GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
「(たった、半年のことなんだよね)」
6年前。タクマだけではなくカドマツも去り、残った熱だけで惰性の様に続けていたガンプラバトルもやはり長くは続かなくて、いつの間にか現実を消化するだけの日々に身を置いていた。
GBBBBにログインしたのも、ガンプラバトルに興味が出たからではない。塞ぎがちだった妹が、どんな切っ掛けでも良いから他者とコミュニケーションを持てるようにと勧めたGBBBBで、上手くやって行けるかを見届ける為だった。
「(いや、それを言ったら私もか)」
何度も別れが重なり、また離れるかもしれない。と思うと、誰かと親交を深めることにも億劫になっていたのかもしれない。
見守っていた妹の後を付いて行く内に、気づけば自分も踏み出せていたのかもしれない。これじゃあ、どっちが保護者か分かったもんじゃない。
「(私も進んで行くから)」
その時は、一旦GBBBBから離れてしまうかもしれない。でも、別れた後でも再開できると、繋がっていると信じられるから。ミサは穏やかな気持ちで試合を見ていた。
――
「(やっぱり、ガンプラバトルって面白ェよな)」
モニタ内に映し出されているバトルの光景を見ながら、マシマはじっくりと湧いた思いを噛み締めていた。
かつて、プロチームに居た頃はスポンサーとソリが合わずに辞めてしまった。そして、今はGBBBBで仲間達と楽しい日々を送っている。
「(俺も、もっと上に行きてぇ)」
下らないしがらみで降りてしまったプロの世界。今更、惜しむこともないと思っていたが、今までの集大成とも言えるバトルの光景を見て、かつてない程に熱く、そして青い感情が湧き上がっていた。
「(マイスターや同じ位に強い奴らともやり合いてぇ。マジで、ガチで。遊びだからこそ、本気でやりてぇ!!)」
結局、自分は何処まで行ってもガンプラバカなのだろうと思った。すると、ウィスパーチャットが送られて来た。相手はユーキだ。
『マシマさん。良いバトルですよね』
『だろ? 俺の自慢のクランメンバーだぜ。――なぁ、ユーキ。俺の席、空いているか?』
――
「(やっぱり、貴方は飛び立っていくのね)」
閉じこもっていた頃、誰も寄せ付けなかった頃、唯一寄り添ってくれた後輩が居た。彼と一緒に過ごす鬱屈とした時間は実の所、心地よかった。
決まりに囚われ、正しいからしょうがないと諦め、溜め込んだ不満を共有できる相手が好ましかった。本当を言うなら、この世界に来て欲しくなかった。自分と違って、飛び出していけるだけの羽があったからだ。
「(丹生(アイツ)みたいに冷たくしてくれたらいいのに)」
そうしたら、自分も嫌いになれるのに。でも、彼はそうでは無かった。気づいたら誰かの腕を引っ張っている。コウラもまた、腕を引かれた人間の1人だった。
「(勝って……!)」
擦り切れそうになっていた感情が、熱を帯びて行くのが分かった。ガンプラバトルをこれだけ真剣に観戦するのも、久しいことだった。
――
「何か思うことは無いんですか?」
クロカンテが隣にいるカオスに問いかけた。すると、彼は首を横に振った。
「もう、散々に吐き出したからね。残ってはいないさ。後は楽しむだけさ。ただ、惜しむらくは、私があの場にいないことだけだね」
「そうですか。なら、我々は静かに試合を見ましょう」
混沌(カオス)を極めんとしていた男も、今ばかりは静謐だった。まるで、恋人との逢瀬を堪能するかの様に、激しい思いは口にせず。ジィっと眺めていた。
~~
ふみな・轟と騎士エクシアがゼロ距離で打ち合っていた。ふみなの拳は届かず、騎士エクシアが振るう剣も相手を切り裂くには至らない。2人共勝負に全力でリソースを割いている為か、無言だった。
『いつもはトークが挟まる所ですが、もはやお互いにしか興味が無い模様です。これほどまでに静かで激しい勝負があったでしょうか!』
彼らの代りにレコが勝負を実況で彩っていた。ミスターガンプラも堪らず、口を出したくなるほどの勝負だ。
『2人共、様子を見ながらと言った感じだね。恐らく、覚醒が使える様になったら勝負は更に動き出すと思うよ! 彼ら以外の戦いもとても熱いぞ!』
カメラが切り変わると、タオのフューラーザタリオンが咆哮を上げる様にして全身の射撃武器が火を噴いていた。
対峙しているのは、ライムが操る『ドム・ストラグル』であり、バックパックのビームキャノンで降り注ぐ実弾兵器を薙ぎ払っていた。
「おいおい、俺が聞いていた坊やはもっと控え目な戦い方をするって聞いていたけれどな!」
「こんな大舞台、燃えてまうやろ! それにねぇ。なんや知らんけれど、僕のザタリオンが何かを待ち侘びとるんですよ」
タオの視線は激闘を繰り広げている、アラタとマイスターへと向けられていた。ライムは思わず笑ってしまった。
「なるほどな。思った以上に、ガンプラって言うのは因縁とかそう言うのを感じ取ってくれるのかもしれねぇな」
バトルトーナメント決勝戦において、ライムの機体はパッとしない。奇天烈な能力も無ければ、挙動も搭載されていない。ただ、実直な動きがあるだけだ。
ザタリオンから大量に放たれたビームやミサイルの暴風を必要な分だけ撃墜、防御しながら一気に接近し、ビームアックスの刃を展開した。
「接近戦も出来るんやでぇ!」
ダブルビーム・ガトリングガンから吐き出されたビーム弾がドム・ストラグルのビームアックスを弾き飛ばし、そのまま握り潰さんとウインチアームが飛び出した。
「ナめんじゃねぇぞ!」
ドム・ストラグルの右腕から飛び出したヒート・ロッドがザタリオンの顔面を打ち据えていた。カメラに強い打撃と電流が加えられたことで、視界がホワイトアウトした瞬間、ザタリオンは吹っ飛ばされていた。
「お前、コマンドガンダムが好きなんだよな。なら、言わせて貰うぞ。来いよ、ザタリオン! 玩具なんか捨てて、掛かって来いよ!」
「テメェなんかこわかねぇ!!」
と言っても、ザタリオンは武装を捨てる訳ではなく。ウインチアームで殴り返して、ドム・ストラグルを吹っ飛ばしていた。
――
「(タオのSDガンダムと全然動きが違う!!)」
GBBBB内でSDガンダム使いは多くない。今回から参戦して来たと言うことで、頭身や挙動の違いから扱いが難しいとされているからだ。
だが、アータルナイトは全く違っていた。低頭身や歩幅の違いを活かした、相手の距離感を狂わせながら、高火力を叩きこんで来る戦い方はリンが今まで体験したことのない物だった。
「聞けば、リン殿の姉上は主殿と私のオリジナルとチームを組んでいたそうだ。その私が、決勝という晴れ舞台で縁者と手合わせするとは、数奇な縁(えにし)を感じずにはいられない」
「難しい言葉使わない!」
「文脈から意味は推測できると思うのだが……」
AIからロジックを説かれるという、ちょっとだけ近未来的な、あるいはシンギュラリティ的な物を見せられていた。
リン・カーネーションから放たれたドラグーンもSD機体は補足しにくいのか、狙いの制度がイマイチで捉えられずにいた。すると、アータルナイトの背中に一瞬、電磁スピアのホログラムが見えた。
「『ガンダムスパーク!!』」
周囲に大量の雷撃が落ちて、ドラグーンを焼き払っていた。そのまま、別のEXスキルが発動したのか、リン・カーネーションへと一気に肉薄した。
だが、リンもこの程度では戸惑わない。直ぐに、両腕部から取り出したビームサーベルで迎撃に当たり、アータルナイトが構えたボーガンを弾き飛ばしていた。すると、今度は胴体から出現した光の弓矢が両手に握られていた。
「よっと!」
ここで物を言うのは頭身の差である。リンはアータルナイトの頭部を勢いよく、蹴り飛ばした。SDという造詣上、これをやられると一気にバランスを崩さざるを得なくなる。放たれた光の矢はあらぬ方向へと飛んで行った。
「大胆な様に見えて冷静。文からの報告も事実であるらしい。ならば、私もコレを使わせて貰おう」
すると、アータルナイトはシールドを構えた。リンは騎士ユニコーンをよく知らないが、ユニコーンガンダムをモデルにしていること位は知っている。
「(ユニコーンガンダムで盾って言ったら、アレを飛ばして来るのかな?)」
シールドファンネルと言う物があるのは聞いているが、GBBBB内で見たことは無い。
偶々、自分が使っているのを見ていないだけか? Wikiなどで情報は確認していると思いはしたが、アラタや一部のプレイヤーが使う『覚醒』の様なマスクデータが入った物の詳細は彼女にも分からない。
「『コール』!!」
瞬間、アータルナイトの機体から青色の光が放たれ、手にしていたマグナムソードをシールドへと翳した。すると、リン・カーネーションの周辺に大量のホログラムが浮かび上がり、ホログラム状態のSD機体達が次々に現れた。
『暗黒砲!』
『サンダーバリアント!』
『海嘯斬り!!』
「うわぁ!?」
現れたホログラム達は次々と必殺を打ち込んでは消えていく。暗黒砲で引き寄せられ、サンダーバリアントでパルスダメージを食らい、海嘯斬りで吹っ飛ばされた。一体、何が起きたというのか。
「後で、SD好きのご友人に聞いてみると良い。このアカシックヴァインダーに『覚醒』の力が合わさって、始めて出来ることだからな」
「こ、こんな決勝戦で秘密兵器とか……! そもそも、なんで! 覚醒が使えるのよ!?」
誰もがマイスターに警戒している中、こんな隠し玉が居るとは思ってもいなかった。というか、誰も知らない必殺技を使うとか狡くない? と思ったりもしたが、時折アラタが使う覚醒状態からの技もそうなのだから、あまり強くは言えない。
「私はよりシステムやプログラム側に近い存在だからな。悪く思われるな」
アータルはまるで手加減することなく、二度目の『コール』を行おうとしていた。こんな所で、負けられない。
「ふっざけんなぁあああああああああああああ!」
リン・カーネーションの全身から青色の光が放たれた。再びホログラムから飛び出して来たSD機体達の必殺技を受けながらも、全てを弾き飛ばしていた。
「システム確認。戦いの中で、闘争本能を覚醒させたか」
システム側であるアータルは何が起きているかを冷静に把握していた。
長らくアラタやサーヤなどの覚醒使いと行動を共にしていたことで、彼らに刺激されたのか。リンは次のステップに進んでいた。
「さぁ、勝負はまだまだこれからだよ!!」
先の一撃で受けたダメージが自動的に修復されて行き、反撃に転じていた。決勝戦はまだまだ始まったばかりだった。