GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
「お。早速メッセージが帰って来たぜぃ!!」
アラタがメッセージを出してから僅か30分後に返信が来た。文面も丁寧な物で、トップクラスのクランのリーダーを務めているのも頷ける気がした。
「なんて書いてあるん?」
流石に個人宛のメッセージを覗き込む訳にはいかないが、内容が気になるのでタオが尋ねた。他の者達も似た様な感じだった。
「今からでも遊びに来なよとのことらしいぜぃ。しかも、迎えが行ったって」
「凄い厚遇じゃん」
リンも驚いていた。自分の知らない間に、フレンドが一目を置かれる程の存在になっていたなんて思わなかった。
ロビーが騒がしくなる。普段は魔改造ふみなやら俺ガンプラが跋扈している様な無法地帯でも、特定の存在には黙ってしまうらしい。
「やっほー! キミがアラタ君?」
「おお。そうだぜぃ! もしかして、オマ……貴方が?」
現れた存在にタオが大仰にリアクションを取り、コウラが不機嫌になっていた。アラタは途中までロールプレイをしようと考えたが、流石に迎えに来て貰った手前、地の対応を取っていた。
「うん! カルパッチョだよー! よろしく! コーラちゃんも久しぶりー! そっちで、上手くやっている?」
「……ぼちぼちね」
元居た場所での交流関係を想像できるような遣り取りだった。一方、アラタはと言えば、クランチャットにおいてタオから猛烈な勢いで詰められていた。
「アラタ! カルパッチョちゃんのこと知らんの!?」
「おぅ。俺は動画配信とかあんまり見ねぇからな。有名人なのか?」
「GBBBB指折りの有名プレイヤーや!! カルパッチョちゃん言うたら、GBBBBサービス開始時からおった動画配信者やで!」
「あ。本当ですね。検索したら、動画がいっぱい出てきました」
彼の熱量にアラタも若干引いている位だったが、その横でシーナが検索を掛けていたら該当動画だけではなく、切り抜きなどの関連動画も含めて大量に出て来た。タオが興味深そうにしているのに気付いたのか、釘を刺す様に先にカルパッチョが言った。
「ごめんね~。私達のクランって許可制だから、呼ばれた人以外は招いちゃいけないってルールなの」
「あ、そうですか……」
タオがションボリしていた。カルパッチョに誘われるがままにフリーダムフリートへと向かう二人を見送りながら、コウラが悪態を吐いた。
「危険ね……」
「そんな。まさか、アラタがビアンカを捨てるとでも?」
「そうよ。私達には今日までの付き合いがあるのよ!」
アラタがプレイし始めてから今まで、ずっと一緒にいたタオとリンも抗議していたが、文が淡々と述べた。
「しかし、相手はトップクラスのクランです。囲い込みや政治的な面にも長けている可能性はあります」
「色々な流派や家元も政治的、社交的な面も強いということはありますしね。そもそも、彼だけを誘い込むって。まるで他に口出しさせないような体制な気もしますが……」
シーナも覚えがあるのか深刻そうな顔をしていた。まさか、彼がそんな……と思いたかったが、自分達と彼には明確な違いがあると言うことを理解すると、言いようのない不安に駆られるしかなかった。
~~
「ようこそ。フリーダムフリートへ! 歓迎するよ!」
「こちらこそ、ありがとうございます」
カルパッチョに連れられ、カオスの元へと案内されたアラタは畏まっていた。
見る人が見れば、非常にレアリティの高いスタンスであるが、カオスはコレを笑っていた。
「そんなに畏まらなくてもいいさ。いつも通りで居てくれないと、私も調子が狂うよ」
「そうですか? じゃあ、そうさせて貰うぜぃ!」
やはり、こっちの方が楽なのか。アラタもいつもの調子に戻っていた。
クランルームにいるメンバーは興味深そうに彼を観察しており、カオスもノリノリで自己紹介を始めた。
「改めて自己紹介させて貰うよ。私はフリーダムフリートのリーダー『カオス』だ。君を連れて来たのは『渉外』担当の『カルパッチョ』君だ。動画配信者として、既に知っているかもしれないが」
「渉外?」
聞き慣れない単語を聞いて、アラタが首を傾げていた。すると、カオスはクランルーム内のモニタに『フリーダムフリート』の組織図を表示した。
「見ての通り。フリーダムフリートは大規模クランでね。私一人では管理が難しい部分もあるから、一部の信用できるメンバーに業務を委託しているんだ。カルパッチョ君には優れた交流能力があるからね、『外』部との交『渉』等を担当して貰っているから『渉外』と言うんだ」
「覚えておくと使うかもね!」
「そう言えば、学校の生徒会でそんな役職が居た様な……」
ゲーム内でもこんなにガチガチに組織図を作っている者達がいることに驚いていた。幅広い年齢層が集まる大規模オンゲーだからこそ、出来るのかもしれない。
そんなことを考えていると、クランルームにいたプレイヤーの1人が近寄って来た。赤色にカラーリングを施したマスターガンダムをベースにガンプラだった。
「キミがアラタ君か。待っていたよ!」
「ハハハ。待ちきれなかったか? 彼は『クロカンテ』。主にPvPやクラン戦などの行事を取り仕切ってくれているよ」
パイロットアバターは如何にも貴公子然としていた。風貌的にガンダムW系の機体に乗って良そうだったが、そう言う訳じゃないらしい。
「覚醒を使えるプレイヤーは限られている。君が来てくれたら、フリーダムフリートは正に『最強の艦隊(グレイテスト・フリート)となることだろう」
「ちょっと~。クロカンテ? アラタ君は遊びに来ているんだからね。まだ、所属すると決まった訳じゃないからね?」
「これは失礼した」
ペコリとクロカンテの機体が頭を下げていた。トップクラスのクランと言うだけにあって、もっと堅苦しい雰囲気を想像していたが意外と和やかなこともあって、内心アラタは安堵していた。
「まだ、2人程いるんだが今はインしていないね。また、タイミングが合った時にでも紹介するよ」
「どんな人達か気になるぜぃ」
既に、カオスを始めとした3人の時点で濃ゆいというのに、まだ濃い人らが来るんだろうか。流石トップクラスのクランだと感心していた。そんな彼の感銘に畳み掛ける様にして、カルパッチョから誘われた。
「アラタ君って動画配信に興味があるんだよね? だったらさ、私の配信に出演してみない? 宣伝効果バッチシだよ!」
「え? え??」
「待ちたまえ。あくまで、アラタ君は遊びに来ているんだ。キミの動画配信は多くのユーザーが見ているんだ。いきなり出演するのは気が重いことだろう。まず、私と一緒にPvPのイロハを学ぼう。帰ってからも使えるはずだ」
「いやいや。まだね、アラタ君はストーリーミッションも消化中だよ? そっちの殺伐PvPに参加するのはまだ早すぎると思うんだよねぇ?」
お互いに火と水と言わんばかりにバチバチしていた。アラタが横目でカオスに助けを求めると、彼は笑っていた。
「2人共。そんなに険悪な空気を見せては、彼も怯えてしまうだろう」
「いやぁ、こう。仲が良いんだなって思ったぜぃ」
カルパッチョとクロカンテの2人はニッコリと微笑んでいたが、内心で何を考えているのかを想像するのは止めた。
ここで風見鶏な対応をすれば、以後も顰蹙を買ってしまうかもしれない。故に、アラタは当初の予定通りに動くことにした。
「じゃあ、カルパッチョさんと一緒に動画配信って言うのをやってみたいぜ。メッセージの方でもその旨を送ったしな」
「オッケー! じゃあ、行こう!」
彼女はアラタを引っ張り出してクランルームから飛び出して行った。その後ろ姿を眺めながら、クロカンテは笑っていた。
「あの女は恐ろしいぞ……」
~~
「なぁ~んと、今日は! 今、覚醒使いとして話題になっている『ビアンカ』のメンバー、アラタ君が遊びに来てくれました!」
「おぅ! よろしくな!」
当初の約束通り、アラタはカルパッチョの動画に出演していた。
メッセージや質問が大量に飛んで来るので、本人もパンクしそうになっていたが、カルパッチョは大量に流れて来るコメントから比較的答えやすい物だけを選び取っていてくれた。
「アラタ君が覚醒に目覚めたエピソードってどんな感じでしたか。だって!」
「アレはだね。俺がボーボボとクルル曹長と戦っている中、リーダーをぶっ飛ばしてやるぞと思ったら使えたんだぜぃ。まぁ、ぶっ飛ばされたんだけれどよ!」
まるで意味の分からない答えなのだが、事実だから仕方がない。実際に確認用にVTRも流してくれたが、本当にその通りだった。
だが、これが受けたのかコメントは概ね好意的な物だった。黒人のスキンヘッドアバターが、ガンダムタンクで陽気に喋っているのも拍車をかけていた。
「よし! じゃあ、このままミッションに行ってみようか! アラタ君のレベルなら……ハードコアまでだね。じゃあ、因縁の相手と行ってみようか!」
「格下と一緒……嬉しくない……」
「テメー!!!」
カルパッチョが呼びかけると、突如隣に件の相手であるボーボボが降り立ったついでに暴言を吐いたので、アラタがキャラ付けを崩して噛みついていた。美少女、黒人スキンヘッド、ボーボボとあまりに絵面が強いことになっている。
コメント欄はボーボボとアラタの掛け合いによりハジケリスト達も集まり出していた。
「なんか、今日はコメント欄が愉快だね! このままミッション行ったらもっと楽しそうだから、行ってみよっかー!」
かくして、ミッションが開始された。バトル中にも大量のネタが発生している中、カルパッチョは増々確信を強めていた。
「(まさか、覚醒だけじゃなくて配信ネタも行けるなんて。これさえ捕まえておけば、フリーダムフリート内で私の立ち位置が盤石に!!)」
配信者に見せている笑顔は何に起因しているものか。少なくとも、この場で分かる者は本人しかいなかった。