GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
「正直に言うと、私達がここまで残るとは思っていなかった」
クラバト決勝戦を眼前に控え、最後の調整を行っている中。サーヤが呟いた。
彼女の経歴は参加者の中では異端とも言える物だった。別のロボゲー出身者ではあるが、高いPS(プレイヤースキル)を持っていることもあり、ペアの勝利に大きく貢献していた。
「全部が私達の実力とは言わない。運に依る所も大きかったと思う。でも、チャンスを掴み取ってここまで来たのは間違いないよ。サーヤちゃん。泣いても笑っても、次が最後だからね」
「〆は勝利で飾りたいよね。……所で、この大会って。優勝者には何か賞品とかないの? 電子マネーみたいな」
「急に生臭い話になったね」
あくまで個人主催のイベントなので手に入るのは名誉位だ。そもそも、今から急に用意しろというのも無茶な話である。
「じゃあ、私達の中で優勝したら『ご褒美』とかやってみない?」
「えっと。テスト頑張ったら、スイーツ買っちゃう! みたいな?」
「その通り。私は優勝したら、リンをAC6沼に沈める為にSteamでプレゼントするから。なので、私はレイヴンを増やす為に勝つ必要がある」
こうして、ガンダムの話をする傍ら彼女からAC6という作品についてはよく聞いている。
ジークアクスや水星の魔女等と比べると、かなり硬派でシビアな世界観という印象を受けるのだが、サーヤ曰く。水星の魔女も大概ハードだということらしい。
「もしかして、私に拒否権無し?」
「大丈夫。リンの腕前は傍で見て来た。貴方なら、ランクマも行けますし、ジマーマン振り回す様になるよ」
よく分からないが、多大な期待と信頼を寄せられていることは分かった。では、自分がサーヤに何かして欲しいことはあるかと考えたが、既にGBBBBはプレイしているし、一緒にガンダムも見ている。
「私は特に無いかな。だって、もうサーヤちゃんにガンダムの布教はしているし」
「確かに。じゃあ、自分の中で何か一つ約束をするとか、どう? これに勝てたら……みたいな、本当におまじないのような」
実はそう言ったことなら、何となく思い浮かんでいる。というより、意識していないというのは嘘だ。でも、口に出さなければ何時までもバカ騒ぎしていられるし……という段階は、バレンタインデーの時にちょびっと踏み出している。
「うん。決まった」
「何となく察したので、言わなくても大丈夫」
言い訳を作る為じゃない。アラタに勝てたら、きっと自分に自信が付く。前回の時は誤魔化してしまった想いを、今度はキチンと伝える。
GBBBBを始めてから少しずつ変わって行って、学校も楽しくなって来たし、自信も付いた。だからこそ、ここまで一緒に歩いて来た相手から拒まれるかもしれないという不安もあった。
「飛び出して行こう! 宇宙の彼方まで!」
丁度、このクラバトが開催される切っ掛けとなったジークアクスの主人公。アマテ・ユズリハの様に、挑んで行こう。と、リンは決意をした。
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一方、アラタとカオスも最終調整に入っていた。クラバトの決勝戦は目の前まで来ている。コンビネーションも仕上げ、戦法についての打ち合わせも終えた。正に万全と言った具合だ。なので、少しばかり息抜きをしていた。
「なんだかね。こうして、アラタ君と話していると。実は、今。私は夢の中にいるんじゃないかと思う時があるんだ」
「前にも話していた不満云々の?」
「そう。元・スタッフという立場を使って碌でもないことをしてね。二度とGBBBBに帰って来られない様な、そんな過ちを犯していたんじゃないかって思うことがあるんだ」
何なら、彼がラシードに協力していた未来だってあったかもしれない。今まで好きだった物に裏切られた時の反動の大きさや、憎悪に変わり得るには十分すぎるからだ。
「俺だって、カオスや皆との付き合いがあって、カルパッチョと出会って、付き合いが広がって、こんな催しを開いてくれるようになったんだから」
「そう言ってくれると助かるよ。正直、そっちで迷惑かけていないか。毎日、ハラハラしていたからね!」
多分、アラタが同じ立場にいてもカオスと同じ様な心境になっていただろう。しかし、意外と彼女は大人しかった。
「迷惑を掛けられていることもあるけれど、お互いさまと言うことで一つ」
「大人だねぇ。……と、言いたいけれどさ。実はちょっと無理していない?」
「え? なんで?」
「いや、後々思ったんだけれどさ。この間の上映会の後、私達だけが好き勝手やっていたんじゃないかって」
「あ、それは大丈夫っす。滅茶苦茶楽しかったのはマジだから」
声色から嘘や取り繕いのような雰囲気を感じなかったので、カオスも溜息を吐いていた。
「いや、楽しかったからついつい燥いじゃってさ」
「そう言う風に、素直に感情を出せるって良いことだと思います。周りの視線を気にせずにいられるって」
「……何かあったのかい?」
ここら辺はカオスも薄々と感じていたことであった。アラタは周りのことをよく気遣う。いや、むしろ気遣い過ぎる位だ。ともすれば、それは何処か失敗や不安を恐れている様にすら思えたのだ。
「あ、いや。大したことじゃないんです。俺、ガンブレ学園に入学してから、色々とガンプラを作っても評価されない時期があって。……それで、なんか。自分自身を否定された様な気がして」
多感な時期に自分が心血注いだものが評価されなければ塞ぎこんでしまったり、攻撃的になったり……というのは、往々にしてあることだ。
だが、決して珍しいことではない。自身の創作物が埋もれて評価されない所か、誰の目にも届いていないこともザラにある。中には、まるで気にせず創作を続けられる胆力の持ち主もいるが、そんな物はまれだ。
「気持ち。分かるよ。私も、かつてGBBBBで働いていた頃は似たようなことを覚えていたからさ。色々とアイデアを出したり、企画書をまとめても通らなくてね。『なんで、この素晴らしさが分からないんだ!』って、思ったことは一度や二度じゃない。だからって、卑屈になる必要はない。私なんて、キレて辞めたし?」
「それは社会人として、どうなんすか」
「生活出来ているんだから問題無いんだよ。それに! 私の思い描いた自由なGBBBBは皆が実現してくれている」
チラリと見たロビーでは、あっちこっちにニャアッガイとマチュッガイとドラッガイが出現して、寒中水泳部が出来上がっていた。調子に乗ってスク水ふみなを出したまでは良かったが、スク水サラが出て来た所で全員に緊張が走り、該当者の姿が一瞬で消し飛んだ。BANされたのだろう。
「自由というか無法というか……」
「だが、GBBBBが人気な理由だ。頭の御固い連中が想像していた魅力なんてのは、あんまり望まれていなくて。私が願った自由の方が好まれているというのは、実に痛快さ。だからね、公や周りの評価ばかりを気にしなくて良いんだ。自分の中に在る『無法(カオス)』を大事にしてほしいんだよ。あ、他人に迷惑を掛けない範囲でね」
最後の一文が特に重要である。公序良俗に反した与太者の晒し首が、ロビー壁面のモニタに映し出されていた。
「誰かに迷惑を掛けたりしても?」
「誰にも迷惑掛けていない人間なんていないよ。人の目を気にして、失敗しないことを選ぶより、転んでも自分の気持ちに素直になってみようよ。君は間違えることのない主人公とかじゃないんだからさ」
ストンと、アラタの中で腑に落ちたことがあった。どうして、ショウゴもカオスもここまで堂々として居られるのか。彼らは失敗をして盛大に躓いた。自分みたいに評価されなかったなんて軽い物じゃない。人生を左右する失敗だ。
だけど、そこで終わっていない。失敗してもちゃんと立ち直る方法を見つけて、進んでいる。
「……はぁ。やっぱり、未だ俺ってガキなんっすよね」
「そうだとも。君はまだ子供だ。小賢しい考えなんて止めて、若さのまま行ってみれば良い。――誰かの気持ちに真摯に答えてみるとか。ね?」
すっかりバレていたらしい。周りに気を遣ってばかりだと思っていたけれど、自分は想像以上に周りの人間に思われていたらしい。
「じゃあ、最後にもう一度だけ確認して、今日は終わりにしようか。アラタ君」
「はい!」
本当に、このゲームに参加してよかったと思いながら、アラタのマチュッガイはドタドタとロビーへと出ていた。