GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
片や、国民的に有名なお世話型ロボットを模したアッガイ。片や、ハイスピードアクションロボアクションゲームのナンバリングタイトルであり、近年爆発的に人気を広げた作品に出て来た重量機体。
どちらもガンプラのパーツで再現はされているが、出身はガンダムではない。だが、これらの機体が活躍しているのは正にGBBBBならでは言える。
「サーヤくぅん! 君は別ゲー出身者だったねぇ! どうだい? GBBBBは楽しめているかい!」
「おかげさまで。この間、1stを見始めたんですけれど、ビックリしましたよ。まさか、あんな始まりだったなんて」
「嬉しいねぇ!」
ドラッガイの両腕からは秘密道具もかくたるやと言わんばかりにミサイルやメガ粒子砲が飛び出していくが、キャノンヘッドは短距離のステップを駆使して、射撃武器の誘導を切りながら、重量級の見た目からは想像できない軽快な挙動で回避していた。
サーヤも返す一撃でザク・マシンガンやジャイアント・バズを撃ち返していたが、いずれもカオスを捉えるには至っていない。
「(凄いな、この娘。私の攻撃が出てから回避している。動体視力と反射神経が良いのだろうな)」
「(さっきから攻撃をしようにも事前に避けられるか、攻撃される場所を誘導されている感覚。この中速のゲームシステムを熟知しているんだろうな……)」
サーヤがスピードで翻弄する中、カオスはベテランプレイヤーのテクニカルな動きで捌いていた。互いが互いに張り付き、相方の援護に回る余裕もない位に接戦を繰り広げていた。
キャノンヘッドは射撃戦に特化している機体であり、懐に潜り込まれない様に距離を取りつつ、弾幕を形成することが求められていた。
「(流石に、また空中から飛翔して接近するって手は使えないね)」
先もやった強襲戦法は一定の距離と協力者がいたから出来た物であり、今やった所でハチの巣にされて終わるだけだ。
では、防御力を高めたローリングアタックで一気に詰めれば良いかと言われたら、そうではない。
「(流石に愚直に突っ込んで来る真似はしませんね)」
もしも、突っ込んで来たら直ぐに背面へと回って一斉砲火を叩きこんでやるつもりだった。とは言え、チマチマとした削り合いであるなら手数の多い彼女の方が有利だ。捉えるには至っていないが、少しずつカオスの機体はHPが削られていた。
『試合は膠着状態に入っていますが、ここからどう動くでしょうか。カルパッチョさんはどう思いますか?』
『凄い! ユーキが塩対応じゃなくて真面目に司会進行をしている!』
『戻しましょうか?』
『あ、その調子でお願い。そうね、今両陣営とも拮抗が崩れかけているから、もうそろそろ動き出すんじゃないかしら?』
射撃戦でカオスがジワジワと削られている中、マチュッガイとミッドナイト・リフレクションファイトを繰り広げているニャアッガイは割とボコボコに殴られていた。
「(あ。ダメ、やっぱり強い!)」
分かり切っていたことだが、タイマンに持ち込まれた時はプレイヤースキルの差が如実に出て来る。リンもマシマやクロカンテなどの有力プレイヤーに打ち勝つ程の実力を身に着けていたが、アラタは更に先を行っていた。
「キラキラキラキラキラキラキラキラキラ!!」
劇中でマチュがときめかせていた謎のニュアンスを掛け声にして、ラッシュを繰り出していた。ニャアッガイがボコボコと凹んで行き、スマホの修理代も過失相殺になりそうなレベルの損害を受けていた。
『もしかすると、これはジークアクスにおける展開を先取りしているのかもしれませんね』
『嫌よ。マチュちゃんがニャアンちゃんをボコボコにする展開とか。そう言うバイオレンスな展開はちょっと』
『あの。ガンダムなんですけれど』
ビルドファイターズとは違うので、バイオレンスな展開は普通にあり得るものだとは思うのだが、訪れて欲しいかどうかはまた別の問題である。
それは兎も角として、カオスよりもずっと追い詰められていた。少なくとも、このまま殴り合いを続けていては撃破されてしまうと踏んだのか、ニャアッガイは少しだけ下がって、逆立ちをして高速回転を始めた。
「カオスのやっていた奴か。なら、どっちが強いか!」
常人ならば、ここで距離を取って射撃武器で始末するべきだと考えるだろう。だが、同じアッガイを使っているアラタには分かった。
このブレイク・ダンスアタックは並の射撃武器なら弾かれてしまうのだと。射撃武器に乏しいアッガイでは止めるのは不可能と踏んで、マチュッガイも同じ様に頭部を視点にして高速回転を始めて突っ込んだ。2機が激しくぶつかり合う。
『おーっと、まさかのGBBBBでベーゴマバトルだぁ! 解説のユーキさん! どっちが勝つと思いますか!?』
『すいません。ベーゴマって何ですか? ベイブレードじゃなくてですか?』
『え……。ちょっと、ほら。こち亀とかで見たこと無い?』
『申し訳ありません、不勉強で。カルパッチョさんは博識ですね』
褒めている様に見えて、暗に『お前何歳?』みたいな問をしている所が、実に通常運転のユーキらしかった。
高速回転している2機がぶつかり合っては、互いの耐久力を削って行く。その度に勢いが弱まって行き、ブーストゲージも消費されて行く。互いに止まった瞬間が、試合の転換所になるだろう。
「(ゲージの管理とかブーストの遣い所は分からないから! 一気に行く!)」
このぶつかり合いはブースト管理も重要になって来るので、リンは早めに勝負に掛けていた。長引けば、経験の差でアラタが有利になることは分かっていた。
彼も同じ様にぶつかり合っていたが、思った以上の攻勢に反撃に転じる為の余力まで削られていた。互いに詰めに賭ける状況に陥っていた中、ほぼ同時に2人が叫んだ。
「カオス!!」
「サーヤちゃん!」
お互いに動きが止まるまでの間に、パートナーの名を呼んでいた。
カオスがリンへと向かう中、阻止しようとしていたサーヤのキャノンヘッドに高速回転していたマチュッガイが突っ込んで来た。
「選手交代って訳ですか!」
互いに対戦相手がスイッチした。サーヤはマチュッガイのブレイク・ダンスアタックを避け、カオスと戦っていた時の様に距離を保ちながらの射撃戦へと移った。実際、この戦法で先程までドラッガイのHPを削っていたので、間違った選択をしていた訳では無かったが。
「奇遇だよな。俺も元・タンク乗りだったんだ」
マチュッガイのアーム部分からミサイルが放たれた。キャノンヘッドの進行方向の地面に先んじて放たれたミサイルは、ちょうど彼女が通過しようとしたタイミングで爆ぜた。
「!?」
GBBBBにおいてはタンク型の脚部は珍しい。走破性が高く、ステージごとに細かく設定されている隆起などを無視できるのだが、接地面が大きくヒットボックスが大きいという欠点があった。
ミサイルによって態勢が崩された所にニャアッガイが跳び込んで来た。突き出した前足による跳び蹴りを食らって、キャノンヘッドの頭部が吹き飛んでいた。
「(レティクルが!!)」
GBBBBにおいてはパーツアウトの弊害は大きい。両腕が跳べば該当部分の武装が使えなくなるし、脚部が跳べば『グラウンドブレイク』という一撃必殺技を受ける。頭部が跳べば、敵をターゲッティング出来なくなるという射撃機として致命的とも言える状態に陥る。
距離を取って逃げられる状態にない。となれば、彼女は組み付いて来たマチュッガイを振り落とさんと全力で爆走した。あわよくば、落ちた所を轢き潰さんとしていたが、落とされる気配が無かった。
「終わりだ」
マチュッガイのアームにクローが出現した。振り下ろす。キャノンヘッドの胴体に深く沈み込み、内部で次々と爆発が起きた。アーム内蔵のミサイルが放たれたのだろう。
「ここ、まで。か!」
間もなく、キャノンヘッドが爆散した。だが、最後のあがきとして放った爆走には意味があった。マチュッガイはリンとカオスの交戦ヵ所から大きく引き離されていた。
――
「君がこの舞台に来ていること! モーレツに驚いているよ!」
ドラッガイから放たれた大量のミサイルを避けながら、リンは接近を試みていた。機体の損傷具合から、サーヤはカオスにそれなりのダメージを蓄積させておいてくれたらしい。
「私だって! 何時までも後姿を見ているだけじゃないんだから!」
頭部バルカンでミサイルを迎撃しながら、近接を試みていた。元より、アッガイ同士。決め手に欠けることもあって白兵戦でやり合うつもりだったのか、カオスも同じ様に接近して来た。
先程と同じ様に殴り合いになったが、カオスの殴り合いは更にテクニカルな物で、リンの攻撃を捌いたり、受け流したりしながらカウンターを決めるという物だった。先程に引き続いて、ボコボコに殴られ続けていた。
『ニャアッガイ! どうして、そこまでボコボコにされる!』
『劇中でもGBBBBでも不憫ですねぇ』
司会が好き勝手に言っているが、自分だってやられっぱなしという訳ではない。ダメージ覚悟で殴るタイミングをずらしたり、彼女もこの場においてカオスの戦法を吸収していた。
反撃の一撃が徐々にカオスへと届き始めている。元より少ないHPが更に削られ、ドラッガイも悲鳴を上げ始めていた。ここで踵を返せば、アラタの増援が望めるかもしれない。戦略的な意味もあるので判定的にも非交戦的態度と取られる可能性は低いだろう。……だが。
「私はカオス!! このGBBBBを誰よりも謳歌する男だ!!」
この間際の状況ですら、安パイに逃げずに自らの道を行く男だった。何処までもバカで、合理性に欠け、状況判断も出来ぬ。そして、誰よりもGBBBBを堪能している男の繰り出した一撃と交差する形で、ニャアッガイが突き出したアイアンクローが光った。
「シャイニング! フィンガー!!」
屈みこんで放った一撃はドラッガイへと突き刺さり、同時に放たれたメガ粒子砲は頭部へと突き抜けて行った。そんな、そんなことをされたら。カオスはこう言わずにはいられなかった。
「オ・ノーレ!!!」
両腕を広げ、ばたりと倒れたドラッガイは動かなくなった。レーダーに表示されているアイコンを見れば、アラタのマチュッガイが正に援護に駆け付けようとしていた。
もしも、少しでも早ければ彼がそのまま攻撃して来て試合は終わっていたかもしれない。長かったクラバトの決着は目の前に迫っていた。