GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
バトルトーナメント決勝戦も近付き、再びコウラもログインして来るようになった頃、今度は他のメンバーがあんまりログインしなくなっていた。確認がてら、マシマが理由を尋ねていた。
「なぁ、アラタ。皆がログインしていないのって……」
「そりゃもう、一狩り出ているからだぜぃ」
アレだけのビッグタイトルが発売されたのだから、GBBBBを休止してそっち側に行くプレイヤーも少なくはない。現在、ログインしている2人は冷や汗を流していた。嫌な予感がする。……と。
「こんちゃー。って、アレ? 今日ログインしているの2人だけ?」
フューラーザタリオンを下げたタオも、人が減っているGBBBBに何のリアクションも示さなくなっていた。
「なぁ、タオ。セリトは?」
「友人付き合いもあるから、暫くは『あっち』の方で狩をしとるやってさ」
元々、セリトはネトゲジプシーである。中学生という時間も余りつつ共感と付き合いを大事にする人間が、例の狩ゲーに行くのは無理からぬことだった。
彼らは本戦に出ないから問題はないかもしれないが、問題はないとは思うのだが、世の無常さを感じざるを得なかった。
――
「なんてことだ……」
折角、コウラとの蟠りを解いて皆でバトルトーナメント決勝戦に向けて切磋琢磨するというハズだったのに、容易く別ゲーに移られていた。
『アラタ。これこそが私の恐れていた事態。誰も悪くないからこそ、どうしようもない』
かつて、文はGBBBBから出られないことを嘆いていたが、アラタも彼女の抱いていた懸念を実感していた。何が辛いかというと、本当に誰も悪くないことだ。
かくいう、アラタも同タイトルをプレイしたことはある。ガンダムにハマっていた傍ら、今は連絡も取っていない同級生達と狩に励んでいた頃はあったからだ。……と思っていると、チャットにダイレクトメッセージが飛んで来た。相手はシーナからだった。
「ま、まさか……」
もう、予想は付いているが見ない訳には行かない。シュレディンガーの猫る訳にはいかないのだ。恐る恐るメッセージを開いた。
『アラタさんへ。暫し、狩ゲーの方にINするのでログイン率は控えめになります。ちなみにサーヤちゃんとも一緒にプレイしますので、リンちゃんにも気を付けておいた方が良いかもしれません。バトルトーナメント決勝戦も近いのに申し訳ありません』
「くそおおおっ!! ちくしょうめぇ!!!」
無念を叫びつつ、ダイレクトメッセージの方では『楽しんで来て下さい!』という見送りの文言を打っていた。
『カルパッチョ、セリト、シーナ、ミサの4人が狩ゲーの方に行ったから、チーム内での練習は難しくなるかも。……決勝戦が終わるまではGBBBBを優先して貰う様にする?』
「いや。駄目だ。こういう共同狩ゲーって言うのはスタートダッシュが大事なんだ。最初に置いて行かれると他の人達と一緒にプレイできなくなる可能性がある。その時間を奪ったら、絶対に遺恨が残る」
現代におけるゲームの立ち位置は単なる娯楽に留まらないことが多い。コミュニティを築く上で非常に重要なツールとして働くこともあるのは、GBBBBでも分かっていることだ。
『じゃあ、バトルトーナメント決勝戦に向けての練習とかはどうする?』
「……困った時の~~。カオスさん頼み~~~!」
自分達と同じ様なレベルとスキルを持っている相手で、幸いにしてバトルトーナメントでの再戦も終えて、手が空いているハズだと見込んだ上でチャットを送ると、ゲーム内の方で反応があった。
~~
「アラタくぅん。実は、君の所のセリト君とシーナ君と一緒に遊ぶからって、ウチからドーラ君とグスタフ君も取られてねぇ」
「もしかしなくても、前の事件以上の時に窮地に陥っていない?」
ブラックロータスが項垂れるエモーションを見せながら言った。アラタもコレには頭を悩まし、カオスの隣にいるクロカンテも悩ましそうにしていた。
「正直、ウチのクランの大半も向こうに行っている。ビッグタイトルが出るときは、いつもこうなるんだ」
「もしや、残っている僕らの方が珍しいんかもしれへんな……」
リンとコウラがやって来ることは信じているが、このままでは満足いく練習が出来るかどうかも怪しい所だ。
「いやいや、タオ君。逆に考えるんだ。残った我々は精鋭なのだと! それに、丹生君も呼んだら覚醒使いを交えた本格的な練習がだね」
「無理っすよ。アイツ、ユイ先輩や元・同級生達と一緒にあっち行くって言っていましたから」
「もう止まらんよ」
マシマが該当作品のミームを口にしていた。再開のタイミングは良かったかもしれないが、あまりにこの時期の重なり合いがきつかった。
「ていうか、逆に気になるんやけど。出場選手である僕やアラタは兎も角として。なんで、マシマさんやカオスさん達はこっちに?」
「そりゃ、お前。俺は一緒にやる相手がいないからよ」
タオの問いかけに対して、マシマから予想外の回答がやって来た。コミュ強に加えて、プレイヤースキルも非常に高い彼ならば絶対に誘われると思っていたからだ。コレにはクロカンテも驚いていた。
「意外だな。マシマ君なら誰かしらに誘われる物だと思っていたが。カルパッチョ辺りには誘われなかったのか?」
「『アンタも始めよう!!』って言われたけれど、遠慮しておいた。今更、別ゲーやるのはしんどいんだよ」
「アイツは決勝戦が控えている時期に、エースにそんな勧誘を……?」
カオスが困惑していた。言われてみれば、決勝戦が控えている中で練習相手としても非常に質の高いマシマを奪い取ろうとするとは何事かと。
「ま、まぁ。ゲームはね。一緒にプレイしていて楽しい相手を誘いたくなるものだからね。多少はね?」
「そうそう。やっぱり、俺にはこのロビーと空気が一番合っているんだよ」
場を取り繕う為の言葉でナイト感じ取ったのか、カオスは深い感銘を受けていた。
「もう少しなぁ。君達がオープンベータの初期の方から始めていたら、私も囲っていたのになぁ!」
「そうしたら、バトルトーナメントやイベントで戦えなくなりますよ?」
「ぐぬぬ。でも、肩を並べてマイスターと一緒に戦えたら楽しそうだしなぁ」
カオスが謎の二者択一に悩んでいると、クランメンバーのログイン通知が鳴った。リンとコウラもINして来たのだ。
「うわ。やっぱり、今日のログイン率低いなぁ……」
「アレ? カオスさんとクロカンテさんじゃない。どうしたの?」
「実はだな」
アラタが事情を説明した所、リンは納得していたが、コウラは声色からも不機嫌が伝わって来るようだった。
「なんで、この時期にアイツは別ゲーに人を誘うような真似を?」
「あんまり、悪態吐いてやるなって。それに、アイツは動画配信者だぞ。ユーザーを引き留める為には、最新のゲームをする必要だってあるんだよ」
「理解のある彼ピ」
マシマのフォローをアラタが茶化すことで、コウラの怒りの炎も幾らか鎮火出来たらしい。さて、ここに居るメンバーは7人。辛うじて、練習試合は出来なくもないだけの数はある。
「おまけに質もバッチリと来た。皆の時間が許す限り、俺達の練習に付き合って欲しんだぜぃ」
「勿論、構わないよ。丁度、私達のクランも人が居なくなって退屈していたんだ。調整に付き合えるなら喜んで手伝うよ」
「あぁ。それに、クラバト以来。マシマ君と組んで戦えるのは願ってもいないことだ」
「よっし、それじゃあ。今日は一際厳しく扱いてやるか。コウラちゃんも元・フリーダムフリートメンバーだし。俺と交代しながら、やろうぜ」
「なんの偶然かは知らないけれど。悪くないわ」
練習メンバーが豪華すぎることになった。マイスターに立ち向かうからには、これ位の練習相手は望ましい位なのだが。
「お、お手柔らかに……」
「今日の体験次第じゃ、決勝終わった瞬間にサーヤちゃんの誘いに乗りそう」
タオが気圧され、リンもちょっと逃避していた。かくして、彼らの期待を裏切らない熾烈な特訓が始まった。
~~
『は~い、皆も一狩りしている~? カルパッチョちゃんもハンターしに来たよ! 武器は当然、太刀!』
アラタ達が特訓をしている傍ら、文はPCを圧迫しない程度に『外』に行った彼女達の様子を観察しに行っていた。
分かっていたことだが、彼女達は別にGBBBBでなくても十分に楽しんでいる。もしも、自分が外の世界に出ることが出来ていなかったら、やはり置いて行かれていたのだろうかと思うと、思考にノイズが走った。
『え? 『GBBBBにはよ帰れ』? 今日はこっちの気分なの。反復横跳びしまくるからヘーキヘーキ! 向こうには相方もいるからね。友情はゲームを超えるのよ!!』
コメントの一つに彼女が反応していた。いつも通り、彼女の何も考えていない大言壮語だったとしても、文には引っ掛かったらしい。
『(友情はゲームを超える……)』
人は、自分が想ったよりも簡単にゲームを超えて来るらしい。
ただ、発言者が発言者なので、その場限りの言葉であることは否定できなかったが、文は暫し彼女達の狩を見守りつつ、同時にアラタ達の練習光景も見ていた。