてくれるようになったから……』

 

 コウラからのあまりに辛辣なメッセージにアラタがやんわりとフォローを入れていた。自己弁護をする様に、カルパッチョが便乗した。

 

『そうよ。私の配信もあってビアンカの知名度は上がったし? SNSとかでも話題になることが増えたからね。皆はアラタの慧眼と私に感謝するのよ』

『なんで、コイツ。こんなに偉そうなんだ?』

 

 マシマが堪らずツッコミを入れていた。拾われた分際で、どうしてコイツはこんなにも尊大なままなのだろう? と、メッセージに含まれている気がした。

 

『でも、実際にクラバト配信は盛り上がっていますしね。きっと、私達だけでは考えてもやらなかったか、あるいは。クラン内で少しやって終わる位だったと思いますよ。ドーラさんと色々とお話する機会も増えましたしね』

『こんだけ大規模で派手にやる様なったんは、カルパッチョさんの企画ありきやしな。僕もフドウ先生ェと組めたんは凄い良い経験やったわ』

 

 てっきり、マシマみたいな反応が返って来るかと思っていたので、感謝を述べられたので、感情の行き先が分からなくなっていた。

 

『私も皆にリツキとサーヤちゃんを紹介できたし。……まぁ、マシマに負けたのは悔しいけれど』

『再戦は何時でも受け付けているぜ?』

『俺はグスタフちゃんと前から親しかったから、あんまり関係ないし?』

 

 思い付きで始めたイベントだったが外部だけでなく、内部からも好評だったらしい。リスナーから賛辞を浴びたりするのには慣れていたが、身近な人間から感謝されることはどうにもむず痒かった。

 

『私もアラタと楽しい勝負が出来たし』

『そうなのですか? 私が分析した限りでは、ゲームシステムの穴を突いた上での、仕様に則ったとは思えない戦い方だったと思うのですが』

『そんな穴を残すシステムに対する問題定義なのよ!!』

 

 文からの質問にヒステリックに返しているコウラも多分満足はしているのだろう。……あの時のことを思い出すと、暴言が出そうになったがグッと堪えた。

 

『私もサーヤちゃんと一緒に色々とガンダムの話をしたり、AC6の話をしたりとか。ビアンカ内の誰とも違う話が出来て面白いし』

『やっぱり、俺は一度組んでみたいと思っていた相手だからスッゲー楽しいかな。だから、リン。決勝戦は全力で当たるから』

『うん。私達も全力でやるからね!』

 

 流れて来るメッセージから彼らの溌溂とした声と表情が見えた気がした。

 どうして、これらがいずれ無くなる物だと諦められるのか。今。この胸中に沸いた気持ちを裏切ることはあり得なかった。

 

『好評で何よりね。私達が始めた、私達だけのクラバトなんだから、最後まで良い物にしてよね。アラタ! リン!』

『当たり前だよ!』『勿論!』

『試合のスケジュールは追加映像が公開されてから1週間後でよろしく!』

 

 だから、誰かに幕を引かれたり、トリを持って行かせるつもりは無くなっていた。チャットをしている傍ら、彼女はGBBBB運営チームへと返信する文面を打ち始めていた。

 

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