GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】   作:ゼフィガルド

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EX3:24年後の君へ 8

 ホワイトデーの翌日のことである。GBBBBではディスラプターの演出が強化されたり、ガンダムEXやジークアクスが実装されるだけでなくビルダーズパーツも追加されたりと、気合の入ったアップデートだった。

 理由は言うまでもなく、例の狩ゲーへの対抗心からだろう。その甲斐もあってか、僅かながらの人間が帰って来たりして、少しだけ活気が戻って来ているロビーで悲嘆にくれている者がいた。アラタだ。

 

「お、おではただ。リンにもこの感動を味わって貰いたくて……」

「もしかして、アラタって例のゲーム開発チームに家族を人質に取られていたりする?」

 

 タオは呆れていた。女子の部屋に上がるという、男子垂涎のシチュエーション。ハロポーチに入った、ハロ型のマカロンをプレゼントするという無難な選択を進み続けたと言うのに、最後の最後で余計な我を出した。

 リンに追加でプレゼントをしたのは『GUNDAM 0079 The War For Space』。例のクソゲーを改良してしまった結果、本当に印象に残らないゲームとなり果てた虚無ゲーである。

 鬼籍に入ってしまった声優を除いて、当時のキャストを使用しているが、シナリオはこれまた印象に残らない。また、発売した時期はPS2等が台頭しており、モデリング技術が急成長していた時期に発売されたことを考えてもCGムービー集としても微妙。

 更に、ネタ要素となっていたバルカン依存のバルカン乱射も止めて、ちゃんとチャンバラをする様になった癖に、映像の見せ方を担当する者が居なかった為か、非常に単調な絵面を見せられ続ける苦行ゲーだ。

 

「俺は知って欲しいんだ。あの間が妙に空いた会話劇。愛着も持てないキャラクター達。その癖、モデリングの努力跡は見られるのに映像としては殆ど活かされていない、モッサリ感。でも、なまじ受けの良かった部分だけを拾おうとしたのか『ラッキーボゥイだぜぃ』に引き続き、『ニュータイプかぁ!』とか言うわざとらしく寒いシャウト。その全てを堪能してほしかったんだ」

「何がアラタをここまで突き動かすんや」

 

 残念ながら、アラタの情熱は何一つとして共感されなかった。

 ちなみに、タオが聞いた話によれば。『GUNDAM 0079 The War For Space』をプレゼントした瞬間、外で待機していたミサが乱入して来て説教を食らい、リンが諫めてくれたので、お礼に一緒にプレイしようと余計なことを言って2度ブチギレさせたらしい。

 

「ほら、世は高尚さや完成度の高さばかりを褒め称えるだろ? 『GUNDAM 0079 The War For Space』は、そう言ったメインストリームに一石を投じるゲームだったんだよ。こんなんでも存在しても良いって。ガンダムゲーを名乗っても良いんだって……」

「凄いな。とてもやないけど、自分が気に行っているゲームに対する評価とは思えやんと言うか。褒めているふりして、滅茶苦茶馬鹿にしとるやん!?」

 

 一見すると、ガンダムと言うカテゴリーの大らかさを褒め称えている様に見えて、該当作品が一定の水準に達していないことを揶揄しているとしか思えない評価だった。

 

「とんでもない。『GUNDAM 0079 The War』シリーズは俺に勇気と見識を与えてくれた神作だよ。ゲームとしては面白くないってだけで」

「誤魔化す気もなくなっとるやんけ!」

 

 ただ、そんなゲームに導かれてGBBBBにやって来たんだから、塞翁が馬。何がどう作用するかは本当に分からない物である。

 昨日の敗戦と嘆きを聞いていると、クランメンバーがログインして来たという告知が出た。リンだ。

 

「あ、タオ! アラタ! 他の皆は?」

「まだ、来ていないなぁ。今日は休日ってこともあるし」

 

 土日や祝日などは社会人組のログインが遅くなることが多い。世は休日でも働いている人達のお陰で社会は回っているからだ。

 加えて、同じ様な立場の者達はほぼ全員が狩ゲーの方に行っていると来たモンだ。……つまり、久しくクランメンバーはこの3人だけだった。

 

「最近は、練習もずっと続けっぱなしだったし、ちょうど新規のパーツも集めたいからさ。ミッションに行かない?」

 

 今更、言うまでもないが。ミッションのNPCの挙動は対人戦のプレイヤーには遠く及ばない程に緩慢な物だ。立ち回りを覚える上ではまるで役に立たない。

 だが、これはゲームだ。実益を気にする様な物でも無ければ、納期に追われる物でもない。アラタの提案に対し、2人は快く頷いた。

 

「せやね。ちょうど、ガンダムEXのパーツも欲しかったし。それに、ザタリオンが一番輝くんは掃討戦やしな」

「私もジークアクス使って、マチュちゃんみたいなことしてみたいし!」

「じゃあ、久々に3人でミッション行くか! 狩の時間だぞ~」

 

 某ハンティングゲーをなぞらえての掛け声だった。初めてプレイした時は『Normal』でもてこずっていた。今では、最高難易度である『NewType』でもサクサクとプレイできる。

 最近は対人戦に向けての調整ばかりで、こういった緩やかなゲームプレイと言うのも懐かしい感じがした。

 

「……もしもやけどさ。ある日、僕がガンダムやGBBBBから離れたとしても、またこうして皆と遊べる時って来るんやろか?」

 

 本人が飽きる以外にも、サービスの終了や環境の変化でゲームが出来なくなるということは大いにあり得る。タオの心配は決して他人事では無い。

気休めの言葉は幾らでも言える。例え、ゲームをしていなくてもチャットで喋ったりすることは出来るのだから。故に、アラタは口にした。

 

「一度別れたら、それっきりなんてこともあり得るとは思う。でも、俺はタオが誘ってくれてから出会った物は、今後も一生も残り続けると思う。タオにはある?」

 

 自分とは違う人種だと思っていた同級生と掛け替えのない友情を結んだ。自分のことが少しでも好きになれた。

 

「あるよ。少なくとも、今ここにおるザタリオンは、間違いなくGBBBBで過ごして来た結晶や。リンは……聞くまでもないよな」

「えへへ」

 

 口にするのも野暮と言う物だ。次々とNPCがポップして行くので、なぎ倒していく。次々とスラッシュ&ハックしていくだけの爽快感だけがある。弾け飛ぶパーツ、爆散する機体。誰でも気軽に遊べる楽しさがある。

 GBBBBのトッププレイヤーに挑む前には、あまりに無為な時間の過ごし方ではあったが、だからこそ。合理性と実利を求めない、ゲームとしての奔放さと楽しさがあった。

 

~~

 

『カドマツ殿。少し、話しておきたいことがあります』

 

 GBBBB運営チーム技術スタッフ主任に対して、端末管理AIであるアータルが報告に上がっていた。

 

「何だ?」

『例の対戦チームに所属する、とあるプレイヤーの機体からマイスターの例の覚醒と同じ反応が出ています。管理AIとしてフェアな勝負を期すために黙っておくべきか、それともGBBBBの不具合に関するかもしれない物故、如何様にして扱うか。判断を仰ぎたく』

「そうだよなぁ。『カイザー』が居るなら『アイツ』もいるよなぁ」

 

 アータルからの報告を見つつ、タクマの実戦形式の練習の方も同時に視聴していた。先日までは覚醒の中に金色の光が混じる程度だったが、今や紅と金色のオーラが混ざり合い、機体自体が黄金色へと変わっていた。

 

『して、カドマツ殿。如何に?』

「基本的にマスクデータだから公表はしない。機密漏洩にも関わるからな。こればっかりは、親切心で教えてやる訳にはいかねーんだ」

 

 プレイヤーにも把握できない仕様で勝負が左右されかねないのはどうかと思う所だが、カドマツも企業に属する人間として遵守するべき物はあった。

 

『分かりました。……少し、残念ではありますが』

「お前がそう言う感傷的な物を抱いてくれるだけでも俺は嬉しいよ。さて、バトルトーナメント決勝戦はもう目の前だ」

 

 決勝戦は目の前まで迫っていた。同時に、それはカドマツやマイスターことタクマ達の契機が近付いて来ていると言うことでもあった。

 

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