GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
『ジークアクスの先行上映がされてから、1ヶ月と1週間が過ぎました。連日SNSは盛り上がり、動画ではジェリドが殴られまくり、何処でも飛び出していきそうな感じになりましたが』
『カルパッチョさん。なんで、そんな局所的なミームを?』
もはや、ユーキが相方枠にすっぽり収まっていることに疑問を抱く者はいなかった。新作のガンダムかと思いきや、古参達すら驚かせたサプライズからの新作への導入。新旧が最も熱く交わっていると言っても良い。
『付きましては、この配信で行われているクラバトも残す所は決勝戦のみとなりました。当初は、ジークアクスに託けたお祭り程度の物でしたが、今や沢山の視聴者の皆さんから応援される程の催しとなりました。最後まで、お付き合い頂けたら幸いです。その前に、前回のバトルを鑑みて一部ルールを追加させて頂きました』
モニタに表示されたのは『非交戦的態度に対するペナルティ』と言う物だった。言わずもがな、コウラ・丹生ペアがやったアレに対する措置だ。
『流石に空中でブースト稼ぎをするなとは言いませんし。しかし、前回のような試合運びは不健全と考え、一定時間以上故意の非交戦的態度が見られた場合は、ペナルティを課させていただきます。さて、折角ですからこの戦いに臨む選手達のプロフィールを改めて紹介させて頂きましょう』
開幕はノリノリだったカルパッチョが急に真面目に喋り出したので、暫くコメントも無くなっていた。まず、姿を現したのはドラッガイ・マチュッガイの2機。アラタ・カオスペアだ。
『我らのクラン『ビアンカ』のリーダー! GBBBBを始めてから日は浅いけれど、覚醒やら何やらを使いこなし短期間で頭角を現した新星! アラタです!』
「本当なぁ。始めたのは、ついこの間だったはずなのに」
厳密に言えばガンプラシミュレーターで動かしたりはしていたので、初めてではないのだが、頭角を現す切っ掛けとなったのはGBBBBであることには間違いない。
『かたや、大規模クランフリーダムフリートのリーダーであり、実力もトップクラスのプレイヤー! カオス!』
「ようこそ皆さん! ぜひ、私達の試合を楽しみ、そして! 糧にして欲しい!」
流石に動画配信されることに慣れていることもあって、振る舞いは慣れた物だった。こう言った素養も合わせて持っているから、大規模クランのリーダーも出来ているのだろうが。
『両クランのトップが手を組んだ! このペアが決勝戦までコマを進めていたのは順当とも言えるでしょう! 結局、このクラバトは順当な結果で終わってしまうのか? いや、そうではない!』
ここら辺は順当過ぎて『せやな』『でしょうね』等の相槌を打つコメント位しか流れて来なかった。あまりに順当だったからだ。
軽い紹介が終わった後、続いて姿を現したのはニャアッガイとキャノンヘッドの2機。サーヤ・リンペアだ。先程とは打って変わってコメントがあふれ出していた。
『片や、このクラバト始まって一番のダークホース! 同期とのバトルに打ち勝ち、対抗馬として予想されていた『マシマ・クロカンテ』ペアも破ったペア! アラタと同じ時期にGBBBBを始めて、ここまで追い付いた! 新星に依りそう流れ星! どちらが先に行くか。リンちゃんです!』
「(は、恥ずかしい……)」
こんなに仰々しく紹介されるとは思っていなかったので、リンはエモーションで反応するのが精一杯だった。
『そんな彼女のマブは何と! 別のロボゲー出身者! GBBBBに舞い込んだワタリガラス! 今回は戦友と共に双璧を超えられるか! より高みに飛ぶのは彼女達か! サーヤちゃんです!』
「届かせましょうか」
散々教授されたこともあり、リンはカルパッチョの紹介がAC6を意識した言葉選びをしていることが分かった。サーヤも満更でも無さそうだった。
『参加者4機の内3機がアッガイですね。これがジークアクス内のクラバトで放映されたら、教育テレビ枠ですよ』
『そんな和気藹々とした勝負が繰り広げられる訳がなァーい! さぁ、最高のMAVはどのペアになるのか。決勝戦、開始です!』
4機がバトルフィールドに降り立った。全機、射撃戦が得意な面々ではない。キャノンヘッドも近距離での撃ち合いを主としているので、遠距離でチマチマ攻撃するタイプではない。
「(とりあえず、牽制して引き剥がしつつ。って感じで……)」
「ここまで来て、定石通りなんて真似は止めようぜ!」
ほぼ同時に、マチュッガイとドラッガイが空中に飛翔して格闘の素振りを始めた。これに対して、直ぐにカルパッチョが叫んだ。
『おぉーっと。アラタ・カオスペア! ペナルティを聞いていなかったのか! このままでは、失格の危険性もあるぞ!』
流石に前回の試合みたいな真似を決勝でやられては堪らないという措置だろう。ただ、アッガイは長距離射撃武器を持っていない。
互いを踏み台にしつつブーストを回復させ合いながら、高高度まで到達するや。2機は丸まった後、背中のスラスターを吹かして隕石めいて突っ込んで来た。
『さしずめ、アッガイ落としって所ですかね? これは必殺の前振りみたいな物だから、引っ掛からないとは思いますが』
『そうね。こういう使い方なら、許容範囲内ではあるけれど』
「サーヤちゃん! 早く逃げ……」
「逆! 固まって! アイツらの同士討ちを狙うから!」
二つの高速物体が迫り来たら反射的に逃げたくはなるが、サーヤは敢えて固まるように指示を飛ばしていた。だが、考えてみれば合理的ではある。
2機は自身を質量武器として突進して来ているのだ。目標が1つであれば、互いに激突して自滅へと導ける可能性がある。
「分かった! サーヤちゃんのこと! 信じるからね!」
リンは多少の迷いはあれど、直ぐにサーヤのキャノンヘッドにピッタリとくっ付いた。上空から落下してくる形なので、器用に別方向からぶつかるなんて真似は出来ない。
落下して来る2機に対して、キャノンヘッドとニャアッガイが持てる火器をぶつけていたが、高速で回転している2機に対して何を撃っても弾かれてしまう。それでも、彼女達は攻撃を続けていた。カオスが叫んだ。
「お見事!!」
示し合わせた様に、ドラッガイとマチュッガイが空中でスラスターを吹かして方向転換した後、着地すると同時に。一気に肉薄してきた。
この襲撃に対して逃げ回る真似をせず、正解とも言える判断を取ったサーヤの胆力も大した物だったし、彼女を信じて一ヵ所に留まれたリンも負けじ劣らず。そして、彼女達の根性を見抜いて、直ぐに着地地点を切り替える操作技術と直ぐに近接戦へと切り替える、カオス達の対応力も相応の物だった。
「サーヤちゃん! そっちお願い!」
「了解!」
サーヤがドラッガイに向かって吶喊し、ニャアッガイとマチュッガイがぶつかり合って取っ組み合っていた。
『これは実質、ジークアクスの冒頭シーンですね。ミッドナイト・リフレクションを流しておきますか?』
『あのマチュッガイ。ジト目になってそうね!』
グラフィックの乱れなのか。マチュッガイのモノアイ部分の上半分が欠けて表示された為、怒っている様なジトっと見ている様な感じになっていた。
2機ともクローを出さずに殴り合っているのは、相手の体に刺して動きが止まったら最後。キツイ一発がぶち込まれるのを分かってのことだろう。マチュッガイがニャアッガイを蹴り飛ばすという、割とバイオレンスな光景が繰り広げられていた。ゴロゴロと転がって立ち上がった後、リンが言う。
「お急ぎですか?」
「別に。急いでいませんよ!」
もしも、2人の言葉を正しく補完するなら、目的語として『勝負を』という言葉が入っていた所だろうが、敢えて抜かしていたのは作中の会話を再現する為だろう。決勝戦はまだ始まったばかりだ。