GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】   作:ゼフィガルド

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季節ネタ:頭真っ白ホワイトデー

『なぁ、アラタ。一応聞いておくけれど、リンちゃんにお返しは用意してあるんだよな?』

 

 ホワイトデー前日のことである。バトルトーナメント決勝戦も控えている中、マシマからウィスパーチャットが飛んで来た。これに対し、アラタは特に慌てる様子もなく答えた。

 

『勿論、用意してありますとも。もう、思い出に残ること間違いなしの希少品。入手をするのにも苦労したんですよね』

『何を用意したんだ?』

 

 アラタがこういった物を忘れるとは思ってはいなかったが、それにしても何を用意したかは気になった。

ベタな所で行くとお返し用のスイーツだろうか? 無難ではあるし、相手も気負わずに受け取れる。もしくは、ガンプラとかだろうか? 物日に合わせた関連商品も無きにしも非ずだが、リンはそんなにガンダムに詳しくないハズだ。

 

『何を用意していると思います?』

『やっぱり、無難にマカロンとかクッキーか? 入浴剤とかハンドクリームは肌質とかの問題もあるし』

 

 学生同士での遣り取りなら、そこら辺の方が健全だとは思った。すると、直ぐに相手からレスが返って来た。URLがペタリと貼られた。

 

『これです』

 

 貼られたURLを覗きに行った。すると、現れたのは動画サイトだった。自動再生が始まると『GUNDAM 0079 The War For Space』というタイトルがデカデカと映し出されていた。

 

『俺ね。ケツアゴシャアの続編って出ていないもんだと思っていたんですよ。ほら、これの続編を作るって狂気的じゃないですか? でも、世は大ガンダム時代です。ちゃんとね、続編が! 出ていたんですよ!』

 

 まるで、トランペットを目にした少年の様にアラタは声を弾ませていた。

 ダイジェストで前作を振り返る程度の新設設計はされており、現代に合わせたのかQTEの画面は分かり易くなっていたりと、開発スタッフの進歩は感じられる造りになっていたが、動画としては最悪に映えない物だった。

 

『お、お前。こんなの出して売れると思ったのか……』

 

 例の作品についてはマシマも知っている。ゲーム的にはアレだったが、MSのモデリングなど一部は評価できる所もあったが、アレは当時の開発水準だからこそ認められた物であり、現代で視聴するにはやや苦しいレベルだった。

 肝心のシナリオも少しだけ眺めていたが、やはり知らない外人キャストがいっぱい出て来ては、聞き慣れたCVで会話するモンだから脳が常にギャップで悲鳴を上げているレベルだった。

 

『ゲームとしても微妙、ネタとしても微妙。ケツアゴシャアの初期作は有名でしたが、こっちはヒッソリとネタにもならずに沈んで行ったけれど、光るものがあると思うんだ。だから、俺はリンと一緒にコレをプレイするつもりで』

『今直ぐ選び直せバカ野郎』

 

 普段は比較的クレバーなハズなのだが、趣味に走ると周りが見えなくなるのは典型的なギーク仕草だった。

 

『こ、これに小遣いを使ってもう資金が……』

『ひり出せ!! 恋人同士になって最初に貰うプレゼントがコレだったら破局モンだぞ!!』

 

 学生故、財布事情の厳しさは知っているつもりだったが、マシマは看過する訳には行かなかった。看過してはいけなかった。かくして、アラタは直前になってからプレゼントの再選択を迫られていた。

 

~~

 

『しかし、アラタ。問題はありません。このように数ある返礼ランキングサイトから選ばれるプレゼントを検索しました。やはり、ベタな所はマカロンや菓子などである様です』

 

 文が気を利かして調べてくれていたが、アラタだってそれ位は既に調べている。実際に無難ではあると思うし、悪くはないと思うのだが。

 

「でも、それってさ。なんだか業務的な対応をされているみたいに思われないかな。いや、でもガンプラとか贈答したら重い奴と思われるかもしれないし」

『アラタの体重は平均値では? ちなみにこれはジョークです』

 

 レコにも搭載されているAIの激上手ジョークで場を和まそうとしていたが、アラタの悩みの解決には何の寄与もしていなかった。

 

「うん。やっぱり『GUNDAM 0079 The War For Space』で間違いない。いや、でも冷静に考えたら、これ一本だけは流石に不味いな……」

 

 冷静に考えなくても不味いのだが、プレゼントとして通用するであろうと考えていることから正気に戻り切れていない様子は分かった。

 

『では、こういった案はどうでしょうか? 最初にこのソフトを出して驚かせた後、マカロンや焼き菓子など普遍的な物をプレゼントすることで、前者をジョークグッズとして使うのです』

「そうか! うん。それなら良さそうだ! じゃあ、明日は学校が終わり次第、プレゼントを探しに行こう!」

 

 マシマのお節介は実を結ぼうとしていた。ただ、彼を持ってしても矯正しきれない部分はあった。

 

~~

 

「ホワイトデーのプレゼント?」

 

 ガンブレ学園、サイド0部室。本来、あまり相性は良くないのだが、こういった時に身近にいて助言を貰えるであろう相手と言えば、丹生しかいなかった。

 以前の様に人間関係のいざこざの解決方法を聞いた訳では無かったので、これに関しては普通に考えてくれた。

 

「普通にデパ地下で返礼品を買って渡したかな。ガンプラとかを渡しても作るの面倒臭いだろうし。でも、チョコレートとかみたいなカロリー高そうな物は渡さなかったけれど」

「無難だけれど、やっぱりそこら辺になるんスかね」

「こういう時に肩肘張り過ぎない位の関係でいたいからね」

 

 気合を入れないと維持できない関係は長く続きそうにない。というのは一理ある様に思えた。だとしたら、やはりこのままデパ地下辺りに行くことになりそうだが、何を選べばいいかは分からない。

 

「ちなみに何を選んだんです?」

「マカロン。美味しいし、見た目も可愛いからね。W勢のカラーを揃えて渡した。ちょっと値は張ったけれど。……アラタは軍資金大丈夫なの?」

「親に『彼女へのお返しを渡したいので貸してください』って頭下げたら、喜んで貸してくれた!」

「しょうがないね。学生だからね」

 

 もしも、社会人が言っていたらクッソ情けないが、高校生は財布事情が寂しいし、バイトをしていない者も多いのだから仕方がない。

 これだけ準備をして来たら、後は買いに行くだけだ。と、丹生がアラタを見送ろうとした時のことである。扉を開けると、コウラが立っていた。

 

「アラタ。事情は聴いたわ」

「そ、そうっすか……。じゃあ、俺はコレで」

 

 ずっと盗み聞きしていたんだろうかと思うと、背筋に寒い物が走った。彼女の脇を擦り抜けて、近くのデパ地下に行こうとしたら腕を掴まれた。

 

「私ね。2人のことを応援したいと思っているのよ。だから、一緒に選ぶのを手伝ってあげようかなって思って。嫌?」

 

 そんな聞き方をして断れる奴がいたら、見てみたい物である。アラタも頷く外無かった。連行されて行く彼を見ながら、部員の1人が漏らした。

 

「まだあきらめてねぇのかな……」

「諦めてもろて……」

 

~~

 

 その日、サーヤがデパ地下にいたのは偶然が重なってのことだった。

 親から懸賞で当たった商品券を貰ったので、これが使える商業施設に足を運んだこと。夕飯のサラダでも買おうと思っていたら、友人から送られてくる写真に写っている背の低い男子が、綺麗な女性と一緒に歩いていたこと。何処となくアバターにも見覚えがあるので、彼女は何となく察していた。

 

「(片方はアラタさんでしょう。もう片方は、確か『コウラ』さんでしたか。2人は同じ学園に通っていると聞きますが)」

 

 何故、一緒にデバ地下を歩いているのか。と、連想ゲーム的に考えて浮かんだのは、今日が『ホワイトデー』であるということだ。

 

「(一緒にプレゼントでも選んでいるんでしょうね。ですが、私はこういった時に誤解しませんから)」

 

 よくあるサブカルチャー物では、ここで誤解してあたふたして最後には仲直り! 的なイベントが用意されているのだろうが、きっと2人はリンのプレゼントを選んでいるのだと、彼女も割と察しは良かった。良かったのだが。

 

「でも、アラタ。貴方がこんな間際に選びに来るなんて珍しいじゃない。事前に準備とかはしてなかったの?」

「いや、本当は用意していたんですけれど、正気に戻ったら『もっと別のにした方が良いんじゃない?』って、思ったんで」

「そんな、勿体ない。アラタが考えて選んだんでしょう? 一体何をプレゼントするつもりだったの?」

「『GUNDAM 0079 The War For Space』を……」

「良いと思う!」

 

 良くねぇよ。と、サーヤが会話を盗み聞きしながら思っていた。大事なホワイトデーを台無しにさせかねない会話をしていたので、訂正に入るべきかと悩んでいると、アラタが首を横に振っていた。

 

「流石にね。折角のホワイトデーにコレを受け取るリンのことを考えたら、居た堪れなくなって。だから、定番のプレゼントと一緒に渡すつもりだったんですよ」

「でも、それだと『GUNDAM 0079 The War For Space』は放置されるんじゃない? きっと、マカロンを食べて終わりよ。本当に想いを伝えたいなら、一本に絞った方が良くない?」

「そうかな……そうかも……」

「何を!! 惑わされているんですか!!」

 

 流石に友人の為に居ても立ってもいられなくなったのか、サーヤが2人の間にズカズカと割り込んで来た。

 

「何よ、この娘!?」

「サーヤです。アラタさん、折角リンはホワイトデーのことを楽しみにしているのに『GUNDAM 0079 The War For Space』で終わらせるんですか。考えてみてください。今後、貴方とのホワイトデーの思い出を話す時に該当ソフトを出されるんですよ。それでもいいんですか?」

「お、おぉう?」

 

 なんで、君がここに居るの? とか言いたそうだったが、とりあえず落ち着いた。そして、ケツアゴシャアに取り付かれていたアラタは少しずつ冷静さを取り戻して行った。

 

「リンのことを信じているなら、ついでで渡してもプレイしてくれるはずです。それに彼女も私に『GUNDAM 0079 The War For Earth』の感想はちゃんと言ってくれていましたよ。クソゲーだけれど爆笑したって」

「そ、そうか。リンならきっとプレイしてくれるよな……」

「でも、それって。なんだか『GUNDAM 0079 The War For Space』が添え物みたいになっているのが気になるのよね」

 

 この女はケツアゴシャアにとってのナナイか何かなのだろうかと、サーヤは訝しんだ。だが、アラタは惑わされていた。

 

「た、確かに。取り繕った感が出るかも……」

「では『GUNDAM 0079 The War For Space』を追加で渡すのを止めましょう。コレで、万事解決です」

「何を言っているの? それって、アラタの思いを無碍にするってことよ?」

「あなた方は開発会社からマージンか何かでも貰っているんですか?」

 

 ここまで食い下がって来たら、もはや何かを貰っているとしか思えなかった。すると、アラタのスマホが震えていた。画面を開くと、そこには文が映っていた。

 

『アラタ。でしたら、関連商品にしてみては如何でしょうか? 3人が話し合っている間に、このデパ地下に出店している商品を調べてみました。そこに、こんな物があったのです』

 

 文はスマホの画面にマップを表示させた。彼女の指示に従い向かった先には、多くの客が列をなしていた。その先にあったのは……。

 

~~

 

 かくして、プレゼント選びを終えて、彩渡商店街の最寄り駅で降りたのだが、その際。紙袋を提げたミサと出くわしていた。彼女はアラタを見つけると手を振っていた。

 

「アレ~? アラタ君じゃん。その手に提げた紙袋はもしかして~?」

「はい。今日はホワイトデーだから、リンにお返しをしたくて。アレ? ミサさんもあのデパ地下に居たんですか?」

「だね。なんか、ガンダム関係のショップが出ていたから覗いて見たかったけれど、人が多いから止めちゃったよ」

「実際にかなり並びましたからね。喜んでくれると良いんですけれど」

「きっと喜ぶよ」

 

 アラタと一緒に自宅へと向かう中、ミサはずっと微笑んでいた。

 

「(リン。良かったね。てっきり、私。ホワイトデーにアラタ君が『GUNDAM 0079 The War For Earth』みたいなのを渡して来るかと思っていたけれど、さすがにそこまでふざけたりはしないよね)」

 

 実は、彼女はアラタ達が列に並んでいたのを発見していた。だが、敢えてサプライズ狙いと言うことで何も知らないという体で接していたのだ。妹と彼氏君の淡い現場を見て、大仰に驚いて祝福しようという計らいがあった。

 バレンタインデー程の賑わいが無い彩渡商店街の大通りを超えて向かった先、サツキノ玩具店に入ると、店主のユウイチが笑顔で迎えてくれた。

 

「お帰り、ミサ。いらっしゃいませ、アラタ君」

「あ、どうも。……すいません、リン。いますか?」

「呼んで来るよ」

 

 ミサがノリノリで部屋に上がった。すると、ユウイチもアラタに対して手招きする真似をしてみせた。

 

「二人だけで話したいことがあるだろう? 上がって来なさい」

「お、お邪魔します……」

 

 客としての来店ではない。となると、なんだか畏まった気持ちになった。階段を上がると、ミサが部屋前に居た。ここに居るよ、と言わんばかりに待機していた。

 一つ、深呼吸をした。そして、紙袋の中にちゃんと買った物が入っているかを確認した後、ドアをノックした。

 

「オイソギですか?」

「別に急いでいませんよ」

 

と、ちゃんとネタを合わしてくれた。扉を開けるとリンがベッドに座っていた。

初めて女子の部屋に足を運んだが、臭いも何も違ってアラタの脳はガンガン揺さぶられていた。

 

「えっと、バレンタインデーのお返し。をしに来たんだ」

 

 ここまでの緊張感を覚えたことは無かったが、アラタは努めて冷静に振舞いながら紙袋を渡していた。リンは興味深そうに見ている。

 

「開けて良い?」

 

 頷いた。紙袋から取り出した包みを解くと、中から出て来たのはピンク色の張ろポーチだった。

 中には更に何かが入っているらしく、開けてみるとラッピングされた小箱が出て来た。解いてみれば、中には同じ様にハロ柄のマカロンが収まっていた。

 

「マカロンとか大丈夫だった?」

「うん。大好きだよ。後で貰うね」

 

 マカロンが好物と言う意味で言ったのだろうが、別の意味で受け取りそうになったのか、アラタの視線は泳ぎまくっていた。今の彼は冷静では無かった。

 

「そうか。喜んで貰えて、嬉しいな。それじゃあ……」

「もうちょっと一緒にいない?」

 

今日のリンは積極的だった。ただ、アラタの頭もあまり働いていなかった。

もっと長いこと一緒に居たら、要らないことを口走りそうな気がした。何か理性を保つ為に必要な物はと考えて……究極のアイテムを思い出した。

 

「だったら、リンと一緒にしたい物があるんだ」

「……それって?」

 

 彼女も少し緊張した表情をしていた。アラタはバッグから例の物を取り出した。

 

「そう。『GUNDAM 0079 The War For Space』をね」

「………………」

 

 長い、長い沈黙が走った。こっそりと扉の隙間から見守っていたミサが笑顔のまま、中指を立てていた。

 

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