GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】   作:ゼフィガルド

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EX3:24年後の君へ 7

 一閃。騎士エクシアが振るう盾と一体化したソードが敵機を切り裂いた。

 次々と出現する相手は、GBBBBのミッションで現れる様なNPCとは比べ物にならない程に高度なAIで動いており、世界大会の選手と遜色のない挙動をしている。だが、タクマはこれらを次々と撃破していた。

 

「マイスター。少し飛ばし過ぎじゃないか?」

 

 チームメンバーである屈強な大男の『ライム』が、タクマの集中ぶりを気にして声を掛けていた。今までも、イベントでユーザーと戦って来たことはあったが、ここまで調整に力を入れているのは見たことが無かったからだ。

 

「すまん。暫く、帰って来られなくなりそうだからな」

「そうか。お前さんは、そっちの方に注力していくってことか」

「二足の草鞋は履けないからな。人類の発展にも関わる業務を片手間でやる訳には行かない」

「諦めるには、まだ若すぎる気はするんだがね」

 

 ゲームの技術が人類の宇宙進出に関わって来るなんて事態は想像も出来ない。加えて、彼は人類と宇宙の架け橋である『軌道エレベーター』を二度も救った英雄だ。宣伝するには、これほど打って付けの人間はいない。

 

「諦めないさ。迎えに行った後は、爺さんになっても戻って来てやる。その時は、東西南北銀河不敗として帰って来るさ」

「その名前で戻って来るのはマジでやめろ」

 

 普段はクールな癖に、変な所では少年ハートを前面に押し出して来るのが困った所だった。

 

『私のオリジナルですか。一度は、話してみたい物ですが』

「アータルにも会わせてやりたい。いや、それだけじゃない。ミサ、カドマツ、モチヅキさん。それから、アラタ君達も紹介したいな」

 

 GBBBBの端末AI達を管轄する上位AIである『アータル』は、特定のキャラクターを彷彿とさせるCVとなっており、見た目も中世期の騎士風のアバターであった。これらのモチーフは、彼が言う所の『オリジナル』を意識しているのだろう。

 

「お前さんの口から、身内以外の名前が出て来るとはな。よっぽど、あの少年が気に行ったんだな」

「あぁ。彼はGBBBBがめぐり合わせてくれた、素敵な友人さ」

 

 もしも、彼がGBBBBを始めてリンと出会わなかったら。リンを心配して、ミサがGBBBBにやって来なかったら。きっと、自分は彼女とすれ違ったまま終わっていたかもしれない。

 そんな相手が、最後の大舞台になるかもしれない場所で好敵手として立ちはだかることには、運命を感じずにはいられなかった。

 

『ですが、主殿。肝心のクランのメンバーは大半がログインしていない様ですが』

「なに?」

「しょうがねぇよ。あのハンティングゲーが出たんだからな」

 

 折角の好敵手が十分な練習が出来る環境にないかと思い確認してみれば、フリーダムフリートのメンバーとバチバチやり合っていたので、ホッとしていた。

 

「浮気か。浮気はいかんぞ。NTRは脳を粉々に破壊する」

『別にゲームは好きな物をすればいいとは思いますが』

 

 ここら辺、タクマは非常にセンシティブになっている所だった。GBBBB内でしか動き回れないハズのアータルが窘めるレベルで。

 暫しの、歓談と休憩を挟んだ後、彼らは再び練習を始めた。機体の動かし方だけではなく、時折『覚醒』も使用しての本番さながらの練習の中、彼の動きは増々冴え渡って行く。

 

~~

 

「(分かってはいたけれど。本気のアイツには、もう敵わないかな)」

 

 プロジェクトの出向がてら、タクマの練習光景を見ていたミサは多少の悔しさを覚えていた。走り続けた人間とそうで無い人間には差が出来る。

 6年前から、彼はずっと直向きに進み続けていた。信じられない程の愚直さだ。自分が、そんな彼の中で引っ掛かる存在になっていたのは申し訳なく思う反面、そこまで想って貰えることの嬉しさもあった。

 

「嬢ちゃんが恋する乙女の顔になっているな」

「まぁ、成就しているし?」

 

 胸を張り、ピスーと間の抜けた鼻息をしながら言った。既に食あたりを起こす程に惚気話を食わされてきたカドマツは、露骨に辟易した顔をしていた。

 

「俺が悪かった。藪からスティックだった。頼むから、この後に俺の恋愛事情を心配する様なことを言うなよ。もう何度も言われたネタだから」

「そ、そっか。うん」

 

 正に言おうとしていたので、ミサはグッと言葉を呑み込んでいた。そして、浮かれポンチぶりを誤魔化す様にして、タクマの練習光景を眺めていた。

 

「ミサ。お前は、どっちに勝って欲しい? アイツか? それとも、妹さん達がいるチームか?」

「どっちもに決まってんじゃん。だから、私は次の試合だけはハラハラ。なんてことはなく、ドキドキしながら見れるんだよ」

「いいねぇ。俺も、次の試合は同じ様な気持ちで見るつもりさ。文の奴が見初めた奴らが、どんな試合を見せてくれるか。今からでも楽しみなんだよ。でもな、気を付けろよ。今、タクマ達が使っている筐体はオンゲーと言うソースが限られるGBBBBでは使えない、高度AIを使っている。この間の事件で、連中も使って行奴だ」

 

 それはミサも分かっていた。敵機の動きがあまりに有機的だった。彼女がかつて出場した、世界大会の参加選手と遜色のない動きをしている。

 そんな機体を何機も裁きながら、タクマの動きはキレを増していくばかりだ。特に彼女の目を引いたのは、彼が『覚醒』を使った時だ。

 

「え?」

 

 彼が使う覚醒は『アサルト』と呼ばれる攻撃性能を高める物であり、使用の際は機体が赤く発光する特徴もあるのだが、彼の機体からは金色の光も放たれ、バックパックに装備しているマントがまるで翼のように変形していた。

 

「マイスターを超えてカイザーが見られるかもな」

 

 間違いない。恐らく、今度の決勝戦。彼は、自分が知っている中で最高のパフォーマンスで挑んで来るだろう。

 

「(本当にどっちが勝つんだろう?)」

 

 純粋に実力の彼我を見れば、タクマ達に分が上がるだろう。ただ、アラタ達はそう言った定石などを覆し続けていた。今回もまた、何かを起こしてくれるんじゃないかという、期待にも近しい予想があった。

 

~~

 

「いやぁ。考えてみれば、欠員が出ているんなら合法的にビアンカと合同練習が出来るんだから、塞翁が馬ってね!」

 

 ここ数日、フリーダムフリートとの練習試合が続いていることもあり、カオスは上機嫌だった。一方、当たり前の様にコウラは不機嫌を撒き散らしていた。

 

「丹生からは誘われないし、向こうに行った面々が帰って来る様子が無いのはどういうことなの?」

「先輩、そう言う所だと思うんっすよ」

 

 以前より、アラタの物言いに遠慮が無くなったのは、距離を詰めたからだろうか。この不機嫌の塊に遠慮なく近付く、リーダーの胆力にはタオも舌を巻くしかなかった。

 

「なぁ、アラタ。どうやったら、そう言うコミュ力みたいなんって身につくん?」

「相手の考えていることを想像しつつ、欲しがっている返事を幾つか予想して、普段から愛想よく振舞って、積極的に用事とか面倒事とかを引き受けて好感度を稼ぎつつ……」

「ごめんなさい」

 

 小市民で大人しくはあるが、真面目と言う程でもないタオには到底真似が出来そうになかった。すると、カオスが優しく語り掛けて来た。

 

「タオ君。そう言うのは中々に出来るもんじゃないから、気にする必要はないよ。私なんて、GBBBBで働いていた時は同僚や上層部に対して『くたばれ』と思いながら、働いていたからね」

「ログ見られても大丈夫なんですか?」

「言論の自由だよ。ガハハ」

 

 他ユーザーに対する暴言などではないので運営や管理AIも目くじらを立てる程のことではないにしても、他者に迷惑を掛けない程度に自己中でいることはそんなに悪いことではないらしい。すると、やたらと上機嫌なリンが寄って来た。

 

「タオ。そう言うね、誰にでも良い顔はしなくて良いんだよ。大事な人を想って、想われたらそれで良いんだよ」

 

 この間までピーピー騒いでいた娘が変にマセていたので、タオはPC前で渋い顔をしていた。なので、無理矢理話題を逸らすことにした。

 

「そう言えば、サーヤちゃんとかは、このクランに誘ったりとかせぇへんの? クラバトとかで一緒に頑張とったし」

「入りたいとは言っていたけれどね。向こうも彩渡商店街チームってクランでやっている以上、抜ける訳には行かないんだってさ」

「結構、本格的なチームなんやなぁ。カオスさん所もですか?」

 

 ビアンカはそう言った特別な調整や顧問が付いている訳ではないので、どうにも実感が湧き難かった。なので、彼にも尋ねてみた。

 

「いいや? 私達は基本個人の集まりだね。中には有償でフリーのエンジニアに調整を依頼している者もいるよ。私はそう言うの必要ないけれど」

「そうか。カオスさんは自前で出来そうやし」

「それだけが決定的な戦力差にはならないけれどね!」

 

 個人の技術や環境に依る所もまた強さの要因にはなり得るのだろう。と、話題転換に使った物に一定の答えを見出した頃、皆も休憩を切り上げた。まだまだ、練習をする体力も時間もある。

 

「よっしゃ! 皆、もうちょい練習頼むぜ!」

 

 アラタの掛け声と共に再びバトルフィールドに入った。覚醒もバンバン飛びあう、熾烈な競争の中、タオもまたスキルが磨かれて行くのを感じていた。と、同時に今までにない感触も覚えていた。

 

「(なんやろう? 妙に機体の動きが良いというか。何かに反応している様な……)」

 

 彼が使っている全身武装塗れの『フューラーザタリオン』は、まるで何かとの対峙を待ちわびているかの如く、獰猛な動きを見せていた。

 

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