GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
「俺ガンプラでPGなんて聞いてへんで!?」
タオが悲鳴を上げながら逃げ回っていた。このPG戦は今までと違っており、装甲破壊やバリアの出現などのギミックも無い。ガチンコでの殴り合いだった。
今までの戦いはテンポが悪くなるところはあったが、一定ダメージを与えれば装甲が剥がれ、スタンするのでターン制のような戦い方であったが、大抵は超大型メイスで乱暴に破壊されるので、ギミックもクソも無かった。
「でも、私は好きだよ! だって、攻撃する箇所とか考えずに殴れるんだもん!」
「うむ! 私もリン君と同じ考えだ! さぁ、タオ君! 一緒に殴ろうじゃないか!」
リンとミスターは攻撃を避けながら殴りまくっていた。従来のPG戦は装甲が剥がれた後はダメージが通らなくなるので、殴る箇所を変えなくてはならないのが不評を買っていた理由の一つであったが、今回はそう言うことも無かった。
とにかく殴れ!! 提案したマイスターの声が聞こえて来るような作りだった。こうなったら、タオも攻撃を避けてばかりもいられない。
「僕もやったるで!!」
3人の攻撃がPG機体に降り注ぐ。しかし、大型機体に相応しい耐久力を持っている為か、これだけの猛攻を受けながらGNソードⅢで反撃をして来た。
薙ぎ払いを受け、リンとタオの機体が吹っ飛ばされる中、ミスターの機体は空中で回避機動を取って、攻撃を避けた。そのまま相手の頭部へと飛び乗った。
「あの時の、お返しだ!」
PG機体の頭部を切り裂き蹴り飛ばした後、展開したツインブレードの蒼刃で胴体を滅多切りにした後、着地した。ミスターの機体の背後で大爆発が起きていた。
「ミスターって、ただのパチモ……面白い人じゃなかったんだ」
リンが驚いていた。てっきり、有名人のアバターを使っているだけの世話好きかと思っていたが、中身の実力もしっかりと整っていた。
次のWAVEに転送された。ワイヤーフレームで構築された青一色の世界、現れた敵機はSDガンダム達だった。タオのテンションが上がっていた。
「やっぱり、SDガンダムも組めると嬉しいよね。前バージョンまでは僚機設定しかできひんかったもん」
「でも、SDガンダム系は他のパーツとの兼ね合いが難しいから、アセンブルの難易度は高いよね」
SDガンダムはHGともMGとも頭身が違う為、組み合わせるとアンバランスさが目立ってしまう。ここを巧みなビルドで収めてしまうか、あるいはネタに振り切ってしまうかはビルダーのセンスが問われる所である。
「僚機設定なのも悪くはなかったが、タオ君の言う通り。やはり、自分で動かしてみるのも楽しいよね」
「おぉー! ミスターさんも分かって貰えます? ひょっとして、世代やったりします? 武者とかナイトとかの!」
「世代からは少しずれているけれどね。でも、私もナイトガンダムは大好きだよ。何時かは迎えに行くつもりさ」
「僕も何度迎えに行ったことか! 何時かと言わずに今ですよ!」
「くっ。分からないから、入れない…!」
ひたすらタオのテンションが上がる中、SDガンダム達を撃破して行くと、次のエリアに移動した。
静まり返った城内のエントランスホール。上階へと続く階段を守るのは、4機のSDガンダム。正に、今。話題にした騎士ガンダム達だった。
「ちょっと硬いね。でも、殺到する訳でもないし難しくはないか」
難易度に反しては結構手ごたえのある敵機と言う位だったが、リンも撃破できるくらいの相手だった。……すると、自動的に転送はされなかった。自分で階段を上る必要があるらしい。
「イベントミッションやからって、演出も凝ってんなぁ。SD系のボス言うたら、董卓プロヴィデンスが有名やけど」
このWAVEはSDガンダム系が多かったので、統一感あるボスを出すとしたら、タオも言った通りの相手になるだろう。階段を登り切った先にある大扉を開けると、広間に出た。タオが息を呑んだ。
「嘘やろ?」
「誰だ、貴様は?」
黒衣を纏い、頭部からは悪魔(サタン)を彷彿とさせる角を生やし、射殺さんばかりに侵入者を睨みつけているSD等身の機体。
どうして、こんな当たり前の事が分からなかったのか。SDガンダムのボス役と言えば、騎士ガンダムと表裏一体の存在として、欠かせない相手がいる。戦国の世界から舞い降り、分かたれた悪の心の体現者。サタンガンダム。
「私達の名はガンダム! 貴様は勇者の名を汚す者! 消えてなくなれ!」
「あー! ミスターずるい! ボクがやりたかったんに!!」
「小賢しい! ザコ共は引っ込んでろ!」
サタンガンダムが手にした杖から雷撃が放たれた。フィールド全体を覆う攻撃は生半可な威力ではなく、挙動から動作を察したミスターとタオは跳び上がっていたが、ナイトガンダムを知らないリンは反応が遅れたので、攻撃を食らっていた。
「いったー!? 酷い! 2人だけ避けている!」
「ごめんて。まさか、サタンガンダムをサプライズ実装するとか! パーツも入手できるかな!! ひょっとしたら、この調子でザタリオンとかも来るかな!!」
かつてない程にタオがやる気を見せていた。サタンガンダムの攻撃パターンは今までにない物ばかりだった。雷撃を放ち、周囲に真空の刃を走らせる。
これらの攻撃を搔い潜りながら、サタンガンダムのHPを半分ほどに減らすと、ムービーが挿入された。
「よかろう。真の姿を見せてやる!」
黒衣が開かれ、血の様に真っ赤なマントになった。竜を彷彿とさせる頭部へと変わり、雷撃の中に炎が入り混じる攻撃はますます激しさを増していた。
「ブラックドラゴン形態もおるやんけー!!」
「今日のタオのテンション凄いなぁ」
普段はツッコミ役に回りがちなタオのハイテンションぶりを見て、リンがちょっと引いていた。一方、ミスターも楽しそうだった。
「リンも……リン君も楽しまないと損だぞ!」
「急にメッチャ馴れ馴れしくなろうとしなかった?」
推定、自分達より年上のおっさんが楽しそうにはしゃいでいる所を見るに、きっと世代の人間にはぶっ刺さるのだろう。
だが、これでWAVE2だというのなら最終WAVEには何が待ち受けているのだろうか? ネタは良く分からないが、リンも自らのテンションが上がって行くことを感じていた。もはや、本来のお目当ての品である先行実装機のことは頭の片隅から外れていた。
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苦戦の末、サタンガンダムを撃破した後に待ち受けていたのは通常のミッションと変わらない制圧任務だった。GPシリーズやニューガンダム、ゴッドガンダムやユニコーンなどを撃破しながら、先へ先へと進んで行く。
「さぁ、行くぞ。この先にとっておきのボスが待っている」
「お。マイティーストライクフリーダムガンダムがおるんかな?」
ミスターはこの先に何があるかを知っているかのようだった。今回のイベントの目玉がそろそろ出て来るかと思われたころ、彼らが降り立ったのは円形のリングの上だった。
現れたのは、大気圏突入用モジュールが装着されたガンダムTR-6『ダンディライアンⅡ』だった。
「あの頃はキット化されていなかったのにねぇ。来るよ!」
大型MA戦はタオ達も経験したことはある。だが、アプサラスⅡ等と違い、こっちは多種多様な武装を使い分けることによる戦い方の幅がプレイヤーを苦戦させた。
大型クローの薙ぎ払いや、MA形態なのにウインチ・キャノンをぶっ放して来たりと、ゲーム的な都合もありはしたが、今までにないボスと部位破壊などのギミックが無いことによる交戦はプレイヤー達に迫真のバトルを提供していた。
「リン君! 私達も行くぞ!」
「わ、分かった!」
損傷したTR-6が突っ込んで来たので、ミスターはリンと共に迎え撃つ為に飛翔していた。彼らを押し潰さんと大型クローが迫るが飛来したミサイルに潰されていた。
「ミスター! リン! 行ってぇや!!」
地上部にいたタオからの援護だった。迎撃手段を失ったTR-6が切り裂かれ、そのまま爆散した。
「……中からウーンドウォートが出て来るとかはないか」
「まぁまぁ、これでクリアやろ。お疲れ様ですわ」
「高難易度ってだけにあって、ボス戦が多くてちょっと疲れた……」
画面に『WAVE CLEAR』の文字が躍る。結局、マイティーストライクフリーダムガンダムは出て来なかったが、クリア報酬で受け取れるタイプなのだろうかと考えていると。画面に『EXTRA WAVE』の文字が躍った。
すると、全員が何処かに転送された。降り立ったのは月面上のステージ。『SEED FREEDOM』の最終決戦をイメージしたのだろうか?
「アレ? 皆も居るじゃねぇか」
「他のプレイヤーは見当たりませんが」
「アラタ。シーナ、文もおるやん」
この様子なら、向こう側の3人もステージをクリアしたと見ても良さそうだった。一体、どうしてこの6人だけが集められたのかと思っていると、彼らの前に1機のガンプラが降り立った。マイティーストライクフリーダムガンダムだ。
「始めまして。マイスター・ジンと言えば分かるかな?」
「え!? 嘘!? マイスターが!? なんで!?」
リンは戸惑っていた。どうして、態々上位クランのメンバーでもない自分達の前に姿を現したのだろうかと。すると、ミスターが一歩前に出た。
「いや。中々に乙なミッションだったよ。キミのことがよぅく、分かるミッションだった。ねぇ?」
……何か圧を感じる物だった。すると、マイスターは暫く言葉を選んでいたが整理した考えを吐き出していた。
「これは私が、GBBBBに立つまでに経験して来たかけがえのない足跡だ。少しでも皆に体験して貰えたらと思ったんだが」
「良い体験してんじゃねぇか! 楽しかったぜぃ!」
アラタが屈託なく答えるので、思わずマイスターもミスターも噴き出してしまっていた。
「本来なら、この『EXTRA WAVE』でマイティーストライクフリーダムガンダムと戦うって構成なんだけれど、君達を見ていると懐かしくなってきてね。我慢できずに、私が乗って来た訳だ」
「えぇ!? 勝てる訳無いですやん!?」
タオが悲鳴を上げた。相手はGBBBB最強のプレイヤーだ。こんな初心者に毛の生えた程度の自分達が勝てる訳がない。
「大丈夫。このパーツは君達の難易度の最低レベルしかないし、そっちは6機掛かりで来てくれてもいいから」
付けられたハンディキャップは盛大な物だった。もしも、ここでマイスターを打ち負かすことが出来たら、ちょっとした有名人になれるのでは? という功名心が無い訳ではなかったが。
「面白ェ!!! 誰より先にマイスターと戦えるんだ! 俺はやるぜぃ!!」
アラタは興奮を隠しもしていなかった。既に臨戦態勢がに入っているのを見て、ミスターも構えていた。
「そうだね。ちょっと、久々な気分になったから私もやらせて貰おうかね」
「(久々?)」
ひょっとして、ミスターはマイスターと知り合いなのだろうかと考えたが、周りの皆も挑戦しようとしているのを見て、リンも構えていた。
「じゃあ、この時間を楽しもう!!」
GBBBB最強の男が、C.E最強の男が使っていた最新鋭の機体を使って舞い上がった。