GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】   作:ゼフィガルド

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EX3:24年後の君へ 14

 バトルトーナメント終了後。アラタの日常は騒がしい物になった。

 まず、GBBBB運営部から連絡が入って色々なやり取りがあったし、多数のプレイヤーから大量のウィスパーチャットが飛んで来たし、SNSにも祝砲が雪崩れ込んで、とてもではないが個人で消化しきれる物では無かった。

 加えて、カルパッチョからのスペシャルインタビューとかでこれまた打ち合わせが多かったし、ガンブレ学園の方でも理事長から呼び出されて、取材に応える羽目になったりと。どれだけGBBBBが社会的に与える影響が大きいかと言うことを思い知らされた。

 

「カルパッチョは兎も角、理事長とは喧嘩したこともあったんでしょ? なんで、要望に応えたの?」

「別に、俺は理事長が憎い訳でも嫌いな訳でもないから。前回は突っぱねちゃったから、今回はね? リンの方は?」

 

 アラタはリンと一緒に帰路に着きながら、ここ数日の慌ただしさについて話していた。まさか、ゲームの一大会に優勝しただけで、こんなに話題になるとは。

 

「私は言う程かな? ちょっぴり言及されたりはしたけれど、周りはあんまりガンプラしていないし……」

 

 昨今、女子にもガンプラは浸透し始めているが、彼女達の話題を染める程の力は持っていないらしい。改めて、自分がいる学園が特殊な環境であることを意識せざるを得なかった。

 彩渡商店街のアーチを潜ると、表に出ていた店員や店のスタッフと思しき人達から頻りに声を掛けられていた。

 

「おぉー。GBBBBのニューチャンピオンじゃないか! ウチで買い物して行かないか!」

「記念撮影もして行っておくれよ」

 

 どういう訳か、ネトゲ特有の匿名性を貫通してアラタがチャンピオンであることが知れ渡っている様だった。はて、ここの人らに公表した覚えはないのだが。と、リンの方を見ても彼女は首を横に振った。

 

「私も言ったりはしていないよ?」

「じゃあ、何処で……」

 

 道すがら、大判焼きや人形焼きを貰ったり、祝福されること自体は嬉しかったが、プライバシーが漏れているのがやや気になった。

 彼らが商店街を歩いている折りのことである。一際、客が集まっている施設があることに気付いた。店先では、白とピンクのカラーリングが可愛らしいロボットが宣伝をしている。インフォちゃんだ。

 

「かつて世界大会で優勝した彩渡商店街チームの皆さんや、新たに誕生したGBBBBの新王者も、このゲーセンに足繫く通っておりました。世界に羽ばたく、イラトゲームセンターをよろしくお願いしまーす!」

 

 個人情報のお漏らし場所が特定できた。ここに来ているプレイヤー達はいわゆる聖地巡礼と言う奴で来ているのだろうか?

 当人としては、止める様に言いに行きたかったが、そんなことをすれば増々騒ぎは大きくなるだろうと判断して、そっと見ないふりをした。

 

「イラト婆ちゃん、本当にセンサーの感度良過ぎでしょ」

「でも、年老いても瑞々しい感性の持ち主世だな」

 

 リンは呆れていたが、アラタはオーナーの商魂の逞しさ、また老齢ながらも現代のブームにしっかりと着いて行ける感性については感心すらしていた。

 いつもより盛り上がりを見せる彩渡商店街を抜けて、閑散とした場所にあるリンの実家でもある玩具店へと向かった。

 『CLOSED』の看板が掛かっているのは、GBBBBのイベントによる盛り上がりを捌き切れないと判断してのことだろう。商売をやって行く上では、みすみす機会を逃すことになるのだが、この店はコレでやって行けるのだから問題ない。リンとアラタが入店した。

 

「お父さんただいまー」

「お邪魔します」

「いらっしゃい。と言いたいけれど、今日は休店日だったね。いやぁ、癖でねぇ。彼なら奥の方で待っているよ」

 

 店を閉めている間に掃除をしたり、在庫を数えたりとやることは多い。休日とは言い難いのが、自営業らしい所でもある。

 誰もいないハズの店内だったが、奥には人の気配がある。向かった先には見知った顔があった。片や、この店の住民でもあるミサ。片や、先日までGBBBBのトップだった男。マイスターこと、ナギツジ・タクマである。

 

「リン、お帰り~。アラタ君もいらっしゃい」

「うん! お姉ちゃん、ただいま~。タクマさんもこんにちは!」

「どうも。お邪魔しているよ。アラタ君も来てくれてありがとう」

 

 普段はガンプラを作る為の作業スペースであり、待ち合わせをするにしても時間潰しがてらに何かしらをビルドしていることも多いのだが、今日はそう言った作業をしている様子も無さそうだった。

 

「タクマさん、俺に話って?」

「そうだな。祝辞については、先日にさせて貰ったから省くとして。……ミサや一部の人間にしか伝えていないことがあってね。それを君達にもと思って。私は、暫くガンプラファイターの世界から身を引くことを伝えに来た」

 

 アラタとリンは目を見開いて、驚いていた。ミサは事前に聞いていたのか驚く様子も無さそうだった。タクマは説明を続けた。

 

「これは以前から決めていたことだ。俺が所属している『タイムズユニバース』という会社が、先日宇宙開発プロジェクトについての共同声明を出したことは知っているか?」

「あ、テレビでも話題になっていましたよね」

 

 リンもゴールデンタイムのニュースで流れているのを見たし、ネット上のSNSでも取り扱われる位に普遍的な話題だ。軌道エレベーターも存在している世界で、真新しさも無いニュースだったので、直ぐに内容は忘れてしまったが。

 

「詳しい業務内容は話せないが、私も参加することになった。ミサやカドマツとも協力してな」

「タクマさんも何か宇宙開発関係の知識や技術が?」

「いや、私は単なるガンプラバカだ。学も無ければ、知識もない」

 

 だとしたら、何に参加するのだろうか? と、アラタは頭を働かせた。

 ただ、思い当る節はあった。彼とミサが成し遂げて来た功績は、宇宙開発を後押しする切っ掛けとなったことだろう。そんな立役者ともなれば実務は兎も角、広報としても存在は大きい。

 

「前に、ゲーム内でも忙しくなってログインできなくなるかもしれない。って言ったでしょ? 私もタクマと一緒に業務に携わって行くからさ」

「……迎えに行けそうですか?」

 

 アラタが思い出したのは、タクマやミサが口にしていた『ロボ太』という存在だ。実際に見たことは無いが、彼らにとっては非常に重要な友人であり、自分のスマホに入っている文の祖父にも当たるという。

 

「これからさ。出来たら、私達が生きている間に再会できれば良いが」

「そこは間に合わせるんだよ。それと、私からも報告があるんだ。タクマ、良いよね?」

 

 彼は少し視線を彷徨わせた後、小さく頷いた。そっと、ミサは左手を上げた。薬指には指輪が輝いていた。間もなくして、アラタとリンは歓声を上げた。

 

「おめでとうございます!」

「お姉ちゃん! 何時の間に!?」

「前から話し合ってはいたんだけれどね。これから忙しくなるだろうし、バタつく前にと思ってさ。本当は結婚式も上げたかったんだけれど」

 

 今後の宇宙開発の関係で何が起きるか分からない以上、関係者を集める真似は避けたかったのだろう。アラタ達からすれば、口惜しくも思う所だった。

 

「6年前は、ミサを危険な目に遭わすまいと遠ざけてしまった。だけれど、今度は離さない。俺は彼女と一緒に歩き続ける」

 

 タクマの言葉には揺るぎない決意が見て取れた。アラタとリンも我がことの様に喜び、店の掃除をしていたユウイチは目頭を押さえていた。

 

「なんだか、我がことの様に嬉しいですね」

「君も他人事じゃないでしょ。ね、リン?」

 

 ミサに言われて、リンも顔を真っ赤にしていた。自分達も後に続けと言うことだろうか? このまま延々と惚気話が続くかと思われたが、話を戻す様にしてタクマが切り出した。

 

「私が居なくなった後のGBBBBを頼みたい。あのゲームに参加しているユーザー達はリビドーや創作意欲の迷子ばっかりだが、間違いなくGBBBBやガンプラバトルを発展させている者達ばかりなんだ」

「もしや、あそこを何かしらのアサイ・ラムとして思っているタイプで?」

「変な所に発散されるよりはマシだろう。多分」

「十分に変な方向に発散されているでしょ!!!」

 

 さっきまでの良い話から一転、一気に気が重くなるのを感じた。リンが喚いていたが、アラタは深く頷いた。

 

「分かりました。俺は、あの無法地帯を! 引き受けます! 性癖の肥溜めとして!!」

 

 まさか、GBBBBプレイヤー達も思ってもいなかっただろう。自分達の頂点に立つ少年が、あのゲームを性癖の肥溜め扱いしているなんて。

 ……聞いていたとしても『まぁ、事実なんだけれどな。ククク』で、済ませて来そうな気もしたが。

 

「そうか。これで、私も心置きなく巣立てるな……」

「ねぇ、タクマさん。本当に心置きなく行ける? 面倒事を押し付けてホッとしているだけとかじゃないよね?」

 

 肩の荷が下りたみたいな雰囲気を出しているタクマに、リンが抗議をしたがスルーされた。それから、暫く他愛の話をして、GBBBBのトップは次の世代へと引き継がれて行った。

 

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