GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】   作:ゼフィガルド

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EX2:正式サービス開始! 18 ※ジークアクスのネタバレを含みます。

「そうか。彼女は案件を断ったのか」

「あーあ。折角、モデリング担当の奴らが頑張って、間に合わそうとしてくれたのによぉ~」

 

 自社の提案が断られたと言うのに、タクマは嬉しそうだった。カドマツも口では嘆いているが、声色も表情も楽しそうだ。

 

「それに見ろ。ビアンカの嬢ちゃんからも告知が来たぞ。クラバトの決勝戦は一週間後みたいだ」

「特別映像も公開されたしな」

 

 特別映像の内容はタクマも知っている。内容的には本編ほどネタバレに気を遣う物では無いと考えていたが、それでも気にする者はいるだろう。

 

「4月8日から本放送が始まるんだから、それまでにバトルトーナメントも終わらせないと、運営もイベントを組み難いだろう。晴れて、エキシビションマッチの予定が無くなったんだ。お前もそっちに注力したらどうだ?」

「俺が併せて訓練していないとでも?」

「おぅ。てっきり、6年ぶりに嬢ちゃんと付き合えたことが嬉しくて、令和にシローとアイナをやってんじゃないかと思っていたぜ」

「よく分かったな!」

 

 軽口に対して軽口に返せる位には上機嫌だった。内心、そろそろウザく感じて来ていたのだが、2人の関係を間近で見て来た者としては我慢するべきだと自分に言い聞かせていた。

 

「そこまでやってんなら、もう結婚とか籍を入れるのも考えているのか?」

「考えてはいるんだが、お互いの事情を考えるとうまくやって行けるかどうか」

 

 これに関しては、むしろカドマツは安心していた。このまま恋愛感情に突っ走って結婚する方が危うい。むしろ、危機感を感じて将来の不安を想像できる位の方が健全であるとすら考えていた。

 

「やっぱり、アレか? ビルドファイターなんて安定していない職にいることを気にしているのか? お前はタイムズユニバースのお抱えなんだ。ウィルに相談すれば、結婚生活に都合を付けられる位の配慮もして貰えるだろう?」

「既に何度か相談はしているし、後進のアドバイザーやコーチ。ミスターの様なご意見番や司会相手としてのポストは用意されているが……」

 

 彼はポケットからガンプラ用のプロテクタースーツを取り出していた。

 タクマはまだ20代だ。仕事を捨てて、家庭を取るには若すぎる。彼自身にもビルドファイターとして邁進したい気持ちは残っている。

 

「じゃあ、嬢ちゃんが家庭に入るって選択は?」

「いや。ミサも仕事を頑張りたいと。何より、俺達と違って彼女は諦めていない」

「宇宙開発、だったな。タイムズユニバースの関連企業だが」

 

 ミサが何の仕事をしているかは話を聞いている。現在、宇宙開発は人類が熱を上げて進めている分野であり、この調子ならば本当にガンダムみたいな世界が訪れる日も遠くは無いだろう。

 

「将来的には、子供達と一緒にガンプラを組み立てて……とかやりたいな」

「そこまで妄想するのはややキモいが、出来るだけ体力がある内にやっといた方が良いってのはあるかもな。考えるのは大事だが、ある程度の世知辛さを跳ね飛ばせるのは、若さの特権だ」

「うーむ。ガンプラバトルみたいにやることが分かり切っていればなぁ」

 

 ガンプラバトルにおいては類を見ない程の強さを見せる男も、人生経験という面ではまだまだ若造だった。

 

~~

 

 ガンブレ学園『サイド0』。普段は、ガノタ特有の猿叫等が響く所だが、今日はシンと静まり返っていた。別に先日の試合で負けたコウラが不機嫌を引き摺っていたとか、そう言う訳じゃない。

 

「新田君。ここまでにしよう。僕も疲れた」

「あざっす」

 

シミュレーターから出て来た丹生は疲れている様だったが、アラタからは疲弊した雰囲気は一切伝わって来なかった。手には、クラバトで使用しているマチュッガイが握られている。

 

「アラタ。決勝戦に向けて詰めすぎよ。それに、長時間のシミュレーター占領も避けて欲しいんだけれど」

「すいません」

 

 コウラから注意が入ったのは、それだけ彼が根を詰めているのを見かねてのことだろう。彼からの応答がやや生返事気味なのが気になったが。

 普段は、暴走しがちなガンブレ学園の愉快な面々に対するストッパー役である彼からただならぬ雰囲気が放たれていることもあって、皆も閉口していた。代りに、距離感バグ女とも言えるユイへと視線が向けられていた。

 

「(無理、無理)」

 

 期待には応えられぬと彼女も首を振っていた。ここまで気を張っているアラタを見たことは殆ど無い為である。誰もが諦めかけていた時、部室の扉が開かれた。入って来た人物を見て、皆が驚いていた。

 

「おーっす、久しぶり! ……って、なんだ。この空気?」

「ショウゴ?」

 

 入って来たのは、モリタ・ショウゴだった。唐突に退部したので、部員達からは何事かと思われていたが、丹生やアラタなど一部の人間だけは理由を知っていたので、驚いていた。

 

「先輩。帰って来て、大丈夫だったんですか?」

「ちゃんと話は付けて来た。色々と回ったり、働かされたりもしたけれどよ。『反省して、ちゃんと謝罪に来てくれたのは君だけだった』って、向こうの人達にも言われてよ。1つ、ケリは付いた」

 

 先程まで強張っていたアラタの表情が幾らか和らいでいた。やはり、彼にとっての先輩は、この男であるらしい。

 

「戻って来るなら一報入れてくれたらよかったのに。部活に復帰は?」

「いや、休学状態が解けただけだ。部活の方には迷惑掛かるかもしれねぇし、復帰はしねぇ」

 

 前回の件は、彼の中でも引き摺っているらしい。すると、アラタは何かを思いついたように彼の腕を取った。

 

「その様子だと、暫くガンダム摂取して無さそうだし。一緒にジークアクス、見に行きませんか?」

「は? いや、お前らならもう見ているんじゃ……」

「今日は特別映像の公開日だから、見に行きましょうよ」

 

 彼からの返事も待たずに連れ出していた。根を詰めていたアラタが気晴らしに行くこと自体は、丹生達も賛同資する所なのだが、コウラが渋い顔をしていた。

 

「なんで、アラタは私と一緒に行こうとはしないのかしら」

 

 そう言う所じゃないかな? と言いかけたが、丹生は言葉を呑み込んでいた。

 

~~

 

「特別映像ってこう言うことだったのか。フフフ」

「なんか、久々にガンダム見た気がするな」

 

 余程、禁欲的な生活を送っていたのだろうか、ショウゴはゆっくりとジークアクスの内容を噛み締めている様に見えた。

 

「浦島太郎的な先輩に言うと、今はジークアクス熱で盛り上がっているんですよ。やっぱり、新作は心が躍りませんか?」

「なんで、何回も見ているハズのお前のテンションのが高いん?」

 

 特別映像を見て更なる期待を高めている、アラタのハイテンションぶりはショウゴも引く位のレベルだった。

 

「放送日も決まったし、ジークアクス熱は高まる一方でね……」

「その割には、部室に入る前のお前。滅茶苦茶不機嫌だったように思えっけど、なんかあったのか?」

 

 どうやら、入るまで結構な時間。様子を伺っていたらしい。映画を見ている内に考えが色々とまとまったのか、アラタはポツポツと語り出した。

 

「ジークアクス関係で色々とあって、GBBBBで普段絡んでいる子と決勝戦で対戦することになったんですけれどね」

「あの妹みたいに思っている。って、言っていた相手か?」

「そうそう。でも、なんだか、最近は自分でもどう思っているか分からない。って、この間、リアルで会ったネットのフレンドに言おうとしたら遮られたんだ」

「だろうな。面倒臭ェだろうし」

 

 実際の所、この相談内容を聞けば、彼らが早とちりだったのは直ぐに分かることなのだが、変に親心が働いてしまったが故の、ガンダムでもよくあるディスコミュニケーションだった。

 

「周りにはバカップルが多いのに、俺にはよく分からない。そも高校生が中学生に恋愛とかって、ヤバくないっすか?」

「お前が見た、ガンダムを思い出せ。20歳のおっさんが16歳の少女に母になってくれるかもしれなかったなんて言っているんだぞ」

「きっしょ!!!!!!」

 

 45年もガンダムを支え続けた男に対して、あんまりな物言いである。ただ、あくまで、アニメ・漫画のサブカルチャーの話なので現実感は少ないと思われない様に、ショウゴは付け加えた。

 

「世には2桁離れて結婚する奴もいるんだし、高校生のお前が中学生と付き合っても問題無いって」

「うーん。年齢差による忌避感が無くなっても、そもそも付き合うとかそういうね。何でも、男女の関係に持ち込むのは良くないって思うんですよ」

 

 コイツも大概が面倒臭かった。かつて、ユイにふみなのコスプレをさせようとする位に貞操観念が薄い男には分からない感覚だった。

 

「なんで、男女の関係がダメなんだ?」

「いや……。だって、ねぇ? ウチの部室見て、何か思わないっすか?」

 

 ショウゴの脳裏に過ったのはユイといちゃつく丹生の姿。そして、横でべらぼうに不機嫌になっている女……。

 

「それはそれで不誠実じゃね? 『お前の御機嫌取りの為に、自分は恋愛しません』って。それこそ、嘗め腐っているんじゃ?」

「ご機嫌取りって訳じゃないけれど。なんか、こう。そういう関係ってのがイマイチ想像できないというか」

 

 普段は不躾な位に色々と話して来るくせに、今日に限っては滅茶苦茶ウジウジしていて、ショウゴもややイラッと来ていた。

 

「そんなに言うなら、俺じゃなくて本人に話した方が良いだろ」

「でも、話してさ。『うわ、コイツ。私のことをそういう目で見ていたんだ。きっしょ!』とか思われたり、蛙化現象みたいなことが起きたら嫌だし……」

「大丈夫だって。そう言うときは、俺が笑ってやる。んでもって、一緒に美プラ開発でもすりゃ気も紛れるぞ」

 

 もう少し繊細なことを言うと、そのせいで今まで積み重ねて来た関係が疎遠になるのも嫌だったし、GBBBB内の空気が微妙になるのも嫌だったが、そう言うときの逃げ道がある。と知れたのは、デカかった。

 

「……やっぱり、先輩が帰って来てくれて嬉しいです」

「お前が男じゃなきゃ、ルート突入しているぞコレ」

 

 どういう訳か、年上の男性から好感度が溜まり易いらしい。その後も、2人はジークアクス関係のグッズやら何やらを見て回った。……家に帰ったアラタは、マチュッガイに更に調整を重ねていた。

 

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