GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
「折角、クランを作ったのに活動らしいこと。何もしていなくない?」
唐突にリンが申し出た。『ビアンカ』を結成して、それなりの日数が経過したが、新規の加入者はシーナ位である。
「別にええんちゃう? 無理にクラン戦するだけじゃなくて、こうしてクランチャットで駄弁れるだけでも作った意味はあるやろし」
今の所、対人戦は気が進まないのかタオは変化を望んでいない様だ。実際にクランチャットの機能は便利であるが。
「最初はアラタの勧誘を断る為に作ったけれど、結局形骸化していたら意味ないじゃん? なんか、こう。もっと、パーっと活動らしいことをしない?」
「リンには何かアイデアがあるのか?」
アラタが率直に尋ねた。すると、彼女はある程度は調べて来ていたのかURLをペタペタと貼り付けていた。
「他のクランではね。クラン戦をしたり、クラン内でガンプライベントをしたりとかね。それっぽい活動をしているの!」
「じゃあ、私達も真似をしてみます?」
シーナが提案してみたが、こんな少人数のクランでガンプラコンテストをしても寂しい物にしかならない。かと言って、クラン戦が出来るような戦力がある訳でもない。
「コウラ先輩。フリーダムフリートではどんな活動が行われていたんだい?」
「主にミッション攻略やPvPの練習ね。後はガンプラの構築についても話し合ったりはしたけれど、あぁ。後、動画配信をしている奴もいたわ」
動画配信! 現代っ子の心をくすぐるワードだ。有名配信者にもなれば企業との提携すらあり得る。これにはリンも食いついた。
「動画配信とか。良さそうじゃない!?」
「何を撮るん?」
ネームバリューも無い連中が撮った動画なんて誰が見るのか。
ミッションの攻略動画もスタイリッシュとは言い難いし、パーツやスキル関係の分析や解説が出来るだけの知識もトーク力も無い。勿論、クラン戦の動画なんかも撮影できる訳がない。……ピン! と、リンが何かに気付いた。
「そうだよ! アラタだよ! 覚醒ってアラタだけが使えるんだよね!? それを使った動画とか。伸びそうじゃない!?」
「確かに。このGBBBB内で『覚醒』が使えるプレイヤーは限られています。宣伝材料としては悪くないでしょう」
文も納得していた。先日のイシツブテふみなのビルドは断念したが、めちゃく腕パーツがごつくなり、米津ふみなになっていた。
「俺が覚醒を使いながら撃破して行く動画かぁ?」
「動画の価値としては低めね。そもそも、動画配信をして何をしたいの?」
コウラからの質問にリンは詰まってしまった。動画配信と言う言葉に囚われてしまったが、そもそもの目的は何なのか。
「やっぱり、クランを盛り上げてメンバーもいっぱい増やして……」
「えぇ。ボク、このメンバーやから所属している様なモンやし。あんまりようけ人入れたくないんやけどなぁ」
タオは消極的だった。そもそも、仲が良いから集まって出来たクランだというのに、態々部外者を積極的に取り入れて行くという方針自体、望ましい物では無かった。
「でも、折角の輪が私達だけで閉じるのは寂しくない?」
「そこは、無理に勧誘せんでもボチボチ増やして行ったらいいやん?」
「ひょっとしたら、私みたいな人が来るかもしれませんよ?」
シーナはニッコリとしていたが、彼女の場合はかなりのレアケースだろう。
だが、仲の良い者達が集まったら自分達だけで輪が閉じるというのも大いにあり得る話だ。元々、メンバーに社交的な者が少ないと言うこともあったが。
「なぁ、タオ。何もリンみてぇにクランの勢力拡大の為に喧伝するって訳じゃなくて、こういう奴がいる。ってことを知って貰う為に動画配信って言うのは悪くねぇんじゃねぇか?」
「どういうこと?」
「えぇっとだ。つまり、クランの特色。それを前面に押し出してよ。俺達はこういう奴らだ! ってことを知って貰うPR動画を作れば、加入メンバーとのミスマッチングも減らせるんじゃねぇかって」
アラタの方針ならば納得できる範疇にはあった。とにかく増やせ、増やせでは自分が追いやられてしまうが、アラタみたいな奴がいる! という雰囲気を押し出して行けば、似た様な連中がやって来てくれるんじゃないかと。
「その場合、どういう人種が集まるのでしょうか?」
「クックがいるんだから、きっとシュワちゃんとベネットも来てくれますわ」
文の質問に対して、シーナがサラリと答えていた。そうしたら、いよいよコマンドー戦記になってしまうのだが。
「『ビアンカ@金曜ロードショー』とかになりそうね」
「40秒で支度しな!」
リンが眉間に皺を寄せている横で、アラタが何か言っていた。
当初は方針も決まっていなかった動画配信についてもいい具合にまとまって来たが、ここでコウラから提案があった。
「私達がいきなりやっても注目はされないだろうし。アラタ、アンタ。カオスから遊びに来ても良いって言われているんでしょ? ちょっと協力して貰ったらどう?」
「名案だぜぃ!!」
すると、アラタはカオスがログインしていることを確認した後、メッセージを送ることにした。
~~
フリーダムフリート。GBBBB内でもトップクラスのクランであり、有名プレイヤーも多数在籍している。リーダーであるカオスは大量にある加入申請をチェックしていた。
「ミッション全クリ、パーツレベル.MAX。SNSは……駄目だな。喧嘩腰過ぎる。却下。このプレイヤーはカルパッチョ狙いか。却下」
トップクランの恩恵に預かろうとするプレイヤーも後を絶たないが、厳しいチェックを通り抜けられる者は極僅かである。厳しい様に思えるが、クランの品格を落とさない為にも必要なことだった。
「毎度ご苦労ね~」
申請書の審査をしていたカオスに声を掛けて来たのは、アビスガンダムをベースにしたガンプラのアバターだった。パイロットアバターの方はと言えば、水色の髪に所々青のメッシュが混じったツインテールにノースリーブで胸元が開けた開放的な衣装が特徴的な少女だった。
「カルパッチョ君か。何。会社にいた頃、人事の真似事はしていたからね」
「ほんと、プレイヤーとして管理職として大変ねぇ。全てが面倒になったら、私に任せてくれてもいいのよ?」
自分ならできると信じて疑わない尊大な自尊心の持ち主であったが、これが彼女の魅力でもあるのだから不思議な物だ。
「何を言うか。こんな面白いゲームで全てを投げ出すなんて勿体ない。おっと、メッセージだ。……!」
「どうしたの?」
「何。以前に声を掛けたプレイヤーがね。少し、遊びに来たいとのことだ」
軽く言っているが、カオス直々に招待する相手。等、このGBBBBでも数える程度しかいない。ある程度、事情にも詳しいのかカルパッチョは早々に察しがついていた。
「それって、前にボーボボとクルルの面接試験で戦った覚醒使いのこと? カオスは引き抜きたがっていたけれど、クラン作ったんでしょ? だったら、恩を売っても無駄じゃない?」
「いいや。少し下世話な話になるけれどね。所詮は素人が作ったクランだ。本物のクランの効率と交流で翻意させることも出来るさ。そこでだ、カルパッチョ君。懐柔は君に頼みたい」
トップクラスのクランがトップを走り続けられるのには理由がある。メンバーの強さは勿論のこと、強いプレイヤーを引き抜き留まらせるだけのメソッドが内部に存在しているのだ。
「二シシシッ! 私に任せて貰えばラクショーだし? それに、私もソイツには恩があるのよね。あのいけ好かない女を引き取ってくれた恩が!」
「くれぐれも丁重にな」
カルパッチョが乗り気であることを確認したカオスは、アラタからのメッセージを快く承認した。打ち合わせの為にメッセージを読んだ所、彼女の笑みは増々が大きなものになっていた。
「どどどどど、動画配信~~!? もう、私の為にあるような状況じゃない。これはもう、デスティニーにシン! キラにラクス! アスランにカガリ! ムウにマリュー! ウィリアム君にアーサーレベルのフィット感!」
「最後だけ妙にマニアックな所を攻めたねぇ」
仕事にやる気を出してくれるのはカオスとしても喜ばしいことではあるが、カルパッチョの内心はと言えば。
「(最近、他の四天王が幅を利かせてウザかったのよねぇ。ここで覚醒使いを引き抜いた功績があれば。いや、覚醒使いなら上手いこと育てれば、私がフリーダムフリートを……!!)」
壮大な計画となるか誇大な妄想となるか。いずれにせよ、フリーダムフリートに一波乱が起きそうではあった。